BL駄文・華は夜ひらく

BL駄文・華は夜ひらく

2010年07月17日
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カテゴリ: 道に落ちていた男
BL小説です。興味ない方、嫌悪感を抱かれる方はご遠慮下さい。

会社までの道のりが、普段の何倍にも思えた。知り合いに会う度に「どうした」のかと尋ねられたが、それに答えるのが煩わしく、面倒だった。
人は親切の積りなのだろうが、今の鴻山に取っては迷惑でしかない。

「鴻山さん、お加減如何でか?」

電話の応対をしてくれた女子社員だった。彼女の顔は好奇心ではなく、本心から心配しているように見た。いや、今日だけではない、以前にも彼女は気に掛けてくれていたのだったが、気付かないでいた。
自分など、構ってくれるのは野瀬しかいないと思っていたのだった。

「あ、ありがとう、長い事休んで済まなかったね、お陰で随分良くなった」
「そうですか?」

安堵の顔、しかし、顔色の悪さは否定出来ないでいた。

女子社員が頭を下げて廊下に出て行った。

「おはよう鴻山君」

身体が硬直したように動かない。
低く頭上から響いてくるようだった。

「おはようございます」

搾り出してゆっくりと振り返るのがやっとだった。
息が苦しく、言葉がそれ以上でてこない。

「どうした?」
「いえ、なんでも、長い間、休みを取って申し訳有りませんでした」

眉間に皺を寄せて鴻山の顔をまじまじと見回す。
それだけじゃない、上から下までまるで品定めでもするような視線が痛いとさえ思えるほどの眼力だと思えた。



心臓が跳ねた。
一週間の不在を身体で埋めろとでも言われていのではないかと思え、それが顔に出ていないか野瀬の表情を伺ったが不振な顔はされなく、その代わり心配そうな表情が返された。
もしかしたら、自分は心配されているのではないかと思ってもみたが、それは無いと自分の中で否定をした。

「朝礼だ、君も整列しなさい」

穏やかな声がそう促した。

席に着くと同僚から心配の声が上がったが、「気分が悪くなったら帰らせてもらう」と言ってなんとか切り抜けた。
それよりも自分が休んでいる間に溜まった仕事に取り掛かる。きっと午後は使い物にならないと思えたから集中する事が出来、順調に午前を終えた。
息を付き、部屋を出る。
社食には行けなかった。相変わらず食欲は湧かない、近くのコンビニでドリンク剤を買って飲み干すと、近くの公園で呼び出しの時刻まで暇を潰した。
こんなのは初めてだった。
昼の公園は楽しげな空気だった。
小さな子供を連れた母親、近くのサラリーマンやOLが寛ぎ、鴻山の知らない世界が広がっていた。
ベンチでその光景を目にしていると隣に誰かが座った。

「会議室に来いと伝えた積りだったが」

ギョッとした。
静かで落ち着いた声の持ち主は野瀬だった。

「まぁいい、具合はどうだ?」

気遣い、優しい言葉が気のせいではないかと思えるほど静かな声だった。

「貴方には関係ない」
「ふん、まぁ良い、会議室に行くぞ」

やはりそれが目当てなのだと思った。
優しくしておいて後で冷たく引き離す、それが目的なのだ。
徐に立ち上がって歩き出した背中を見て歩き出す。いつもよりも大きく見えるのは自分が弱っている所為なのではないかと思った。
会議室に入ると入り口に鍵を掛ける気配を知った。そして、背中から抱き締められた。
このパターンを知っている、何時もの野瀬の行動そのものだった。
胸が苦しかった。

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最終更新日  2010年07月18日 09時07分44秒
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