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カテゴリ: 虚  第一章
彼は一人で在り続けた。
彼がその瞳に映そうとするのは、最果てのない・・・どこか。
彼は一人立ち、前を・・・ただ前を見る。
彼は振り返らない、決して。
彼は強すぎて、そして・・・誇り高いから。
風に乱れる黒髪に、滾る金の瞳、不屈の意志を表す唇は静かに引き結ばれている。
何をも彼を縛ることなどない、できない。
誇り高い彼はそれだけで死を選ぶであろうから。
血反吐を吐き、途方もない孤独にその身を震わせながらも、一人立ち続ける彼であるから。

己がどれほど美しく、どれほど残酷か。
彼はまさしく勝者であるから。
彼は知らない。
縋る者の苦痛を。
その手足は縋る者の存在を感じ、その血で確かに濡れているのに、その唇は確かにその血の味を知っているのに。
それなのに、彼はなお強く輝きを増す。
彼はまさしく勝者であるから。
孤独を抱き、何にも縋ることのない彼の立ち姿は誰もが王者と認めるだろう。
彼は一人極地に佇み、ただ上を仰ぐ。
その指先はまるで寒さに耐えるように己が身を抱いているというのに。
その背を抱けばよかった。

彼は抗うだろう。
其のあまりの誇り高さ故に、彼は手負いの獣の凶暴さで抗っただろう。
殺されたかもしれない。
けれど何度でも、どれほど醜悪な姿を見せてもいい、彼に屈辱を味合わせてもいい、何度でも、それこそ殺されるまで抱けばよかったのだ。
臆病な自尊心など捨て、追うべきだった。そこに彼の血肉が在ったのなら、抱けば・・・・・。

そうしたなら、彼を繋ぎ止め、一人でいかせることなどしなかった。
最後の最後まで、孤独を抱かせたままいかせることなど・・・・・。
これほどまでに彼への想いが、この心臓を抉るのなら、(其の心臓を滴る血の律動さえ聞こえるのに)、死ぬまでこの腕に抱けば・・・・・。
決して凍った激情のまま、いかせはしなかったのに。





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最終更新日  2007年01月17日 18時57分43秒
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