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カテゴリ: Book Review
「幸せの条件」(誉田哲也、中公文庫)を読む。

三流大学の理学部を出て理化学機器メーカーに就職するも伝票整理しかできない役立たずOLの梢恵に、ある日社長からまさかの指令が下る。その指令とは、単身長野の農村に赴き、バイオエタノール用の米を作れる農家を探して来いというものだった。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた彼女、果たしてその結末は…という話。

現代日本が抱える大きな問題の一つであるエネルギー問題が、バイオエタノール用の米を題材にして描かれているし、なりゆきで始めた農業を通じて、これまた現代日本の抱える食糧問題に鋭くメスが入れられている。そして作品を読むほどに、読者もエネルギーや農業や食糧の問題について如何に無知であるかということを思い知らされる(少なくとも私はそうだ)。ちょうど梢恵がそうであるのと同じように。そんな社会派の小説でありつつ、最後にはタイトルである「幸せ」とは何であるかという人間の根源的な問題も問うている深い深い話である。作中では東日本大震災も発生しており、この作品の深さと奥行きを更に際立たせている。こんなに勉強になり感動もする話には滅多にお目にかかれないというのが私の正直な気持ちである。

以下、気に入ったところを幾つか引用させてもらう。




(作中の震災を受けての梢恵が思うこと)上手くいえないけれど、この事態から目を背けてはいけないような、そんな気がしている。知らん顔で日常に戻ることに、言い知れぬ罪悪感のようなものを感じる。何かしなきゃ。何かあの人たちのためになるようなことをしなきゃ。そう思いはするけど、これといった具体案は思いつかない。

「コメ、作っちゃいけないんだってさ。仮に作って出荷したら、罰則が与えられる可能性があるんだってさ……ひどいよね。俺たちが何したっていうの。原発で作った電気使ってたの、俺たちじゃないじゃない。東京の人じゃない。東京の工場とか、大企業とかじゃない。俺たちはさ、ガソリンだってできるだけ使わないようにして、地面とお天道様とで、仕事してきたんじゃない。なんでよ。なんで俺たちが、田んぼ奪われなきゃなんないの」


これで今年59冊目読了。


幸せの条件/誉田哲也





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Last updated  2015.10.09 16:02:39
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