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「この勝なる男には、女房の他に町内に愛人がおり、その女も女房共々此度の一件で死んでおります。」「なぁに、本人がそう申したのではございません。拙者の手の者が町内の者から聞き出してきた事でございます。」「勝は最初はシラをきっておりましたが、昨夜遅く、5人の仏さんの中の一人と男女の仲であった事を白状しました。勝の野郎、誰にも知られてないと思っていたようですが、町内の者の間ではちょっとした噂になっていたようです。まったく御目出度い奴でさぁ。」「町内の寄合で酒を振舞った大家、大家が酒屋へ使いにやった小僧、大家の家から寄合所まで酒を運んだ勝。この三人以外に酒瓶に触れたものはおりません。酒に毒を入れたのは、この3人のうちの誰かに違いありません。」「お奉行さまにおかれましては、江戸の町中を騒がしたる此度の一軒。一刻も早く下手人を捕らえ、その裁きを下さない事には、町民どもの騒ぎはますます大きくなるばかり、それにこれ以上手間取っては、御公儀の覚えめでたくな無い事、拙者も重々承知しております。」「証拠でございますか?あいにく見つかっておりませんが、どこででも手に入る毒でございますれば、なにしろ5人もの命を奪ってしまったのでございます、やっこさん恐ろしくなって川へでも投げ捨てたに相違ございますまい。」「女房との折合いもよくなく、女からは別れ話でもされて、カーッとなってやったんでしょう。調べの方は拙者にお任せください。なぁに2、3日うちには白状させてご覧に入れます。」「今は一刻も早く下手人を挙げて、江戸の町を安んじることこそ第一でございます。お奉行様は大船に乗ったおつもりで、拙者にお任せくださいませ。それでは失礼をいたします。」こんな「時代劇」見た事あるような気がしませんか?遠山の金さんや大岡越前ならば、公明正大な名裁きをするに違いありませんが、上役の顔色ばかりを心配している、小心者の悪いお奉行様なら、こんな「推定有罪」がまかり通っていたかもしれません。無実の罪で裁かれる人はたまったもんじゃありませんが、きっと昔は多かったんでしょうね。警察・検察・裁判を通じて、真実は明らかにされるものだ。私たちはそう信じているからこそ、安心して日常を生きれる訳です。そう信じて生きていたのにある日突然無実の罪をきせられ、投獄される、あるいは命まで奪われる者もいるかもしれません。当人にとって世の中が暗黒に変わったと思えるかもしれません。公権力側に立つ人間は、真実を突き止め罰を下す。こんな正義感や使命感で仕事をしているのでしょうが、いつの間にか本人も気付かないうちに、治安を守り、世の中を鎮めるため、一刻も早く真犯人を捕らえ、罪を償わせる事が、真実を追究する事よりも前に出たりする事は無いのでしょうか?真実とはなんでしょう?「真実を突き止めなければ・・・」という焦り感は、時として危険なものになりかねません。警察・検察・裁判など公権力が陥りかねない誤謬性は、時代劇の中の町民たちが苦しめられていた不条理さと、現在も何も変わっていないのだなと、最近の再審のニュースを見るにつけ思います。
2010.04.07
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