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カテゴリ: Book Review
「あがり」(松崎有理、東京創元社)を読む。

表題作にして松崎さんのデビュー作を含む5編の理系ミステリ短編集。対象となっている分野は医学・生物学系なので、同じ理系でも地球科学・物理系出身の私にも馴染みのない用語も多いが、それはそれでもちろん楽しめる。そしてミステリといっても殺人事件などが起きるわけではなく、研究者が憑りつかれたように行う実験の謎だったり、論文代筆業者に寄せられた謎の依頼だったり、謎解きの対象も理系的。

表題作「あがり」は遺伝子レベルでそれ以上進化(遺伝子複製、あるいは生殖)が進まない「究極の進化」はあり得るのか、に実験で挑む研究者の話。最後に収録されている「へむ」は、蛸足大学の各地区を結ぶ地下通路を舞台にしたちょっとホラーな、だけど心温まる物語。

全体的にストーリーは面白くて題材も理系的で、そこは私の好み。しかし、用語法や表現が私にはあまり合わないなぁというのが正直なところ。先日読んだ私の初読松崎作品​ 「5まで数える」

おまけに私の苦手な古文によく見られる「漢字で書いたほうが判りやすいのに平仮名を何文字もベタ打ち」する表現も多用されている。「理系」を題材としていながらこれはどうかと思う。勿論、作品の世界観を構築するのに貢献しているのは間違いないが、そこは好みが分かれると思う。私はやや否定派。

まぁそうは言っても…印象的な箇所をいつものように引用させてもらう。

たくさん本を読むようなやつはたいていまともな文章をかく、というのが彼の持論だった。
(「代書屋ミクラの幸運」より)

「理論進化学、なんてたいそうな名前の専門だけど、機械の扱いが下手すぎて実験できないだけでしょう」
(「不可能もなく裏切りもなく」より)

「でも、博士号なんて足の裏にひっついた飯粒だよ。とらなくちゃ気持ち悪いけど、とったところで食えやしない」
(「へむ」より)






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Last updated  2021.02.10 07:58:48
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