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カテゴリ: Book Review
「あの夏、二人のルカ」(誉田哲也、角川書店)を読む。

同じ女子高に通うメンバーで編成されたガールズバンド「RUCAS」の活動と、その10数年後の大人になったメンバーの様子を描いた作品。誉田作品で「バンドもの」といえば「疾風ガール」を思い出すし、(詳細は知らないが)誉田氏自身が音楽活動もしている。私は全く音楽(特に本作に頻出するロック)には詳しくないが、そんな人のための豆知識も散りばめられているので、そこは難なく読める。

その豆知識っていうのは、音は「ゆがませる」のではなく「ひずませる」(漢字ではどちらも「歪ませる)ものだとか、「バンドには何故ベースが必要か」とか、ギターのFコードは初心者を泣かせるためにある(Fが弾けなくても弾ける曲はいっぱいある)とか、そんな感じのもの。

閑話休題。

舞台は東京・谷中。全くロックっぽい感じのしない街にギターリペアの店がある。名古屋での結婚生活と仕事の両方に見切りをつけて帰京したバンドの元メンバーが元々住んでいた谷中でその店を発見。店先には薔薇の彫刻がされた赤いギターが。そして店名には「ルーカス」という単語が入っている。

一方、高校時代のバンド結成の経緯はというと…初めギター&ボーカル、ベース、ドラム(+マネージャ)という構成だったところに、「メチャクチャ歌が上手い転校生」が現れ、その転校生を口説き落としてボーカルとして入ってもらい、「RUCAS」が誕生する。学園祭での演奏が話題を呼び、その転校生ボーカルは時の人となる。しかし順風満帆に見えたバンドはある日思いもかけない事件をきっかけに空中分解してしまう。高校時代の栄光のバンドと現在30代になった当時のメンバーたちがどう結びついていくのか、そこが一番の読みどころ。

勿論ロックなんかやる人であるから、高校時代は「大人が嫌い」で本人が大人になった今でも「大人が嫌い」という主人公、もう無条件に共感してしまった。いいよね、こういうキャラ。あとはまぁ、誉田哲也って「誰かをバラしてそこに姫川をけしかける」だけでも十分凄い作家なのに、「武士道」とかこういう青春モノも書けてしまう、しかも面白い。だからまた読みたくなる。ホントに凄いなぁと思う。本作も作風というか書きっぷりが、高校生の言葉遣いのように「ぶつ切りの短い言葉」を連鎖させるようになっていて、それがまた青春小説っぽさを更に増しているという感じがする。刑事モノを書いているときとは明らかに違う。まぁ当たり前だけど。

タイトルにある「二人のルカ」って言葉に「謎解き」な要素があるのは、推理作家の顔がちょっと覗いている気がする(のは深読みしすぎかもしれないが)。

以下、印象的だった箇所の引用。

何より、私は自分が好きではない。
いっそ、別の何者かになってしまいたい。

「分かってますよ、もう、自分がいい大人だってことくらい。でも、自分で自分に、刷り込み過ぎたんですかね。親が嫌い、大人が嫌い、大人なんて、体裁とか、根回しとか、嘘ついてばっかりって、そんな恨み言を、呪文みたいに唱えてたから、……なんか、抜けないんですよ、いまだに」

「思い返すと、私、親に『好きだ』っていわれた記憶、ないんですよ。良い悪いの『良い』はいわれたことがあっても、そのあとには必ず、『もっと頑張れ』って続くんです。」

あ~ぁ、結局みんな「彼女」の台詞か独白だわ。だからこの作品、他人事に思えなくて好きなんだろうね。





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Last updated  2019.12.18 09:16:30
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