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その日の教室ほど、他人の視線を意識した日はなかった。
1時間目はよりによって自習。女子同士の会話のひそひそ声が
気になってしょうがない。そんな雰囲気を打ち消すように、
修学旅行以来ほとんど会話をしていなかった彼女が突然声をかけてきた。
「ねえ。この数学の問題教えてよ」
「ああ、いいけど」
(おれより勉強できるくせにこんな時に何でおれに聞くのか)
彼女の横で数学の問題を解いていると、後ろから彼女のことを嫌ってる
クラスの女子の一人が
「彼女が居るのにそんなことしていいのかな?」
(終わった。完全に誤解している)
一瞬凍りついてしまったが、第2波が致命傷となった。
すぐさまとなりで数学を教えていた彼女が大きな声で
「えっ、彼女いたの?ごめんね。誰?いつから」
(お前も昨日のこと知ってたのか?それとも知らないで言っているのか)
クラスは自習どころではなくなっていた。あまりの騒ぎに隣のクラスの
担任が怒りにきてひとまずの収集がついたが。
放課後、数人のクラスの女の子に呼び止められた。
「下級生と付き合ってると低く見られるよ」
「低くってどういうこと」
「下に見られるってこと」
昨日のが彼女じゃないことはあえてここでは弁明しなかった。
(ここでは下手な弁明はしないほうがいいだろう)
ただ、彼女達が自分を呼び止めて、このときそんなことを言った理由はあとで知った。
(混乱の原因は自分だから、自力で収拾を計るしかない。まずは、彼女の信頼を
取り戻すために一緒に下校するようにしよう)