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中国の不愉快な話が割り込んでしまって、「喜劇の登場」の続きをUPする気がしません。 他の話題もそうですが、このブログで途中で尻切れになっているテーマというのは、別に結論が出てないから「- つづく -」にしているのではなく、それぞれのテーマについて、まだ充分しゃべりきれてないという気分があるため「- おわり -」にすることができない、というところがあるのです。このあたり、同じ話題の周りを行きつ戻りつしながらも、多少でもらせん階段を上るように新たな階梯から、別の地平が眺められたらと思ってしゃべっているのですが、ややもすると逆スパイラルという気分にもなりかねず、思案しています。 べつに大論文を書いているわけではないのだから、まあいいかと云うのが、いつもの言いわけですが、それでもたまにこのブログを見にやってくる人がいるわけで、わざわざ読んでくださる人を同じスパイラルに巻き込むのはちょっとという感じがあるのです。 それにしても仕事では、他人を巻き込むのが好きな人が多いですね。なかにはありもしないもうけ話を「この指止まれ」式に早い者勝ちで募集して、当人はさっさと売り逃げして「返す気が無いわけではない」などと涼しい顔を決め込む。社内でも部下に山ほど用事を丸投げして、本人は知らんぷりを決め込む(私がそうです)。組織というのは基本的に他人にババを掴ませることで成り立っているようなところがあって、大人というのはこの種の感覚に鈍感になることでできあがっているようです。 ババをうまく掴ませるために、よくやる手が昔なら赤提灯ということになるのですが、今どきの若い人は上司との付き合いなど、ただでもゴメンの人が多いですから、もっぱら(あるようなないような)夢で煙に巻くという仕儀に相成ります。この齢になると、さすがにうまい話の大半がウソで、本当に値打ちのある商売上の話は一年に一回あるかないかという気がしているのですが、こればかりは実際に頭を打たないと身に付かない。 未知のものをことさらに恐れる必要はありませんが、適当に痛い目にあったほうが物覚えは速いのです。今の社会的風潮は適当でも痛い目を極度に嫌がる傾向にあるようで、だからこそ何がなんでも東大、京大、早稲田、慶応ということに相成ります(最上級の教育が、最上級の社会的安全と同義で捉えられているので、この感覚があるかぎり、日本の教育制度はカタチをいくら変えても、中味は変わらないでしょう。私に言わせれば最上級の教育は、同時に最上級の困難も引き受けることになる、と考えるのですが)。 私のように適当というより、ちょっと多めの痛みを味わった身にしてみれば、ヒトというのがどれほどに可変的な生き物であるか(ユダヤの収容所じゃないですが、ヒトというのは尊厳を剥ぎ取られれば、生きるためには何でもしてしまう)、多少でも知っているつもりです。 何だかおおげさな話になってしまいました。気分良くこのブログに来てもらい、何となく得した感じで出て行ってもらうためには、何より自分の気分が第一と考えていたのですが、ちょっと違っていたのかなと思っています。 ひらたく云えば、このブログは誰かに話したり手紙を書くという気分で書いているから、続けていられるので、不特定多数というような抽象的な相手では、とてもじゃないが書く気がしないでしょう。はたまた、純粋に個人的な記録ということであれば、アナログの日記で充分なのですが、それではわざわざ手間ひまかけて文字にしょうという気がおこりません(昔の日本人はたいしたものですね、誰にも読まれないことを前提に、どれほど多くの日本人が女!もすなる日記を書き付けてきたことでしょう)。 それじゃ話している相手は誰かというと、どうも私の若いころの友達という感じがしないでもありません。司馬さんは自身の小説を「20代の自分へ送る手紙」というようなことをおっしゃってましたが、それともちょっと違う。いったい誰に向かってしゃべっているのか、またまた考え込んでしまいます。
2008.02.20
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さて、この話もどうやら峠が見えてきたので、今回で終わりにしたいと思います。ちょっと長くなりますが時事的な話題は、当面の問題が過ぎるとたちまち古びてしまい、あとで読むと何の話だったか忘れているということがよくあるので、私の「独り言日記」の趣旨にはあまり馴染まないのです。 今回の事件で、いくつか浮かび上がってきた問題点があります。初めに書いた1. マスコミの騒ぎすぎ、もそうですが、さらに2. ジェイティーフーズないし親会社のJTという企業の体質、企業風土3. 共産中国政府の不誠実さ4. 「食品テロ」をはじめとした「バイオ・テロ」に対する日本政府の危機管理の甘さ5. 農民工に対する極端な搾取で成り立っている中国企業、およびそれに乗っかった日本企業といったところでしょうか。 1については、先に触れたのですが、もう一つ触れるとすれば、事案の本質(事故でなく事件であるということ)はそっちのけで、ことがらを無原則に一般化し、中国産品は全般に危険であるという印象をあたえたこと。さらに飛躍して、したがって食料自給率40%は国家的危機で自給率を上げよ、という論議にまで広げたこと。 週刊誌的な過激な発言はなかったにしても、例えば日本の加工食品や調味料他の原材料には、少なからず中国産品が含まれていて、しかもその表示がないとか、中国では食品中毒事故ないし事件が多発しているとかいった報道は、いくらそれが事実だとはいえ、当該事件の本質とは別の方向に国民をMisleadするものであったのです。これは事実の積み重ねそのものが、ある種の意図を持って取捨選択されたときに起こるMisleadで、だれも個別の事例については客観的事実であるだけに否定ができず、かえって始末が悪い。 事実を選択的に並べて、ある種の思想なり観念に導くのをT・S・エリオットは「客観的相関物(Objective Correlative)」と言いましたね。ちょっと小難しい単語なので、この話はまた別の機会にしたいと思いますが、少なくとも今回の一連の(事実)報道によって、中国産品嫌いの人がこれまで以上に増えたことは間違いないでしょう。この一点においては、共産中国政府が日本のマスコミを非難するのは、当たっているのです(別に中国を支持しているわけではありません)。 各報道機関がどれほど意識していたかは知りませんが、中国製品の構造的な欠陥ないし問題というのは、今回の「食品テロ」とは関係がありません。ある種の不満分子が意図的にサボタージュなり、異物の混入を仕掛けようとした場合、どんな近代工場設備であっても(日本の工場であっても)、それを完全に防ぐことは不可能です。これは設備とかしくみとかの問題ではなく、セキュリティないし危機管理の問題で、実際に工場を動かしている中国人の文化や風土とどれくらい、まともに向き合って対処しているかなのです。 このあたりの仕分けが不分明なまま、中国産品全般の危うさを煽るというのは、かえってことがらを政治問題化して肝心の原因追及が難しくなる。今となっては共産中国政府が真相をまともに開示するということは、ほとんどありえないので、そういうプロセスに持ち込んだ相当部分の責任が、日本の報道機関にはあると思うのですが、はたしてどれぐらい意識しているのでしょうか。 まして「だから食料自給率をあげないと日本が危ない」という議論をここで持ち出すのは、話を拡散させるばかりで、やはり今回の事件の本質を見誤ることになります(何も自給率を上げる必要がないと言っているわけではありません。今回の事案にかこつけて議論するのがおかしいといっているのです。食品テロは自給率90%でも起こるでしょうが)。 さて、今回の騒ぎでもう一つ浮かび上がってきたのが、ジェイティーフーズないし親会社のJTの企業体質で、これは日清食品がジェイティーフーズとの合弁の解消を宣言しなかったら、危うく見過ごされるところでした。長年中国での食品生産に携わってきた「日清」だの「味の素」だのの会社は、中国での現地生産の構造的危うさを充分知り尽くしているがゆえに、低賃金、高収益のうまみだけで進出してくるジェイティーフーズに危険を感じ取ったのでしょう。 というわけで、これも騒ぎに隠れてその後あまり報道されませんが、事件直前のJT株の大量売りの真相が知りたいところです。 ところで、一連の事件の進行のあいだ、共産中国政府は「日本のマスコミは騒ぎすぎ」だの「天洋食品の工場では毒物は検出されなかった」だの、相変わらず日本に対しては、こわもて外交のコメントを発信し続けています。 私が中国政府を、あえて意識して共産中国と呼ぶには理由があって、何も蔑視的な意味を含んでいるわけではありません。これについては日本と中国の国家感の大きな違いが、底に潜んでいると思うからで、それについてはお互いの歴史感にまで触れねばならず、別に改めねばなりません。 しかし一つだけ言うとするなら、日本の国家感が、大和朝廷の日本統一以来の一つながりの歴史とばくぜんと捉えられているのに対し、どうも中国の国家感というのは、歴代王朝で完全に断絶している。早い話、中国3000年の歴史は、中原の漢民族と周辺異民族の覇権奪取の歴史であり、元帝国(モンゴル)や清王朝(満州族)を持ち出すまでもなく、異民族支配の歴史があったわけで、政治的には断絶しているのです(もちろんその政治的版図も、しょっちゅう増減をくりかえしています)。 私はそういう意味で、現在の共産中国政府というのは、歴代帝国の一つという見かたをしているので、これの歴史的評価というのは、結局現政府が終わってみないと分からない。それがどういう終わりかたをするかは別として、中国というのは一つの王朝が終わると、極めて厳しい評価をその後の歴史家から受けるという伝統があります。現政府は革命後50年を越えるのですが、そうした評価は経ていないという意味で、共産独裁の振るまいかたをそのまま継続しているとみているのです(同じような振るまいかたを、もっとプリミティヴに示しているのが北朝鮮で、かの恫喝的言辞の背景に、共産中国の手法が大きく影を落としていることを忘れてはいけません)。 ところで、それに対する日本政府の妙に奥歯にものの挟まったようなコメント、なかでも他ならぬ福田首相というのは、何を考えているのだろうと思ったものです。 通例「テロ」ないしテロの疑いのある事件に対しては、即刻首相を長とした対策本部が設置されるべきですが、実際に日本の子供が毒物で重体になり、警察が刑事事件として捜査しょうとしているのに、いっこうに主導しようという姿勢が見えてきません。事の推移によっては、次は死者が出る場合も想定しなければならない事態だと、常識的に考えられるのですが、何かひたすらに沈静化するのを固唾を呑んで見守っているだけ、という感じがしないでもない。 私の年代の者は、いやでもお父さんの福田赳夫さんが「人の命は地球より重たい」などと言って、多額の身代金を払って赤軍派のテロリストを(超法規的に)逃した「ダッカ空港ハイジャック事件」を思い出してしまいます。その後逃亡した赤軍派が、この多額の資金でアラブゲリラと合同し、世界各地でテロを繰り返したことはよく知られています。 この時は日本人乗客を助けるために世界を犠牲にしたのですが、意地悪い言いかたをすれば、今度は共産中国政府と仲良くしたいがために、日本人を犠牲にするのですか、となってしまいます。平たく言えば発言の一つ一つに、共産中国政府に対する強い気兼ねが感じられるので、これはいったい何なのかとますます勘ぐってしまいますね。 今回の事件に対する日本政府の危機管理ぶりは、しっかりと日本の周辺諸国に観察されていますよ。 さておしまいに、私たち自身の今回の事件に対する処しかたを考えてみましょう。食品は日常生活に直結しているだけにインパクトが高く、ややもするとことがらの本質よりも、表層の話題のほうがバラエティーショーのように賑やかになって、いつの間にか本題が逸れていくのです。小泉さん以来、真紀子VS外務省だの、郵政民営化だの、今時の年金問題だの、本来深刻に議論されるべき問題が、上っ面の週刊誌的記事ばかりが話題になって、肝心なことが詳細に議論されずに、うやむやになってしまうことが多いような気がしてしょうがない。 「毒入りギョーザ」の発生は、基本的には日本と中国の国家間格差の問題であり、さらには共産中国における苛烈すぎる国内格差の問題なので、私たちが求めて止まない「安くて安全で美味い」食品とは、結局年収18万円以下の「農民工」からの極度の収奪によってのみ供給され得るのだ、ということを思わざるを得ません。自分たちが毎日食する食べ物が、ということです。 予定を大幅に超えて長くなってしまいました。すいません。― おわり ―
2008.02.10
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前回あたりから、日本の報道の加熱ぶりと、中国官憲の不誠実さにうんざりして、気散じのなかばヨタ話のつもりで書いていたのですが(4月1日にはだいぶ早いのですが)、現実がヨタ話のほうにどんどん近づいているのには驚くばかりです。 昨日(2月6日)中国の官憲が、中国での生産工程における毒物混入の可能性は否定しながらも、「過激分子による極端な犯行の可能性」を示唆したことは、前々回示したシナリオのAあたりで(中国政府にとって当たりさわりのない)収めようとする意図をあらわしているので、今後どのあたりまで開示しかつ真相を追究するかは、日本側の動かぬ証拠の中味と、マスコミの騒ぎかたを睨みながら思案しているのです。 それが証拠に、これがサボタージュないしずさんな管理による偶発的事故ではなく、意図された事件であることはようやく認めても、それが中国人の犯行か日本人の犯行かについては話をボカしているので、日本側の出かたによっては、中国国内での生産流通過程での犯行であることは絶対に認めないでしょう(日本側の官憲の聴取も認めないでしょう)。 さて別の毒物がやはり同じ工場製品から検出されたということですが、その生産時期が昨年の6月であったということは、前回のメタミドホス混入の製品が10月であることからみて、いくつかのあらたな疑点を生じさせます。 1つは、この犯行がかなり前から繰り返し行われていた可能性 2つは、上記毒物以外の薬物が、この工場で混入されていた可能性 この2点から浮かび上がってくることは、今回の事件が突発的な少数不満分子の暴発であるよりは、相当組織的に行われた可能性が高いこと。 事件発生後、寄せられた1000件以上の健康被害の訴えの中に(私は相当割引きすべきだと考えますが)、他の薬物中毒の可能性がなかったか、ということ。 私が相当組織的と考えるのは、当の中国官憲が開示した工場の生産工程における管理体制です。彼らが「完璧な管理で異物混入はありえない」と言い募れば言い募るほど、むしろだからこそ組織的な犯行でなければ工場内での混入は不可能ということになるからです。 組織的とは管理する側の、あるレベルの人間まで混入に加担しなければ(見逃さなければ)、犯行は不可能であることを示しているので、となると例のA~D4つのシナリオのうちAよりは同業他社のB、さらに政治陰謀めいたCの可能性をいやでも考えないわけにはいきません。はからずも中国官憲の「日中友好の発展を望まない分子…」という文言はCの可能性を強く指向させるのです。 Cの場合想定されるシナリオは、前回示したとおり(なかばヨタ話の想定だったのですが)5つほど考えられるのですが、ここから先は青山さんが云われるとおり、真相が公的ルートで出てくることはまずないでしょう。 ところで、青山繁晴さんは昨日のテレビ(ニュースアンカー)で「中国官憲はすでに工場の元従業員を拘束し、厳しく激しく追及している」という外交ルートからの情報を話されていましたが、そこでのコメントもこの元従業員が年収18万円程度の農民工(疲弊した農村からの出稼ぎ労働者)出身であること、中国社会での格差の矛盾が江沢民時代の反日教育によって、容易に反日に結びつくことを示唆されていましたが、何度も言うように私はたんなる農民工の不満分子の暴発というには、今回の一連の事件は組織的に過ぎる、という気がしてしょうがないのです。― つづく ―
2008.02.07
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「毒入りギョーザ」で誰が得をするかという4つの想定(仮りの想定です、CとかDだと想定範囲はさらにふくれます)は、日本側が全行程で日本人が関わっていないという、動かぬ証拠を出さないかぎり、中国側からA~Dのいずれかを開示するということはまずないでしょう。出たとしても、おそらくAの不良従業員のしわざで片付けられる可能性が高く、よく行ってBまで。Cに到っては国家的に秘すべき事がらとして、表には絶対に出てこないでしょう。 Dの可能性は多分に推理好きな想定で、仮に空売りがあったとしても、これは「毒入りギョーザ」事件を事前に知った何某が、独自に売り抜けた可能性が高く(日本人関係者である可能性が高い)、となるとDは別の事案ということになります。 さてCの場合は、さらにいくつかの想定を誘います。日中友好のムードを良しとしない集団は中国国内に限らず、ざっと見積もっても5つほど考えられるでしょう。1. 中国国内の反胡錦濤派(旧江沢民派あるいは軍部)2. 北朝鮮(これまでに数え切れないぐらいの空想的シナリオを演じてきました。彼らが日中が結ぶことを一番恐れるのは云うまでもないことです)3. 日本の保守系右派(ラディカルな反中共派は2005年の反日デモの報復を考えている)4. アメリカ(21世紀の政治軍事あるいは経済覇権において、日中の結びつきは脅威)5. ロシア(極東の覇権争いは常に中露の課題) ここまでくるとスパイ小説もどきの世界になってしまいますが、スパイ小説は現実世界の反映として欧米では普通に読まれているので、想定の範囲としてここまで射程距離を広げておくのは、それほど不自然な話ではありません。 現実的に中国がいちばん怖れるのは、いうまでもなく1の国内反体制派で、中国の官憲がいち早く動いたのはたんなる経済バッシング封じではなく、たぶんに政治的な動きととらえるべきです。 爾来一党独裁や非民主国家ではオリンピックなどの国際イベントは政治課題に上りやすく、成功すれば体制の強化につながるいっぽう、仮りにも大会期間中に今回のようなことが起れば、たんに大会の失敗であるに留まらず、体制の不安定化を引き起こしかねないのです(72年ミュンヘン大会のときのイスラエル選手団に対するテロが、西ドイツの国家体制に少しの揺らぎも与えなかったのに対し、旧ソ連の80年モスクワ大会はアフガン侵攻にともなって西側のボイコットを誘い、89年の体制崩壊につながっています)。 私があらでもの空想をもてあそんでいるというのは、おおいに云われそうなのですが、それでもこんなことを書くというのは、今回の事件の内容が最初の印象より悪質かつ組織計画的なニオイがするからで、たんなる不満従業員の暴発とするには手が込みすぎている。要はたんなる不満の解消とか、モラルの低下によるサボタージュの結果というには、本人たちのリスクが大きすぎるということです。となれば従業員が何らかの多額の報酬で雇われた可能性のほうが高く、また自然に思えるのですが、どうでしょう。― つづく ―
2008.02.05
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さて、今回の一連の「毒入りギョーザ」事件で、当日の報道で得られた事実だけで判断できることは、ずさんな管理による農薬の混入というレベルではなく、ある種の意図を持って混入しないと、おこりえない濃度と症状であったということで、であるならば、誰がなぜやったかということになります。ひらたく言えばこれをやることで、誰が得をするかということなのですが、少なくともその時点でメーカーとしての天洋食品は絶対に得はしないでしょう。 したがってその時点で押さえるべきポイントは、1.食材のレベルで混入されたのか2.製造レベルで混入されたのか3.流通過程で混入されたのか4.小売りの過程で混入されたのかということなのですが、2月4日の時点で1,3,4の可能性は低く、2の製造工程での混入の疑いが濃いとされます。 となれば、会社としての天洋食品ではなく、従業員レベルでのモラルがどうなのか、ということが問題になってくるのですが、はじめにもあげたように、これによって誰が得をするかという見かたからすると、A.天洋食品に恨みを持つ者、あるいは最も単純なレベルでの従業員のサボタージュないし嫌がらせB.同業他社 さらには、ちょっと政治陰謀くさくなりますが、C.日中間に新たな緊張を意図する集団(胡錦濤国家主席の訪日を良しとしない集団)D.JT株の空売り操作で利益を生もうとするものといったことになるのですが、いずれにしても直接食品製造工程にかかわっている者の中に、手を下した者がいないと、今回の事件は実行不可能にみえます。 さて今回の事件では中国の官憲の動きは早くて、食料商社の双日やジェイティーフーズの関係者を押しのけて、いち早く天洋の従業員を尋問したとか。事実と原因の究明のためなら大いに結構ですが、今までの中国政府の振るまいかたから見て、こういう動きはおおむね事実の隠蔽に向かうことが多いので、注意が必要です。 現時点で彼らは日中の政治動向で、どちらにころんでもいい状態(中国政府が損をしない)のシナリオを目論んでいるので、これは日本側の捜査状況や証拠類をあわせ睨みながら、かなり意図的なコメントを発するでしょう。いずれにしても日本国内や他の民主国家におけるような、まともな事故調査というものをやってくれるだろう、などと思ってはいけません。 というわけで、特定の事件の究明やあとへの影響は後回しにして、中国産品全般のバッシングにうつつをぬかす日本のメディアには、こうした分析的な思考法というのはないのでしょうか(何も私の発想が正しいと言っているわけではありません。一つの例としてあげてみただけです)。しかし日本の食材のどこに中国産の爆弾が入っているかわからないというような報道では、さながら中国産サブプライムショックじゃないですか。 メディアは庶民の声の代弁者などとうそぶきますが、日本のメディアは発想そのものが庶民のレベルで、騒ぎたて興奮しまくる。こうした振るまいはいったいどこから出てくるのでしょう。戦前はおろか、日露戦争当時のメディアを思い出させます。国民をMisleadして国家を損失に導く、さらにはそれに対する謝罪とか反省とかを一切しないというのは、今どきの隣国の思考レベルと大差ないと言っていいでしょう。― つづく ―
2008.02.04
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今どきの世相や政治・経済の話は、中身がナマ臭いぶん古びやすく、したがってこのブログの趣旨とは合わないので、できるだけ話しないでおこうと思っているのですが、それにしても「毒入りギョーザ」の騒ぎ。最初のテレビの報道から始まって、その後の各マスメディアの騒ぎかたをみていると、ここ10年ほどの(新世紀以降の)日本のメディアひいては日本人の民度が、明らかに退行しているように思えてなりません。 先週水曜日、ジェイティーフーズの記者会見後の午後5時ごろから、とくに民放のテレビ各局はこぞって当該商品を絶対食べないように報道し、なかには「食品テロ」を怒号する解説まで現れたのですが(わが敬愛する青山繁晴さんです)、午後7時ごろにはメーカーの天洋食品のギョーザ食材全品を取り上げて、買わないように使わないように、繰り返し流しつづけたのでした。午後9時ごろには流通各社の回収状況も伝えられて、中には中国製の加工食品全般を扱わないとする百貨店も現れたりする。 このあたりから、どうもおかしいなという感じがしていたのですが、翌日になると生協が天洋食品の肉を使ったレトルトカレーを回収する、当該ギョーザで体調不良を訴える人たちが全国から数百人規模で寄せられる、という景況になりました。 生協のレトルトカレーといえば、私も愛用していたので「あのとき腹をこわしたのは、もしかして…」というのは、誰しも多少は考えたことでしょう。まして当該ギョーザをかつて食した人たちは、ああやっぱりということで、さっそく連絡された人もあったでしょう。 それにしても、というのは、あえて批判を覚悟で言うとすれば、今回の問題は典型的な「騒ぎすぎ」の類で、各報道機関はやはり「煽り」のそしりを、いずれ追わなくてはならないのではないかと思います。 そもそも事件の発端は「メタミドホス」なる有機リン系の毒物で、千葉県の家族が中毒をおこし、子供さんが一時重体に陥ったのが最初で、この時の症状が典型的な薬物中毒の劇症型であるにもかかわらず、「農薬混入被害」として大々的に報道したのが、混乱を大きくする原因でありました。当日の報道で毒物の専門家が「通常の農薬散布や異物混入では、食べて十数秒後に嘔吐や呼吸困難というような症状はありえない」と言っており、さらには千葉県警が当初刑事事件として動いたということからも、これが「農薬被害」のような公害事件ではなく、サリン事件のようなテロに類する刑事事案であったことは、報道各メディアは分かっていたはずなのです。 インターネットや週刊誌のような煽り記事は別としても、社会の木鐸をもって任ずる報道各社の対応は、その後事実を追うというよりは、はるかに騒ぎを煽る方向に走っているので、はやくも中国メディア(ということは中国政府)は日本のメディアの加熱ぶりを批判し、話が事件からかけ離れて政治外交レベルにあがり始めています。こうなると事件の真実は間違いなく闇に隠されて、余計なうわさと煽情的な記事だけがいつ終わるともなく流れることになるでしょう。 こういうとき(話題が食品問題で家庭を直撃し、さらに相手が共産中国であるとき)の報道メディアというのは、むしろつとめて冷静を装わなくてはならないのです。加熱ぶりがかえって事件の真実と原因究明を妨げ、よけいな外交問題になるというのは、かえって国益に反しますよ(まあ国益なんて私には関係のない話ですが、関係のない話であるだけに、こういうことに興奮する人たちがけっこう多いのです。興奮だけが蓄積し、事実と原因がうやむやになるというのが、いちばんまずい状況でしょう)。 というわけで、今回の一連の「毒入りギョーザ」事件について、私なりのいくつかのポイントを書こうかと思っていたのですが、今朝の新聞を見ているとJT株が事件発覚前(1月28日)に大量に売られていたとか、何だかますます生臭くなってきましたね。― つづく ―
2008.02.03
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