ワブ!

2009.06.06
XML
テーマ: 鬱病(2271)
カテゴリ: うつうつ
『フロイト先生のウソ』(ロルフ・デーゲン,文春文庫)に心理療法家が選択する治療


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
心理療法家は症状に合った治療法を処方してくれる? (p69)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
現在,600種類近くの心理療法があるが,精神障害や症候群の種類のほうも数え切れ
ないほどたくさんある。これだけ治療法の種類があれば,当然,「適応症」と「禁忌」
──どんな治療法がどんな患者のどんな障害に最も適しているのか,あるいはどんな
症状にはどんな治療法を用いてはならないのか──が問題にされるはずである。

ところが,心理療法の専門家にそんなことを聞いても気を悪くされるだけである。

イツの心理療法研究者エックルト・ギーゼは嘆く。やってきた患者が自分ないし自分
の療法に適応しているかどうか,心理療法家が問題にすることはまずないものと思わ
れる。事実,心理療法家が患者の引き受けを断わることは滅多にない。アメリカの心
理学者アル・シーバートも,心理療法のこのディレッタンティズム(dilettantism -
しろうとが趣味や道楽として学問・芸術をたしなむこと)を批判する。「治療の方向性
は,治療者がどんな理論を信じているかによって決まる。患者の症状によって決めら
れるのではない。これが現在の心理療法の標準である」

心理療法は,「何々に効く」と明確にうたって効能を限定するようなことはしない。
心理療法は,悩める人すべてに救いをもたらす万能治療法なのである。「最上の治療
法は患者を他の医師に紹介することだ」とギーゼは言う。この点に関しては,クラウ
ス・グラーヴェも辛辣な意見を述べている。ドイツの大学では心身医学の教授はほと

ば,精神分析が心身症の治療に何の効果も上げられないことは明白だという。

「不安神経症の人が,家庭医に紹介されて精神分析の専門家に診てもらったとする。
専門家は精神分析によって治療をおこなうだろう。結果がどうであろうとおかまいな
しである。無駄な治療が数年にわたって続けられることも多い」と「シュピーゲル」
誌は書いている。たとえ「適切な」医師を紹介してもらったとしても,フロイト流の

イスでおこなわれたアンケートに,精神科医の98%,臨床心理学者の72%が精神分析的
手法で治療をおこなうと回答しているという。子ども時代の記憶を掘り起こすといっ
たフロイト流のやり方を患者が「正式の」治療法だと思っているために,おそらく彼
らとしても古色蒼然たる精神分析を用いざるを得ないのだろう。

「治療計画を立てるに当たって心理療法家がいかにプロらしからぬやり方をしている
かは,一連のアンケート調査から明らかである」とアメリカの心理学者テレンス・W・
キャンベルは言う。キャンベルによれば,論理的・体系的な方法で治療方法が決定さ
れることはまずないという。治療方針および治療方法はもっぱら直感的印象によって
選択されている。「90%以上の症例において,治療者は重要な研究結果を完全に無視
していた。彼らが注意を払うのは,自分が腑に落ちることだけだった」

彼らは一般的に心理学の通説に対してさえ目をつぶることが分かった,とキャンベル
は述べている。「アンケートに答えた心理療法家1100人のうち,治療のために専門書
を利用すると回答したのは10%にも満たなかった」

別の調査によれば,心理療法家は治療に問題が生じた場合,専門書を調べるよりも同
僚に相談することのほうが多いという。「つまり,心理療法家は厳密な思考よりもう
さわ話を重んじるということになる。危機的状況と言わざるを得ない」

自己批判に欠けるこうした非科学的な環境のなかで,理論上の定型観念は宗教上の教
義的なコチコチの信条へと凝り固まってしまう。たとえば,心理療法の大半の流派は,
現在の精神的苦痛の根を遠い過去までさかのぼって探そうとする。あらゆる病の根元
は患者の過去のなかにあるというこの信仰こそ,患者が現在抱えている問題や最新の
研究成果──精神障害は生化学的,神経学的,遺伝学的な要因によるものが多いこと
が,近年,数多くの研究によって証明されている──から恣意的に目をそらそうとす
る態度の元凶である。また,心理療法家は,自らの仮説を支える「事実」なるものが
誘導尋問によって患者からうまく引き出された話だということを無視している。彼ら
には,自分たちが及ぼしている「期待の圧力」──その結果,患者は治療者の思考傾
向に合致する徴候を「作り出す」──を想像する良識がない。古典的なフロイト派は
患者の言動から幼い頃に受けた性的な誘惑を「発見」し,他の流派は同じ言動から
「多重人格」を「発見」する,といった具合である。

だから,彼らの診断や予想が外れても何の不思議もない,と心理学者ロビン・M・ドー
ズは結論づけている。人の将来を予想させてみると,彼らの診断がいかに当てになら
ないかがよく分かる。たとえば,35年前に心理テストを受けた人200人を再調査する
という研究がアメリカでおこなわれたことがある。心理テストで専門家から暗い将来
を宣告されていた人の3/4は,最高の精神的健康状態を保っていた。「つまり,誰が
いつ,どんなふうに変化するか,予想する方法などないということである」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

フロイト先生のウソ (文春文庫)

著者:ロルフ・デーゲン/赤根洋子
出版社:文藝春秋
サイズ:文庫
ページ数:366,
発行年月:2003年01月

ISBN:9784167651305
本体価格:705円 (税込 740 円) 送料無料





ブログランキング・にほんブログ村へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009.06.06 21:51:12
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

カレンダー

お気に入りブログ

月のボイドタイム(2… New! 瑠璃月姫さん

【街角スケッチ】熱… New! Tabitotetsukitiさん

今日の昼食♪ジョイフ… New! すえドンさん

「Michael」… らび2さん

ティの別の顔を見たぞ たまろーるさん

コメント新着

LesterPeRty@ Обзорная заметка Эта информационная статья охватывает ши…
BruceSquip@ Скачать Xrumer Состоялось важное обновление XRumer 23.…
Fcarcrark@ ремонт квартиры в москве или dog-house.sbs &lt;a href= <small> <a href="https://do…
Enriqueowere@ Thank релевантность страницы &lt;a href= <sm…
大吉幸せかも@ Re:スタンドアロンだった VIA製マザーボード+Windows 98 SEがネットワークに接続(01/29) 14年目のこの時期を迎えました ただ漫…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: