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鬼の哭く里 [ 中山七里 ] さすが七里。 たくみな筆さばきでしたな。 あの津山 36人殺しの隣あたりの姫野村というところでも6人殺しというのがかつてあって被疑者は、鬼哭山に逃げ込んだのであるが、その後不定期に当該鬼哭山の鬼が哭く時人が死ぬのだという。 この姫野村は、今でも村八分を平気でする土地柄。 そこに突如トレーダーが移住してくるのだが、彼が様々な 村八分を受けながら、鬼哭山の謎を解決してしまうのだった。 本作を丁寧に読み解いて行くと、移住者が6人殺しの後山に消えた犯人と何らかの関係があるだろうことは、読み解けるしその移住者の友人がやってきて精密なジオラマを作りさらに台風が近づいてくるなどの話が出れば、自然鬼哭きのトリックが見えてくる。 移住者は、前述鬼哭山における不定期な死亡事件につき図書館で様々な資料を取り寄せ分析をする。 過酷な村人からの村八分攻撃を受けながら、それらの死亡日が台風上陸の日だったことに気づく。 実は、この辺までは、七里のフェアな私達読み手を安心させる見事な事件の組み立てなのであるが、さて 読み師である私は、最後の一捻りは、一体何だということに視点を移す。 一番最後の死亡事故が他とは、少し違うということここに大きな推理のヒントがある。 私には、全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 さあ皆さんは、いかに。(9/11記)
2025.11.26
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ハマトンの知的生活のすすめ【電子書籍】[ P.G.ハマトン ] 本署をもとに私が三大知的巨人と言っている渡部昇一先生は、かの知的生活の方法を書き下ろしたのだそうだ。 では、本書には、どんなことが書かれているのだろうか。 まず時間の使い方について 知的仕事をする際には、時間はできるだけ大まかに区切ったほうがよい。 15分ごとに次々と仕事を変えていくのではなく、一つの仕事に2時間とか4時間とかといったまとまった時間をかけるのが賢明なやり方だ。 15分ごとに次から次へとやることを変えると、思考が中断されて能率が上がらなくなってしまう。 知的仕事をうまくやるためには、自分の能力を十分に発揮できるだけの時間、その仕事にかかりっきりになる必要があるのだ。として15分のこま切れではなくて2時間くらいの時間を充てることとしているのだが、最近私は、この本を読む前から、まず1時間に挑戦しそして多くの啓蒙本で提唱されていた1時間半に挑戦し今は、2時間に図らずも挑戦しておりなんと本署との偶然の一致に驚いたということなのだ。 知的生活とは図らずも読書のことでありハマトンは、 実行の計画を立てることが最も求められるのは読書だ。 本を読むというのは一見簡単なことのように見えるので、古今東西のありとあらゆる文学書を読破してやろうなどといった途方もない計画を立ててしまうことがある。 しかし、いくら本を集めても、実際に読めるのはそのごく一部だけであり、大部分は読まれずに埃をかぶったままになるというのが普通である。とするのだが、なるほどそのとおり私自身最近読書を計画的にしたことがないし計画的な読書というのは、ハマトンが上記に記している通りのことであってまずは、無理せず2時間集中しましょうということなんだろうな。(9/11記)
2025.11.25
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面積あたりGDP世界1位のニッポン 地震と火山が作る日本列島の実力【電子書籍】[ 横瀬久芳 ] どうしても新書は、ネーミングの法則に左右される。 GDP関係の話かと思えば、さにあらず。 実は、サブタイトルにある地震や火山それに大雨のいわば、自然災害に関する気象等の話なのだった。 たとえば、 このように、被災地震に発展しがちなマグニチュード五・〇以上の地震の危険性は、四月下旬の段階でかなり下がっている、つまり収束に至りつつあるとみなせた。 そこで、五月一日付熊本日日新聞の小学生向け解説記事(くまTOMO)で、以下のような見解を載せた。 〈今後、熊本については「まだ大きな地震は来る」という見方があります。 私はたまったひずみが解放されているので、この先一〇年までは、マグニチュード六 クラスの地震が来る可能性は低いとみています〉 地震発生から二週間しか経っていない時点で、ある意味、収束宣言を発表したものだから、くまTOMO担当記者が、「こんなこと書いても大丈夫ですか?」と気遣ってくれた。 「合理的に考えると、結論はこうなるから構いませんよ」と返事をして、掲載の運びとなった。というように過日の熊本地震に関して手早い収束宣言をしているが、それだけ地震に関しては、予知能力が高まっているということ。 上記文章では、たまったひずみが解放されているの一文が実に小気味よく読み手を納得させるに足る名文になっている。 本書には、温泉の効能やら、実は、日本の農産物が世界的に見ても上位にあるのだなど今までの日本人の常識を根底から覆させる事実がてんこ盛りに書かれている。 このところ多い水害に関しても 突然、天から度を越した淡水が供給されると、気象庁は「かつて経験したことがない豪雨」といった表現とともに警報を発する。 しかし逆に考えると、例外的に局所を襲う集中豪雨を除けば、日本は淡水の恵みを常に享受できる国でもあるのだ。 どのくらい日本が淡水に恵まれているかというと、世界の年間平均降水量八八〇ミリに対して、日本のそれは倍近くの一七一八ミリに達する。 日本の年間平均降水量を超える主要国は、同じ温帯に属するニュージーランドを除くと、その他は、すべて熱帯雨林気候に属する東南アジアのインドネシア、シンガポール、フィリピンであり、そこでは年間平均降水量が二千数百ミリに達する。 熱帯雨林気候の代名詞的存在であるアマゾン川流域のジャングルを持つブラジルでさえ、日本の降水量と大差はないのだ。と淡水王国日本に関して気持ち良い論が述べられる。 こういう小気味よい論を中心にして災害に対していかなければ、淡水憎しの形になってしまうのではないのか。 この淡水の多さに関しては、災害防止の観点から科学技術の力を結集して対応すべきだと私は、思う。(9/11記)
2025.11.24
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韓国暴政史 「文在寅」現象を生み出す社会と民族【電子書籍】[ 宇山卓栄 ] その文在寅から、もう 2人後の大統領になったかの国の話 。 一体全体かの国というのをどういう風に考えればいいのか。 例えば、我々と見た目が変わらないのだけれども 2019年の3月1日の式典でも、文在寅は「昨年、金正恩委員長と板門店で初めて会い、8000万人の民族の心が一つになり、韓半島に平和の時代が開かれたことを世界に向けて示すことができた」と演説しました。 しかし、現在の韓国エリアと北朝鮮エリアには、全く異なる民族が元々、住んでいました。 朝鮮半島の北部に住んでいたのが満州人、南部に住んでいたのが韓人です。 ソウルの南側を東西に流れる大河、漢江があります。 大まかに言うと漢江を境にして、北側が満州人のエリア、南側が韓人のエリアでした。 韓人は朝鮮半島の南部から中部にいた農耕民族で、半島の中心的な原住民です。 韓人というのは学術的な定義がなく、使用言語などの詳細については不明ですが、古代朝鮮の半島南部の三韓の地にいた人々という括りとして捉えることができます。というのは、かの国の民族構成の解でありその上本書によれば、というよりももうすでに科学的に明らかになっていることなんだけれども見た目が似ている我々とかの国の人々についてはDNAが非常に異なっている ということも明らかになっている。 いずれにしろ狭い半島に大きく見て2つ 民族があるというのだから、なるほど北と南に分かれても特に問題のない 話だったんだなと思ってしまう。 その上かの国の人々は、 韓国は口では謝罪しますが、実際の行動は違います。 金大中は二度も謝罪したにもかかわらず、彼自身が率先して、ベトナム政府に圧力を掛けて、碑文の削除を要求しました。 一連の隠蔽行為の責任者は金大中です。というように行動と本音がシンクロしないという事実にアンバランスな国民性があるということこれを決して忘れては、ならない。(9/10記)
2025.11.23
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夫婦って何? 「おふたり様」の老後【電子書籍】[ 三田誠広 ] すでに本書を読んでいた(今日、何読んだ? 220728)。 読んだのは、3年前でしたな。 かなり微に入り細に入り深く退職後の世界を書いていた。 しかしここに来てもう一度この本を読もうと思ったわけは、私も妻も齢70になろうとしている今だからだ。 3年前は、かなりかっこいいことを書いていた。 だが今は、かなり疲れている。 病で病院通いもした。 町内でのトラブルも経験した。 そのストレスは、際限ない。 さて私は、定年退職にあたり ダグラス・マッカーサーが引退の演説で語ったとされる「老兵は死なず、ただ去るのみ」という言葉は、熟年世代なら誰でも知っている名言である。 寂しさをこらえながら、ひっそりと老後を送ることを、美徳と考えている人も多いのだろうが、自宅に閉じこもりきりになっていたのでは、すぐに病気になってしまうし、家族にもストレスを与える。 病気になったり、寝たきりで介護を受けたりすると、結局は社会に迷惑をかけることになる。を引用して職場を去ったのだったが、そのあとも懲りずに仕事を続けているので はっきり言って、ジャージを着た老人の姿は、醜いものだ。 定年後の男性にとって、妻は、何よりも大切な存在であるはずだ。 その大切な人の前に、普段着の無防備な姿をさらすのは、いかがなものか。 妻の前でこそ、最高のオシャレをこころがけるべきではないだろうか。 家の中でスーツを着ろということではない。 スーツはサラリーマンのユニフォームにすぎない。 オシャレとは、ラフなカジュアルウェアで個性的な魅力を発揮することだ。 おじんくさいゴルフウェアも、一種のユニフォームだろう。 ジャージは最悪である。というようなことはない。 たしかに著者の考えに私は、賛成だ。 ジャージ姿がみっともないということに気づかなければ、いつまでたってもジャージを着っぱなしになるだろうな。 仮に今の仕事を辞めたとしても私は、毎日スーツ姿で外に出て仕事をしているアピールをしたい。 あと上記の家の中でのおしゃれであるが、私は、着物を着ている。 本書をもう一度読んで着物を着続ける気概を持ち続けたい。 本書の初出は、2007年つまり今から18年前の平成19年のこと。 著者は、私より8歳年上の方。 だから著者59歳の時の本なんだな。(9/9記)
2025.11.22
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道元「典座教訓」 禅の食事と心 ビギナーズ 日本の思想【電子書籍】[ 道元 ] 道元禅というより道元禅師のポリシーに触れると、いい加減でよろしいなどということにならない。 息が詰まる。 今回は、典座教訓だ。 すなわち道元禅師が宋の国にわたった際老僧が一生懸命椎茸干しをしているのを見て考えが変わったことの教訓だ。 だが、与えられた仕事を、無心になって色々細やかに気配りをし、打ち込んでいけば、先徳と肩を並べられる。 いや、それ以上のことは、必ずなし得ることができよう。 それはただ一つ。道心があれば、必ず通じる。 そのことが体解できないということは、妄想妄念が、野原を思いのまんま走る馬のように、樹々を飛び交う野猿と同じで、煩悩、妄想のおもむくまま、主観だけで、その時々の、きまぐれな思いつきだからである。 猿や馬でも、一歩引き下がり我が身を省みれば、宇宙のはかない現象などに、心は動かされることなどない。 わずか、三センチ足らずの茎や葉であっても、一丈六尺の御仏と見なし、一丈六尺の御仏を真心込めて調理するのである。 そのことが人々の心を潤わせ、ほっとさせるのである。 典座は、その料理にあたって何事もおろそかにしない。 上記文章の馬と猿のたとえは、正に自分事である。 煩悩、妄想のおもむくまま主観だけその時々の気まぐれな思い付きとは、まさに自分のことだった。 道元禅師は、これを忘れなさいとおっしゃっている。 その道元禅師の自己に対する厳しさは、なくなるにあたって残した遺偈にも明らかだ。遺偈 五十四年、第一天を照らす 箇の跳を打して、大千を触破す 咦 渾身覓る無く、活きな がら黄泉におつ 訳「私の人生はひたすら第一天、すなわち仏法を求め照らし続けてきた。 この命、この場から跳び上がって、この迷いの三千大世界をぶち破ろう。 ああ。 全身求めるものは何もない。 この人生で見続けてきた仏法を見続けてあの世に行こう」 すさまじい生きざまである。 とてもまねできない。(9/9記)
2025.11.21
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孤老たちの沈黙【電子書籍】[ 福澤徹三 ] うーむこういう小説も世の中には、あるよな。 どちらかというと、不快。 ミステリーではない。 しかしかような予想もつかない出来事というのは、実社会でもありうることだ。 否むしろ実社会のほうが意外性が高いんじゃないか? 例えば、認知症の方から、5年前お前からろくでもないことを言われた今すぐ謝れなんてことが本当に急に出てきたりする。 私には、何の覚えもないわけだ。 それは、本当のホラーであり私のストレスは、爆上がりだ。 さて本作であるが、その認知症の現職タクシードライバーが恐喝者をひき殺す話、冷凍庫に亡くなった年金受給者の死体を入れっぱなしにしている話、薬の売人の脅しから、逃れる話、などなど作者は、随分練りに練って作品化したのだろうが、どうも私には、しっくりこない話ばかりだった。 かようにkindle unlimitedのできふできは、実に激しいものである。 我慢して完読了しなければならない時もあるしあっという間に読了してしまうこともある。 困るのは、独り善がり本。 それより困るのは、本作のように私と全くしっくりしない作品。 そういうのがあるから、読書なんだろうが、あまりより道は、したくない。(9/9記)
2025.11.20
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ガーディアン【電子書籍】[ 薬丸岳 ] 薬丸モノのkindleunlimitedは、もう探しても出てこない。 しばらくお休みとなろう。 だから、本作がいったんお休み前の一作ということになる。 しかし本作は、中学校の闇の自警団の話であってミステリーではない。 薬丸モノによく登場する夏目信人刑事が出てくるが、事情聴取くらいのもの。 この自警団は、中学校内におけるいじめ等について折り鶴とlineを巧みに使って解決してゆく。 薬丸自身これら中学校の内情について随分細かく取材したことがくみ取れる。 結局問題の学年の不登校生徒も卒業式には、出席し卒業生代表の女子生徒は、自分の言葉で意見を答辞にして述べる。 どこにもミステリーはない。 しかしそれにしても最終盤秋葉教諭に入ったガーディアンからのメールは、いったい何だったのだろうか。 混乱してしまうわけだ。 そもそも秋葉は、こんなガーディアンごときに学校の平穏は、ゆだねられない吾々教員が学校を正常化してなんぼののものだと声高らかに作中述べているわけだから、もしあの最終盤のメールに何らかのわけがあるのだとすると、それは、秋葉彼自身がガーディアンなのだという結論に達してしまうわけだ。 薬丸にしてみれば、本作は、ちょっとした失敗作だったろう。 八祖の奮起を望む。(9/8記)
2025.11.19
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道元「禅」の言葉【電子書籍】[ 境野勝悟 ] 著者は、仏道をならふということについて 仏教とは、自分を習うこと。 自分の生命の中に喜びを発見すること。としか書いていない。 これでは、私が今まで探してきた「私は、何モノ?」の答えになっていない。 だから、この本を読んだだけでは私は、終活である「私は、何モノ?」の解を得ることはできなかったのである。 著者は、のちに本件に関し 「自己を習え」と言っても結局は、人間の身心すべては、宇宙の掛け替えのない優秀な作品であったことをよく学習ししっかり手を取り合って養生せよということなのだと述べ さらに自分の我意識を忘れると、自分の中に生きている宇宙の生命が発見できる。 宇宙の力からみれば、人の考えなんて知れたものじゃないか。そして何となく自己を忘れることについてわかったようなことになるが、これでは、「私は、何モノ?」の解としては、失格であるのだが、それ以上に本書で述べられていることは、 自分の内側の生命の在り方を静かに見つめていると、自分の生命も宇宙の生命であったことがわかってくる。 これを「天地同根、万物一体」という。 生命の根っこは、みんな同じ誰もが一体となって宇宙の生命を生きている…という意味である。という宇宙の生命と一体である私つまり自己を忘れたことによって出てくる真の私の姿を知ることになりそこから、派生するもろもろの真理に基づいて生きることが重要であることを知らされるのである。(9/7記)
2025.11.18
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怪盗グリフィン、絶体絶命【電子書籍】[ 法月綸太郎 ] 本当に法月の本は、読みづらい。 法月と同時代のミステリー作家の特に京大絡みの作家は、自分に埋没つまり自意識の強い独り善がりを競争するような内容が多いが、それじゃあミステリー本体の内容がどうかといえば、さほどでもない。 法月の作品に綸太郎親子が出てこないと、もうそれだけで作品の価値がないという評価を今回の怪盗グリフィンを読んで思った。 どういう理由であとがきに訳者注釈のいたずらを入れたのかわからないけれどもそのあとがきにあるアナグラムについては、残念ながら、全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 例えば、 オストアンデル➡️押すと、餡出る ガルバンゾー➡頑張るぞう オドラデク➡驚くでなど。 そして本作については、 どうも子供向けの作品みたいなことを語っている評論もあるみたいなのだけれども本作は、決して子供向きではない。 謎、ミステリー、クイズ 、なぞなぞ、パズルは、同じような意味合いである。 ミステリーと言うからには、 そういう知的物語を読み手は、期待するわけだが、果たして本作にその要素があったろうか。 だから、 立花隆あたりが小説は、暇つぶしだというのだ。 そういう作品に出会わぬよう私は、 極めて吟味して作品を選んでいるが、法月世代の作品には、独り善がり本が多くて苦慮してしまう。 (9/8記)
2025.11.17
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テロリストの家【電子書籍】[ 中山七里 ] さすが七里だ。 物語性の高さ筆力の確かさに私は、まず感心してしまう。 薬丸と七里を交互に読んでいると、 この2人を七里を七祖薬丸を八祖と呼びたくなる。 これからもこの2人の超高品質な作品を読み続けることになるだろうから、 七祖八祖は、決まりだ。 さて本作であるが、 表題の通りの作品だ。 ただその家は、 警視庁公安部に勤務する警察官の家だった。 大学院卒の息子がイスラム国の私兵に応募したらしく公安部に逮捕されてしまう。 七里の取材源は、 どうやら公安部と私は、踏んだ。 なぜなら、 七里のこの公安モノには、公安部員でなければ、わからない技術が含まれている反面逮捕しても送検すれば、終わり的な刑事法の不勉強が垣間見えるからだ。 ともかく物語性 は、 高品質であり叙トリにいたらぬフェアさも認められ幣原が公安部において第一線から外される伏線も見事に回収される。 その上当該家庭における人間模様の機微も自分の身に置き換えると、 妙な既視感に襲われる。 最終盤幣原の公安部員としての矜持が示されるが、 それは、 以前のそれと大きく変質していた。 その辺が本作の大きなツボ。 そこを理解せずして本作を理解することは、 できない 。 ところで本件の真犯人であるが、 これは、 読み師として全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 そして七里の、テ、である最終一ひねりは、 私は、 迂闊にもはまってしまった。 あ! その、テ、が残っていたと。(9/6記)
2025.11.16
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ハードラック【電子書籍】[ 薬丸岳 ] またまたやられてしまった。 薬丸岳に。 薬丸モノは、一度読み始めると、ストップがかからない。 本当に魅力的な作家だと私は、思う。 冒頭やられてしまったと書いたのは、つまり終盤鳴海は、誰だのなぞ解きになってしまったところ確かに本作の解に私は、薄々感じていたもののもう一人の鈴木に目を向けてしまっていたものな。 薬丸モノは、いわゆる叙トリとぎりぎりの勝負をしているな。 重要なことは、表面に出さない。 しかしどうでもいいことは、次から次へと出して攪乱させる。 それが結構なスピードで表現されるから、見落としもあるだろうしベクトルを間違うと、読み手は、強い思い込みにより薬丸マジックの魔手に掛かってしまう。 それよりなにより薬丸のすごさは、読み手にノンストップで読ませる文章力の巧みさである。 このことを私は、筆力と表現している。 筆力は、小説家が持つべき第一の素養である。 さて本作は、ミステリーと呼べるものなのだろうか。 確かに事件は、発生しておりwho done itの要素もある。 動機は、深く機会もあるが、殺しの方法が略されているな。 警察組織に関しては、うっすら表現で逃げ刑事法も議論に及ばず物語性あり伏線は、叙トリぎりぎりで見事に回収したな。 やはりこれだけの能力のある作家の書いたものでないと、楽しめない。(9/5記)
2025.11.15
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警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 城崎ー嵐山連続殺人事件【電子書籍】[ 鳴神響一 ] しかしそれにしても作者は、 いったい本作で何を言いたかったのだろう。 警察官にとってキャリアとノンキャリアの差など本当に気にすることなのかどうか。 作中朝倉真冬に捜査権はないなどと書いていながら、勝手気ままに各県警の捜査に口出しするばかりか取調べ室においては、取調べ もするというわけのわからん物語だ。 しかも警察小説ではあるが、ミステリーはない。 作者は、どうやら本シリーズに疲れが出たらしく最終盤明石審議官に朝倉真冬の父親の殉職 を語らせ真冬に人事異動を発令してチョン。 内容は、何しろ真冬が調査官だけに警察官の不祥事の暴露が主になるのは、わかるけれどもその上に政治家の汚職やら 殺人教唆も重ねていく。 その物語の面白みのなさを読み師である私は、 何と評価したら良いのか。 この作家の作風がこんなにひどいものであったろうか。 過去に読んだ 網走で、男鹿で、 米沢で、能登で、伊根で…の話の中に本作のような粗い作品はなかった。 確かに本シリーズを止めるにあたっては、 懸案であった真冬の父親の殉職の案件と真冬の人事異動も必要になるわけだが、 もう少しきめの細かい書き取りがあってしかるべきではなかったか。 これじゃあ読み手があまりにもかわいそうだ。(9/4記)
2025.11.14
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『正法眼蔵』全巻解読【電子書籍】[ 木村清孝 ] 私が掲げた終活の命題は、「私は、何モノ?」だった。 ひたすらその解を求めて努力し道元禅に行きつきうきうきしていたら、足元をすくわれた。 すなわちその解を得たつもりになってしまい少し道草しようなんて考え無謀にも無門関に挑戦してあえなく撃沈してしまった。 そのうえ病が来てその治療をしている間に命題そのものを忘れてしまっていた。 だが、道元禅に何かがあったはずだということを思い出し再び正法眼蔵に挑戦したのだが、今度は全く歯が立たない。 だから様々な入門本のようなわかりやすい本を読んで何とか立て直そうと考えた。 結果命題の解は、何もなしに落ち着いた。 すなわち何モノは、道元禅においては、自己を習うこと、自己を習うとは、自己を忘れることすなわちここにおいて何モノは、きれいすっかり忘れてしまうべきモノという解がもたらされたのである。 このことと常に道元禅師が主張していることつまり坐禅は、道元禅の肝だと私は、思う。 今回は、その坐禅についてブログアップしてみる。 まず ついで道元は、自分が発心して出家の道を歩み始めてから、中国に渡り、師の如浄のもとで修行を完成して帰国したことを述べ、禅宗の歴史を概説する。 道元によれば、禅宗史は「純一の仏法」を伝えてきた歴史であり、その仏法のエッセンスは、ただ坐禅して「身心脱落」することにある。 仏教は「ただ坐る」純粋な坐禅にきわまり、その功徳は計り知れない、というのが、道元の確信であったのである。と道元禅師は、仏教の髄は、坐禅であるとする。 そして①なぜ坐禅だけを勧めるのか。 ②どうして坐禅のみが仏法の「正門」なのか。③読経や念仏はさとりの因縁となるのではないか。 他方、むなしく坐禅しても、それがさとりを得る手立てとなるのか。④すでに日本には、高度な大乗仏教の教えである天台宗や華厳宗が伝えられており、とくに真言宗は毘盧遮那仏(Mahā-vairocana)が金剛薩(Vajrasattva)に親しく伝えた教えであり、「即心是仏」「是心作仏」と説いて仏法の究極といえるのに、なぜひたすら坐禅を勧めるのか。⑤三学や六波羅蜜といった菩薩の修行道に照らせば、坐禅はその一つにすぎないのに、どうしてその中に仏の正法が凝縮されているといえるのか。⑥仏教では、どうして行(=あるく)・住(=たちどまる)・坐(=すわる)・臥(=よこたわる)の四つの姿勢の中で、坐だけに引きよせて禅定を勧め、さとれるというのか。などという問いに対し例えば、 第一は、③の問いに対する応答の中で、「深く名利に惑わされた」仏教者を厳しく非難するとともに、具体的に、当時広く行われていたと推測される念仏の教えと、あれこれと思量してさとりを得ようとする教家の学問偏重を取り上げて批判していることである。 すなわち道元は、前者に対しては、「ただ舌を動かし、声を上げる」ことを仏事功徳と考えているのであって、まことにはかないことであり、念仏を千万遍しきりに唱えてさとりに至ろうとするのは、まったく間違っている、と論ずる。 また後者については、それは医者が医学書を読んで薬の調合をしないようなもので、何のためにもならない、という。 道元が、本質を忘れた仏教を鋭く糾弾していることが知られよう。と明解に答える。 そして さて、本巻は、「参禅は坐禅なり」として、禅の修行が坐禅に収まることを述べた上で、その標題の通り、坐禅の実習の仕方と、その際に注意すべき諸点を具体的に明らかにしていく。 「坐禅は静処よろし」「諸縁を放捨し、万事を休息すべし」「飲食を節量すべし」「あるいは半跏趺坐し、あるいは結跏趺坐す」「目は開すべし」など、きわめて細かく丁寧な指示がなされている。 基本的に前記の『普勧坐禅儀』を受け継いでいることはいうまでもないが、比較的平易な和文である。 坐禅を実習してみようという読者には、大いに参考になろう。と坐禅の仕方を明確に述べ ついで道元は、さらに、南嶽の説示にもとづき、坐禅がそのままそこに仏が現成する「坐仏」であることを明らかにする。 その中で興味深いことは、南嶽が「殺仏」の語を用い、「汝若し坐仏せば、即ち是れ殺仏なり」と述べていること、および、道元がその「殺」という言葉について、「決して凡夫が使う意味と同一視してはならない」と注意するとともに、「坐仏が殺仏であるということには、どういう段階があるのかを究明しなければならない」と述べていることである。として坐ることの大切さすなわち只管打坐について述べているのである。 ただひたすら坐ること。 これに尽きるのである。(9/4記)
2025.11.13
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ビデオレター【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] こういう話を何というのっかな。 ホラーというようなものでもないしエスエフというものでもない。 当然ミステリーでもない。 要するに死んだ彼がビデオテープの中で生き返っている話だ。 彼は、博多で少年らに襲われ命を落とした。 その前に彼女の誕生日に合わせてビデオレターを発送したらしい。 そのビデオレターの梱包を見て動揺した彼女は、思わず嗚咽してしまうのだが…。 その様子を見ていた502の住人がこれが実に悪い奴で。 というのは、定石でしょうな。 何らびっくりするようなことでもなくお約束で彼女を襲ってくれたという次第なのですが、彼女は、決死の思いで包丁を手にしこの男を殺してしまう。 その後彼女は、行方不明になった。 ただビデオに映った彼と彼女が残されたのだが、二人はただただ寝ているだけのシーンだという。 こういう不可思議な話を書くこの我孫子武丸という作家は、時に面白い作品も書くけれど、どうしても安定しないんだな。 それでも作家として飯を食えるんだから、それなりの作家といっていいのだろうけれど、この世代のミステリー作家にありがちな読みづらさがどうも払拭されない。 本作は、2007年度作品らしい。 だからビデオテープなんだよな。 今の方々は、このビデオテープなんてものは、きっとちんぷんかんぷんなんでしょうねえ。 まあ難しい話は、抜きにして愛し合う二人は、ビデオテープの中で永遠の生命を得たのだということで納得しちまいましょう。(9/2記)
2025.11.12
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法月綸太郎の消息【電子書籍】[ 法月綸太郎 ] まず自分がいくら古典的ミステリーを読んだかを一つは、ドイルの心霊話一つは、ポワロのぐずぐず話でほぼ自己チュー的に文章にして独り善がりに書くことの是非を今のミステリー業界全体に問いたい。 全体というのは、書き手さん読み手さんそして出版業界の方々という全体である。 私は、最近の作家さんが学園から離れないことに不快感を感じていたが、なあにその原点は、この法月綸太郎のような書きっぷりにあったのだ。 どうしても作家は、自分の得意分野に埋没したがる。 書いている本人は、楽しくて楽しくてしょうがないだろう。 それが本作のドイルの問題とポワロの問題だ。 だが、翻ってそれが今風の学園モノだったらどうなんだろう。 そういうのを好んで読んでいる読み手の側からは、本作など読んだとたんに嫌悪感を持ちおそらく1ページも進まずゴミ箱に捨て去ることだろう。 それじゃあ本作にあらわされたミステリーは、いかがなものであったか。 これまたいやあすごいなんて思えるものでない。 二人の自殺者の遺書が交換されていたのは、なぜか問題。 結局これまた最近の傾向としてトリックを成功させるための共犯者が多数出てきて読み手がただただ混乱してしまって結局の話は、いったい何だったのだろうか問題も発生する。 二つ目の作品のトリックは、殺さぬ先から殺した与太話をして捜査を混乱させるものだったが、この作家さんの筆力に限界を感じますな。 とにかく読みづらかった。(9/2記)
2025.11.11
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ディプロトドンティア・マクロプス【電子書籍】[ 我孫子武丸 ] ミステリー作家の非ミステリー作品ですな。 そもそも私立探偵モノとしてお目見えするわけだから、何らかのミステリーが存在するのだろうと、ワクワクしながら、読んでいくと、何のことはないDNA操作によるジャイアント話に発展しておしまいだ。 おいおい我孫子さん。 私たち読み手は、そんな話は期待していないよ。 などと言いつつ実は、ビッグなカンガルーと人間のド派手アクションにワクワクドキドキして読んでいた私なのだった。 私立探偵の矜持とでも言うのだろうか。 依頼された事案には、とことん誠心誠意を持って臨む。 だから動物園から消えた1頭のカンガルーの捜索 や行方不明になった大学教授の捜索に真摯に取り組むのだが その結果痛い目にあってしまう。 普通の人なら、大怪我してしまうような暴力を振るわれても小説 だから、不死身というわけだ。 そういう小説を読む機会が増えてきた。 ヒーローは、不死身であるべきや否や。 いくらヒーローとはいえ死ぬほどの暴力を受けたら、死ぬべきだろう。 痛み止めは、獣医師から処方してもらい気がついたら、DNA 操作の第一人者 からDNA 操作をしてもらって命拾い。 その結果この私立探偵は、ジャイアント化しちゃうんだぞ。 荒唐無稽なのか否か。 そんなこと専門的知識がないからわからない。 でも読み物としては、実に面白いものだった。 暇つぶしの読書だけは、避けたいからな。(8/31記)
2025.11.10
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不死身のひと 脳梗塞、がん、心臓病から15回生還した男【電子書籍】[ 村串栄一 ] 著者は、私より8歳年上の方。 2016年3月20日脳梗塞を発症した時から、本書の話は、始まる。 何よりこの方の家系 は、 姉は肺がん経験者。 もう一人のおじも肺がんになった。 手術を受けていったんは元気になったものの、がんが再発したのか亡くなった。 日本人の高齢者病の見本のような家系である。 筆者はがん、脳梗塞、心臓、肺炎、腎臓のほか痛風、貧血、甲状腺異状、高血圧などを患い、病気のオンパレードである。というもの。 そもそも今私は、リンパ腫の治療にあたっていてこの間7月の末に ようやく6クールまでの化学療法が終わったところだ。 これからPET-CTの検査を受けて医師の診断を仰ぐことになる予定だ。 さてこの8歳年上の方2016年の脳梗塞を発症した時は、今から9年前であるから、68 の時の話になる。 ちょうど私が 69であるから、 まさに同じような境遇ではあるけれども実は、 この方は、上記の通り病気のオンパレードの方。 本書の脳梗塞の発症の理由は、心臓にあったらしい。 それが脳を直撃したということが真相のようだ。 倒れたところが北里病院に近かったということでしかも場所がコンビニ。 すぐに救急車を呼んでもらい血液サラサラの薬などによって脳の後遺症も残らなかった という。 著者は、 2019年6月26日にお亡くなりになったということであり本書 における脳梗塞の発症から3年後ということになるのだけれどもさすがにこれだけの病名をもらって亡くなったのが令和元年であるから、71で お亡くなりになったんだな。 私の父親と同じ享年である。 本書を読み始めたら、涙が流れてきてね。 確かに私も同じような境遇にはあるけれども今のところこの著者のような病気のオンパレード ではない分 この方が一生懸命治療に当たってもらった北里大学医学部のように私の病院である山形大学医学部附属病院 は、 とても素晴らしいのだなと 思ったのだった。 この本については、 私の別のブログである夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 の 闘病記に入れようかなと思ったのだけれども中身が重すぎてこちらのブログの健康に入れたのだった。(8/30記)
2025.11.09
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インテリジェンス読書術 年3000冊読破する私の方法【電子書籍】[ 中島孝志 ] いやあ久しぶりの読書論(術)ですな。 ただし本書は、2008年初出。 つまり今から17年前の本です。 そのころ私は、何をしていましたかね。 酒田に転勤していたころで初孫が産まれたころですな。 何が一番変わったかというと、電子書籍の普及でしょう。 本書も私は、kindleunlimitedで読了したわけです。 さて筆者は、 わたしは本=発想の道具だと考えています。 本の内容を覚えようなんてさらさら考えていません。 それよりも、この本を読んでいったいどんなアイデアを 閃くか、そのアイデアをどうビジネス化するか、事業化するか、本業のコンサルティング業務に活かすか──ということばかり考えているのです。ということのようですな。 読書に関するスタンスは、それでよろしいと私は、思う。 たくさんのことを覚えようとか本を読んで成功しようなどということを考えて読書に絶望するよりも筆者のような基本的な考え方で読書に接するほうがなによりすっきりする。 そして わたしの速読法は一ページでも先へ先へと急がなければならない読書ではありません。 こうした一滴の水、キラーフレーズ、キラーワードと出会うために読んでいるといっても過言ではありません。 ですから、本を読むときは、このキラーワード、キラーフレーズの発見にとことんこだわります。なのだそうです。 つまり本を道具化しそして徹底的に使いこなすということである。 そのために筆者は、年3000冊を読破している。 つまらない本は切り捨てろ。 1ページ目からは、読むな。 付箋をつけて読み返しパソコンに入力しろ。 というのが筆者の主張であった。(8/29記)
2025.11.08
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逆転捜査【電子書籍】[ 姉小路祐 ] 姉を殺された現職検事の復讐譚。 そもそも事件関係者が捜査に入ることの是非については、奇しくも本作のような流れになっていく故禁じられるわけだが、検察官は、独任制官庁だから、何でもありという論理は、この際許されないものではないと考えるべきでしょうな。 少なくとも刑事事件に携わる捜査関係者は、弁護士も含めて慎重であるべきところ弁護士が率先して証拠捏造に与していたら、それは、刑事司法の敗北である。 そもそも捜査とは、事案の真相を明らかにすることだから、司法に携わる者がずるをしてはいけない。 そういうガチのお約束があってのミステリー小説なのだから、本作のような叙トリの権化みたいな小説があってよいはずがないのだけれどもこと本作のような再審請求事案となると、なるほど一作くらい本作のような作品もあっていいのかもしれない。 しかしそれにしても姉殺され検事もまた最後殺人被害の憂き目に遭うのだが、そうなると、この話のどこに救いを見出すことができるのだろうか。 私は、この元検事(再審が認められ無罪が認められたことから、公証人に転じた)には最後の最後まで主導権を握ってもらい真実を糾弾してほしかった。 姉小路作品は、読みずらい側面もあるけれど、本作は、練りに練られた厚みのあるいい作品だった。 こういう力のある作家の作品をこれからもどんどん読みたいものだ。(8/29記)
2025.11.07
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刑事のまなざし【電子書籍】[ 薬丸岳 ] ことは、10年以上前の少女ハンマー打撃事件。 一人死亡一人植物人間状態で今も入院中。 この植物人間の父親が夏目正人刑事だ。 法務技官から、犯人を捕まえるべく30歳を過ぎてから、警察官に転職した。 この薬丸にしてもあるいは、中山七里にしても最後の一捻り二捻りがあって実に読みごたえがある。 薬丸の場合は、理詰めというよりは、人間関係の意外性で読み手をうならせる手法をとっている。 本作においては、母親が真に殺したかったのは、いったいどっちだったのかという面白い作品もあった。 少年犯罪者がやってきた少年院において当時法務技官だった夏目は、精いっぱいの指導をするのだった。 その少年が社会に出ると、世の中の風当たりが強くて職が長続きしない。 しかしこのものとて真犯人ではなかったのだ! 姉の身代わりだった。 確かに殺してもよろしい命などどこにもない。 だが薬丸ミステリーにおいては、読み手がそれを思わず肯定したくなるような作りになっているのだ。 そして夏目に殺してよろしい命などどこにもないと語らせる。 涙腺の弱い向きには、もう何が何やらわからないまま泣き続けるような話なのである。 人情警察小説とでも名付けましょうかな。 薬丸モノは、何より物語性が高いのが魅力なのである。(8/28記)
2025.11.06
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悪霊の館【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 本作は800ページ超えの大作。 普通であれば、4冊くらいに分冊するんでしょうがね。 テーマがあちこちに広がりすぎてメモリー不足の頭には、到底処理しきれない。 が、とにかくこの人のトリックの大きな特徴は、個人異同識別の錯誤。 それは、この人の大きな手口の一つだから、登場人物の加減で犯人が全部みろっとめろっとお見通し状態になる。 従って本件犯人については、私にも分かった。 次の手口は、密室トリックにテグスやピアノ線を使うこと。 こちらは、その大仰な装置から、必ず共犯者がいるだろうということが明らかになる。 これらの様子が実に多いものだから、勢い饒舌になり800ページ超えなどということになるのだ。 あまりの長い話を読まされると、それは、時間の無駄遣い という批判がなされるのだが、彼の作品の場合 それがないからいい。 彼がそれまで読んだありとあらゆるミステリーを自作に凝縮させるのが彼の創作方法なのだなと、推定できる。 そのトリックが可能か不可能かという現実問題を別として可能と仮定すると、この饒舌な 800ページ超えの作品に矛盾が見当たらないのは、すごいことだと思う。 読書体力というのかな。 これだけの大作の一気読みというのは、本当に疲れる。 そして先に書いた話である時間の無駄遣いに繋がらないかと、気になる。 けれど私は、読み師。 真っ当な私の大事な仕事。 二階堂黎人の作品は、私の仕事の対象として申し分のないものなのだ。 疲れるけれど…。 ふう!(8/27記)
2025.11.05
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悪魔のラビリンス【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 作中の文章によれば、悪魔のラビリンスは、名探偵二階堂蘭子のライバルであり蘭子によれば、《四方城 ガラス産業》の 仕事に携わっていた経営コンサルタントの久能憲一という男性です。 こちらの優依子さんがアメリカから連れてきた敏腕 ビジネスマンという触れ込みでしたが、この男こそが魔王ラビリンスだったのです。としてまずは、結論ありきであるものの根拠は何も示されていない上本悪魔のラビリンスモノは、今後シリーズ化されていくものと思料される。 さて本作であるが、冒頭血なまぐさいシーンが続きさらに終盤においてまたそのシーンが再現されるというまさにおどろおどろしい作品である。 そんな中特急寝台列車においては、魔王のラビリンスが忽然と消え見送りに来ていた女性の死体が寝台車 個室で発見されるトリックが提示されさらにガラス戸内錠トリックも提示されてその2つは、生意気な蘭子が鼻息も荒くそれは、....ですわなんて言う風に解決してみせるのだが、今あげた2つのトリックは、稚拙この上ないものトリックというには、あまりにもひどすぎる。 さて第一の寝台列車のトリックであるが、寝台個室のドアに拘泥しすぎ。 そのトリックに騙されているのは、探偵事務所長と警部殿でっせ、 ありえない。 ガラス窓のトリック なんてこれも話にならん。 あーた1回 割ったガラスをまた元に戻す芸当に両面テープを使ってなんてのは、机上の空論以外の何物でもありませんよ。 二階堂黎人は、トリックの海に溺れてしまったんだな。(8/24記)
2025.11.04
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告解【電子書籍】[ 薬丸岳 ] 乱歩から内藤了までの正史、清張、森村、東野の6名について私読み師は、宗祖から六祖として崇め奉り強烈な評論を当ブログに展開してきたが、その間も中山七里、二階堂黎人と言った有為な人々の作品も見逃さずまた数という点では、今野敏も忘れずに読んできたところであるが、さてそのような中私は、本年度ここまで読んできた作品中本作をナンバー1と評価したい。 題名からおそらくは、何らかの罪に対する懺悔の話だということは、予想がついた。 しかしそれは、本作のある登場人物の このまま心を偽り続ければ、さらに自分への報いがあるのではないかと思った。 いつ死んでもおかしくないわたしへの最後の報いは、残された家族を私の死ぬ前に奪われること。 そしてあの世に行っても君子や文子に会えないことだ。 だから、自分が生きている間に誰かに自分がしてきた罪を告解したかった。 だが、家族には、とてもできるものじゃない。という言葉に全て収斂されるのだった。 本件は、飲酒運転ひき逃げ事件である。 捜査は、淡々と進み犯人は特定され4年余の実刑判決を受けて服役する。 この間被害者家族中老妻を失った 91歳の夫の認知症は、どんどん進んでいく。 はて最終的にこの老人の復讐劇に発展するのだろうか。 400ページ足らずの作品で私には、少し長め かなと思われる量だが、私は、あっという間に読了してしまった。 それほどのすごい物語性伏線回収だった。 またテンポの良さも特筆に値する。 主人公は、介護職の資格を取ってこの先生きることになるのだろうが、先の告解によってまともな人生を歩めるようになった仕掛けに快哉を叫びたい。(8/24記)
2025.11.03
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七色の行方不明【電子書籍】[ 姉小路祐 ] そもそもこのシリーズは、架空の部署に架空の制度がベースなのでその面に対するツッコミはないというもののしかし垣間見えるいわゆる警察作家の勇み足とでも言うべき 刑事法の不勉強が気になる。 まず逮捕被疑者の捜査は、送検し終了でない。 ツッコまないと言いつつ私は、思わずツッコみたくなるのがこの種作家の警察組織の半生理解だ。 そもそも本シリーズは、再雇用という美名のもとで巡査部長待遇などというわけのわからん官職を安治川に与えている。 そこに今回再任用女性警察官を投入する話の上本シリーズだけの特異な架空組織である行方不明解明部署の実質的責任者のポストに巡査長を充てるというのだから、これは、警察組織の半生理解というよりは、完全不理解である。 巡査長は、階級 でない。 巡査の階級にあるので司法巡査だ。 それが部署を束ねる責任者になる人事などありえないのだ。 それに付随して再任用警部補の階級を与え課長補佐補佐にするという。 全くリアリズムのないことで 興ざめする。 しかしながら、物語性は、しっかりしている。 この姉小路という人警察小説なんか書かない方がよろしい。 源氏物語に関する1 考察は、実に面白い読み物だった。 けだし作中の教授殿がおっしゃっていたように根拠のない話は、小説根拠が示されれば、学術なのである。 今をときめく LGBT の問題もしっかり捉えられそれを見事にミステリーに閉じ込めていたし何より交番実習時代のキャリアのミステークも上手く物語に溶け込ませており秀逸だった。(8/23記)
2025.11.02
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聖アウスラ修道院の惨劇【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 今回は、蘭子以上に小生意気な少女修道女がいたおかげで蘭子の花持ちならない態度もあまり気にならないのだった。 しかしそれにしてもなぜこんなにも二階堂黎人の話は、饒舌なのだろうか。 圧巻は、本修道院の大きな秘密が明らかになるところ。 本件殺人事件やら密室トリック(つまらん ) 暗号解読 より何より この文書庫にある蔵書類は全て《仏教》に関する文献や経典 なのです。 それが聖アウスラ修道院の隠してきた真の宝物だったのですわ。という蘭子の言葉の通り実は、仏教礼賛の話なのだった。 ブッディストの喜ぶまいことか。 この大大大どんでん返しによってこの饒舌な話に付き合ってきた疲労が癒されてしまうのだった。 まあ何ということでしょう。 こういうミステリー作品における大大大どんでん返しがこの世には、存在するのですな。 ところで本作における片一方の雄長野県警の好美警部が 蘭子が創造した吸血鬼の話を最後まで信じていたわけがなかろうが。 保釈と釈放の違いもわからん作家さんにそんなことを言われたくねえよ。 最終盤結局は、くるみという名のアフガンハウンドから、二階堂兄妹は、助け出されるのであった。 この辺のソフト面における読み手に対する心遣いは、実に心憎いね。 ということで本作は、清濁併せ持つミステリー研究家必読の一冊なのであった。(8/21記)
2025.11.01
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COLD 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花【電子書籍】[ 内藤 了 ] 雪女の話をここまで 脚色できるのは、日本広しといえど六祖にだけできる仕事でしょうな。 私は、そう思う。 前作BEASTと比べると、断然本作の方がいい。 本作では、凍死が一つのテーマだった。 凍死現場で死体にキスマーク様の痣と 3本カギの痣がつく謎が提示される。 キスマーク様については、結局作家から正解が提示されることがなかったが、3本カギの痣については、 「エビテーゼ」は、体の欠損部分を補う装具だ。 使えば、見た目は、ほとんどわからなくなるが、欠損した部分は、動かせない。 首に残った3つの痕は、骨が通った3本指の痕だったのだ。 唇を重ねる時彼には、相手の顔が動かないよう強く抑える癖がある。 もの。 雪女の正体は、 実は、男性だったのだが、見ようによっては、女性にも見えるジェンダーフリー時代の申し子のような人。 それ交番時代に補導したことがあるという記憶に端を発し事件解決に導いていく話であるが、なにしろ捜査主体が本庁ゆえの後の難しさを感じざるを得ない。 いずれにしろ本シリーズの主体は、本庁であるし本庁の警察官が端緒を得て被疑者を特定したわけだから、まずはそこまでは、よろしいのだが、果たしてその被疑者と酒を酌み交すなどということがあってよろしいのか。 本庁の人間が現場警察官同様新幹線での押送なんてあり得るわけがない。 自供を得た段階で秋田県警に移牒すべき事案だったのだ。(8/20記)
2025.10.31
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金色の魔術師【電子書籍】[ 横溝 正史 ] おこちゃま用の読み物で金田一の登場もその通りおこちゃま様式。 本作に一貫して流れているのは、要するに乱歩のまねごと。 このことは、前読でも指摘したこと。 横溝正史という作家は、かくも乱歩の影響を受けていたのだ。 それはともかく本作には、ミステリーの要素など何もない。 ただおどろおどろしい金色の魔術師が登場して子供をさらう。 いったい彼は誰だというのが大きなテーマだ。 で大人の我々は、そんなことどうでもいいことであって興味が持てるわけもない。 しかし前読同様二祖の作品である以上大事に読まなければ、と読み師は、まじめに思うのだった。 それはともかく最終盤にちょい見せの金田一であるが、あの北斗七星の謎はいったい何だったんですかね。 おこちゃまに対する大サービスということなのだろうか。 それにしても子供モノとはいえかなりブレーキをかけて書いているなというのが私の感想だ。 遠慮なく血の海にしてしまったら、これは子供のために良くないものな。 その血の海も前読葉真中顕のブラック・ドッグのように遠慮会釈なしにとにかくいいものも悪いものもバ・獣から食いちぎられるなどという不快極まりない描写に遭っては、不快不快ああ不愉快ということになる。 このようなつまり本作のような作品も当時の子どもたちは、とても喜んで読んでいたんだろうな。 そもそも今の子どもは、読書などしていないよ。 早番読書文化書物文化は、なくなる。 思ったより早くコロナ禍の影響もあって子供たちの間でもデジタル化が促進されていると私は、感じている。(8/20記)
2025.10.30
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ブラック・ドッグ【電子書籍】[ 葉真中顕 ] 600ページ近い大作。 根底に流れるのは、「種差別」という思想なのだが、読み手は、それをどうとらえるべきかというのが大きな課題である。 それ以上に全編を通した黒いバ・獣による暴力をいかに感じるか。 まあ不快以外の何物でもありえない。 果たして作者がこの作品で問題視している「種差別」についてどのように考えているのかも気になるところだ。 本作では、動物にも言語能力があるのだが、器質上言葉にならないだけだという主張がなされる。 ヒトのうちその動物言語を理解できる特殊能力のある者もいて彼らのそういう能力から、暴力的バ・獣が作られたということでしょうな。 というようにいわば、動物にもココロがあるのだから、動物愛護の精神を徹底してくれという意見といやいや動物なんざあ、今やモノにしか過ぎないのだから、役割が終えたら、即刻殺しちまえという二極論で議論がなされるものだから、本作のようなバ・獣モノが跳梁跋扈してくるのだと私は、思う。 その結果今の北海道の羆騒ぎだ。 なぜ殺すお前らは、無能だコールが後を絶たないという。 令和6年の羽田空港奇跡の生還事案では、乗員乗客全員が無事救助されたことよりも機内に取り残されて焼け死んだペットのことで石田ゆり子が波紋を投じ文字通り大炎上したことも記憶に新しい。 本作に視点を戻して動物愛護云々よりは、全編を通して漂っていた生臭い不快感と饒舌な話が小説好き一人をまた小説から遠ざけてしまったなという感が非常に強い。(8/19記)
2025.10.29
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地獄の奇術師【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 本件は、名探偵二階堂蘭子の最初の大事件だそうだ。 まあそれにしてもこの名探偵は、とにかく勿体ぶり屋で読んでいる私たちが嫌気をさしてしまうタイプなのだ。 相変わらず警察組織半生理解が目立った。 警視庁警視正だと。 そんな階級はこの世に存在しない。 なぜなら警視正は、地方警務官と言って国家公務員であり地方公務員たる警視庁の警察官ではないからだ。 それから、よくある刑事法の不勉強という点では、検死と検視ですな。 これは、刑事法上検視と書くのが正解だ。 なぜなら本来検視は、検察官の職務なので検察官が視ることから検視と言われているのだ。 つまり検視ですな。 それを警察官が代わってすることを代行検視という。 この辺の基礎が全くなっていないから、ミステリーファンのおまたぎ現象が始まる。 本作は、前読人狼城の恐怖と比べると、まだまだわきが甘いと評価されてもしょうがない。 例えば屋植という名前を聞いてそれが神だという意味にとらえられない読み手は、いないのではないのか。 そもそもユダヤ教の神様もキリスト教の神様もイスラム教の神様も同じ神様であり、屋植(ヤーウエ)さまだ。 したがって古い婆さんが実はキリスト教徒なんだというシチュエーションから、屋植が何らかのキーパーソンあることは、全部みろっとめろっとお見通し状態なのだった。 私は、のっけから英希という男が怪しいとにらんでいた。 そもそも黎人のお友達というではないか。 つまり一番危ない人なのだよねえ。 そして本作における連続殺人事件は、十戒をなぞる連続殺人だったという着眼点はよろしいが、前読人狼城の恐怖と比べると、粗が見えすぎましたなあ。(8/18記)
2025.10.28
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丹夫人の化粧台 横溝正史怪奇探偵小説傑作選【電子書籍】[ 横溝 正史 ] 実に久しぶりの二祖の作品でしたな。 なるほど本短編集所収の作品が日の目を見ることがなかったのは、宜なるかも。 そもそも本短編集における作品群は、二祖にとっては、作品にする前のメモ 程度のものだったんでしょう けれどもそれを宝物でも見つけたみたいにして日にさらすことに私は、賛成できない。 少なくとも本短編の作品群には、二祖の香りも味も見出せない。 だから、世の正史ファンには、本作をとてもじゃないが、おすすめできない。 それは、ともかく各短編を丹念に読んでいくと、二祖は、かなり一祖を意識していたことがわかる。 ジョージとかいう男を飼っていたなんて情景は、乱歩の世界そのものである。 回転旅館の発想も乱歩作品にはよくあるもの。 これらの2作は、著者名を明らかにすることがなかったら、乱歩の作品と間違ってしまいますな。 書きっぷりもそう。 二祖は、一祖の作品を研究し尽くし独自の作風を作り上げたのであってその前段階である乱歩に似せた正史の作品を私は、決して読みたくはない。 そういう本作であるから、編者には、とくと吟味して欲しかったなと思う次第である。(8/17記)
2025.10.27
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BEAST 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花【電子書籍】[ 内藤 了 ] 久しぶりの六祖の作品。 たまたま二階堂黎人の「人狼城の恐怖」という大作を読んでいたところに本作のヒトオオカミの話が重なった。 そんなことでこちらのBEASTは、ライトな感じに収まった。 本作は、児童虐待に端を発しそのことを薄々感じていた町内子供会の役員が自車で当該子供を子供会行事の行われている先に連れて行く途中の転落事故で当該子供が行方不明になってしまったのであった その後その界隈でヒトオオカミの存在が噂されたことから、清花たちの出動となったものである。 小説上に与えられた条件から、ヒトオオカミは、明らかに行方不明になった彰海と読み手側は、推測できるのであった。 汚れた虐待側家庭の描写は、まるで悪臭がプンプンと漂ってくるような感じでしたな。 本作には、恐怖シーンがない。 現代社会のひずみの一シーンを削り取って読み手に示したに過ぎない作品になってしまい六祖ファンにとっては、物足りないものとなってしまったのは、否めない。 六祖の発見は、Kindle Unlimited に彼の作品が大放出されたことによるもの。 それがこの清花モノになってから小出しになってしまった。 先に書いた通り二階堂黎人の大作と並行することになってしまいその重みと厚さのあまりの違いに戸惑ってしまった私なのだった。(8/16記)
2025.10.26
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人狼城の恐怖 第四部完結編【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] これだけの大作本当にご苦労様でした。 名探偵二階堂蘭子の思わせぶり高慢な態度には、ボン警察の警部殿同様実に気になるのだが、先に書いた通り黎人論では、絶対に正解にならないので大人しく彼女が話し出すのを読み手は、我慢して待つより他ないのだ。 推理小説の基本は、動機、機会、方法である。 3作目の探偵編で終わったら、先の三要素は全て薄っぺらなものになってしまっていたところ本作完結編 において動機は、ナチスの時代からの延長である人間改造機会と方法は実に論理的な仕組みによるものだった。 詳細を書くことは、憚られるが、黎人の4城論は当たらずとも遠からずだった。 それから、首なしメイドに関しては、それはやはり重要なヒントなのであった。 ところで第1作ドイツ編の最終盤において人狼が吠えたわけだが、そのことについてシリーズ 最終盤において言及したのはいかがなものか。 せっかくの科学的論理的話が全部ぶち壊しになった感は否めない。 ここまで読者を引っ張ってきてもったいない話だ。 そういえば、本作最後には、蘭子が行方不明になってしまった。 3年もの間消息不明なのである。 ここを二階堂黎人という作家は、どう折り合いをつけるつもりなのだろうか。 本シリーズの正解は、名探偵の話した通りだろうが、その1つ1つのトリックが大味でまさに机上の空論決して実行可能なものではなかったことを付記しておく。(8/16記)
2025.10.25
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人狼城の恐怖 第三部探偵編【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] そうか本シリーズは、名探偵二階堂蘭子モノだったんだ。 そして狂言回しが作者二階堂黎人だということ。 だから、黎人が話す内容は、これまでのところほぼ間違っている。 彼のシーンは、ほぼ間違いというのが蘭子モノのお約束なのである。 さて本作であるが、既出のドイツ編フランス編を踏まえての 探偵編であるから、次から次へと様々な論が飛び出してくるものの先述の通り黎人論は、正解ではないということだけは、はっきりしたことである。 それにして蘭子先生あまりにもったいぶりすぎ。 ただあのメイドの首がなかった点つまりそれが犯人に繋がるというポイントは、正しかった。 何しろボン警察は、彼女を犯人と見て捜査を開始していたのだ。 ところが、そのメイドは、その名前ではすでに死亡していたということなのだが、だからこそその犯人は、そのメイドになりすました誰かさんということになる。 人狼城4個説は、実に面白い。 4個あれば、近隣する2つの城において地下道を通じて行き来できる。 そして今この探偵編のラストは、関係者が何者かに拉致されてしまうのだ。 話があまりにも大きくなって収拾がつかなくなっているのじゃないか。 あとは、完結編に任すほかない。(8/14記)
2025.10.24
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櫻子さんの足下には死体が埋まっている 冬の記憶と時の地図【電子書籍】[ 太田 紫織 ] 当初の骨話いっぱいの流れは、骨のネタが尽きたのか物語性に思い切って舵を切り始めた感じだ。 少年が瀕死の活躍をするけれど例えば、櫻子が相手に そんなナイフ1本で、私を殺せると思っているのか?と強がるシーンがあるが、これは、作家の単なる 想像でしょう。 ナイフなどの刃物の破壊力は、ものすごいものがある。 刺されたら、失血死必至。 意外に人々は、この凶器について甘すぎる認識を持っている。 従って正太郎君の場合おそらくは、すでにこの世には、いないものとなっているのが正解なのであります。 この作家が法医学分野中骨の分野に目をつけたことは、けだし慧眼である。 それが今やおそらく10作以上のシリーズモノになっているという点すごいと思いつつ読み手に飽きが来ないのかと心配になってしまう。 少なくとも私は、もうごちそうさまで申し訳ないが、ゲップが出ております。 しかも今私は、二階堂黎人の「人狼場の恐怖」シリーズに取り組んでいる。 この重厚さ忌々しいほどの長さに辟易しながらも探偵編で二階堂蘭子の名推理に目を通しているところだ。 比較論になって申し訳ないが、ヘビーとライトのその差は、実に大きい。 またマンネリ打破のためには、六祖内藤了を読むことだ。 彼のシリーズは、キリのいいところで切り上げ決して読み手を飽きさせない。 太田さんよライトからヘビーへマンネリから永久へ脱皮してほしい。(8/14記)
2025.10.23
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銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2【電子書籍】[ 中山七里 ] 七里モノでは、ライトだ。 これが七里と思われると、困る。 それは、ともかく点滴のラベルを変えた殺人は、不可能だろうな。 しかし知らない人が読んだら、本当にできそうだなんて思うんじゃないのか。 そもそも点滴の投与にあたっては、複数の看護師が読み合わせの上実施しているものだ。 したがって本件のような事案は、起こるわけがない。 ちなみにこの事件に関し抗癌剤の副作用のことが書かれていたが、たしかに倦怠感が半端ない。 現役判事やヤメ判が連続して殺される事件が発生する。 当然ヤメ判であるヒロイン静おばあちゃんもその対象になる。 この事件では、判事が取り扱う事件は、山ほどあるのでどの事件の受刑者から恨まれているか分からないと言うのだが、本件のような死刑囚の遺族に思い至らないという事が果たしてありうるだろうか。 本シリーズ中本作は、2なので1があるわけだが、読んだつもりが読んでいなかった。 1には、重要な情報が山程あるので読まなかったのは、失敗だ。 監察医の意見あれば、変死体の解釈は、スルーというのは、現代検視学では、ありえない。 つまり本作のような多量の覚醒剤摂取を見逃す誤認検視があとをたたなかったから、警察は、検視体制を整え積極的に解剖を実施することになった。 この辺がね七里の警察組織の半 ナマ理解何だよね。 ただ七里の物語性は、すごい。 私は、七里は、すごい作家だと思う。(8/13記)
2025.10.22
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人狼城の恐怖 第二部フランス編【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 第一部読了後すぐ読むべきか否かなどということを書いていたが、結局読んでしまったのけれどなんと実は、第四部まであることが判明した。 第三部が探偵編第四部が解決編と銘打っている。 本作第二部も600ページごえの大作だった。 しかしとにかく読了に成功した。 第二部は、最終盤人狼が吠えることはなかった。 フランスの警部殿が瀕死の中で自己の犯行声明に及ぶ。 つまりかなりオーソドックスな作りになっていた。 私が気になっていることは、第一部の最終盤の人狼の遠吠えと第一部における連続殺人事件が未解決なことだ。 だから、すぐに第二部を読了したにもかかわらずまだ第三部と第四部があるなんてなんてこった。 しかも第三部と第四部は、kindleunlimitedに所収されていないのだ。 こうなると、本屋を探してペーパーを読むほかないだろうな。 第一部にしろ第二部にしろとにかく饒舌でさすがの私も超疲れた。 しかしながらこれは、明確な作者の読者に対する挑戦なのだから、謹んでお受けしなければなるまい。 このこのシリーズをここで終えてはならない。 この先をきちんと読んで始末をつけなければならない。 ただ面白いとか名作だなどという評価は、私は、今のところできない。 とにかく話が分かりずらいという欠点がどうしようもない。 これがこの人の、テ、だということであれば、もう読まなくてもいいという気持ちになってしまう。(8/12記)
2025.10.21
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人狼城の恐怖 第一部ドイツ編【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 最終盤直前までいわゆる密室殺人モノで突き進んできた本作が最終盤突然狼男が牙をむくなどという訳の分からない展開に私自身本当にびっくりした。 本作は、六百ページごえの大作だ。 九十パーセントを超えたあたりでいよいよ犯人登場かと思っていた矢先のことだった。 これは、一種の読書事故ですな。 ところが本作の後フランス編が待ち受けているのだ。 これまた六百ページ超えの大作だ。 そもそもこの第一部ドイツ編に川を境にしたフランスの人狼城が存在することが結構早い段階で明らかにされていたのだが、まさかこういう展開になるとはなあ。 つまりだ。 私はまた六百ページ超えの大作を読まなければ、本作の謎を解くに至らないということなのだ。 はてすぐ読むべきかそれとも少し待つべきか。 すぐ読まないと記憶が薄れていくのでここは、やはりすぐ読むべきなんだろうな。 さて本作であるが、人狼城で次から次へと人が殺される。 様々な殺され方である。 胴体から首を斬られた者もいる。 その首は、きちんと並べられていたかと思うと、首の行方が分からない死体もあった。 それは冥途の首だ。 つまりだ。 ミステリー方程式によれば、首なし死体は、ほとんどが別人だから、この姪と思われる遺体に関しては、何か訳アリだろうなという推定が成り立つのだが、冒頭に書いた通りなんといきなり主人公が狼男に変身するものだから、先行き不安な今の状態なのだ。(8/12記)
2025.10.20
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殺人喜劇のモダン・シティ【電子書籍】[ 芦辺拓 ] これは、本格推理小説かと、序盤かなり期待して読み始めたが、だんだんだんだんわけがわからぬ作りになっていくのは、この作家の、テ、であろうか。 結局私は、完読了の自己満足しか得ることができなかった。 歴史設定が戦前という今から100年も昔のこと。 現代とは、異質の文化を理解するのは、かなりしんどいことなんだなのだと思う。 私の世代でなんとか理解できる程度であるから、私の孫の世代では、ちんぷんかんぷんの話だろう。 ちなみに本作が書かれたのは、2000年のことだとか。 本格推理における動機は、重要なもので3要素にプラスした私の要素の一つである物語性 と伏線回収にリンクしていくものである。 本作においては、某国における狼藉が発覚するのを恐れての映画関係者に対する連続殺人であった。 機会と言うことに関して主犯の位置が常に犯行現場から離れているところに注目した鶴子さんお見事でした。 また燕や飛行船も駆使したアリバイ に挑戦したことも大きく評価できるのだが、いかんせんそれらの有機的つながりがうまくできておらずこれまた私のような読み師には、お盆の時間潰しとあいなり作品選びの困難さをまた感じることになった。 結局大風呂敷にしてしまって損をしたのではなかろうか。 この作品に出たトリックやらアリバイ崩しを考えたら、 2、3作面白い作品を書き上げることができたに違いない。(8/10記)
2025.10.19
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櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶は十一月に消えた【電子書籍】[ 太田 紫織 ] 同じような話が延々と続くわけだ。 この種のシリーズは。 だから私は、よくこれ以上読むことはあるまいななどと書いてしまう。 本シリーズもここまでだろうな。 それは、マジな話だ。 それほど真新しさにかけ魅力がない。 ところがだ。 迂闊にも私は、なんともう1冊手にしてしまってるんだよね。 さてどうしたものか。 さて本作であるが、アライグマに噛み殺された飼い猫の話とか嘱託殺人の女子高生の話などどうにもつまらない話のオンパレードで読了翌日には、話のたいがいを忘れてしまったのだった。 Kindleには、メモとハイライトというクラウドサービスがあってそれを見ながら、本記事を描いている。 太田さんよ。 そういう魅力のない作品を世に出しては、だめだ。 書き方がフェアなのか或るいは、何も考えないで書いているからなのか分からないが、アライグマの話題を出しておいて猫が殺された話を出したら、犯獣は、アライグマに決まっておろうが…。 うーむ実に残念無念。 女子高生の嘱託殺人の話は、必要のある話だったんですかね。 私には、不快な話以外の何ものでもなかった。 読書でなにも得るものがなかったら、時間潰しにしか過ぎない。 大田よ私に時間を返してくれ。(8/10記)
2025.10.18
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アポロンの嘲笑【電子書籍】[ 中山七里 ] しかし七里は、次から次へとヒット作を飛ばしてくるな。 ヒット作 というよりも名作とか佳作の部類に入る素晴らしい作品のオンパレードだ。 本作は、あの超巨大地震とそれに付随した原発事故に発想を得て書かれた作品である。 書かれたのは、2014年だから、あの超巨大地震から3年後の話だ。 あの原発事故の最中にテロリストが第4号機に爆薬を仕掛けたという本作のシチュエーションは、 なるほどあの超巨大地震の最中警察が右往左往している時になぜか殺人事件が勃発しそこに 警察庁警備局が割って入るという謎の行動を醸し出してどうも国家機密か動いているらしいぞという警鐘を読み手に与えるものだった。 それに伏線が様々に伸びて最終盤に回収もされるのであるけれどもまずは、本作の表題であるアポロンの嘲笑について七里は、 不意に邦彦はアポロンの存在を思い出す。 裕未から借りたギリシャ神話の本に出てくる神々の中の一人だ。 太陽神アポロンは同時に弓矢の神でもあった。 その矢は自分を軽視し侮辱する傲岸不遜 な相手に死をもたらしたという。 人間はある時からアポロンを軽視したのではないか。 太陽の力に代わる原子力を手に入れた瞬間、太陽神を侮辱したのではないか。 邦彦には、目前に広がる荒涼とした景色が神の火を軽視した報いのように映る。 矮小 な人間が自身の力を過信したゆえの刑罰のように思える。 もし天上にアポロンが実在するのなら、今頃は下界を見下ろして嘲笑しているに違いなかった。 そして自分はアポロンに嘲笑されながら、 悪足搔きを続ける哀れな存在に過ぎない。とその出自を明らかにしている。 圧巻は、 だが、検問に立つ警官たちはバイクを停車させようとするどころか意外な行動に出た。 警官たちは左右に離れて道を作る。 そして一斉に敬礼した。 その数、ざっと十二人。ぴしりと息の合った光景は何かの儀式のようだった。というもの。 この姿に警察を知るものあるいは、警察ファンなら、誰でも涙を催すに違いない。 本作の最終盤は、 邦彦の意識はそこで断ち切れ、虚空に拡散した。というもの。 邦彦は、本作の主人公である。 そこに地元警察刑事課の仁科と本庁警備局の溝口が絡む。 七里の一つの、テ、である上司と部下の関係である臭い顔をしながら、部下を信じ切っている上司の姿が上記の検問のシーンにつながるのだ。 そしてもう1つの七里の、テ、である一捻りは、 最終盤に仁科の口から裕未に対して謎解きがなされるのだが、 それを書いたら、明らかなネタバレになるのでここまでにしたいと思う。(8/9記)
2025.10.17
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地底獣国の殺人【電子書籍】[ 芦辺拓 ] 本作があらかじめ推理小説である旨の告知を作家がしているのだが、そう書かないと、読み手は、本作を単なる冒険譚と捉えてしまいましょうな。 告知は、してみたものの作者が息せきって告知するような上級な推理小説ではない。 じゃあ作家さんよ私は、あなたに問いたい。 どこが推理小説なのかということを。 私は、読み師として何度も何度もミステリーの要素について書いてきた。 まず基本となるものは、動機、機会、方法だ。 このことは、なんと七里が自作に捜査の提要であるようなことを書いている。 その是非をここで 論ずるつもりはない。 さらに私は、昨今の警察重視のミステリー界において必要な要素として警察組織の理解と刑事法の勉強を上げ、その上に物語性と伏線回収を求めているのだが、 本作では、 どうであったかの検証をしたい。 まず基本の三要素から。 動機がソ連のスパイということがばれたからでは、どうも 収まりが悪い。 飛行船がなぜか地底に吸い込まれるような非科学的論理がお寒い。 機会も方法も全く明らかにされていない。 ということでここまでですでにミステリーの態をなしていないのだ。 本作は、警察が入らない事案だが、そもそもソ連のスパイは、特高刑事 1人をすでに殺していたのだ。 全編に流れる嘘くささゆえきっと謎解き では、全部 作り話よなんてことになるんじゃないかなんて私は、 読んでいたが、そこまで話を壊さなかったのは、ご愛嬌。 本作の犯人は、 人物入れ替えだということについて私は、 全部みろっとめろっとお見通し状態だったことを書き添えておく。(8/8記)
2025.10.16
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櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘【電子書籍】[ 太田 紫織 ] かなり長い間七里モノに忙殺されていたが、 ここで少し彼から離れて他の作品を読んでみようと考えた。 まずは、太田紫織の桜櫻子モノ。 久しぶりに読んだせいかシチュエーションの記憶を呼び戻すのがどうにももどかしい。 読んでいるうちに本シリーズは、九条櫻子という骨標本士の話で彼女にどんなエピソードだったかは、 忘れたが、高校生の少年が助手代わりに動くというものだった。 本作には、3編の短編が収録されている。 1つは、早死にする家系の話 2つ目は、入院中の祖母が見舞に来てくれる孫息子にどうして遠回りさせてケーキを買ってきてもらったのかという話。 3つ目は、学園祭を機に理科室の骨の標本を片付けるにあたりなぜ猫の骨がなくなったのかということと 人骨が見つかったが、その出自は、一体何だったのかの謎。 これらがきちんと緻密に書かれているので読み師も納得できる作品になったのだった。 普通に考えたら、誰が骨の話になど食らいつくかというレベルなのだが、そこをさらりとかわして小説として仕上げることのできる太田紫織という作家は、すごい能力を秘めた人なのだと私は、思う。 この小説が決して霊の話に向かわないこと警察組織や刑事法から距離を置いたものであることがかえってリアリズムを増している 好ましいシリーズの1つである。(8/7記)
2025.10.15
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雀蜂【電子書籍】[ 貴志 祐介 ] 本作は、あのヒッチコックの鳥を彷彿させるものだった。 このまま雀蜂との格闘シーンが延々と続くのだろうかと心配したけれど真ん中を過ぎた辺りから、だんだん話が変わってきましたな。 売れてるのか売れてないのかわからないミステリー作家が妻とその愛人から雀蜂のトラップをかけられたという話が先に進むと、さらに変わりそのミステリー作家のダブルだと思い込んでしまった70過ぎの老人の話に変わってしまうのだった。 こういう話の作り方もあるのだなと作家さんの想像力、創造力に改めて感心してしまった 。 小説は、書き手と読み手のシンフォニーだ。 作家さんは、読み手に仕掛けてくる。 それを見抜くのが読み師の仕事だ。 さて本作であるが、これまでにない種類の作品であれよあれよという間に終わってしまった。 私は、翻弄されてしまった。 だが、私は、敢えて真実を書きたい。 すなわちこんなにつまらない小説がこの世に存在するんだなということ。 作者は、この作品を通じて一体何を訴えたかったのだろうか。 私は、七里のカエル男 を全編を読んだ後だっただけに本作の面白くなさには、辟易した。 まあ小説というものは、こんなものなんだろうなと諦めるのかそれとももっと面白い小説があるはずだと面白い作品を追い求めるか。 私は、後者でありたい。(8/6記)
2025.10.14
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連続殺人鬼カエル男 完結編【電子書籍】[ 中山七里 ] さて本作で本当にこのシリーズが完結したのかそれは、本当に疑問だ。 何しろ七里モノは、二転三転しますからな。 本シリーズの最後は、さゆりと御前崎教授の顛末で終わるのだが、それは、埼玉県警側が渡瀬と古手川コンビで固められた以上当然の帰結だったのだろうか。 いずれにしろ犯行不能と思料される拘置所あるいは、刑務所からの脱走を企てそのうえ司法取引の美名のもとに拘束未決被告を外に出すための手立てなんざあ、あーたよく計算しつくした名作の香り漂う作品に仕上がりましたな。 ここでどうしても読み師として納得できないのは、例の五十音順殺人の最後の殺人に規則性が認められなかったこと。 この点について七里は、 三人目で法則を変えた理由もこれで説明できるだけですまされちゃあどうにもこうにも不完全燃焼だ。 いつぞやの巻で古手川がさゆりのピアノにうっとりするシーンがでてくるが、本シリーズは、あの古手川とさゆりの関係性が大きなテーマだったのだということでしょうか。 とにかくこれだけの大作を書いた七里さん、渡瀬警部、古手川部長、御前崎教授、さゆり、勝雄本当にお疲れさまでした。 本作が後世に語り継がれる名作ミステリーになったことは、間違いのないことであります。(8/6記)
2025.10.13
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能面検事の奮迅【電子書籍】[ 中山七里 ] いやあ読み始めたら、あまりの面白さに一気に読了してしまいましたな。 七里モノは、かように魅力的なのであります。 そもそも本作の序盤は、あの森友学園問題を下敷きにしたもしかしたら、二課モノでそのトーンで最後まで行くのだろうかそうだとすると、読了するのにかなりの時間を要することになるかもしれないと、かなり危惧していたのであるが、中盤から、高級なミステリーに代わりそこからは、怒涛の如く話が進んで解決を迎えたのだった。 ここまで徹底して七里を読むと、いつぞやも書いたのだけれどもさあ大団円の段になってさあもう一捻り来るぞと、私は、構えたが、全くその通りの一捻りが来たのだった。 それは、また全部みろっとめろっとお見通し状態であった。 つまり七里を読みこなすには、もう一捻りを予想して読みなさいというわけだ。 さてこの能面検事シリーズ。 何分警察がほとんど関わらないので七里の警察組織半生理解は、なんの問題にもならない。 もう一つの刑事法不勉強も今回は、少年法に関し十三歳と十四歳の差を鑑みた記載を試みている。 だが、七里さんよ。 行為時触法の法理を考えてなかったようだな。 すなわち行為時の年齢が問擬されるのは、触法だけ。 だから、十四歳少年の犯行は、現在の被疑者の年齢で論じられることになるんだよ。(8/5記)
2025.10.12
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作家刑事毒島の嘲笑【電子書籍】[ 中山七里 ] 今回は、全編に公安部の淡海というものが毒島のお相手をしてくれたのだった。 いつもの子守姉さんは、今回は、ほぼお休みだった。 公安事件ゆえに思想犯の事件となり、現場は、 テロ現場となるわけだ。 その間ミステリー作品ゆえ殺人事件も発生する。 しかし全編貫いて登場するのは、淡海だけ。 そしてこの淡海に毒島は、巧妙なというよりは、狡猾な罠を仕掛ける。 思わず公安の本音を漏らしたところで本作の大きな謎が解けるという仕掛けであった。 さてこうした本作を読むと、七里の取材源は、どうやら公安らしいということがわかる。 だから、彼は、刑事法不勉強警察組織半生理解なんだなと推定できる。 確かに作家刑事というシチュエーションは面白い。 しかし刑事という商売が作家稼業とのそれこそ二刀流でうまくいくほどやわなものであるわけがない。 刑事技能指導官制度というのは、全国の警察にある制度だ。 その警察官に階級がないなどという不文律は、通用しない。 階級がない 警察官は、唯一警察庁長官のみである。 淡海をここまで引っ張った以上彼がどの道なんらかのキーマンであることは、明らかだった。 七里のその企みは、読み師たる私には、全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 しかし一部の読み手からは、叙トリの卑怯モノという批判も出そうな一作だった。(8/4記)
2025.10.11
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死者の配達人【電子書籍】[ 森村誠一 ] まこと森村は、一服の清涼剤。 七里のカエル男やら毒島モノを読み続けていると、あるいは、他の怪奇モノを読み続けていると、口直しに森村を読みたくなる。 そして森村は、その期待に応えてくれる。 まさに本作がそれである。 私は、森村モノに、テ、という言葉を使って評論を展開している。 テ、というのは、森村の得意分野のことでその範囲は、微物、ホテル、山、交通事故、動物、複雑な人間関係など実に広い上にそれらが実に有機的に結び合うのが森村モノの魅力である。 ところが、本作においては、これらの数多ある、テ、を封印して使ったものは、山と複雑な人間関係であった。 その上本作が書かれた時代は、いまだ殺人罪に時効があった。 果たして本件において殺人があったのかどうかは、法律論の展開となることだろう。 森村の丁寧さは、少年事件の解釈にも反映される。 よってリアルである。 そこも森村の魅力だ。 私から、刑事法不勉強と指摘されている七里辺りは、しっかり 森村を読んで欲しいものだ。 本作の欠点は、何かというと 、謎の解明が必要なかったということに尽きる。 そういう意味で本作は、平凡なものになってしまったが、それはそれですっきりした作品に仕上がったと私は、思う(8/3記)
2025.10.10
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連続殺人鬼カエル男ふたたび【電子書籍】[ 中山七里 ] とにかく七里は、カエル男に拘泥しているんだろうね。 だから、読み師としての私も本作に関しては、全部みろっとめろっとお見通し 状態になる。 教授宅の爆発現場なんざあ、あまりの凄惨さゆえ明らかに死者が違うこと見え見え。 しかしそんな風にして読んで行ったら、この小説決して面白いものではなくなるはずが、なんと私なんざあ、本当に興奮しながら、完読了した。 しかしこの先本シリーズは、どこまで続くのだろうか。 カエル男と書かれた本がいっぱいある。 どうやら全6冊のようだ。 私は、やっと、そのうちの2冊を読み終えたに過ぎない。 何しろ本作では、最終盤脱走したさゆりが人一人を殺すシーンで終わり、そのわけは、さゆりの担当教授が逆にさゆりから 操られたことによるのだから、やはり 話は、延々と続くのだろうな。 前作で古手川が完膚なきまでやられたのだった。 今回もそのバイオレンスシーンが再現するのかと心配したが、そうはならず、古手川の上司渡瀬が淡々と 謎を解明するのだった。 七里の短所である刑事法不勉強も警察組織半生理解も出ることなく前作をきちんと受け止め本シリーズで本作に次作 があることを示唆しておいたのは、実にスマートであった。 期待感が増すとともに50音順殺人の場合の古手川君に影響がないのかと、心配になる。(8/3記)
2025.10.09
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作家刑事毒島の暴言【電子書籍】[ 中山七里 ] 作家だけにその世界の興味深い裏側を深く掘り下げて5つの短編として書き上げている。 七里の作品をこうも立て続けに読んでいると、彼の、テ、が分かってくる。 すなわち一旦挙がった犯人で全てが終わりにならず必ず一転して真犯人が出てくるというものだ。 その、テ、を覚えてしまうと、次の一手が私のような老獪な読み師には、全部みろっとめろっとお見通し 状態になるのである。 さて本作であるが、とにかく文壇で生きるのは、困難ということがはっきりする作品だった。 文芸評論家について七里は、作中 作家は、文芸評論家がいなくてもやっていけるけど、文芸評論家は、作家が存在しなければ、何の仕事もできない 要するに犯罪者と警察の関係と一緒などと毒島に語らせているが、けだし名言である。 つまりだ。 かくいう私もその通り読み師という文芸評論家としてどんどんどんどん意見を申し述べていきたいいや行くことにしたということだ。 さて本作においては、彼の欠点とも言うべき刑事法の不勉強も警察組織半生理解も出てこなかった点本シリーズの生きる道ではないかと今更ながら、思ってしまった。 七里をこうも立て続けに読み続けると、彼は、本当に素晴らしい作家だと思えてしまうのだった。(8/2記)
2025.10.08
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