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■最終話にして初めてリアルタイム視聴。こういうの見て通勤、通学していた人がたくさんいたわけか。私みたいに毎晩録画したこのドラマを見るのを楽しみにしていた者にその日の回の感想を言ってしまう人の行為を「あまハラ」と言うのだそうだが、言いたくなってしまう気持ちもよくわかるということがわかった。■ドミノ倒しの再現からお座敷列車運行へ。最終話の見せ所はこの潮騒のメモリーズ第2章をいかに見せるかという部分だと思っていた。おそらくフルコーラス聞かせて見せてくれるものかと。しかし実際はふたりの歌が始まるとカメラは車窓の風景を映し出していく。■列車に向かって手を振る人、一緒に走ってカメラを構える人、横断幕を持った人々、そして畑、田んぼ、あぜ道、堤防、で、海。「世界の車窓から」とはまたちょっと違う独特の事情を持った風景。列車が走るということはそういうことなんだということをあらためて感じた。結局その中で行われていることは、ドラマの一部に過ぎない。■このドラマ、最初から最後まで登場人物の誰も死ななかった。ひとりの女性の一代記を描いて終わる通常の連続テレビ小説を見慣れた世代からしてみれば、かなり奇抜な物語だったと言える。でもこのドラマの描いた外側にはものすごく多くの人の犠牲が含まれていたことを考えれば、少なくとも彼ら彼女らにはいつまでも笑っていて欲しいと誰もが思っていたはずだ。■無邪気でいられる時期には限りがある。でも若いふたりは無邪気にトンネルの中をはしゃぎながら走っているだけで良い。息がキレそうになってもオトナがはいそこまでって言うまで走り続けてくれればいい。そして堤防の突端に着いたら目の前に広がる海を眺めれば良い。意味は後から付いてくる。■劇中頻繁にかかる音楽の中に「希求」という題名の劇伴がある。希望と言わず希求。歌詞が付いていないし、誰かが歌うわけでもないから「潮騒のメモリー」ほど有名ではないが、このドラマのセンチメンタルな気分を代表するメロディーである。あっぱれな完結を見届け、続編を望む気持ちは強い方ではないが、今この曲を聞いて感じる気持ちはやはりこのドラマを求める感情なのかなと思う。
2013/09/28
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■花束は夏ばっぱに集中して良い。宮本信子が演じた天野夏という女性はこのドラマの背骨だった。合同結婚式終盤の彼女のスピーチはシナリオが与えられていたにせよ、その語り口、その表情、その余韻全てが共演者、制作者、演出者に向けての即興の感謝の気持ちの表れのように見えた。■海開きの朝、天野家にも海女小屋の前にも夏ばっぱの姿が見えなかったのはなぜだろう。「夏ばっぱ」とアキがふと口にしてしまった時、返事を返してくれたのもあれが最後だったという最終話はやはり悲しすぎるだろうか。■去る者は追わないでと彼女は結んだが、この去りゆくドラマを追いかけ続けたいと思う視聴者は星の数ほどいる。それでも明後日にはその想いも叶わず、違う朝がやってくる。そこにはトーストの上にアジの干物をのせて食べるような食文化を持ったヒロインはおそらく登場しない。■カセットテープがCDにとってかわったのは1985年過ぎだと記憶している。車のカーステといえば、私たちの世代では裏表と前後を気にしてカセットを装着する機械の事だ。カセットテープはLPレコードを録音するための機材であり、A面とB面というおよそ20分ずつのうらおもての音楽だった。■シングルレコードにも、もちろんA面とB面があり、主にヒット曲は表に、そしてその裏にはちょっと渋くちょっと地味な曲があてられた。もしもこの後「潮騒のメモリー」が天野春子編と鈴鹿ひろ美編で売り直されたとしたら、どちらがB面になるのだろうか。訛っている方でも可愛い方でもなく、おそらく辛かった方がそっちになるんじゃないのかなって思う。
2013/09/27
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■プロのタクシー運転手。それはどんな客を乗せても、それがどんな行き先であっても、その客がどんな荷物を持っていても、その人と荷物を目的地まで運んでやり、気をつけて行ってらっしゃいと送り出せる人物の事だ。■20数年前、上野で拾った客は前途有望な若い女の子だった。偶然その子を再び乗せた時、その子はちょっと品の悪い男と一緒で、なにやら複雑な事情を抱えているように見えた。運転手は黙って車内のふたりのやりとりを聞いた。■プロの運転手なら、傷心の彼女を黙って上野に送り届けるだけだったかもしれない。でも彼はまだまだあまちゃんだった。彼女に同情し、言わないでも良いことまで口に出してしまう。諦めたらだめだ。夢を叶えるべきだと。■鈴鹿ひろ美の潮騒のメモリーは彼女の歌だ。以来あまちゃんの運転手はその歌が世間に流れるたび、なにやら誇らしく思った。この歌を歌っているのは彼が東京に引き留めた彼女だったからだ。だから彼女のリサイタルには駈けつけなければならない。みんなが彼女の歌に感動するのを見届けなければならない。■それでも運転手は客を送り届けなければならない。重い荷物も持ってあげなければならない。その客は家族に黙って北に行く。もうあまちゃんではない運転手はその客にどんな事情があっても、その要求には従わなければならない。■そんなわけでその運転手はリサイタルには間に合わなかった。そこにいた皆は感動していた。やっぱり良い歌だと感動していた。当たり前でしょ。だって彼女が歌った歌だもの。彼の大好きな彼女の歌だもの。運転手はそれが聴けず悔しかったけどちょっと誇らしかった。■運転手は北三陸で結婚式を挙げた。なぜか単独ではなく他の二組との合同結婚式だ。一組の新郎はやはり運転手だ。でもタクシーではなく鉄道の。緊張しているのか怒っているのかわからない。でも怒る理由もわからない。■もう一組の新婦は彼の妻になった人の影武者だ。彼女の歌声が彼の妻のものである事を知っているのはこの6人の中の4人だけだ。でもあの人がいたから彼らは出会えた。だから感謝もしている。その夫になった品のない男にもだ。■運転手はまたしても誇らしく思った。あの時、彼があそこを走っていなければ今日のこの日はなかった。そして最後に運転手は願った。次は彼の娘がこの物語の主役としてみんなの目に焼きつくことを。いつまでも忘れられない主人公であり続けることを。彼は琥珀の指輪を見ながらそんなことを思っていた。
2013/09/26
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■山岸舞彩が登場する回には傑作が多い。まあ、後にも先にもこの元NHKアナウンサーがこのドラマに出てくることはないと思うが、なんと運の良い回にあたったものか。その彼女に市長、駅長と紹介された後に当然のようにスルーされた副駅長の笑顔が眩しかった。こういう時、倉本聰なら必ず「ひとり置いて」とやるところだが。■芝居でも、コンサートでも、役者やバンドが連日連夜同じ演目を繰り返していく中で、この日のノリは最高と感じる瞬間はおそらくあるのではないか。生身の人間がやっている以上、出来不出来の差があるのは仕方のないことで、そんな良い日にあたった観客はやはり運が良いと言うしかない。■鈴鹿音痴説を長い長いスパンで視聴者に刷り込んできた脚本は、このリサイタルを迎えるにあたり、どうやったらそれを大衆に露見させずに危機を回避するのかという一点に焦点を絞ってきた。その方策として影武者春子の再登板は否めない、ではどうやってそれを見せるか(聞かせるか)というところが大方の関心事だったはず。しかしあの野郎は最初からこれを決めていやがった。■大友良英氏らの伴奏に乗せてキョンキョンが歌う出だしの歌詞は観客には伝えず、鈴鹿ひろ美が「I Miss You」から歌い始めるという演出がニクい。一音も外さずに一番の歌詞を歌いきった彼女の横で笑いながら涙を流した有村架純の表情が抜群に良かった。ジェラシーも終わった。コンプレックスも終わった。若き日の春子の退場はそこだけアキちゃんのナレーションに代わった。■三度の飯より、三段腹の、ときて三枝の愛ラブクリニックというクドカン得意の3段落ちつーか、三段飛び。この人の3つ目は完全に果てしない彼方に飛ぶのが原則だが、安部ちゃんに言わすセリフは三度の飯よりマーメーブであった方が良かったと思われ。■ともあれ三途の川の部分をあのように感動路線で締めてみたところにこの人の良心を見る。そしてフルコーラス聞かせた後で観客の笑顔や拍手をいつも以上にエンディングまで引っ張って見せた演出も珍しいと言えば珍しい。おかげで私の顔も○○○でいつもよりテカテカになっちまったじゃないか。
2013/09/25
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■高台から海を眺める鈴鹿ひろ美、寄せては返す波のよう。ポエトリー・リーディングではだめなのか。その姿、その声ならば観客は充分満足すると思うがどうか。リサイタルの曲目リストにはなんとマイ・フェイバリット・シングズまで入っていたが、あの曲はかなり難易度が高いと思うがどうか。影武者にも、もしかしたら無理かもしれない。■911の時にはイマジンが、そして311の時にはTSUNAMIが放送自粛となった。この世には歌っていけない歌なんかないんだよと言ったのはたしか「パッチギ!」の大友康平だったと思うが、被災者の中にはその曲がかからないことによって自粛されているということを連想する人々だっているわけで。■音楽の力はとても大きい。実はこのドラマの大部分は大友良英の信じられないくらいたくさんの楽曲によって進行しているわけで。それが時々無音になる瞬間は逆になにやら不穏な出来事の前触れのような雰囲気をもたらす。魔境の扉をあけるような音楽、たしかにそれは聞きたくもない。(しかし大友氏本来の楽曲の中には明らかにそれに近いノイジーな前衛的音楽も含まれてはいるのだけれど)■たとえばゴースト・バスターズを知らない相手と付き合っていくのは今さら面倒くさいという意見。わたしも高校生の頃はキング・クリムゾンを知らない女の子になんか興味はなかったわけだが、この曲にはこういう背景があってねなんて説明を省略できる相手との生活はある程度想像できる分、安心ではある。■珍しくオープニングテーマが鳴り響く中での大吉さんと安部ちゃんへのみんなの祝福。クラッカーを顔の真正面に直接受けても笑い顔を絶やさないのは役者の宿命。でもこの祝祭は演技ではない。梨明日に集まった誰もがふたりの前途を祝っているという型(かたち)でこのドラマの終焉を祝っている。それがわかるから見ている方も笑って泣ける。
2013/09/24
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■オープニング・タイトル・ロング・バージョンも今日で見収め。(海でウニ取る)海女ちゃんと、(世間知らずの)あまちゃんと、(プロの方ではなく)アマちゃん。このタイトルの持つ3つの意味。今回は北三陸にやってきたプロのプロデューサーである太巻さんから見たアマチュアさんの底力の話。■芸能界ではルービーとかワイハとか何でも逆さに読む習慣があるというが、ずいぶん前に「るいがとひなきす」と恋心を伝えていた女子高生が岩手にもいた。その可愛い方に「やっと会えたね」と真顔で言える胡散臭さは古田新太でなくては成立しない。■手持無沙汰の時、私はついつい腕を組んでしまう方だったが、最近は両手を両脇に挟む習慣が板についてきた。人の話を最後まで聞かない事もよくあるし、喋っている内容があまり人に通じないところもよく似ている。靴もほとんどニューバランス。それでも突然踊り出したりすることはまだない。■プロには無くてアマにはあるもの。それは万国旗も大漁旗も暖色も寒色もごちゃ混ぜになっても、なんかコーディネートを超えて成立してしまっている完成度で、そこにはプロの持つ掛け算や割り算のセンスではなく、足し算と引き算の強引な力があるということだ。■なんか自分で書いてて何の事かよくわからない例えだが、8500万年前の蟻がユイちゃんでそれを取り巻く樹液が周りにいる全ての人々だなんてミズタクにしみじみ語られるとなんか本当にそうかもな、なんて思ってしまうのと同じくらい薄い説得力があるでしょ。■結局海女カフェは鈴鹿さんのリサイタルの場だけでなく、(合同?)結婚式の会場にも潮騒のメモリーズ復活の場にもなる模様。プロがその会場に施す恩恵は最新の音響設備ということだが、その中に音程自動補正装置または影武者用特殊マイクなどは含まれているのだろうか。PS天野春子最強不良伝説には笑った。でもどうすれば渡り鳥が来なくなるんだ。
2013/09/23
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■忠兵衛さん、鈴鹿さんだけでなく、いよいよ太巻さんも北三陸へ。キョンキョンたちも来週は到着すると思われ、あまちゃんオールスターズがやってくるじぇぃじぇぃじぇぃか。ほとんど全ての今までの登場人物が顔を出すだろう中で、もう見られないのは田原俊彦のそっくりさんくらいか。■給食のナポリタンに迷い込んだ輪ゴムと自分を卑下するあんべちゃんだが、正直、当初は片桐はいりがこれだけいい味を出すとは思わなかった。海女クラブの中でもなくてはならない存在だったし、アキが東京に行って最初に彼女の顔を見た時の安堵感みたいなものは視聴者も充分共有できたのではないか。■懐かしいったらありゃしない。1984年で時間がとまった春子の部屋。それはこのドラマの時制では28年前にあたるが、当時松田聖子に憧れて東京であなた色に染めて欲しいと願った18才の岩手の少女は胡散臭い新米プロデューサーに捕まり、当時売出し中のアイドルの影武者として灰色に染められた。■懐かしいったらありゃしない。28年前、当時新人女優として本格的にデビューした彼女は出演映画の劇中歌を歌うこととなった。ただ、いかんせん彼女には(特製ジュースを毎日欠かさず飲んだにもかかわらず)音感と音程に関する能力が著しく欠けており、結局その歌は名も知らぬ他の少女によって歌われることになった。■懐かしいったらありゃしない。時間のとまった部屋でふたりの青春が重なったように見える。時の流れもまた逆回転できるものなら、、あなたが私で、私があなたになった可能性もあったのかもしれないと壁に掛けられたジャケットを見て思う。■最終週に是非見てみたい光景は梨明日のステージでキョンキョンが「なんてたってアイドル」を歌う姿だ。曲の途中でアキちゃんが加わり、ユイちゃんが加わり、薬師丸ひろ子も(地声で)参加する。いえぃ!のレスポンスはもちろん脇を固めた全ての人たち。そういえばこの曲、作曲は筒美京平、作詞はあの秋元康だ。
2013/09/21
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■サカナクションとさかなクンはほぼ一字違いである。じぇじぇじぇとギョギョギョだけでほとんどの意志の疎通がはかれる仲のふたりだからこそ、念願の海女カフェ復活に彼が一肌脱がずにはいられなかったわけだ。サーチ・アンド・デストロイからサーチ・アンド・リペアー(見つけて直そう)へ。■今回のもう一つの逆回転は終盤、ウニの繁殖具合を確かめに行ったアキちゃんが、取れたウニを夏ばっぱに向かって放り投げるシーン。今では立ち泳ぎして海から陸へウニを投げられるくらい泳ぎが上達したアキ。ウエットスーツで海に向かう姿もなんかこう堂々としており。■水中で小さなウニを手に取り、くるくる泳ぎ回るあまちゃんを見て、まるで人魚のようだと思った。早生まれのマーメイドも、三途の川のマーメイドも、友だち少ないマーメイドもそれぞれ登場人物の中の誰かの暗示だと想像していたひと月前の予測を裏切り、なんとかこのままハッピーエンドを迎えてくれそうでうれしい。■なま鈴鹿ひろ美の登場に驚愕する荒川良々の表情がすごい。彼にとっての元祖アイドルが半径1メートル以内に座っているんだから無理もない。この後、梨明日のステージは彼女のリサイタルのリハーサル場所になる予感がプンプンする。場は渡辺えりがあっためてくれる。はたして鈴鹿さんの歌声はその時、わたしたちの耳に届くのだろうか。また突然画面から音が消え、固まったギャラリーたちの表情が映し出されるだけなのだろうか。
2013/09/20
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■ドラマにしろ、映画にしろ、演劇にしろ、それらが持つ本来の意味は人々に勇気やら、希望やら、知的興奮を与えることで、それを享受するにはある程度その人に生活の余裕がなくてはならないのではないか。■ならばいわゆる文化人、芸能人、芸術家と呼ばれる人々は、着るものにも、食べるものにも、住む家にも不自由を感じている人々に向かって、何も発信などする手立てはなく、手をこまねいて、現場の回復を待つより他に手はないということなのだろうか。■ジオラマの復元やガールズバーの復活を優先すべき事項だと考える人がいるように、海女カフェの再建もまた急務だと思う人々がとりわけこのドラマの中には(キャスト、スタッフを含めて)大勢いる。なぜならそこを作りあげた事や、そこで行われた事や、そこの周りで起きた全ての事に、この半年間のドラマが圧縮されているからだ。■このドラマの魅力の大半はその圧倒的な情報量(注釈、小ネタ、サブカルチャー的蘊蓄)と会話劇の面白さにあるわけだが、たまにはみんなが黙って手を動かしているだけの回があってもいい。■アキが海沿いの道を傘をさしながら歩き、汚れてしまった幟を波で洗い、ふと佇んで海を見ている。そこにはあの音楽が流れているだけ。または彼女が瓦礫の山となった旧海女カフェで若き日の春子と出会い、彼女から自分の顔が写っているCDを渡される。そのバックにも例の音楽が流れているだけ。■ロケ地・北三陸なんてテロップが入りそうなカラオケのBGVかと思わせるような映像だけでも、もはやこのドラマは雄弁に物語りを語る。そしてそのナレーションはいつの間にか観る者自身の声になっている。
2013/09/19
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■物語のテンポが速い。いつの間にか潮騒のメモリーズが復活し足立先生も市長に当選。あんなに簡単に土下座などしてしまうと、堺雅人が香川照之にそれをさせる満足感さえ薄らいでしまいそうだ。それにしても身内が多いぞ北三陸市。■アキちゃんと選挙権。アキちゃんとビール。この著しい違和感。初めて岩手に来たのが16歳、あれから3年余りがたったという設定だが、本人が言うようにこの娘、全然成長しているようには見えない。都会の絵の具に染まらないで帰ってとストーブさんが思っていたかどうかは知らないが、(周囲に)染まる娘、(周囲を)染める娘とふたつのタイプがあるとすれば、アキちゃんは圧倒的に後者だ。■人がオトナになる瞬間はもちろん二十歳になった時に訪れるとは限らない。生まれてから半世紀以上たつ自分自身を振り返っても、はたしてずぶんがいつオトナになったのかなんていう節目に思い当たる節もなく、気がつけば周りの呼び方がいつの間にか変わっていっただけのような気がする。■薬師丸ひろ子にもそんなオトナになる以前の出演作が数々あった。個人的にあの頃の彼女の出演作で最も好きなのが「翔んだカップル」。あの「セーラー服と機関銃」より少し前の相米慎二監督作品。たしか尾美としのりも共演していた。もちろんふたりとも「若き日の」なんていう影武者は必要なしで。■数秒間全く無音になって歌っている鈴鹿ひろみの表情を見ながらそのうつろいやすい絶対無理音感を想像する。「メインテーマ」とか「WOMAN」とか本当の彼女の歌声を知っている者からすれば、それはあえてキョンキョンにボイス・トレーナーを頼まずとも、(好き嫌いはともかく)リサイタルくらい開けるだけの代物だとは思うが、本編での披露はまだまだ差し支えがあるレベルなのだろう。
2013/09/18
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■ビデオをとって見ている人はたいてい今日のユイちゃんの「潮騒のメモリーズ現象第2章」は静止画で確認したと思うが、アキの説得によって再結成を決断する日はあらかじめ8月17日、つまりこの時期に設定されていた。GMTの訪問が突然の出来事であったかどうかはともかく、もうすでにユイの決心は固まっており、実際に彼女たちに遭遇したことがひとつの引き金になったにすぎない。■ユイちゃんの面倒くささは橋本愛という女優に対するあて書きの部分もかなり多く含まれていて、能年玲奈の演技に対する要求よりもいささか高いハードルがこの脚本では設けられている。そしてその真価をいかんなく発揮させたのが今回。いやはや堪能させてもらいました。■「桐島部活やめるってよ」という映画でGMTの入間しおり役の松岡芙優と橋本愛は共演している。そのクライマックスで松岡を橋本が突然ひっぱたくという重要なシーンがあるのだが、クドカンはおそらくそのことを頭に入れて今日のシーンを書いている。「あの娘、影がありそうだし」「リーダー性格悪そうだし」そう、あのふたり過去にそういうことがあったわけで。■誰も見向きもしない街頭でこの娘たちがやっていた自己紹介。ハッピ着て無表情に合いの手を入れていたミズタクは今回その場にいなかったわけだが、人気者になった今、梨明日の舞台で久しぶりに見た5人(アキちゃんも入れれば6人)のそれは何とも懐かしくそして微笑ましかった。ヒロシ君が真奈ちゃん推しだったのには笑った。(実は私もです)最後の方で小野寺ちゃんの宮城といえばーに「お米!」と叫んだメガネ会計ババアがツボでした。■一方、東京では鈴鹿さんがチャリティーで歌を歌うことになりそうだ。口の堅いボイストレーナーについたとしても絶対無理音感ではどうしようもないようだ。キョンキョンまた影武者か。例の「花は咲く」で鈴木京香がやったポジションをやればいいのではないかと思うが、そこまでのネームバリューはないということか。■GMTの自己紹介がらみで5分、東京の事情を描いて5分、ユイの決心で5分。笑わせ続けながらも、実に情報量の多い、展開の速い15分。その後味は抜群、そしてこれが朝ドラというところが奇跡的。
2013/09/17
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■9月以降のこのドラマを勝手に復興編と名づけてみたりするのだが、復興とは地域の活性化とか、施設の復旧だけを意味する言葉ではなく、ひとりの人間を再生することでもあるんだということを最近のあまちゃんを見て感じる。■震災後のユイちゃんのなんだか霞(かすみ)がかかったような虚ろな表情とその言動に腫れ物に触る感を払拭できないアキではあるが、ミズタクの登場とGMTの凱旋を契機に潮騒のメモリーズ復活に向けて闘志を燃やす。■サビの「激しくーぅ♪」ですら、虚ろに歌う梨明日の面々の前でマイク片手に啖呵を斬る元祖地元アイドルの感情の爆発はかつての親友のそれであり、また血を分けた母親の、そして祖母のそれでもある。たしかに能年玲奈の演じる天野アキは遊びでやってるわけじゃない。■かつて誰かが言ったセリフが役者を変えて繰り返され、かつて見たことがあるシーンが時間を超えて同じ役者たちによって繰り返される。かつて無かったほど濃密な15分間の150回あまりにも及ぶ繰り返しの中で、セリフもシーンも最初に聞いた見た時に比べ、こちらに重くのしかかるという脚本のマジック。■脚本も見事だが、演出のタイミングも素晴らしい。今いた人物がさっと消え、いなかった人間がすっと現れる。あるいはそこにいなければならない人物がいつまでも姿を見せないという不在を際立たせる方法。夏ばっぱの口調だけで電話の相手がわかってしまうと言う見せ方。セリフに対する反応の反射神経の鋭さ。良々のGHQ発言に吹きだす待合室の老人のタイミングが抜群。いやいやいやいやいやいやいや。■俄(にわ)かアイドル達を目の前にして、ユイちゃんのくすぶっていた闘志がよみがえらないはずはない。訛(なま)っている方(ほう)が映画に主演してCDデビューを果たした今、かつて可愛い方(ほう)と呼ばれていた彼女が黙っていられるはずはない。ちっちゃい方(ほう)のプロデューサーも、大きい方(ほう)のプロデューサーもきっとそう思っているに違いない。
2013/09/16
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■定型封筒に汚い字で「辞表」と書いて主人公がそれを上司に叩きつけるシーンをドラマではよく見る。そういえばその中身まで引っぱり出してそこに何が書いてあるのか確認することはあまりない。■もうひとつの常識として婚姻届を証人に託す場合には夫の欄、妻の欄、それぞれ満たした形で提出すべきで、どちらかが空欄のまま認めてくださいとお願いすべきものではない。■道に迷っても、遠回りしても、辿り着いたところが目的地だ。経験20年くらいの進路担当教師が言うようなセリフは迷える若者だったら、ちょっと感化されてしまうような常套句だが、よくよく考えれば責任転嫁の逃げ道に過ぎない。好きになった人がタイプです、なんて言う者はわざわざ北へは向かわない。■原石を磨いて輝かせること。梨明日のカウンターで寡黙に琥珀を磨いているというキャラクターを作者がどの時点で設定したのかわからないが、あらためてこの二重写しは見事だと思う。そんな勉さんの弟子と詐称したはずのミズタクだが結局は師匠と同じことをしているわけだ。■48分しかそこにいなかった人は例外として、たくさんの人が北三陸に戻ってくる。その理由はそこが心地良いところだと思ったからに他ならない。去る者は追わず、来る者は拒まず。でも何かしら援助の手をさしのべるためだけにやってきた者に対しては地元の者はきっと「おかまいなく」と言うのだろう。PS昨夜の「秋の夜長のあまちゃんライブ」は傑作だった。大友良英率いるビッグバンドのサウンドは何時間でも聞いていたい宝の音楽だった。サントラ第2部も予約することにした。言うべきセリフを与えられていない能年玲奈のたどたどしさが実に新鮮。スイッチが入るってすごいことなんだなとあらためて思った。
2013/09/14
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■カップ被れば魚の仲間♪海から上がった感の種市先輩が凛々しい。背が高くて、目が切れ長で、あごのラインが美しい。命の源っつーか、人類も動物なんだっつーか、基本っつーか。そんなわけのわからない例えをしたってイケメンが言えばなんか説得力っつーか、そーゆーもんを感じる。■だからアキちゃんもうかうかしてはいられない。そんなかっけー彼氏をユイちゃんにとられたら。恋愛のかけひきとかテクニックとかに関しては、経験値が月とすっぽんくらい違うように見える彼女のスイッチが入ってしまったら。どうしていいかわからなくなると海に飛び込むアキを見ると、魚の仲間っつーか、人類も動物なんだっつーか、恋愛の基本はじぇ・じぇ・じぇらしーっつーか、そーゆーもんを感じる。■そんな種市君を心配して様子を見に来たのがピエール瀧である。革ジャンである。デニーロ感はほとんどなく、小林感がいっぱいである。彼が参考にしている小林薫はおそらく「イキのいい奴」である。ちなみに海女は息が長くていいわよねって言ったのは鈴木京香である。ともあれ、この後、無頼鮨北三陸支店が開店する予感もする。■アキが太陽で、ユイが月なら、勉さんは空気である。気配を消しているわけでもないのに、そこにいることを意識させない。でも、久しぶりに戻ったその場所に一番いないと物足りない人である。琥珀は英語でアンバーと言うのだそうだ。彼もまた南部アンバーだということだ。そういえばミズタクはそろそろ彼に会いに来たいと思わないのだろうか。枝豆のないビールはなんだかとっても味気ない。
2013/09/13
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■鉄拳のアニメーションが入った回には傑作が多い。今日のお題はウニの生態解説。クローズアップ現代で30分みっちりその講義を受ける以上に端的に理解できたかもしれない。なるほど、津波の被害はこのような生態系の変化にまで及んでいたということか。■その影響を直接的に被ったのが漁業関係者。その中にはもちろん海女クラブの人々も含まれる。夏ばっぱの叱咤に奮起する磯野先生が初めてカッケーと言われた記念日。種市君の帰郷も元南部ダイバーとしての腕の見せ所という意味もあった。あの潜水服を見るたび、10CCのアルバム・ジャケットを思い出す。■同じ現状をとらえる言葉でも、これ以上の幸せはないという見方もあれば、今より悪くなることはないという考え方もある。一見対立するようなふたつの意見であるが物事を肯定的にとらえるという意味においては両者の見解は一致する。■物資の支援、災害ボランティア、直接的な被害にあわなかった者たちの被災地に対する働きかけは真摯で純粋なものだと思う。しかしそれらに対しておかまいなくとさらりと返す被災者側のプライドもまたアリだと思う。よかれと思ってかけた言葉も、受け取る側の気分によってはかまわれたくない時だってある。そんな支援者と被災者の心情が今のアキとユイの関係とダブる。
2013/09/12
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■昔、流行った曲の映像を見ることの懐かしさはその曲その物の懐かしさだけでなく、当時の歌手やグループの姿かたちにあの頃好きだった誰かさんのことやら、付き合っていた彼や彼女のこと、そして何より自分自身が何を考え何を目指して何をしようとしていたのかを一瞬にして思い出させてくれる魔法みたいな効果がある。■平成元年といえば、昭和64年が始まったと思ったら、突然終わった年で、数えてみれば今から24年前にあたる。ボーイフレンドやガールフレンドとの交際開始から1年たったカップルが記念日としてその日を祝う慣例があったとしても、わたしたち付き合って25年になるの、などという男女はまれだし、ちょっと怖い。■結婚をめでたいと思ったことは一度もない、だけど今、おめでとうと言ってしまいそうになった自分に驚いている。これもまたキョンキョンの名言だが、世間に隠れて四半世紀事実婚の関係を続けてきた鈴鹿さんと太巻さんが結婚するんだそうだ。結婚にも表と裏があるとすれば、尾美としのりとキョンキョンは彼らの影武者だったわけか。■朝ドラのヒロインはたいてい劇中、結婚をする。それはこの枠のドラマが主人公の四半世紀以上にわたる生涯を描いてきたからという事情による。しかし今回の天野アキはおそらくそうはならない。それは描かれる時間の短さだけのせいではない。■時々、能年玲奈がアニメの主人公の実写版のように見える。彼女の恋の本命と思われる種市先輩もむしろユイちゃんの方が相応しいようにも見える。彼女のその誰とも釣り合わないようなつきぬけた存在感が独特でかっこいい。アイドルはつらい。だけどアイドルはやめられない。
2013/09/11
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■このところのユイちゃんの表情の変化について考える。アキに対するまなざしにもギラギラした対抗心やジェラシーみたいなものは一切なくなり、落ち着きとか、諦めとか、悲しみのようなものが滲み出ている。東京に出ていってアイドルになる。そんな夢を持っていた少女はあの震災にあって地元に残る必然を悟る。もう彼女には例えばもう一度ヤンキーになってグレる余裕なんかないんだ。■暗いトンネルの中を歩いて壊れた線路の果てに見えたもの。それは人ひとりの人生観を一瞬にして変えてしまうだけの衝撃を持ち合わせていたということなんだろう。そんな誰もができるわけではない経験をしてしまった人たちが現実にたくさんいるということ。それでもその人たちは今日もまた日常を送っているのだということ。■まるで王道の連続テレビ小説みたいな今回のような話もこの作家は書くのだ。そりゃしみじみさせるだけでなく、笑いどころもいくらか含まれていたけど、語り方の節度は充分わきまえている。ただこのまま終盤に向けて同じトーンで物語が終結していくとすると、なんだか物足りない気持ちばかりが残る。いや、きっと何かあるはずだ。■脇役の俳優陣が曲者ぞろいという評判のあまちゃん。最近(DVDで)見た映画の中で彼らのここでは見られない演技をいくつも発見したのでメモしておくと、安藤玉恵・・・「夢売るふたり」最初の登場シーンからR15級 吹越満・・・「悪の教典」THE性格俳優 荒川良々・・・「鍵泥棒のメソッド」役柄の幅広さに感心 塩見三省・・・「アウトレイジ・ビヨンド」知らない人が観たらこの人が勉さんだとは絶対わからない 杉本哲太・・・「アウトレイジ」一回リアスで勉さんとこのテイストで対決して欲しい でんでん・・・「冷たい熱帯魚」言わずと知れた怪演、吹越さんも共演してます
2013/09/10
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■「半沢直樹」なら最終回の大円団は堺君が香川照之に土下座でもさせてギャフンと言わせ、見ているこっちは溜飲を下げるという結末を容易に想像できるところだが、この「あまちゃん」のクライマックスにはどんな大きな落とし所が待っているのかちょっと考えつかないところがある。■海女カフェの復活、北鉄の全面復旧、足立先生の市長当選、潮騒のメモリーズ復活、どれもこれもこの残り3週間で描かれてもおかしくない事ばかりだが、いまひとつインパクトが足りない。しかし現実問題として東北が震災以前の姿かたちを取り戻すにはあれから2年半たった今でもまだまだ道半ばという事実を考えれば、あまりにも突飛な結末はかえって白けてしまうのかもしれない。朝8時からNHKで原発の問題に言及するわけにもいかないしね。■結局我々は観光協会で開催される恒例のダラダラした会話劇に笑わせてもらえれば充分だという気持ちもある。久しぶりに聞いた渡辺えりのンダンダンダンダンダンダに対する吉田君の例のツッコミであるとか、ミサンガをめぐる家庭内不和とか、どうにかすっぺの対象がますます大きくなっていくこととか、聞いていない人と噛み合わない会話、そして誰かが言ったアドリブに吹きだすのを我慢する誰かの表情を見ているだけでもちょっと幸せな気持ちになれる。■いつのまにか足立先生の議員バッジがしじみの殻になっていた。しじみといえば木更津キャッツアイでぶっさんがこの世で最後に見たものは美礼先生(薬師丸ひろ子)の服に付いていたしじみの殻だったわけで、クドカンの伏線張りの長期的なことったらない。PS あのKSPKDNSPの黄色いポロシャツも何回も見ているうちにちょっと欲しくなった。買いに行くにはやっぱり袖が浜まで行かなきゃいけないのか。GMT5のTシャツのようにネットで売り出してくれないのだろうか。
2013/09/09
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■津波で大破した海女カフェで、夏さんがアキに自然の猛威を語る風景はまるで「北の国から」の大滝秀治のようだった。クドカンが倉本聰のあのドラマを見ていなかったとは思わないが、あるメッセージに対してそれを必ずしも主人公が丸ごと理解できるとは限らないということが彼のドラマの中ではよくあることだ。■アキはアキなりに海女カフェの復元を志す。そこにどれだけ人力が費用がかかろうが、強い気持ちがあればなんとかなるさと思うのはGMTの喜屋武ちゃんの影響かもしれないし、さかなクンとのあの番組のおかげかもしれない。■しかしそんな魔法のような逆回転は現実の世界では起こらない。度重なる現実のあれやこれやに打ちひしがれたユイちゃんは今では夢も理想も語らない。袖が浜駅でのふたりのやりとりはどちらに肩入れすることもなく、切ないなと思いながら見ていた。どちらの気持ちもよくわかるからね。■いつも淡々と話すユイちゃんの絶叫はこれで3回目かな。「アイドルになりたーい!」「(アキちゃんにアクセス数で抜かれて)くやしぃー!」そして「東京なんか行かない!」肩幅に両足を開いて両手を握って振り下ろす彼女のそばはとても危険だ。PS ジミヘンってそもそもハゼ顔だと思う。あえて彼とハゼを足さなくてもいいと思うし、まして2で割る必要もない。例えばハゼ顔の芸能人って誰か想像して見た。たしかに綾野剛はちょっと似ている。
2013/09/07
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■夜行バスに乗ってひとり北三陸に帰ってきたアキ。窓越しに見える夜明けの海沿いの町はまだまだ震災の爪痕を残しており。誰もいない駅の線路にいたキツネに向かって彼女が「暦の上ではディセンバー」を歌うシーンは、たまたまそこにその動物がいたからできたシーンなのか、それともそのためにその動物を用意したのか。真相は不明だが、私的にはお気に入りの場面のひとつだ。■真相が不明といえば、アキの背中に飛んできたウニは誰が投げたものだったんだろう。あの時、夏ばっぱはたしか海中にいたはずだし、一旦浮き上がってそれを投げ、再び潜る時間はあったとしても、あの遠投能力と正確な制球力は高校野球経験者レベルでなくてはならないはずだ。だとしたらウニが自発的に戻ってきたアキを歓迎するためにぶつかっていったのか。■ともあれ、この娘は歓迎されるのである。北三陸の人たちの出迎えは大げさで嬉しい。アキちゃんがいない毎日はつまらなかったと言う美保純の言葉はすごくストレートに胸を打つ。勉さんも、菅原さんも、そしてもちろんヒロシもまた、女性陣みたいに彼女をハグしたかったんだと思う。でもやっぱりそれはできない。(ミズタクと尾美としのりはやったけどねって、ジェラシーか^^)■誰もユイちゃんのことを口にしない。それはまた彼女が何らかの理由で「腫れもの」になってしまったからなんだろうか。無人の観光協会の事務所に張ってあったポスターは海女の格好をした彼女の姿だった。この年の夏、彼女はアキと一緒に海に潜ることができるのだろうか。そんなシーンが全く想像できない今週のあまちゃんだ。
2013/09/06
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■不謹慎な言い方かもしれないが、震災の日を描くこの週のあまちゃんはもう少しその日の北三陸の描写に時間をかけるものと想像していた。しかしドラマの中の時間的経過は思いのほか速く、4日目の木曜日にしてもうあの日から何ヶ月かがたったという設定である。■「地元に帰ろう」がバックに流れる中、アキは東京を離れる決心をする。せっかく掴みかけたアイドルへの道を途中で放り投げ、北三陸の人々に再会したいと願う。キョンキョンが言うようにまるで最終回かと思わせるような別れの挨拶の数々。でもこの主人公の独特さはそれに何の悲壮感も感じさせないというところだ。■このドラマが終始楽天的な印象を与えるのは「故郷編」「東京編」そしてこれからは「復興編」?と、描かれる場所はいくらか移動したとしても、主人公を取り巻く登場人物が随所に満遍なく物語に係わり続けているところで、これから先もおそらくGMTのメンバーも鈴鹿ひろみも太巻も梅頭も甲斐さんも、そしてもちろんミズタクや種市君も何度も登場してくれるに違いないという安心感がある。作者はもちろんそんな言葉は使わないと思うが、紛れもない「絆」みたいなものがそこには見られるわけだ。■クドカンは疑似最終回のつもりで今回を書いた。南部ダイバーも、喫茶店での別れも、宇宙服での抱擁も(ミズタクの横顔のアップも)涙腺を刺激する見せ所はたくさん用意した。でもきっと本当の最終回にはそんなシーンはひとつもないと思う。唐突に誰かが笑って、そして終わりだ。
2013/09/05
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■ちなみにフジテレビ「僕らの音楽」で最も印象的だったのは向井秀徳×椎名林檎の回だったわけだが、ミズタクの奮闘のおかげでNHKでGMT5のそれが観られるとは。松尾スズキではないが、わたしもまた今回のVTRは永久保存版になった。■『あまちゃん・歌のアルバム』は予約して買った。天野春子の「潮騒のメモリー」から始まって、「暦の上ではディセンバー」、「地元に帰ろう」と冒頭の3曲はこのドラマが生んだヒット曲の連続だ。■今回の「地元に帰ろう」フルバージョンは振り付けつき。ミディアムテンポの曲調に無理やりつけられた動きは前髪クネオのことを笑えないような学芸会風なノリ。でもみんな可愛いから良い。特にアキちゃんの鼻にかかった甘い声はCDで聞いてもそこだけ前に出てくるような妙な存在感がある。■もうすでに架空のアイドルという設定がその枠に留まらず、現実的なものとなってしまった能年玲奈が画面に映し出されるワンショット、ワンショットが眩しい。寄り目をしても、白目を見せても、何も考えていない表情も含めて、そこに写っているのは紛れもなくアイドル。もしも彼女の黒子の毛がオークションに賭けられたのならば、ゼロが6つくらいついてしまうかもしれない。(落札者はヒビキ一郎だったりして)■ひとりの少女を自分の思惑で都会に連れてきて、ショービズの世界に飛び込ませたのは野心あふれるマネージャー。ミズタクはそこで今、少女が何を想い、何を我慢し、何を望んでいるのかを考える。それは手塩にかけて育ててきたカメを海に放してあげる時の気持ちにちょっと似ている。
2013/09/04
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■そういえば「最高の離婚」というドラマはあの日の東京で帰宅困難者と呼ばれる群衆の中、瑛太と尾野真千子が出会うシーンから物語が始まった。放送当時、今年最高のドラマだと思って見ていたあのドラマの影が薄くなるようなこの連続テレビ小説の充実ぶりはちょっと奇跡ですらある。■アキの初ライブは延期となり、映画「潮騒のメモリー」の公開も中止となった。安否が確認できたユイちゃんではあったが、彼女が目指そうとしていた道は閉ざされ、彼女の心はまたしても長いトンネルの中に埋もれてしまったように見える。それでもオトナならば、「心配しないで、大丈夫だから」くらい言えるのだろうが、この娘は見かけはあれでも、まだまだ子供のままだ。■オープニング・タイトルで北三陸の人々の安否を想像する。(回想)という但し書きがついたキャストが何人もいたが、果たしてそのうち何人が本当に回想されてしまう存在になってしまうのだろうかと思いながらドキドキしながら見ていた。10分後、なるほどそういうことかと吹きだすことになるのだが。■アキちゃんが最初に手に入れた仕事がさかなクンとの「見つけてこわそう」だったことまでこんなに大きな伏線になっているとは思わなかった。「じぇじぇじぇ」と「ぎょぎょぎょ」の類似性については素晴らしい発見だったと思うし、逆回転で壊れたものを再生できてしまうという発想がこのドラマの終盤でこんなにも効いてくるとは。ちょっと前の話になるが、先輩とアキちゃんのヘン顔のメールにユイちゃんが返した「アキちゃん、逆回転してよ」の切なさったらなかった。■クドカンもあの時期、自分の創作の意味について考え込んでいたのかもしれない。着るものや食べ物や住む場所の大事さに比べ、架空の物語にどれだけの力があるのかと。かつて「流星の絆」で遺族にだって笑う権利があるじゃないかと主人公たちに語らせた彼は今度は被災者にだって何事も笑い飛ばせる自由さがあると言っているように聞こえる。でも実際そういうドラマを書くのには2年間が必要だったわけだ。■アキちゃんが回想する北三陸の人々の笑い顔が愛おしい。いつの間にか「いっそん」とだけ呼ばれるようになった先生のインパクトはたしかに強烈だが、あの中でも「メガネ会計ババア」と呼ばれる木野花と伊勢志摩のフレディのコスプレには笑った。そしてやはり今回最も可哀そうな人物は結局彼女にも先輩にも思い出されなかったあの人。彼が今回のこのドラマを見てしまったら、きっとまたストーブのそばからしばらく離れられなくなってしまうと思う。
2013/09/03
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■ナレーションがキョンキョンに代わった。「語り」が神の視線を持つものだとすれば、残り4週間になったこのドラマの終盤は春子目線の娘と母親に対する感情表現になるのだろうか。「故郷編」「東京編」と見事に物語にアクセントをつけたナレーションの妙を堪能した者からすれば、ぜひぜひ小泉さんにはヤンキーでハスキーでセクシーな狂言回しをお願いしたい。■さて今回ほど、あのオープニング・テーマの楽天的な響きが相応しくない回はない。だからアバン・タイトル無しでいきなり(オーソドックスに)チャンチキでスーダラな曲にのったアキちゃんのジャンプが流れるものとばかり思っていた。■しかしながら、ドラマはユイちゃんが乗る北鉄の車内から始まり、緊急地震速報を夏ばっぱたちに知らせた後、あの日起こった歴史のとおり画面を揺らし、いつも通りのあのタイトルにつなげていった。■フィクションのドラマの中に実際に起こった事件なり事故なり災害が描かれることによって、観る者たちがうける衝撃はあらかじめそれに向けて心の準備ができているからこそ敏感でまた過剰でもある。■登場人物の中で誰がそれに巻き込まれ、誰がそれから逃れられ、誰がそれに立ち向かうのか。おそらく夏ばっぱは波に飲み込まれ、ユイちゃんは事故に巻き込まれ、吉田君もまた避難を呼びかけながら逃げ遅れるのではないか。■このドラマの書き手は伏線を巡らす名人であり、彼や彼女の前回の登場シーンのどこかしらに、それを匂わすセリフやら場面がさりげなく挿入されていたのではないかと記憶をたどる。■かくしてドラマの中でも地震は起き、津波が東北を襲った。無人の観光協会のビルの中のジオラマがその惨状を語った。いったい誰が無事で誰が無事ではなかったか、今のところ誰の安否も確認できない。■それでもこのドラマは楽天的であり続ける。ゆべしと(まめぶでなく)豚汁は心細い者たちを慰めてくれたし、大吉さんのゴーストバスターズにオトナの責任感とほんの少しの勇気をもらった。■はたして切れたミサンガはなんの暗示なんだろう。ケータイに記された夏ばっぱからの連絡が通話ではなく、メール受信であることに何か意味があるのだろうか。メールをうったのが必ずしも本人であるという保証は今のところ何もない。
2013/09/02
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