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April 25, 2015
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カテゴリ: 音楽
ここ数年の様々な経験から少し目方が変化した部分もあるので改めてダイレクトボックスについてまとめなおすことにしました.
DIについて今一つ悩みが解消されないという皆さまのお役にたてればと思います.

ダイレクトボックス:DI(Direct Injection Box)
・インピーダンス変換
・不平衡⇒平衡信号変換
目的:インピーダンスの不整合を整えて接続する,また配線長を伸ばしても外来ノイズの影響を受けにくくする事.
種類 アクティブ パッシヴ
特徴
電源を用いオペアンプ等で変換 電源不要,トランスという電気部品による変換
長所
音量が稼げてパッシブのベース類に有効 音質が極端に変化しにくく電気不要
短所
電源やOPAMP等による音質変化がある,電気必須 音量が小さくパッシヴのベース類には役不足
例えば以前本ブログで記載した 川崎 哲平氏より譲り受けたJ48 はスペック上20Hz~40kHzと可聴範囲を超えた周波数帯域をカバーしています.
残念ながら,可聴範囲内での周波数精度が完全にフラットな帯域を示しているわけではありません.

レコーディング用に入手したTYPE10やPRO D2に至ってはJ48以上のスペック値です.

ただ,これはあくまで理論値です.
ガソリン車のカタログスペック値が信号の多い街中で再現できないのと似たようなもので,ケーブルやコネクタまた接続する機器によっても接触抵抗等様々な要因でスペック通りとはいかないのです.
音に限っては『百読は一聴にしかず』なのかもしれませんね.

また,アクティブに至っては電気の条件1つでも波形品質は変わります.
スタジオエンジニアの方でも"ファンタム電源"より"電池"がよいと,理屈抜きに信じている方がいらっしゃいます.
電池と言うのは理論上ほぼフラットにDC電圧を出すことができますが,ファンタム電源は生成している過程上ほとんどがスイッチング電源によるものであり,多かれ少なかれスイッチングノイズが発生します.
稀に,機種によってはこのスイッチングノイズがプリアンプに悪影響を及ぼしてしまうため"ファンタム"より"電池"が"ノイズが少ない音"を生成できるといった理屈が通ってしまうのです.

ただし,これも確約事情ではありません.
電池にも駆動能力の高すぎるものや低いもの,また安定しないものもありますし,電池品質に関わらず負荷条件等の外的要因によっても駆動状態は変化してしまいます.
また,回路によっては電池駆動でも結果的にファンタム同様DC/DCコンバータ(DC電源をスイッチングして目的の電圧を出すIC)を経由して内部電源を賄っている場合があります.これではファンタム電源も電池も条件がほぼ同じで,"電池がよい"という理屈が通用しません.


『B社のDIなら電池はP社製のアルカリで電池は少し使い古した奴がいい』
如何にも業界人っぽくて説得力ありそうですが,抽象的すぎて聞いた人によってはは誤った知識になってしまう可能性がありそう.
こう言う小さな事を一つ一つきちんとしていかなければ,PAの世界はブラックボックスだらけのままどんどん本質が埋もれてしまいます.
逆を言えばその情報がメーカーにフィードバックされることで次期モデルの設計時に役立つかもしれません.
ミュージシャンと言えど,やはりコミュニケーション能力は重要なのではないかと思います.
DI

確かに一部の機種ではDIとしての役割だけではなくアンプシミュレータ等をひとまとめにした機材もありますが,先に述べたようにDI自体はエフェクターではなくインピーダンス変換器であり平衡-不平衡変換器です.

例えば『安い楽器も高級なDIを通して"いい音になった"』と誤解を招くような内容もよく見ます.
いったい何が作用して"いい音なった"と判断したのか解りませんが,不思議なたとえだと言わざる得ません.
一般の方が評価をするのは良い事だと思いますが,まず自分の知識を整理してからコメントするべきではないでしょうか?

・プリアンプやケーブル等DI以外の箇所による変化でないと言い切れる根拠はなんですか?
・物理的,電気的に受け側機器までの経路条件が完全一致での評価と言い切れますか?
・数十秒前に聴いた音と同じ条件で聴き比べられる保証がどこにありますか?
・まず何よりDIって何だか知ってますか?

厳しい言い方かもしれませんがchromeのPA屋D.K.氏とも"いい音"の定義を含めよくこういう話をします.
あまり言うとアンチオーディオマニア的位置付けにされてしまうので控えますけど,ミキサーにXLRで接続すると言う事は必然的に平衡⇔不平衡回路を通過します.
普通に考えて,『DIを通した時』vs『DIを通さなかった時』で楽器⇒視聴環境間の条件が揃う事はまずありえないのです.

もちろん『このDIの微妙な変化具合が絶対不可欠だ』とおっしゃるなら止めはしませんが,その条件は受け側の機器が変わったり,ケーブルが変わったり,はたまた使う場所が違うだけでも簡単にひっくり返る可能性がある事を付け加えておきます.
そのくらい綱渡りな条件で得られる効果ならば,逆を言えば安いDIだって条件が整えば悪い作用ばかりを生むとは限らないのではないですか?
結局は,どんな機材も使い手次第なのです.


また"いい音"という表現は一般の方にはそれなりの説得力に聞こえる事でしょうけど立場が変わるとどうでしょうか?
・PA屋にとっては編集する後工程を前提に出来る限り収録の段階では変化がないよう"原音忠実"な音を"良音"とする
・奏者にとってはプレイヤビリティーが削がれない範囲であればたとえケーブル等で歪が生まれても出音が満足出来ればそれも"味"として"良音"とする
・オーディオマニアにとってはその時その場所で"気持ちよく聞こえる音"を"良音"とする
極論,前述はたとえ気持ちよく聞こえなくても音の変化がない事が良とされ,後述は気持ちよく聞こえる音の変化が良とされている事になり相反しています.
立場が変われば求める結果も違う為,"いい音"という例えは決して万能ではないのです.

愛機を評価したい熱意は称賛します.
でも,冷静になってください.
DIは如何に"原音を崩さずに"インピーダンスや平衡-不平衡を変換するかが目的です.
皆さまの言う"いい音になった"という"変化"が発生したら既に本末転倒です.


DIだけに限らずオーディオプレーヤー等にも言える事ですが,何れもオリジナル波形を超える作用はありません.
色々な手法で"ない音を生む"機器もあります.しかし,それも元の波形あっての事である前提は覆せません.
オリジナルが既に持っていない音はどうあがいてもないものなのです.

極端な話,無理に作り出したら,それは"未収録だったフレットノイズを後からシンセで模造する"の大差ないでしょう.
もちろん,現場でも結果的に"出音よければ全てよし"とすることがありますが,それはベースがきちんとできている事が前提です.

実際に音響技術の中には44.1kHz16bitのサンプルをデジタル演算技術で次のビットまでの間を滑らかにつながるよう模造するような手法もあります(DSDはその考え方に近いです)
それによって,より密度の濃い音像を得ることができるという理論は納得がいきますが,技術的にもし可能ならビットによる段付きがなくなる程の密度でサンプリングされていればその必要はない事になりますし,比較すると完全一致できない箇所も生まれてくる事になるでしょう.
どちらがオリジナルなのかは言うまでもない事です.


DIの話からだいぶ飛躍しすぎてしまいましたが,シンプルでかつ地味な位置付けだからこそ逆に一言では語れないのがDIなのかもしれません.
楽器でもアンプでも,ましてやケーブル1つとっても同じです.
立ち位置によって求める音の考え方や目指し方は違くなるものですが,いずれにしても重要なのは使い手がそれぞれの技術・機器の特徴を熟知し,役割を間違えない使い方ができる事なのではないかと思います.





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最終更新日  April 25, 2015 11:07:20 AM
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