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カテゴリ: Book Review
「九月の恋と出会うまで」(松尾由美、新潮社)を読む。

本との出会いは人との出会いに似ている…って書くのも今年3回目だ。本作との出会いはといえば…全く別の作家の本を書棚からとってパラパラめくって巻末の既刊本案内のところまでいってしまい、そこで目にしたあらすじに「んんん、これ面白そうかも」と思い、作家名と作品名をチェックして捜してみたら発見、といったところだ。

タイトルは恋愛小説っぽいのだがチェックしたあらすじはそうではなく、SFとミステリを合わせた感じで、でも世界はこの実世界が舞台。主人公は旅行代理店に勤め写真を趣味にしている女性。「何かしら芸術活動に関わっている人」のみが居住できるマンションに引っ越してくる。ところがある日、部屋のエアコンダクトの穴(彼女はエアコンを使っていないので、マグカップ状のもので塞いである)から何者かの声が聞こえる。声の主はマンションの隣人なのだが、1年後の未来に住む未来人だという。

しかもその未来人がある奇妙な頼みごとをしてくる。彼女の趣味が写真であることを見越して。それは、過去の自分の尾行し、いつどこにいたかを証明する証拠写真を撮って欲しい、というもの。彼女はもちろん不審に思うが、結局熱意に負けて頼みを引き受けることに。そしてもうひとつ不可解なことが。ちょうどそのころから彼女の部屋にある熊のぬいぐるみが「喋る」ようになるのである。

一体何が起きているのか?「未来の隣人」には「現在の隣人」と接触することは禁じられているが、結局彼以外に相談できる人もおらず、「現在の隣人」に相談することに。そこから謎が少しずつ解け始める。

いわゆる「時空のねじれ」で現在と未来が繋がってしまったようだが、そうなると未来から過去への干渉は歴史を変えることになり、タイムパラドックスを生じかねない。しかも、時間が筆記体小文字の「l」のようにループしているなら、いずれ元の時間の流れに戻れるが、どうも今回は「大江戸線」のようにループはしているものの同じところを行ったり来たりを繰り返しているだけのようで…それを打破するには、というのが面白いところ。

勿論、恋愛小説としての要素も持っていて、その部分も十分面白い。しかし「恋愛もの」と「SF・ミステリ」を繋げ、しかもタイムパラドックスというよくある題材を使っているにも関わらず、何か凄く新しいものを生み出している作品だなぁ、そんな気がした。

以下、印象的だった箇所の引用。

もう少し先の反対側にある都庁となると、ずっと新しいのに、不可解な宗教の遺跡みたいにまがまがしく見える。

「何だか知らないけどわたしって、男の人を振り回したり、下手をすると鞭まで振り回したり、そういうタイプだと勝手に誤解されちゃうみたいで」

「そりゃ、そうだよ。男はみんな奇跡を起こしたいと思ってる。好きになった女の人のために」





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Last updated  2019.12.24 08:28:27
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