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陽はメコンに沈む【電子書籍】[ 伴野朗 ] 残念ながら明らかな独り善がり本でしたな。 しかも筆力不足は否めない。 結局何を訴えたかったんだろうな。 日本人の怪人が、戦争の根幹にいて、終わったら衆・参両議員になって、さらに、東南アジアでフィクサーのような動きをしていたという話なのか。 結城という新聞記者が、CIAから狙われる話も入っているな。 どうもよくわからんのです、この辺の話が。 人は死ぬけれど、なぜ殺されたかもわからないし。 そういう傍流の話をわれわれに分かりやすく書いてもらわないと、なんともならん。 まあそれにしてもこのクール、本当にエスピオナージが多かったですな。 だましだまされまただましみたいな中で人がよく殺されていた。 そういうサスペンスが本作にはないのですよね。 だからちっとも面白くない。 やはり作家の筆力、取材力の差なんだろうね。 多分この時期の作者は書けば売れるみたいな状況、つまり、多作家症候群に陥っていたのではなかろうか。 文学は、作家のみのものにあらず。 読む人と奏でるシンフォニー。 決して独り善がりになるべからず。 これだけは、今の作家に警告しておきたいな。 さて、次のクールは何を選ぶか。(2/27記)
2024.05.29
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西浦和也選集 迎賓館【電子書籍】[ 西浦和也 ] 怪談話というか怪奇集というか、それはともかく、この本に盛られたことが本当の話だとすると、世の中には幽霊が存在することになる。 しかしながら、世の中の人は容易にその存在を信じない。 つまり自分の身の回りに起きなければ信じないのである。 本作に収録された話というのは、そちこちで聞いたことのある話だ。 子どもが住んでいないアパートで子供の声が聞こえるとか、同じアパートで落ち武者が歩く、ガシャン、ガシャンという音が聞こえる、あるいは、消したはずのテレビが映ったなどの話は今から20年ほど前に聞いた。 その話をまことしやかにしてくれた人は、今から8年前、定年退職したその年に、ステルス癌で亡くなった。 別のアパートの一室は、幽霊が住んでいるということで、今は誰も住んでいないよ、お札がいっぱい貼られている、という話は、今から6年前に聞いた。 そのレベルの話を本作は拾っている。 信じようが信じまいが読み手の勝手よ、ということだろう。 私は、信じる信じないよりも、先ほど来の話をしてくれた人が、親しい方々なので、そういうことがたしかにあったんだろうなと思う。 またそのエビデンスを求めたいなどという気持ちにはならない。 少なくともこれらの話をしてくれた人には悪意はない。 たしかな自分の経験を語ってくれたのだ。 ひとつわからないことがあるとすれば、なぜ見える人と見えない人がいるのかなということ。 見える人は、霊感が強い、などと言われるがね。 ちなみに後の話をしてくれた人は、まだ健在だ。(2/27記)
2024.05.28
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第三の原爆【電子書籍】[ 伴野朗 ] しかしそれにしても、世紀末驚くような名作がたくさん書かれていたんだなと今更ながら感心する。 そもそも本作は、長崎の原爆投下では、もう一発の不発原子爆弾があったということから始まり、終戦のどさくさ火事場泥棒のソ連野郎が、北海道を占領するかもしれないなどという動きがあったという話を絡めて、終戦日前後の実にタイトな時間を描いている。 まるで見てきたような、否、見ていたような筆力である。 この作品も一気読了だ。 読み手にとっては、これくらい面白い読み物はないという感じだ。 しかしこと被曝者側からみたら、また敗戦国民から見たら、どうもこんな風な触れられ方はされたくない、と思えるような、ナイーブな問題もはらんでいる。 それはともかく、ミステリーリーダーの直感で、第三の原爆は、なかった、ということで読み進めた。 そこが読み手にとっては一つの大きなポイントだった。 本作の仕組みは、第三の原爆、日本では8.9物体、ソ連では恐竜の卵、をめぐって丁々発止の駆け引きがめぐらされ、それが、北海道占領に至るや否やというサスペンスも生んで、実に素晴らしい読み物になったのだった。 こんな風に素晴らしい作品が次から次へと書かれていた時代もあったんだなと、今更ながら、昔人の文化の高さに驚いている。 何も今の人が劣っているということを言っているわけではない。 しかしきちんとした取材力、歴史考証を経て書かれた作品の良さは、今の作者にもきちんと身に着けてほしいものだ。 文学は、決して感性のみではないはずだ。(2/26記)
2024.05.27
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ベルリンの夜に逃れて【電子書籍】[ 高柳芳夫 ] 時代が書かせた小説。 また時代が東西冷戦だったから書けた小説。 この東西冷戦の時代、私達は、いわゆる東側のことなど何も知り得なかった。 かすかに入る情報はウソばかりと思っていた。 だから見る気にもなれなかったし、聞く気にもなれなかった。 そういう時代に高柳はしっかりしたエスピオナージを書いていたんだな。 本作は、東西冷戦の中でも実に微妙な東ベルリンが舞台だった。 そうあのベルリンの壁崩壊で有名なベルリンで、まことしやかに起きたような話を小説化している。 先に書いたとおり、私達は、東西冷戦時代の特に東側のことなどなのもわからないから、この話、きっとそうなのだろうなと思うってしまうわけだ。 しかも微細にわたり、面白い仕掛けを講じている。 たとえば、東西を結ぶ秘密の地下通路。 これなんざあ、読み物として実に秀逸。 ソ連側の秘密のクーデター、というか、静かなクーデター、いま日本の株式会社の株主総会あたりで普通に起きているような、社長追い落とし作戦みたいな話。 これが政治の話に変わると、実に生臭くなるのだ。 読み物は、何らかの仕掛けがないとつまらない。 特に我々ミステリーリーダーは、きっと何か仕掛けがあるとふむものだから、これは、つまり、高牟礼博士が見つけた極秘書類に関し、なにか裏があるぞと踏んだわけだが、まさにそのとおり。 ここは、全部みろっと、めろっとお見通し状態だった。 いずれにしろ、エスピオナージというのは、実に血生くさい話だ。(2/25記)
2024.05.26
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仮面官僚 東京地検特捜部【電子書籍】[ 姉小路祐 ] まあようするに大掛かりな詐欺話、スティングのような。 そこに自殺にみせかける殺人などを織り込む。 官僚の悲哀を徹底して書く。 ただ、いただけないのは、少年事件についてのグリップがなされていなかったところ。 これが本作の評価をダダ滑りさせた。 少年事件など書かなければよかったろうに。 残念ながら、読者というのは多岐にわたるから、当然少年事件に詳しい人もいるわけだ。 本作は、警察で言うところの二課モノ。 ましてや地検特捜部という警察をものりこえた知能犯捜査軍団の話となれば、そんなものの詳細など誰もわからんだろうから自由に書いて構わないけれど、と言いながら、当時の文部省の組織について一部架空の部署をえがきましたなどというあとがきがあったのはよろしい。 ならば、傷害事件を起こした17歳の少年がすぐ警察から家裁に送致などということがあるわけ無いじゃないか。 警察の捜査の結果は、すべからく検察に送致され、その後家裁に送致されるか、年令によっては逆送されるか、とにかく今は年齢等によって複雑にそのルートが変わるのだ。 だから余計なことを書くなと言いたいのだ。そもそも17で芸妓だったら、それは、あーた、労働基準法に言う有害業務ということになりましょうぞ。 余計な逸話を付け足したばかりに折角の作品が台無しになってしまった。 まるで、万年筆書きの原稿用紙にお茶をこぼしたような結果になりましたな。 そこここに、小ネタを差し入れているのは、作者がミステリー作家だという自覚があるからでしょうね。 スケルトンエレベーターで人はいかにして消えるか。 定型的縊死をいかに達成させるか。 東京京都間2時間半のアリバイをどうやって作るか。 などなど、なかなかいいアングルから仕掛けてあった。 先の少年事件の誤りよりはまだましか。 だから、少年による傷害事件になどせず、普通の芸妓による傷害事件にすればよかったんだ。 縊死現場は、現場観察をすれれば、また死体観察を詳細にすれば、それが他易ということは容易にわかるだろう。 スケルトンエレベーターのトリックなんか、なぜ本作に必要だったのか。 ヘリを使ってのアリバイ作りだって? 夜間航行ですよ、いくら官僚でもそれは簡単にはいかないでしょう。 それも非合法商行為の後になんてことにはなおさらいくわけがない。 けれども、実は、私は本作に引き込まれてしまったのだった。 今まで書いてきた数々の突っ込みは、一生懸命読んだことの証左だと理解してほしい。(2/24記)
2024.05.25
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【中古】 紅蓮の毒 薬売り・辻村の探偵行 推理傑作集 / 日下 圭介 / 光文社 [文庫]【宅配便出荷】 8作の短編集。 越中富山の薬売り辻村が主人公だ。 薬売りの話だけに、毒を盛るというトリックが多用されている。 けれども、なんと昭和初期に飛行機を使ったアリバイ作りも入っている。 そして、彼は司法警察員でないから、犯人に対しては寛大なのだ。 また、警察に対しても有益な情報を与える。 実によくできたシチュエーションだ。 この作品がすぐれているなと思うのは、前読で千草検事が仮説後に自供を得て証を得る方法を取っていたのに対し、あらかじめ証を提示しそれをもとに推理して犯人を突き止めるというところだ。 それがミステリーリーダーには実に心地よい。 久しぶりの一気読みだ。 この作品の得なところは、司法警察員があまり出てこないところ。 だから、刑事法の知悉も警察組織もなにも必要ない。 ミステリーの三大要素にストーリー性が加味されていればいいのだ。 そのストーリー性が実にすぐれていて面白い。 衝撃的な話は、硫酸で死体を溶かしてしまう話だな。 これは、密室トリックにもなっていた。 まあそれにしてもこれだけのミステリー作家が今はもういないと私には思える。 令和のミステリー作家よ、奮起せよ。(3/30記)
2024.05.24
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針の誘い【電子書籍】[ 土屋隆夫 ] 3つのつっこみ所。 その1。 そんなにうまく封筒が作れるか。 そもそも偽装すべき封筒の右の端っこにそんなにうまく宛名だけを書けるだろうか。 その2。 千草の鋭利な推理は、なんの証拠によるものか。 その3。 まあ、題名が題名だけに針という言葉がヒントではあるけれど、現金配達員が殺された時点で犯人が全部みろっとめろっとお見通し状態だった。 まあそれにしても時代背景を理解しないと、本作は読み切れないだろう。 ことほどさように世の中が変わってしまったのだ。 さて本人作においては、先述の通り千草の推理が中盤から独り歩きするのだが、この筋立てには、私は疑問を呈したい。 つまり本作における事件の解明は、はじめに仮説ありきで、証拠のない状態で、被疑者取調べにより、自供を得て、それに沿ってやろうとしていた。 これを梨割り捜査という。 二課でよく使っていた手だ。 それがもとで世紀の冤罪をこしらえたのがあの悪名高い志布志事件である。 あれから20年。 はじめに仮説ありきつまり筋立て捜査は違法と言っても間違いない常識になってきた。 だからまず捜査機関は証拠を得なければならないのだ。 本作の場合、優秀な千草検事の名推理が中盤以降披露されるが、読み物としては整然としているものの合理性にかけけると言わざるを得ない。 ここはまず読み手に証拠を呈示すべきでしたな。(3/29記)
2024.05.23
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。。ロスト・ケア【電子書籍】[ 葉真中顕 ] 傑作。 そして、私がこれまで度々書いてきた、原作VS.映画の論議を再燃するもの。 つまり映画は、夕顔絵夢二郎の江戸ハプ日記 240219 口ストケアのとおり既観だった。 そこで問題視したのは、長澤まさみの役不足、違和感だった。 なるほど、そうか、本作のヒーローたる検事、大沢は、男性だった。 これじゃあ話があらぬ方向に飛んでゆくよ。 本作で訴えたかったことは複雑で、映画で表現したうすっぺらなことではなかった。 まず大沢がクリスチャンだということ。 それゆえ、性善説に与する。 そんなのが検察官になったのだから大変だ。 佐久間という友人がいて、高校時代バスケを一緒にしていたが、最終戦最終盤佐久間の苦し紛れの投球を 受けとった大沢はそれを善意にとらえ、シュートして、逆転勝利につなげたのだった。 こんなのが映画では全く表現しきれていなかった。 ここは大事なところだったと私は思う。 さて、本論。 本件殺人の真意。 果たして殺されていい者などこの世にいるのだろうか。 邪魔者がようするに要介護者が殺されていいものかどうか。 43人は殺しすぎ。 しかし家族が望めばそれもありか。 原作は映画より深く今回も原作の勝ち。(3/26記)
2024.05.22
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九頭の龍【電子書籍】[ 伴野朗 ] この作家はなるほど外国語学部中国語学科出身。 中国に詳しい。 フランスに発注した日本の軍艦畝傍に関わってベトナムの宗主権国中国や植民地としたフランスがごちゃごちゃにからみ、終盤大ドタバタ劇を演じた。 そうだねえ。 本作は私の守備範囲ミステリーを越えているので私もいらんことごちゃごちゃ書きたくない。 だがリアルの点で双生児の内の文人の方がフランスに入って下手な尾行をしたり、マラリアで命を落とすなんてえのは朝ドラ好きの読み手にはどうにも許せんこと。 それからアフリカ系の方に対する明らかな人種差別、行きすぎたパワハラなど今の世では考えられない蛮行が飛びかってハラハラドキドキだった。 私自身もそっちの方に気が取られてしまったのだった。 さてこの話がどれだけの真実にもとずくものなのかは、私自身読み手の勉強不足で、なんとも言えん。 そもそも畝傍なんて戦艦本当にあったのかどうかもわからん。 それでも本当に面白い読み物だった。 つまりこの作家には類いまれなる筆力があるということだ。 こういうカのある作家が、今いないもんな。 結局、小説というのは、取材力、筆力、そして、読み手の存在によるものなんだと、つくづく思った。 こういう読み物を読むと私たち日本人がいかに国際オンチかがわかる。 自国の防衛のことなんだから我々はもっと国際情勢を真摯に考えなればならない。(3/25記)
2024.05.21
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汚職捜査 警視庁サンズイ別動班【電子書籍】[ 姉小路祐 ] まあいわゆる二課モノだ。 それにしても汚職事犯を捕まえるために別働隊などが必要なんでしょうかね。 そのために元SPを使うなどという発想は、おそらく警察内部にはないだろう。 これは姉小路祐独特の発想だろう。 SP時代左目を負傷し、視力が低下したことから閑職に追いやられたが、その彼を班長にしてニ課別働隊を作ったわけだ。 そのターゲットはどうも唯一人という感じだったかな。 殺しも出てきた来て少しミステリーっぽくはしてあるけれど、まあ売りたい商業主義の読み物である以上、殺しはなんとしても入れなければならないものなのだろうが、果たして必要だったろうか。 しかも何人も死ぬんですものなあ。 最終結論が二課の補佐を逮捕する段という話では、なんとなくつまらなさだけが独り歩きしているような気がするのだ。 ここに来て平成シングルの時代の作品を立て続けに読んでいる。 その中で本作の作家姉小路祐、高柳芳夫、阿井渉介の作品はかなり硬質で、読み応えがある。 小説かくあるべしという思いを感じることができて快哉だ。 彼らは、森村と同世代だろうから、東野の次というわけにはいかないけれど、とにかくいい作品を書いていると感心する。 ここに来てやっと現役時代思い存分読めなかった作品を読むことができるようになったという感じかな。(2/21記)
2024.05.20
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列車消失【電子書籍】[ 阿井渉介 ] なかなか大胆なトリックを使って列車を消失させてしまった。 さてそのトリックが実際可能かどうかはともかく、机の上で考えるだけすごいことだと私は思う。 そもそも客車7両中6番目の車両が消えてしまったというトリックなのだった。 それについては、古典的なトリックがすでに外国のミステリーで例示されていて、それに則って若い刑事が推理したのだが、6号車だけをいれる引込線がなくて不可能だということになったのだった。 さて本作は、ループ線と言うものを利用して、身代金の受け渡しやら、猟銃による殺人を試みるというもので、たしかにすごいトリックではあるけれど、いやそうであるからこそ、図を使うなどの工夫があっても良かったと思う。 それから、いきなり容疑者が出てくるのはいかがなものか。 要するに、本作は国鉄vs.JRに関わる問題なのだ。 JRになる段階で多くの人が首を切られた他、希望の通らない部署に移動させられることになって、不満が爆発したことは本当のことだったろう。 で、読み手は、どうやってこの6号車を消したのかとういことにずっと頭が行ってしまうのだった。 そして私は、例えばそもそも7両なかったんじゃないのかとか号数の付替、あるいは、当初とは違う順番に客車が並んだなどということを考えた。 このことは決して誤りではなかった。 そして最終盤、すごいクレーン車が登場して、終わる。 その前、トレーラー車に乗せるなどというトリックも紹介してくれたな。 なお、犯人の動機もしっかりしていると思う。 最初から身代金の受け渡し役にJR北海道の幹部職員を指定してくるあたりから、うむどうも、国鉄絡みだろうなという推理はできた。 まあそれにしてもトリックを作るのは難しい。 しかしミステリー文学は、トリックがあってなんぼのものだ。 だからトリック作りに作者たちには努力してほしいものだ。(2/19記)
2024.05.19
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五十万年の死角【電子書籍】[ 伴野朗 ] 結構前とはいえ乱歩賞受賞作品だ。 やはりそれなりのなにかが本作にはあったという感じがする。 本作は、北京原人の話。 つまり北京原人の化石で儲けようとする軍部やらなにやらかにやらが中国大陸を舞台に騒ぎまくるという話だ。 その壮大なスケールに則った話の展開が、はっきり言って今の作家にも真似してほしい。 今の作家になくて伴野朗にあるのは壮大感だろうね。 本作の弱点は、人物名が複雑であること、人物の相関関係が複雑であることかな。 そもそも舞台が昭和はじめから昭和28年までの話だから、そりゃあ、壮大感が出るわな。 そして、ちょっとしたトリックですな、A、B、Cと準備してだ、それぞれを順に移して、本物だと思わせることになるのであれば、たしかに精巧な偽物でもそれが本物だと思うだろうな。 さて、この北京原人の化石、残念ながら作中大爆発をして中国大陸の露と消えてしまう。 なんちゅうこった。 それ以上に私が考えたこと。 それは、私の終活テーマが、私は何者?だから、そうして、私とは、気づきであり、サティであり、認知であり、自覚であるなどと考えつつ坐禅をしているうち、それもまた危ういことになってきて、最近は悟りであるとか、生命の大元まで行きついたわけだ。 その結果、本作を読んだら、私とこの北京原人も同じ生命の元から発していることに気づき、それが五十万年もの時を経ているということで、まさに悠久ということを感じてしまって、また別の側面から本作を味わったのだった。(2/19記)
2024.05.18
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プラハからの道化たち【電子書籍】[ 高柳芳夫 ] 本作はエスピオナージ。 まるで見てきたような書きっぷりだ。 というより作者は、現地を見てきたんだろうな。 実に細やかな描写である。 ときは、東西冷戦時代。 舞台はチェコスロヴァキア。 そこに日本人が入る話なんか荒唐無稽という感じなのだが、そうしないと日本の読者がついてこないだろうからな。 大した表現力だし、まるで映画の映像のような臨場感のある文章力だ。 前作で彼のミステリーを読んだから、今回も期待したけれど、今回は、ミステリーっぼいトリック、例えば、青酸カリを眠っている人の口からそっと入れるとか、陽気な米国人なのに、実は東側の将校だったとか、まあまあ様々な話が飛んでいくわけだ。 なにより、わたしは友にして義理の兄が死んだことを怪しみ、自分の立場をなげうって真相解明に向かう。 それがエスピオナージに変化していくわけだ。 そもそも当時の東の国名とか地名が出てくると、どうしてもエスピオナージになりますな。 まあね、私自身かっこつけてエスピオナージを一生懸命読んだ時代もあったけれど、実は、読んだ本の内容なんかまったく覚えていないし、そもそもその時も心の中には何も残らなかったのだ。 まあ、今高柳の作品を読んで、少しは楽しめたからよかったか。(2/16記)
2024.05.17
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影を裁く日【電子書籍】[ 高柳芳夫 ] 一級のミステリーというのはこういう作品を言うのでしょうなあ。 ミステリーとしては名作ですよ。 これまで、乱歩、正史、森村、東野の系統を読み研究していたわけで、その後、つまり東野の後継を探したがなかなか見つからず、しかも東野は、紙の本主義者だから、電子本信奉者になってしまった私はミステリーを読むだけ読んでも後継者の発見には至らなかった。 けれども本作は、私が研究している系統とはまた違う練りに練り上げられた上質なミステリーなのだ。 まず初出が昭和55年だ。 私が就職して間もない頃の時代の話なのだが、決して古くはない。 つまりその頃の最新版の機械を羅列したりしていないから、古さを感じることがないのだ。 そして、私が常々書いている、警察組織の問題であるとか、刑事法の問題には触れずに話が進んでいくのだ。 それなのに文学性も漂う。 一つの恋愛論も大きな幹である。 なにより、Who done it?ですな、終盤2択の問が何気なく語られる。 果たして、どっち、というわけだ。 そこに上質な気品あるヒントが何気なく提示される。 読み手はその部分まで戻らなければならない。 ヒントは2つ。高尚な官僚世界の話、サミットの官僚共の打ち上げパーテーに端を発する事件だった。 大平総理がまだ健在、その何ヵ月か後に急死したと思う。 その時代の話だ。 本当にミステリーかくあるべしという作品だった。 本日カテゴライズした。 これからもこの人の作品を読むことになりそうだ。(2/14記)
2024.05.16
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東京地検特捜部【電子書籍】[ 姉小路祐 ] 平成7年作。 30年近く前の作品だが、作者があとがきで地検特捜部に関してきちんと取材した旨書いている。 故に、その組織の中の動きは実にわかりやすいのだけれど、地検の幹部が次から次へと悪を働くものなのかね。 ちょいと疑問だ。 それはともかくそういうコンセプトで描いた作品だから、それはそれで受け止めるほかあるまい。 主人公の検事は大学助教授(当時)からの転身者。 株仕手絡みの話が続く。 この辺の話をずっと読んでいると眠気がさす。 そこは構わず読む他ない。 何しろ400ページ超えの大作だから、なかなか読了につながらない。 それでも、努力が大事だね。 いつの間にか話は終わっていた。 前読、文学入門、のせいもあろうか、本作をきちんと文学と認識して読めたのは素晴らしい。 ただこの手の作品はね、どうしても警察が中心になるので、検察幹部が警察からかき回されるのが困るようなことを作中言わせているけれど、これは多分取材先からのネタでしょうね、検察の本音が垣間見える。 これもまた作中なのだが、警察は捜査、検察は裁判とおぼえておけばほぼ間違いない、というのは名言だね。 その通りの観念でよろしい。 ただ特捜部は、政界汚職、大きな経済犯罪をターゲットにしているということは、普通の検察ではないと言うことになるということだろうね。 さて、姉小路祐の作品は、まだラインナップしているので、これから読み進めなければなりませんな。(2/12)
2024.05.15
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怪談狩り 山の足音【電子書籍】[ 中山 市朗 ] さて本作には、Iさんという、多分稲川淳二と思料される人物も登場して、数々の怪談話を披露する。 だが、恐怖というものとは違う、なんかほのぼのとした話だ。 祟りも怪我で済んでいる。 だが、作者が大真面目で怪談話を狩っているということを考えると、実際この本に書いてあることは何らかの形で何らかの事案が発生していたことは間違いあるまい。 そう考えれば何らエビデンスはないけれど、霊は存在する、という意見を一概に否定するわけにいかない。 残念ながら私にはそういう経験がないので、面白い本を読んで、ああ、そんなこともあるのか、ということを考える他ない。 たしかにこの本を読んでいる最中は、怪談話は存在するのだと思ってしまうものな。 先ほどエビデンスという話を出したが、例えば幽体離脱に関しては、すでにその種明かしが報告されている。 また、種々の壁などに現れる幽霊話については、人間の認知能力がそうできているから、つまりほんの些細なシミも人間は顔として認知してしまう、のだそうで、それ故その家には幽霊がいついていますという話になるのだとか。 さて自分には怪談話がないなどということを書いたけれど、詳細に検討すれば、あるにはある。 心霊写真もあったし、金縛りも経験しているし、火の玉を見たこともあるし、神社に行けば、神の存在を感じるし…。 ということで実はこのシリーズは、怪談拾遺集と考えるべきもので、文学的にどうのこうのなどと考えるべきものではないということ、真贋はともかく、世の中に霊異はあるのだということ、を考えざるを得ないものだとなろうか。 救われるのは、怪我はしても死なないという一つの線がはっきりしていることかもしれない。(2/12記)
2024.05.14
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文学入門 (岩波新書) [ 桑原 武夫 ] これまで読んできたわけのわからない文学論と違い、実にわかりやすかった。 ふむこれが文学かと腑に落ちた。 まず、 すぐれた文学と通俗文学との差異はどこにあるか? もちろん両者の中間にある文学もあるが、両極において、その差異を考えてみれば、一言でいって、前者が人生において一つの新しい経験を形成しているのに対して、後者は新しい経験を形成していない、ということである。とし、 以上のことを山登りにたとえてみれば、すぐれた文学は 初登攀 であり、通俗文学は ハイキング である。とするが、それでもわたしたちが読んでいる通俗文学を曲がりなりにも認めていることから、私達も文学論の末座にやっと座ることができたのだ。 この本の作りとして後半、読書会のような記事を上げているけれど、あれはいらなかった。 ところですぐれた文学というのは、 真にすぐれた文学は題材の新しさのほかに、 発見 をもっている。 つまり、その作品が現われるまでは何人にも、その作品によって示されたものの存在、むしろ価値が全く気づかれずにいたのが、一たびその作品に接した後では、いままでそれに気づかなかったことがむしろ不思議とさえ感じられる、そうした気持を読者に抱かしめるものをもっている。というものであり、 すぐれた文学とは、われわれを感動させ、その感動を経験したあとでは、われわれが自分を何か変革されたものとして感ぜすにはおられないような文学作品だ、といってよい。なのだそうだ。 その結果、 人生はあくまで合理的に生きられねばならないが、人生を充実した、よりよきものとするためには、理性と知識のみでは足りず、さらに人生に感動しうる心が不可欠である。 ところで文学こそ、そうしたものを養成するのに最も力のあるものである。 文学以上に人生に必要なものはないといえる。という結論に至る。 結局よくよく考えてみるとすぐれた文学とか通俗文学などと比較したり差別してみたりする必要性はなかったということだ。 著者の言う通俗文学しか読んでいない私でも常々感動しているのだから。(2/12記)
2024.05.13
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トヨタの片づけ【電子書籍】[ (株)OJTソリューションズ ] 本書は実に役に立った。 全文抜書きしたいほどだ。 とにかく断捨離が苦手な私は、早速本書の方法を一つでも多く取ってみようと決心した。 まず、①いま使うもの ②いつか使うもの ③いつまでたっても使わないものに分ける。 そして、 「いつか使うもの」に対しては必ず期限をもうける。 それを過ぎても使われることがなかったら、3つ目の「③いつまでたっても使わないもの」へと格下げする。 そして捨ててしまう。 これが原則です。というのが一つの方法である。 たしかに、いつまで経っても使わないものがある。 それをいかに上手に捨てるかがポイントだ。 壁際の整理が大切だそうだ。 つまり、 モノを隠しやすい場所のひとつに「壁ぎわ」があります。 ですから、片づけをしようと思ったとき、いちばんよいのは「壁ぎわを見る」ことです。 いらないものは、とりあえず壁ぎわに置いてしまうからです。 一方、真ん中のエリアなど、人がよく集まる場所はきちんと整理されています。からだ。 また、 「使わないもの」「使えないもの」に赤札を貼っていく のです。 赤札には、場所や品名、数量、赤札を貼った理由、処置部門、担当者、処置期限、処置方法などをメモしておくとよいでしょうという方法もある。 今まで様々な断捨離本、整理本を読んできたが、とにかくきれいに片付いたことがない。 あまつさえ、とりあえずボックスに取り込む方法はもうボックスごといらないもので溢れている。 それなのに、捨てられない(ような)ものばっかりで、結局断捨離は先送りされてしまう。 せっかく買った買い物かごも今はいらないもので溢れかえっている。 私の場合は、そういう何もかも詰め込んでしまうことが実は最も下手な方法だったのだった。 そりゃあ、様々やってみましたよ。 一日15とか20捨ててみようなんてこともやってみたが、何日も続かない。 したがって不用品がただただ増えていくばかり。 今回本書を読んだ以上は、なんらかの結果を残したいものだ。(2/10記)
2024.05.12
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歩くだけで不調が消える 歩行禅のすすめ【電子書籍】[ 塩沼 亮潤 ] 本書における歩行禅は、著者が千日回峰行を完遂した人ゆえ、歩行しながら、懺悔と感謝をするというもの。 その後、坐禅を組む。 このことをルーティン化しなさいということだ。 翻って私自身、毎日今15分の坐禅を組んでいるので、ここに歩行禅という概念が入るということは、一体どういうことなのかということを期待して読んだ。 しかし、残念ながら、歩きながら往きは、懺悔の言葉を唱え、帰りは感謝の言葉を唱えるということなので、果たしてこんなこと私にできるのだろうかと、単純に疑問に思った。 そもそも、坐禅は、何も考えないということがコンセプトでしょう、だから、歩行禅においては、雑念入りまくりになるし、本書から感じることは本来無功徳であるはずの仏教、坐禅が歩行禅で懺悔し感謝の念をのべるということで、なんとご利益があるような事が書いており、それはちょっと違うんじゃないのかななんて考えた。 ただし、歩行つまりウォーキングをルーティン化することには私も賛成だ。 さてどこに組み込むべきなのだろうか。 さしあたって、月曜日、帰宅後、挑戦してみようか、などと考えたところだ。 夕方が暗くなる前の季節は十分使えそうじゃないか。 このブログを開始し始めた頃は、朝ウォーキングをしていましたな。 朝、真っ暗な季節も続けていたものだ。 そのようなときの星星のなんときれいだったことよ。 まさに奇瑞だった。(2/10記)
2024.05.11
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怪談狩り 黄泉からのメッセージ【電子書籍】[ 中山 市朗 ] 数多の怪談話を集めたもの。 それが本当のものかどうかはともかく、実をいうとこの怪談話で私はうっすらと涙が出てきたのだった。 本作は、死者の話だ。 だからなのだろうか、怖さよりも悲しさ、かわいそうさという方が先に出てしまったようだ。 不慮の事故により死亡した人の話は、何より悲しい。 戦争で死んだ方もある一種の不慮の事故により死亡した人だと思う。 何しろ私は、靖国神社に行っただけで涙が出てくるのだ。 そのメカニズムは詳しくはわからない。 そんなこんなで私は、神社を詣でる度、ここに神様がいらっしゃる、ここの神様は今外に出ていて社にはいらっしゃらない、などと感じる事が出来るようになったのだった。 その理由は実は死者のことを感じる事が出来るからなのではないかと思うようになってきた。 死者の話を聞く度あるいは読む度涙が出るのである。 本当は作者は、本書を読んでもらって恐怖を味わってほしかったんだろうが、私はただただ涙が出てくるのだった。 霊とか霊魂とかあるのないのという議論百出なのだが、なにしろ、エビデンスがないから、結局それらはないことになっている。 仏教でも、それらはないことで、話が進む。 なのに、なぜか怪談の主な舞台はお寺だけれども。 悔しい思いで亡くなれば、そこに怨念が残る。 それを私は感じているのかもしれない。 感じているだけで、何も見えないし聞こえもしないのだけれど。(2/9記)
2024.05.10
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【中古】図解早わかり!道元と曹洞宗 /三笠書房/中野東禅(文庫) 日本における代表的な禅宗は、臨済宗と曹洞宗である。 道元禅師はまず臨済宗建仁寺で栄西の指示を受け中国にわたる。 そして天童如浄禅師に巡り合い、禅をものにする。 日本に帰り、禅宗を広めたのだが、曹洞宗の開祖だということは意識していなかったということが本書に書いてあった。 今曹洞宗の本山は、永平寺と総持寺があるが、なぜ二つなのかということも本書に書いてある。 それはともかく、なぜ道元禅師なのかということについていうと、私の今の課題が、終活であり、それは、私は何者というというところからきている。 私は、気づきであり、サティであり、認知であり、自覚であるところまで行ったが、そこから先になかなかいきつけなかった。 そんなある日突然坐禅したくなった。 そして、サティその他も結局脳の作りしまやかしに過ぎないというところに行きつき、まるで坐禅病みたいなことになったのだが、さらに坐っていたら、悟り、が出たり入ったりしている事に気付いた。 つまり、坐禅をした結果、私は自分が悟りではないかという仮定を得た。 さらに坐ったら、今度は私の本当の元に行きついた。 それは遠い過去の話、生命として生まれついたもの、それが分化し進化して現在の私と思われる者がいるのだというところまで行きつき、とすると、それこそ蜻蛉だって螻蛄だって水黽だってみんなみんなでどこは同じ生命体よ、という事に気付いた。 今の私はその分化し進化していきついたものであり、本当の私は、大元の生命体なのだなと、やっとやっとそこまで行きついた。 表見的な私をすべて無にすると、残るのは、生命の大元。 それが本物の私なのだと直感したのだった。(2/8記)
2024.05.09
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挙動不審者【電子書籍】[ 佐竹 一彦 ] この人はあまりにも警察内部のことに詳しすぎる。 もしかして警察関係者なのか。 さて本作は平成13年作というからかれこれ23年も昔の作品である。 そういやあワープロなどという今では死後になってしまったような言葉も出ていた。 話の中身はしかと理解した。 さてあの時代、留置被疑者を刑事部屋に持ってくることなどできたろうか。 この種の作品でよくあるのが刑事が留置施設に土足で入りこむような記述だ。 私はもしかしてそんなことこの作品で登場人物がするんじゃなかろうななどと予防線を張っていたのだが、さすがに警察内部を知り尽くしている男、それはなかったけれど、本作の本作における事件の本ボシたる大事な大事な被疑者が卑劣漢に刑事部屋で刺されてほぼ即死するというような話では、これは読み手の方も検証が必要だなと感じたわけだ。 果たして、平成13年当時、被疑者が取調室以外に出ることが可能だったかどうか。 ここのところがね、どうも気になるところだ。 作者は、前作駐在巡査でもわかる通り、かなり警察内部のことを知っている。 つまり、昭和年代の刑事部屋のことを知りつくしている人ではないのか。 ただし、まさか制作当時もう被疑者を刑事部屋になど連れてきてはいけないということがわからなかったのではなかろうか。 第一次捜査機関たる警察捜査に関する私見とも思える登場人物の意見やら、冤罪防止のために何をするかという問いかけやら、そして、澄んだ目の犯人もいれば濁った眼の無実の者もいるという私見は、とても興味深い意見だった。(2/7記)
2024.05.08
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100歳まで読書 「死ぬまで本を読む」知的生活のヒント【電子書籍】[ 轡田隆史 ] 前読出口氏の読書論に参ってしまっていた私には、本書は良薬の一服だった。 まさに読書とはこうあるべきもの、納得の一冊だった。 出口氏にしても轡田氏にしても知的生活者だから、読書に一家言持つのは当たり前のところ、出口氏のそれは、私どもにとっては、べき感がすごく強くて、その型にはまっていなければ読書とは言わん、とばかりの書きっぷりだった。 読んでいる本も私とシンクロするところはない。 それに比し、本書は、自分の読んだ本を紹介しつつ、読め読めというわけではなく、そんな本もあるから参考にしたらというスタンスだった。 そして私はなんと今電子書籍を一生懸命読んでいるわけで、そうなるとそれは、読書と呼べるものなのかどうか、なんて考えてしまうわけなのだけれど、そのことつまり紙対電子のことについては、著者は言及しなかった。 ただ、本当に今まで何百冊もの読書論(術)の本を読んだにもかかわらず、全く聞いたことがない言葉が出てきた。 それは、拾い読みという言葉である。 拾い読みとは自分の蔵書の中から、暇つぶしに一冊選んで、文字通り拾い読みすることだ。 これは、電子では、容易にできることではない。 行く先々で本屋に寄ってみようという主張には賛成だ。 しかし、世の中の本屋が全く少子化同様に消えて行っている。 残っているのは大手の本屋だけじゃないのか。 そいういう楽しい読書論というのが、この本の題名の通り、この人が百歳になったら、消えてしまうのじゃないのかなんて思った。 拾い読みはできずとも、私は電子本の道を歩もうと思った。(2/6記)
2024.05.07
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学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録2【電子書籍】[ 峰守 ひろかず ] 世の中には、 本編の後に、次作が続くシリーズものの場合、 例えば1の後の2、2の後の3とか、 続々編、 あるいは新などとつくそんな場合、 よく言われているのは、 第1作に如くべき作品はないというものである。 全てがそういうわけではないのだが、本作は確かに第1作 に比べて 見劣りするかな、 と思った。 ストーリー というのは、 男女があって初めて調和的になるのかな。 本作もその通り。 前作では、 指導員と単位をもらうべき大学生という間柄だったのが、 本作では、 雇人と雇われ人の関係になっていた。 徐々に徐々に縮まる2人の間は読み手をやきもき させる。 呪術に関する著者の蘊蓄は、 とどまるところを知らない。 しかしそれで果たして商業ベースに 乗るものなのだろうか。 私にはそうは思えない。 結局それは、 今の時代の特徴であるロングテールという話さ。 本作にはわけのわからぬ帰命宗などという 仏教系の 坊主も出てくるのだが、 こいつは最初から怪しかったね。 私自身最初から疑っていて、 こいつはきっと最後に何かあるぞと思っていたら案の定、やってくれたのでした。 しかし、 まるでシャーロック・ホームズのモリアティー教授のように彼は消息不明になるのだった。 結局、 相変わらず本作の流れは、 呪術の トリックを明らかにするというもの。 本作では結局霊的なものは出てこなかった。(2/5記)
2024.05.06
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警視庁アウトサイダー The second act 2【電子書籍】[ 加藤 実秋 ] ゴチャゴチャして何が何やらわからぬまま読了。しかしどうやらto be continuedのようだ。 ヒロインがなぜ普通のルートを経ずに研修刑事になったのかは次巻で明らかになるのだろう。 しかしそれにしてもその構想そのものがお粗末だな。 すべての物事はリアルの元に話が紡がれなければならない。 そもそも所轄の刑事がしている捜査は組織上にのせられ、共有されなければならない。 このそうあるべきことが全部無視されていることが本シリーズに大きな違和感を与えている。 もっとも私はこの作家にもこの作品にも何の期待も持っていなかったから、一言でいうとどうでもよろしい話なんだが、少なくともこの本を読了するために使った時間を私に返してほしい。 時間の賠償問題ですな。 ところで最近のミステリーの傾向だが、がぜん女刑事、女警察官が多くなったな。 流行なのだろうか。 それともジェンダーフリーからなのか。 話の中で活躍するのは男でも女でもどちらでもよろしい。 さて、本作、どうも作者は警視庁内部の権力闘争を軸に話を紡いでいるようだ。 そういうのもこの頃のミステリーの特徴だな。 やってみれば犯人は、刑事。 か。 まあそれにしてもずいぶんミステリーを読んでいるが、東野の後継が見当たらない。 その東野も紙の本論者だし。 kindle unlimitedが小出しにするミステリーより私の方が読むのが早いものだから、私の研究も停滞しているところだ。(2/5記)
2024.05.05
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なまなりさん【電子書籍】[ 中山 市朗 ]特に恐怖は感じなかった。 などと書くと自分に祟りが来るんじゃないかなどとおそれてしまう。 それはともかく本作は170ページほどの中編だ。 いじめにいじめられた女性が、今度は自殺して悪霊としていじめた双子姉妹を祟りぬく。 作者によれば、自殺した霊は、地上にさまよい、他の霊を吸収してパワーアップし、終いには手がつけられなくなるのだそうだ。 そんなことを読むと恐ろしいことこの上ない。 けれども、本作そのものは、特に怖い思いをしなければならないほどのことはない。 本作の主人公は、沖縄出身の魔退師。 悪魔の魔、退くの退、師匠の師で、魔退師だ。 彼が一生懸命悪霊を鎮めようとするのだが、なかなかうまくいかない。 作者によれば、 霊なんていうものは、あると思えばあるし、ないと思えばない。 ただ修行をすることで、普通の人が感じたり、見たりするものとはまた違う、何かを感知できるようになる、ということはあります。 そういう力がお役に立つなら、はばかりながらお力を貸しましょうというのが退魔師ですということなのだそうだ。 実はこのことは私に明確に現れている現象なのだ。 私は神社に行くと、この文章のような、何かを感じることがある。 靖国神社では、涙が止まらなくなってしまった経験がある。 他の神社でも、表現的には、この神社には、神様がいらっしゃる、いらっしゃらない、ということを感じる。 だがその姿を見たことはない。 ただこの文章のとおり、感じるのだ。 私のまわりには、父の義理の叔母が霊能者としておられた。 残念ながら、60そこそこにして亡くなられた。 霊能者はこのように短命の方が多いようだ。 あまりにも障りに触りすぎるからかもしれない。 本書のように、それは、見えるものではなく、感じるものだとすれば、私はにわかに霊というものの存在を信じてしまうのだった。(2月4日記)
2024.05.04
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ハーフ・ブラッドの沸点【電子書籍】[ 麻野涼 ] 泣きましたな。いや、泣かされたというべきか。 本作は長らく(と言っても昨年の作品なので、数ヶ月という単位か)Kindleunlimitedにあったもの。 この作家は、私は、ミステリー作家だと思っていたので、てっきりミステリーだと思って読み始めた。 なお、この作家のミステリーは特に面白いと感じたことはないので、忌避していた。 結局Kindleunlimitedで読むミステリーが枯渇してしまったのだ。 で、東野の作品は、紙の本だけだし…。 それはともかく、本作はハーフ・ブラッド、いま我が国ではハーフと言っている方たちの戦後から56年を経た復讐劇だった。 エリザベス・サンダース・ホームにおける、仲良しな七人組のうちの一人が当時のいじめっ子から殺された事件が軸になるのだけれど、それに、臓器移植の問題をからめ、彼らをいじめた殺人鬼は、日本国国会議員になっていて…という話。 差別という問題ですね、この愚を作家はついてきた。 それを件のいじめっ子に投影させ、国会議員をして語らせる。 ときはコロナ禍始まりのとき。 強毒新型コロナウイルスを横目に、真相を陽の目にさらすべく、記者やら弁護士やらが活躍する。 件の国会議員は、悪の手を次から次へと回し、延命を図ろうとする。 まあ、この延命策こそ彼が犯行を認めた証左ということになるんでしょうがね。 中国の臓器売買が世界を席巻するという筋立ても実に面白い視点だった。 ただ、私が納得いかないのは、件の国会議員が突然元気になったというところ、アル中で肝臓が完全にいかれていたはずなのに、いきなり元気になり、また酒を飲み始めた段では、私は絶対彼は臓器移植を何らかの形で受けたんだろうなと読んだけれど、結局作者は自然治癒的なことを書いていた。 彼、つまり麻野涼は、ミステリーでないほうがいい作家になりうるのかもしれない。 本人に言わせれば、ちゃんと56年前の殺人事件を出しておるから、本作は、立派なミステリーだっせ、ということなんでしょうけれど…。(2/4記)
2024.05.03
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学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録【電子書籍】[ 峰守 ひろかず ] 世の中には色々な話があるものだ。 本シリーズは、 呪いというものに焦点を当てた作品である。 博物館の学芸員である西紋寺唱真のところに、 学芸員の単位を 取ろうとしている女子学生が来て、西紋寺から講義と、 実技 の指導を受ける 。 学芸員に関して著者はクソも味噌も一緒のような資格で 、 日本の博物館なり図書館なりの発展が阻害されているようなことを話す。 それはそれでいいけれども、 結局本作は、 この世に呪いはないということを重ねて正して行くわけだ 。 つまり西紋寺は、 研究者として、 実際自分が呪いの被害にあってみたいという願望を持っているのだ。 しかし西紋寺は、 その呪いのトリックを全部みろっとめろっとお見通し 状態、西紋寺的には全て物足りないと感じてしまうのだった。 ただ一人からどうやら西紋寺が 本当に呪いにかかり、顔色も悪くなり 歩くのもままならないような状態に陥る。 やはり世の中には呪いが存在するのだろうか… ? ここが本作では、 大きなポイントだろう。 全編、 呪いのトリックについて明らかにされて行く。 果たして読み手はそれで納得するのかしないのか。 ミステリー リーダーにとってはどうも物足りなさだけが残った。 まだ1作しか読んでいないので、 どうこう言うのは早いのかもしれないが、 全編パンチが足りない。 それが偽らざる感想である。 つまり ホラーでもないミステリーでもない、 いや、 作者 はこう言うだろうか、 その両方だとでも。 しかし本作はその どちらで読んでも、 物足りなさは拭いきれないそういう作品だった。(2/3記)
2024.05.02
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解剖探偵【電子書籍】[ 敷島 シキ ] あーあ、また不知の作家がやらかしたななんて冒頭思った。 けれど作者は、死体現象については実に詳しく勉強していた。 その点は大いに認める。 しかし、大きな欠点が数点ある。 その一つは、そもそも変死現場に刑事が臨場して簡単に自殺で片付けるほど日本警察の捜査方法は甘いわけがない。 むしろ本作のようなあまちゃん刑事の相田などとうの昔に首になっている。 変死現場では何より鑑識が一番。 現場鑑識が終わり、死体を搬送して司法検視をし、しかるべく解剖に回す等の手順なのだけれど、その点、この作家は全く理解できていない。 次、ミステリー作家としても問題点。 終盤どきりとする展開になった。 それはミステリーの掟破りをなそうとしていたからだ。 これはフェイクだったけれど、それでおわしたなら、本作は反則あるいは違反のそしりを免れない。 つまり、探偵が犯人というもの、この件は、ガストン・ルルーの黄色い部屋以外あってはならないトリックなのだ。 さすが作者、そこで思い返したか結局登場人物を消去法で余った人間を犯人に仕立て上げましたな。 この犯人性は、読み手から見てちょっと納得感がない。 それより先述の探偵犯人論のほうがまだ物語としては変に納得できできる話になった。 結局解剖医霧崎の出自というか幼い日の惨劇が終盤に用意されるわけなのだけれど、そのことについて、ほんとうはもっと早めに白日にさらしておけば犠牲者は増えなかったのではないのか。 刑事の目に殺された人の霊が見えるという逸話、これをこれからいかに活かすかが本編をシリーズ化するための大きな課題になりそうだ。(2/2記)
2024.05.01
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駐在巡査【電子書籍】[ 佐竹 一彦 ] 前読つまり警視庁アウトサイダーがあまりにもひどかったものだから、本作のリアルさが心に沁み、軽快に読了した。 作者はもしかして警察関係者かね。 実在するような駐在所の旦那その奥さん、地域の方々、そして所轄の刑事課員の動きだった。 そして例えば、定型的縊死では決してあり得ないとまで言われている他殺に関し、唯一、地蔵担ぎという技でそれを為す事が出来る、つまり、殺人を自殺に見せる事が出来るなどという話も持ち出し、駐在の猪野が刑事課長に進言するあたりは、何とも凄いぜ。 駐在の奥さんの推理も素晴らしい。 とはいえ、駐在の奥さんが出して見せたトリック解明は、ミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態なんだけどね。 その証拠の出し方が、後出しではなく先出しなのも心地よい。 それで読み手がこの物語に素直に参加できる仕掛けだ。 パリに留学しているはずの画学生がどうやら引きこもりではないのかなどというトリックは見事でしたな。 それは届けられる宅配食から推理したというわけだ。 こういう何気ない推理をきちんとした証拠を提出して読み手に考えさせる手法が素晴らしい。 ただね、駐在さんの遵法精神に?マークがつくのはいかがなものか。 やはり駐在さん、酔っ払い運転やら無免許運転は、いかに村内のこととはいえ、見逃してはだめだ。 自分はきちんと酔っ払い運転をしない自覚があるから、そこは見事だ。 まあそれにしても、猪野駐在がこれほどできるのは、彼が村内をきちんと実態把握しているからだ。 結局、かつての警察活動というのは、地域警察官の実態把握の賜物だったんだよな。 そういうのがどうも今の警察からはなくなっているようだ。 なにしろ個人主義がはびこってしまったのもね。 これからの警察活動が、一体何によるべきものなのかを考えなければならない時代に入ったのだということを本作を読んで逆に感じたのは私だけだろうか。(2/1記)
2024.04.30
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警視庁アウトサイダー The second act 1【電子書籍】[ 加藤 実秋 ] いやあ、これだけの最低の作品は読んだことがない。 とにかく、刑事法も知らないし、警察組織のことも知らない。 そもそも、警察組織を無視することが本作の肝だということならば、そのことをきちんと説明するべきだろう。 なぜ、警察学校を卒業したばかりの警察官が所轄の刑事課にすぐ入れるのか。 その辞令が警察学校の卒業式の折、警視総監から発せられるなどということがあるのか。 警察官の事務職とはこれいかに。 現場で命を張っている現職の警察官に対する侮辱ではないのか。 そもそも留置場を今は留置場などとは言わない。 留置施設だ。 そこに捜留分離の建前から、刑事は一歩たりとも入ってはいけない。 まして施設内での現金のやり取りなど厳禁だ。 これだけで、本作でいうヒトイチの対象行為になる。 即懲戒免職だ。 この作家の法律オンチが如実になるのは、逮捕して3日すれば勾留という身分に被疑者が変わるということなどと書いているところだ。 しかも本作のずるいところは、続編があることから、続編を読ませるべく、私が冒頭ありえない話について書いたところがなんだか大きな問題になるような書きっぷりをしているところ。 ヒロインの祖父が警察キャリアで、その天下り先が大規模開発に関し何やら悪だくみをしているようだということ。 そのために彼女がいきなりの変人事にさらされたということらしい。 しかしこの作家、こんな風な作風の作家でしたっけかね。シェアハウスだったっけかなんだっけかは忘れたがあの作品では面白おかしく事件を解明していったな。 そういやあ、本作で、万引きは生安の仕事だ、などと言い放つところも本当に気に食わない。(1/31記)
2024.04.29
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教養が身につく最強の読書【電子書籍】[ 出口治明 ] 様々な読書論を読んできたが、ここまですさまじい読書論を読んだのは初めてだな。 そもそも著者と私はステージが違うと感じた。 あまりにも粗末な読書論を読んだばかりだったので、本書は逆にあまりにも高尚で、とてもとても私ごときで歯が立たない。 結局自分が読んだ本の紹介ですな。 これが実にいやらしい。 立花隆もこんなにいやらしい書き方はしなかった。 逆に読み解くと著者は、自分はこんなに高尚な本を読んでいるのだぞ、できるのだぞということをひけらかしたいのではないのかと悪意に取ってしまう。 そういうつもりで書いたのか、あえてそうしたのかはわからない。 確かに古典から学ぶことは多いだろうが、古典がすべてであるわけがない。 彼は古典論者だものな。 だから次から次へと一字一句古典を読んで、フームなるほどその通りだと思っているわけだ。 その押し売りが私は気に食わないのだ。 確かに自分が読んだ本がこれだけすごいんだぞという書き方はよろしい。 しかし、それに対するる対論がなければ成立しないのではなかろうか。 例えば一神教と多神教の考えについて、著者は、ある一部の本を読んだ結果、多神教から一神教にいかに変化してきたかが分かったなどと書いているのだけれど、はたしてそうか。 そもそも日本における神様と一神教のゴッドでは性質が違う。 これこそ同じ土俵に上げられるものではないのだ。 そういうところの考察もせず、多神教から一神教では、日本の八百万の神々が何だか侮辱されたような気になってしまった。 速読に対する批判もしていたけれど、あーた、本当に必要な書物を一字一句読めるのかってえの。 あと、本書には、何一つミステリーというものがのせられていなかった。 彼にとってそういうのは読書ではないとでも言いたかったのだろうか。 とにかく不快な一冊だった。(1/30記)
2024.04.28
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EVIL 東京駅おもてうら交番・堀北恵平【電子書籍】[ 内藤 了 ] だんだんだんだんこのシリーズが好きになっていく。 内藤には本シリーズと藤堂比奈子のシリーズがあるが、私はそのどちらも好きだ。 で、どちらもKindleunlimitedに次巻が入っていないので、きょうなんざあ、BOOKOFFで紙の本を探しましたよ。 そしたら、藤堂比奈子のほうがありましたな、一冊。 それくらいハマってしまった。 さて、本作であるが、昭和30年代の現職刑事による若手警察官殺害事件がプロローグで、ここ数作始まるが結局本作でもその謎は解かれませんでしたな。 ばかりか、うら交番への道がどうやら東京駅の改装によって断たれそうだというところまで話が進んだ。 結局本作は堀北恵平の人間性が読み手の共感を呼ぶんだろうね。 警察官としての矜持がはっきり示されている。 反面、昭和30年代の永田のような悪徳警察官の姿も描かれて、警察官はいかにあるべきかという問題を読み手に提示するわけだ。 そういう人間性に関する物語なので、事件そのものはそっちのけ、読後一体どんな事件でしたっけかということになる。 事件はおもて交番の前で起きた通り魔事件だった。 恵平が犯人を現行犯逮捕するる。 ひと騒ぎしたあと交番近くに風呂敷包が忘れされられているのに気づくが、その中には人間の心臓が入っていたという話でしたな。 あと、作品中恵平が何度かこちら側から昭和30年代に行けるのなら、あちらからもこちらの世界に来ている人がいるのではないかという推定をしているが、そのことも多分今後大きな本シリーズを解く鍵になりそうだ。(1/28記)
2024.04.27
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マインドエラー【電子書籍】[ 永山千紗 ] 一体何の話なんだ、だらだらだらだらと話が進み、殺人事件が発生するのは、ほぼ本の真ん中。 本件の伏線を作るため、本の半分も割いたっていうのか。 そして、殺人事件が起きたからって、果たして本作をミステリーと呼んでいいのだろうか。 だって、動機も機会も方法も確かに書いてはあるけれど、そのことの一つでも我々読み手に考えさせるものであればいいのだが、そんなこともなくただただ話がまただらだらと進んでいくのだ。 刑事も出てくるが、刑事法にしろ警察の組織にしろ、ほぼほぼ関係のない話だったから、なんともならん。 しいて言えば本件は少年事件だから、そのへんの詰めがちょっと甘かったかな。 結局、残ったのは、ストーリー性だけ。 前読の文書モノよりは話がぶっ飛んでいて面白かったとは思うのだが、冒頭から私が書いているとおり、本作のだらだら感は最後まで消しきれなかった。 私は、読書というのは決して時間つぶし暇つぶしの道具ではないと思う。 読書で何らかの思いを持つことができるのであればそれでいいのだと思う。 その意味で本当は、しっかりと自分の記憶に染み付いてくれればいいのだがと思うんだけれど、多分この記事を読む頃には、本作の筋などもう忘れてしまっていることだろう。 この読書の難しさよ。でも私はまだまだ読みまっせ。(1/27記)
2024.04.26
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灰の轍 警視庁文書捜査官【電子書籍】[ 麻見 和史 ] 黙々とミステリーを読み勧めているものだからあっという間にkindleunlimitedが枯渇する。 この文書捜査官も、シリーズ2巻で、あとはは有料だ。 マアそれはともかく、この作家のモタモタ感はなんともならん。 口説いといこと、書きっぷりが。 つまり文章力がない。 作家にとって文章力がないということは致命的だ。 この作家は強引な筋立てをしてしまう。 そこが西京的でもある。 西京症候群とでも言うのだろうか。 ただし、西京が刑事法を知らず、警察組織も知らないところ、この作家は、少なくとも警視庁の事務分掌を知っているらしいし、刑事法を知っているのか知らないのか、無駄な手続きを作品上に出さない。 それはとても賢明だ。 さてここまで2作を読んでみて、冒頭に出る、言葉、たしかに文書捜査官だからその意味をきちんと解釈しなければならないから、最初の導入ではとても大切なものなのだろうが、前作のダイイングメッセージといい、今回の犯行計画や、ゆにぞんころすげきやくしたい、という言葉、これ、最終盤で解釈するのなら、無駄だな。 そもそも我々ミステリーリーダーには、ころすしたい、などという言葉がきっと別の意味に違いないと考えるではないか。 そしてぼうっとではあるが、最終盤の解釈は全部みろっとめろっとお見通し状態だったのだ。 あと、筋読み論。 これは今や警察捜査ではやってはならないこと。 奇しくも理沙の多分今後もライバルであろう女性管理官の言に代表されるように、筋読みこそ、冤罪の原因、というのは正論だ。 それに理沙が、だから筋読みをして一つ一つ裏を取ることが必要だという反論は、それは違うんじゃないのか。 私は、このシリーズでは筋読み、ということも課題にして読んでみたい。 kindleunlimitedに早く入れてほしい、次作以降も。(1/27記)
2024.04.25
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DOUBT 東京駅おもてうら交番・堀北恵平【電子書籍】[ 内藤 了 ] いやあ、泣いた泣いた。 本当に泣かせるいい話だ。 内藤の警察に対する取材力が半端ない。 警察学校等の警察官の教養期間等をきちんと把握している。 だから、うら交番の話を出すまでもなく、その話はとても切れが良く読み手の心にぐさりと刺さる。 内藤了は、傑出した現代の語り部だ。 このシリーズをすこしずつじわりじわりと読み進めてきたが、さて柏村のいる昭和30年年代のうら交番とは一体何なのだろうか。 今回の冒頭では、その昭和年代の永田刑事というものが出てくる。 それが次作にもプロローグで出てくるようだ。 そこから少しは柏村のこともしれてくるのだろうか。 恵平は、いつの間にか丸の内西署の刑事課員に好かれ始め、作中、刑事になりたいという彼女の思いが吐露されるシーンもある。 だから、次作は、彼女はきっと刑事になっているんだろうな。 さて本作は、ホームレス連続殺人事件。 ダークボックスで人が集められ、真犯人の意図の下、知らず知らずにゴミ収集車にさらわれたホームレスが入れられて裁断されるという話だ。 そこでDNA鑑定やらなんたらかんたらやで身元が特定されていく。 そんなこと昭和年代の警察官に話しても、なんのこっちゃということなのだけれど、どうも柏村という昔の警察官が、そこのところを彼なりに理解しているフシもある。 結局、本作は、to be continueなのだ。(1/26記)
2024.04.24
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永久囚人 警視庁文書捜査官【電子書籍】[ 麻見 和史 ] 副題が警視庁文書捜査官だから、そのとおり、残された文書とか、ミステリーではいわゆるダイイングメッセージなどの謎を解明することにより、事件の真相解明に資するものだ。 けれども、これまた読みづらい文章で、そのうえ飛んで行くのだ。 どうもこう言う書きっぷりは、私は苦手だね。 そもそもの謎は、ダイイングメッセージからなのだが、つまらん謎解きで、A BOYだって、ふん、なんともならんわな。 真犯人は、被害者がやられたとおりに、ワイヤーで体を締め付け、水攻めにする等々、そのとおりに連続殺人で仕掛けてゆくのだ。 そもそも、全99巻の小説なんて、そんなものを想像しただけで読むモチベーションがだだ下がり。 全巻最後の19章だけが変えてあり、エピローグでまたもとに戻るから、ものめずらしい本で、人が欲しがるんだと。 しかも自作本、つまり、印刷まで自分持ちだってさ。 そんな事読んだだけでもううんざりだ。 登場するのは副題の係。 警部補と巡査が女性。 警部補のほうが本ばかり読んでいる、このシリーズのヒロイン。 巡査は188センチ弱の大柄な女。 その間にいる男性巡査部長の矢代がこの二人の間に入ってまとめる。 相棒の薫くんのような役割を担う。 全編話が固くてつまらない。 ああ、また私は、もう一冊このシリーズの続きをライブラリに入れてしまった。 読むモチベーションがもうない。(1/25記)
2024.04.23
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透明カメレオン【電子書籍】[ 道尾 秀介 ] 本作では、二度驚かされる。 何を言う、そなたはミステリーリーダーではないか。 序盤、話がもたもたもたもたしていて、収拾がつかない。 このまま進むのであれば、もう私はこの本を捨ててしまおうかと思った。 しかし私のポリシーは何しろ完読なので、とにかく先へ先へと進んだ。 そして道尾の作品について気づいたこと。 せっかく二度も驚かされたのに、心に響かないのは、文章力のなさが原因だと思う。 私のように何十人もの作家の作品を読んでいると読みやすい文章力のある作家となんとわかりにくい作家なんだと思う作家にわかれてしまう。 道尾は後者だ。 それが実に惜しい。 何しろ、一度驚かされ、二度驚かされたんだから。 しかも二度めは、うっすらと私の眼には涙が浮かんでいたんですぞ。 それだけのストーリー力のある作家なのに、本当にもったいない話なのだ。 さて一度目と二度目のいわば、どんでん返し的文学におけるトリックについて説明しよう。 第一。 これは先に書いた通り、話がもたもたしていたことからの必然であった。 ミステリーでよくつかわれる、なり変わりだね。 なり変わりだと思わされているのは、読み手だ。 しかし、この第一の問題は、長らく読み続けているミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態なのだ。 次、第二の問題。 これは、本作の根幹にかかわる問題なので、軽々には話せない。 とにかく涙が出てきたのは確かだ。 それも不覚にも。 だから、私は、道尾の文章力のなさが悔しいのだ。 本当に素晴らしい文章力をもってすれば、きっと、涙がとめどなく出てきて、本作は大作だ!と叫んだことだろう。 この部分は、一種の叙トリも使われている。 マンションに一か月もすれば戻るだろうという主人公のことばがそれだ。 しかし、明確な叙トリではない。 ここは黙って騙されようじゃないか。 それもまた読書人としての矜持だと私は思う。(1/25記)
2024.04.22
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ソウルハザード【電子書籍】[ 永山千紗 ] 話の端緒は、一家4人殺人事件。 そんな事件がなぜ起きたのか。 そして一家の中の長女の恋人が、真相に挑みつつ復讐を図っていく。 そもそもの原因は、あおり運転をした車に対する注意・指導に対する逆切れがあって、その際、注意した男が女の胸元を見たの見ないのの話だったわけだ。 逆切れ男は、それで収まらない。 結局冒頭の4人殺しを決行し、死刑になる。 登場人物は、いずれも家庭的に恵まれない人たち(殺された四人家族だけがまともだったか)。 その復讐がね、実に緻密で面白い。 この物語の良さは下手に警察が出てこと来ないところだね。 とにかく、全編ヴァイオレンスだ。 主人公村主は復讐を果たし、犯人夫婦の子供にも近づく。 この子は、犯人妻の妹奈々が育てている。 急速に接近し、一体何をする気だったのかな。 終盤、また新たな登場人物が出てきて、これと村主はタイにとび立ち、新生活を始める。 終盤の新登場人物、これ本当に必要あったんだろうか。 私はいらないと思うね。 むしろ村主の奈々(犯人妻の妹)と空(犯人夫婦の嫡子)に対する最終的な意思表示が欲しかったなと。… 永山千紗という人の作品は、もう一冊ライブラリに落としているのでまた読むことになる。 さあ、次も頑張って読んで、カテゴライズするかどうか考えよう。 私は、この一冊だけでも十分カテゴライズしてもいいのかなと思う。(1/23記)
2024.04.21
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蘇生 医療ミステリー 松葉紳一郎 いやあ、素晴らしいミステリーだった。 何より医師が書いたミステリーだから、医療に詳細なのは当然だが、私のような文系の頭でもわかりやすいというのがよろしい。 それが熱血女性弁護士が登場して、さらに理系弁護士もつるみ、二重三重の医療に絡むミステリーを解決していくのだ。 本件は、行路病人の発見から始まる。 泥酔者が自販機の足元のブロックの角に頭をぶつけて倒れている。 通りかかりのものが119番する。 さらにそこに男のかかりつけ医だという精神科医が現れ…。 で、あまりにも様々なエピソードを出し、それがドンデンドンデンと行くものだから、一つの大きなピースが最後にはめることができず、余ってしまったな。 そもそも、死体の人間違いなどは絶対許されない。 そこを利用したのだけれど、余った大きなピース、つまり、死んでいない男は、一体どうなるのだろう。 最後に、その生き残った男とその妹の美談でを終わるのだが、 納得いかないね。 叙述をムリムリ入れたところが気に食わない。 だって冒頭の精神科医のところで、塾講師のような仕事をして、医師と一緒に進んできていて、いきなりある日、その医師の悪さを見つけたものだから、態度がおかしくなるという設定でしょう。 そんな彼が別人に入れ替わることなど果たして受け入れるものかどうか。 その矛盾はどうしようもない。 それから、井出という女弁護士がいみじくも言っているとおり、医療にしろ捜査にしろ裁判にしろ、一つ一つの甘さが見て取れる。 最後は、冤罪でしょうが。 それから、もう一つ、冒頭の医師の医院に事務員として勤めた女の結論も出ていないし。 たしかに、面白いミステリーではあったが、読後消化不良に苛まれること間違い無しの作品なのだった。(1/21記)
2024.04.20
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パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子【電子書籍】[ 内藤 了 ] これは、藤堂比奈子以前の、死神女史こと石上妙子の院生時代の話。 まあ、一種のスピン、オフですね。 当然かつての夫であった、若かりしころの厚田巌男刑事も出てくる。 そして本作の作品の特徴は、今までのシリーズのようなおどろおどろしさはなく、死体現象、微物を駆使しての純然たるミステリーだ。 本シリーズでは屈指の出来上がりだ。 だだどうしても検視を検死と書いたり、長野の事件を強引に警視庁が捜査したり、警察が明らかに不審な点がある死体現象に関し、自殺でおわそうとするなどの、現実離れした点は、枚挙に暇無い。 けれどもそういうミスを無視して読み進めば、本作のできの良さにびっくりしてしまうだろう。 連続女性殺人事件の犯人が、作中冒頭から出て死神女史に絡みついていたり、中盤、あっという間に白いカローラが出てきて、なだれを打ったように犯人が割れたりと‥、そこまではよろしい、 けれど、ミステリーリーダーにかかったら、残りページを計算したら明らかにもう一波乱来ることは十分予想できたし、しつこいほどの、サー・ジョージにかかる死神女史に対するアタックから、当然彼もまた何かに絡んでいるだろうなとういことがわかる。 しかしそれにしても、内藤の現場描写力は鬼気迫る。 死体現象について、かなり勉強したものと思う。 それを磨き抜いた文章力で表現して、読み手にその状況をはっきりさせるのだから、その才能は半端ない。(1/20記)
2024.04.19
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精神科医が教える 良質読書【電子書籍】[ 名越康文 ] 小泉信三の読書論からみたらなんと稚拙な読書論かと真の読書子は思うことだろうが、その小泉信三の読書論のところに少し書いておいたけれど、つまり、読書が多様化していて、本書のような読書論が今の読書論なのだということだ。 本書の書きっぷりからして、またkindleに本を出している若い輩かと思っていたら、そうではない。 著者は近大医学部を卒業した歴とした精神科医なのだった。 しかも高野山大学の客員教授などという肩書も持っている。 本書を読めば、時々空海に関する記述も認められる。 そのような彼が書いた今風の読書論ということなのである。 で、まずこの方は、自称集中力が続かない方だそうで、そんな人の読書法として、カバンの中に6冊の本を忍ばせ、一冊10分ずつのローテーションで読み進めるのだそうだ。 とにかくいわゆる併行法が好きな方のようだ。 読んでつまらん本は捨てろ派の方でもある。 とにかく読んでつまらないものは最後までつまらないのだから、捨てるに限るというわけだ。 この人のアウトプットはツイッターだそうだ。 気づいたことをとにかくツイッターにツイートするのだとか。 結局、読書は強制するものではないということ。 読みたくない人は読む必要がない。 また読んだところで何もご利益はない。 これが結論だ。 そもそも成功した人が成功したことを書いているのだからそれは成功したものとしか分類できないではないか。 それをまねしたからうまくいくなどと考えることがいかに間違っているかということに人々は気づかなければならないのだ。 というより、私のようなものが、本など読んでもためにならんよ、ということをもっと強調しなければならないのだと思う。 その意味で本書は、その第一歩でもあったなと少し思った。(1/19記)
2024.04.18
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読書論【電子書籍】[ 小泉信三 ] なんでもそうだが、型にはめたい御仁がいる。 読書論もそう。 本書なんざあその典型で、まず古典を読めとか、複数回読めとか姦しい。 しかし、読んだ本の中身などいったいどれだけ覚えていられるのだろうか。 それなら、読まない方がいいとでもなるのかどうか。 読書論、小泉信三の時代は本書のとおりでよかった。 しかし今それが通用するかどうかということ。 私は明らかに通用しないと思う。 そもそも読書が多様化してきた。 著者が言うように本は、古典だけではない。 それから紙の本に対して電子書籍もとても立派になってきた。 私は、十年ほど前から、一つの課題として、紙の本VS.電子書籍という問題を考えてきた。 まあ、とっくの昔にこの2つは違うもの、すなわち舞台が違うのだから論じても仕方ないという結論に達した。 今の私の読書は、ほとんど電子書籍だ。 電子書籍を利用すればするほど、紙の本には戻れない。 紙の本論者曰く、余白にモノが書けない、自分のものとして収蔵できない、アンダーラインを引けないなどなどの意見が出て、それゆえ紙の本が優れているという論理である。 しかしながら、電子書籍も自分のものとして収蔵可能だし、アンダーラインは引けるし、メモも書けるんだよ。 そして、なにより、神の本より優れている点は、活字の大きさを大きくしたり、小さくしたりできること。 それから、読み上げしてもらえること。 これによって読書の幅が広くなり、読書が楽しくなった。 クラシックな読書論によれば、まずは学校の図書館を充実させ、貸し出して子供たちに本に親しんでもらう。 そののち、読み上げ会だのなんだのでさらに親しんでもらうというもの。 しかしねえ、そのレベルをも超えてしまっている小学生もいるんじゃないのか。 そんな子供だましの本読みなどすでに超えて、自分の世界を突き進んでいる子供も十分いると思うのだ。 私が言いたいのは、もう読書の方法論として型にはめるのをやめようや、ということ。 本は読まなければならないものではない。 読みたくなかったら読まなければよい。 義務感にほだされて読めなくなった、読み進めなくなったという場合、立ち止まれ、その本を捨てろ、それでいいんだと思う。 確かにアウトプットは重要だけれど、そうしたからとて、多くの読書論者が書いている通り、自分に定着などするわけがない。 ただただ今の私のように懐かしがって昔のブログを読んでいると、ああ、あんな本も読んだのだったなあと思い出すほどのことなのだ。 とにかく読書を型にはめるのはよそうや。(1/19記)
2024.04.17
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遺留捜査 2【電子書籍】[ 市川哲史 ] 2は舞台を月島中央署に移して、そこの刑事課の面々の活躍が描き出される。 相変わらず糸村聡はKYなのだが、、糸村を大っ嫌いな佐久間も最後は彼に惹かれてしまう。 そもそも遺留品からその事件の背景を割り出そうというのだから、簡単なことではない。 本作によれば、糸村の立ち位置は、捜査と鑑識の間ということらしい。 更に作者の言葉を借りれば理系を文系の言葉でオブラートすることとのこと。 確かに科学捜査と言うと理系の頭がないと七面倒なことが多くて、理解に苦しむ。 だからこそ文系の柔な頭が必要なのだとするポリシーなのだろう。 しかし、事は事件の証拠品の検索と推理だ。 そんなに七面倒なことなど科捜研に任せりゃいい。 そう、村木がいるじゃないか。 その村木いわく、本作では、糸村がなんと刑事っぽく見えたことかと、参観日の保護者目線で見ている。 ノべライズというのは、難しいと私は思う。 そもそもすでに映像として出来上がっている作品をもう一度編み直す作業だからだ。 残念ながら本作の映像ほど文章に切れ味がないので、ミステリー作品としては失敗作だ。 やはり、原作あっての映像というべきなのかもしれない。 先に完成した映像が出たら、もう、ノベライズは負け! 既成事実からは抜け出せやしないのだ。(1/18記)
2024.04.16
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MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子【電子書籍】[ 内藤 了 ] 私は、すっかりこのシリーズのとりこになってしまった。 あと、堀北恵平のシリーズね。 そういうことでいえば、内藤了という作家の非凡さを感じずにはいられない。 それはともかく、今回は人魚の話でしたな。 人魚を科学的に作ることが可能なのかもしれないという、まさに猟奇的な話、とでもいうのか、科学的根拠にまとわれているから信ぴょう性、あるいはリアリティがあるといえるのかどうかは、読み手個々人が自由に考えてほしい。 今回のテーマは、人体実験という一つの、アンモラルな話が根底にあるわけで、それに付随して、その描写が不快そのものだというすごい文章力を内藤は発揮するわけだ。 人魚がホルマリン漬けされるんでっせ。 すごい話だ。 それが自己の娘だというんだからね。 ただ、猟奇犯罪捜査班のチームワークがだんだんだんだん良くなってきていて、そういう意味で好きになれるというわけだ。 人体というものが、がん細胞だの遺伝子だのでまるで魚類のようないでたちを見せる事が出来るのだという話。 さらになくなったはずの佐藤都夜の脳が今後何やら悪しきことに使われそうだぞ、ということ、また永久とかその他の成員が特殊能力を発揮して面白いことをしそうだ、という期待感も持てる。(1/18記)
2024.04.15
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遺留捜査 1【電子書籍】[ 市川哲史 ] 原作と映画の課題には観てから読むか、読んでから観るかというものがある。 今まで原作に勝った作品は野村芳太郎監督の砂の器だけだと私は思う。 この課題の根本は、原作ありきということ。 本作のように映画(ドラマ)が出来てから本になる、いわゆるノベライズというものは含まない。 しかし今回、遺留捜査のノベライズ版がKindleunlimitedに入ったということで、さっそくライブラリに入れた。 しかし本当に読みづらいのなんのって。 つまり、文章力のなさだね。 いかに小説家の文章力が高いかがわかる。 それはともかく、遺留捜査は今まで何度も観たドラマであり、有名な最後のセリフ、糸村の、僕に三分間時間をください、というセリフですな、この後のその物語の深さには、涙、涙、涙の状態になってしまう。 糸村は、本小説によれば、いわゆるKY。 そのことが何度も何度も強調される。 ドラマではよくわからなかったけれど、本作を読むと、つまり糸村は、鑑識なんだね。 それが科学捜査官という名目で捜査一課に潜り込んでいたという設定らしい。 物語性も遺留物件の語る物語も実に面白い。 願わくは、どうか文章力に優れた方にノベライズしてもらいたい。 ドラマを最初から観れば、糸村の自転車の話とか糸村のポジションなんかがはっきりするんだろうがね。 残念ながらそんなに丁寧にドラマを観ていないものだから、そのことはノべライズ版で理解するよりほかない。(1/17記)
2024.04.14
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TURN 東京駅おもてうら交番・堀北恵平【電子書籍】[ 内藤 了 ] 私は藤堂モノと恵平モノにどっぷりはまってしまった。 交互に読んでいるものだから、 ついに2つの作品が融合してしまって、本作の序盤、永田という刑事の話で、 私は 中島保と永遠のコンビを思い出してしまい、 その話の延長かと思って読み進めてしまった。 この猟奇モノの違いつまり藤堂モノと恵平モノの違いは、 交番という、 時間の概念を超越した存在があるか否か、 なのだ。 本作における恵平は、 丸の内署の生活安全課で研修を重ねているという設定だ。 地域課研修、 刑事課研修で揉まれた恵平は、 今やその不可思議な力を存分に発揮して、生活安全課のおばさん刑事を辟易させてしまう。 中学生が急な生理で苦しんでいる、 しかもいつもより出血多量だと思われるなどという時に、果たしておばさん刑事が簡単にそれは生理だからと言って済ましてしまうのだろうか。 そもそも読み手である私がそれは多分、 不正出血ではないのかと疑ったのだから… 。 恵平は生安課ではちょっと苦労しているみたいだ。 その代わり刑事課で培った仲間が彼女をバックアップする。 ところで、 なんとなんと、 本作には、死神女史が出てくるのだ。 冒頭に書いた通り、 本作は恵平モノであるにもかかわらず藤堂モノと見紛ってしまうのだ。 この際これらの2つの作品は 統一してしまったらいかがだろうか。 私の頭の中では、 堀北恵平のような初任科上がりの巡査が苦労して最終的には藤堂比奈子のような刑事になっていくという一つの 流れが 読んで取れるのだ。 そう、藤堂比奈子が若干話をリードしている。 だからと言って堀北恵平がそれを追いかけているものでもない。 やはり 、それぞれは独立して話が進んでいる… のだけれども、 猟奇という テーマから、 この 2人の世界は どうも繋がっている感じがして 困ってしまう。 いずれにしろ ライブラリーにはまだ両作品が入っているので、この先一体どんなストーリーが飛び出すのかとても楽しみだ。(1月15日記)
2024.04.13
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BACK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子【電子書籍】[ 内藤 了 ] 今回はこっちがわつまり藤堂側の話、特に野比先生つまり保とかそれの研究対象になった永久とか、死神先生とか、それから東海林が本部に行くのいかないのなんてエピソードがとても多くて、本筋があまり面白いものではなかった。 始まりがなんとタヒチの人食い豚からで、それが最終盤につながるという話でしたな。 そしてこの猟奇犯罪捜査班のチームワークが徐々に良くなっていくというエピソードも豊富。 結局人食い豚に食われた日本人が本件の犯人らしい…のだが、to be continuedになったので、また続きを読まなければと私はいそいそするのだった。 つまりこのシリーズと恵平のシリーズは、どちらも読者のこころを掴んで離さないという、実にできたシリーズなのである。 で、シリーズ一貫性がなければ読者は離れる。 逆にシリーズが飛ばなければ、読者は次から次へと読んでいく。 そうこうことですよねえ。 内藤了の作品を、藤堂比奈子と堀北恵平の話だけで考えると(尤もこの2シリーズしか読んでいないから、内藤了ファンには申し訳なけれど…)ホラーと言うよりは厳然としたミステリーだと私は思う。 特に藤堂モノは、超常現象的な話がきちんと根拠を科学的根拠を持って示されている。 そこが大きな魅力だ。 逆に恵平モノは、うら交番が、これは科学的根拠のない話なので、読者は戸惑う。 もしそれも藤堂モノのようにすべて科学で明らかになるとすると、両シリーズは、似た者同士となり、読者の記憶が混乱してしまう。 そこのところを内藤了を実によく計算して小説を書いているなあとほとほと感心してしまう。 まあ、私自身ミステリーリーダーなんて言っていながら、ホラーをこうしてミステリーだなんてほざいている割には、ミステリーの根幹の一つたるトリック、つまり、方法ですな、これが両シリーズには不足していると思う。 が、とにかくいまライブラリにある、藤堂モノと、恵平モノにしばらく引き込まれることにしよう。(1月15日記)
2024.04.12
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スクエア 横浜みなとみらい署暴対係【電子書籍】[ 今野敏 ] 結局今野敏は何を言いたかったのかねえ。 使えねえ所轄のマル暴係なんかそのまま地にさらせばいいのに、殺人事件の捜査本部に監察官のお目付け役付きで駆り出され、そこで本部捜査一課長とか捜査二課長の前で諸報告をする。 そのバックには本部長の意向が(威光が?!)ある。 出てくる人々はどれも魅力的なのだが、いかんせん相変わらずこの人の刑事法音痴とハチャメチャな警察組織感がある。 暴対法が施行され、警察の組織が変わり、組織犯罪対策部門が刑事部から離されてから一体何年になるのだろうか。 つまり、それだけ組織犯罪対策部門は中央集中管理をされているわけで、所轄の刑事がチョロチョロ動けるわけがないのだ。 なんで逮捕被疑者の取調べに弁護士が立ち会えるんだ。 それじゃあ逮捕の意味が無いじゃないか。 被疑者の権利は、弁護士と立会人なしに接見できるということなんだぞ。 必ず取調室に3人で入るってか。 記録者がいるって?! 誰から聞いたのやら。 書くのは取調官でしょうが。 録取するのは取調官ですよ。 しかも今は録録あり。 捜査そのものが大きく変わったのだ。 そんなことより取調室に入った三人が被疑者を置き去りにして取調室の外になど出るもんか。 ただね、諸橋の情報源としての神野は魅力的な立ち位置にいるね。 彼がいるから諸橋と城島は、良い捜査ができるのだ。 そこがこのシリーズの魅力でもある。KindleUnlimited、中山と今野の作品が小出しにされる。 どちらかというと今野のほうがどっと出るね。 それに内藤了の作品もそうだ。 見つけたときにライブラリーに入れて置かなければならない。 そんな面白さもKindleUnlimitedにはある。(1/14記)
2024.04.11
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PUZZLE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平【電子書籍】[ 内藤 了 ] この人の書く警察官は堀北恵平といい藤堂比奈子といい若い女性警察官なのだが、周囲の男に好かれ、女性であることを理由に仕事から外されたりいじめにあったりすることはない。 そればかりか恵平は、もはや東京駅周辺のホームレスやら飲み屋のゲイのおっさんなどとツーカーの仲になり、さらにはうら交番の柏村巡査部長?にもたまに会いにける能力を持ってしまったのだ。 さて本作はいわゆるバラバラ事件がテーマだ。 それを縦軸に様々な要因がその話に絡みついてきて、本筋はいったい何なのだ、ということになるのだが、最終的にはまとまるところにまとまるという仕組みなのであった。 恵平は、東京駅表交番の見習い生だ。 今は鑑識の実習をしている。 藤堂比奈子ほど死体を見てもびっくりしないようだ。 臭いにも強いようだ。 それは仲間がいいからなんだろうね。 まあそれにしても内藤了という作家、少なくともこの恵平シリーズと藤堂比奈子シリーズは、実に魅力のあるシリーズに仕上がっている。 一度読み始めたら、やめられません状態に陥る。 結構、Kindleunlimitedに入れてくれているんで、その点は実にうれしい。 話が少し回りくどくて、なかなか理解しきれない場面も出てくるのではあるが、それでも一気に読了する事が出来た。(1/12記)
2024.04.10
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