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くーる31 @ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
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masashi25 @ コメント失礼します☆ ブログ覗かせてもらいましたm(__)m もし…
Tessera @ どうもありがとうございます。 カモメ7440さん 激励を頂き本当にありが…
カモメ7440 @ うまい! おそらく散文詩だと思います。 ショート…

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Jun 24, 2007
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カテゴリ: 柔らかい思念
「香港の住居はどこもとてもせまくて、ペットは鳥ぐらいしか飼えないのが現実です。毎日やることもない、退職した老人たちが自分の鳥を持ってこの公園に集まるようになって、いつのまにかここに鳥屋が増えたのです。写真でも撮りますか。」
何もレスポンスがないので彼女は話を続け、その鳥屋の店頭で売られているビニール袋に入れられたたくさんのバッタを指差す。
「これは何のためかわかりますか。」
観光客はこれには関心を示し、
「何か、特別なバッタですか。」
「これ、鳥の餌なんです。香港では、はさみで頭を切り落として鳥に食べさせているようです。」

 観光客が香港に着くや、花屋が5,6軒連なっている程度の小さな花屋街とそれに隣接しているこの公園に連れてくる。ここが本当に香港を代表している観光地なのかと訝しがりながらも、これも仕事だと割り切って会社の指示に従って彼女は観光ガイドをしている。
 今日の観光客も、怪しげな日本語を話す現地人のガイドでなくてよかったと言う。同時に濃い化粧のために彼女の年を推測しかねている。
 この細長い公園を押しつぶすような威圧感を与えながら、その両側に高層のアパートが立っている。観光客は香港はあまり住みやすい場所ではないということを十分に感じながらも、

と聞く。
「とんでもない。日本に戻りたいですよ。日本の方が良い点がたくさんありますよ。」
 どうでもいいことなのに、この客も彼女が以前日本のどこに住んでいたのか聞くだろうと彼女は察した。本当に日本に帰りたいと彼女は思った。

 ガイドの仕事からの収入が家計を助けているのは確かだったが、それよりも息の詰まるような狭いアパートから、一時的にしろ、脱出できることが何よりもありがたかった。夫と子供だけならまだしも、夫の両親が同居していた。
 彼女もペットとして鳥を飼っていた。篭の中の鳥をかわいそうに思うときもあるが、日常をやり過ごすためには彼女には自分よりも惨めなものが必要だった。
 彼女は家に戻るとすぐに鳥に餌をあげた。いつものようにバッタの胸のあたりを左手の指で押さえつけると、右手の指でその頭を引きちぎり、足がまだばたばた動いている無残なバッタの胴体を鳥の口のあたりに持っていった。







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Last updated  Jul 1, 2007 09:51:10 PM
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