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17年前の彼女の名前をフェイスブックで検索してみた。結局何もわからなかった。きっと結婚もしているのだろうしフェイスブックもしていないのかもしれない。それにしても往生際の悪い暇人だ。今度は彼女の郷里と彼女の名前を検索してみた。とある大学に彼女の名前があった。(彼女は短大卒だ。しかも別の地方の...)怖いもの見たさでそのまま見続けた。スナップ画像がいくつかある。(もしかして彼女がいるのか)最初の画像。数人映っている女性は明らかに顔の輪郭も違う。そして何より若い。彼女はもう40をとうに過ぎている。いくつかの画像を見てあきらめかけていたとき、最後の画像に目が留まった。間違いなく17年前とそう変わらない彼女がそこに立っていた。大きな幹から17年前に枝分かれした大きな恋愛の枝。もしかしたらそのまま大きな幹になっていたかもしれない。彼女の姓は昔のまま。罪悪感が湧いてきた。(余計なものを見る方が悪い...)今だから思い出したのか。犠牲にして得たもの。そしてこれからそれを失わないために。
October 30, 2013
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「先生が下になって」「いいよ」彼女は私の裸をまじまじと見た。「ふうん」「なにが」「先生の身体ってどうして毛がないの?」「そうだね。よく言われる」「他の男の人って毛深いよね。先生の腕って毛がないから、女の人の腕みたいだなって思ってた。白衣の下もそうだって今日判りました」「そっか、ばれたか」「それとね。もうひとつ」「なに?」「乳首が小さくてかわいい」「...それは初めて言われたよ」(まったくおかしな娘だ)「それじゃいただきますね」彼女は舌で先端をなめながら反対を指で撫で始めた。彼女は自分が二人目だと言っていた。ただ、触れ方の加減や指のタッピングの感覚は素人離れしていた。時々こちらを見ながら唇を重ね、耳元でささやく。「好きよせんせい」「おれもだよ」「せんせい私って器用だと思わない?」「うん」「小さい頃からピアノをやってたの。こんな感じ」彼女は私の胸板を鍵盤に見立てて、鼻歌を歌いながら指を弾き始めた。「くすぐったいけど、いい感じ」「さあこれは何の曲でしょう?」「わかったけど、今のこの状況では場違いな曲だね。フレデリック・ショパン練習曲作品の何番だっけ。別れの曲」「ピンポーン。さすが先生ね」「おれはこの曲が弾けなくてピアノをやめたよ」彼女は手を止めると私の胸に顔をうずめた。「ねえせんせい」「なに」「わたし、きれい?」「うんとてもきれいだよ」胸を密着させた彼女の心臓から少し早い鼓動を感じた。
December 19, 2012
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月明かりが差し込んで、ベッドに横になって目を閉じた彼女の表情を照らす。(目を開けたときも可愛いが、目を閉じたときももっといい)彼女の左手に自分の右手の指を絡めて額にキスをした。彼女は目を閉じたままだ。唇を重ねてさらに首筋にキスをすると彼女は思わず声をもらした。「あっ...」さらに左耳のほうを攻めて今度はもう一方の指を絡ませる。すると彼女が少し強く握り返してきた。「目を開けてごらん」「先生がメガネをかけていないとエッチね」「なんで?」「他の男の人みたい。でもどっちもステキ」「まあいっか。じゃ目を閉じて...見てもいいかな」目を閉じた彼女のバスローブをゆっくり開くと彼女の白い肢体が浮かび上がった。「...きれいだね」「はずかしいよ。」絡めた指をはずして彼女の胸から腰のほうへ触れていく。感じたときに薄目を開けていることに気付いているのだろうか。彼女の反応は素直だ。少し鳥肌が立っているようだ。「寒いの」「少し」彼女の身体を暖めるためにバスローブを脱いで毛布をかぶる。「せんせい暖かい。湯たんぽね」「それはほめ言葉?」「うん。クマ」毛布の下で、今度は彼女のほうから唇を合わせてきた。
December 17, 2012
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三度目のキス。一度目は2ヶ月前。講演会の帰りの病院のエレベーター。「退屈な講演だったね。おまけに通訳いたって全部ドイツ語じゃね」「先生いびきかいて寝てましたよ」「そう?確かに寝てたけど」「ゲルバー先生笑ってましたよ」「え、本当。教授も気付いてた?」「もちろん。知らないのは先生だけ。フフ」「困ったな」同乗してる学生は聞こえていないふりをして降りていった。二人きりになって「ウソですよ。でも隣で寝顔を見てました。寝顔かわいいですね」「20歳近くも離れてるオヤジにかわいいはないだろ。」「ううん。クマが寝ているみたいでね。」「そっちか」(この娘はきっとファザコンだな)突然、彼女が「先生眉毛に毛がくっついてる」「なんで」「とるから目をつむってて」目を閉じた瞬間、暖かい息と唇どうしの接触を感じた。驚いて目を開けた。「どうして?」エレベーターが開いて、彼女は降りて振り向いて言った。「前から。クマ」そのままエレベーターに一人残されたまま呆然としていた。ゲームの始まりだった。長いキスの後、彼女は言った。「教壇に立ってる先生がずっと好きだったの。みんなの憧れの的の先生。だから、先生のこと誰よりも欲しかったの。」彼女の長い髪を両手の指で絡めながら、彼女の瞳を見つめた。(なんて可愛いんだろう)彼女は視線をはずさない。たまらず、「俺も欲しかった」と返した。彼女は最高の微笑を見せた。
December 13, 2012
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「気を取り直してシャンパンでも飲もうよ」「うん」「ドンペリニョンってシャンパン知ってる?」「ドンペリでしょ。高いのは知ってる。パパがバブルの時代によく飲んだって」「そう昔はよく飲んだね。ディスコでね」「へえ。不良中年ね」「おいおい当時は俺も君と同じくらいの年齢だよ。そしてこれは2002年もの。とりあえず乾杯。おめでとうお誕生日」「ありがと」彼女は一気にグラスを空けた。「おいおいそんなに軽い酒じゃないよ」「早く酔いたいの」「もう少し味わってね。」彼女は2杯目も一気に空けて、もたれかかってきた。「せんせいは結構じらすのね」彼女が胸元から見あげてつぶやいた。「なにが...」と言おうとした時、彼女の唇の感触があった。そのまま二人は唇を重ねたまま10秒くらい息を潜めた。
December 12, 2012
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シャワーからあがると、彼女は窓の外を眺めていた。傍に寄ろうとしたとき彼女は突然振り向いた。...彼女の瞳には涙があふれていた。「どうしたの?さっきの電話?」「話さなきゃダメ?私は先生の奥さんのことは知らないのに」「話して楽になるなら、受けとるよ」「元カレから誕生日おめでとうって。よりをもどさないかって言われた」「うん。それでどう思った?」「ありえないって」「なんで」「彼は初めての相手。でも私以外に二人の女と付き合ってたの」「それはなんというか、お断りしたほうがいいね。ちなみに彼はいくつ?」「44才」「えっ」(初めての相手が俺とそんなに歳が離れてないのか)「それで涙の理由は?」「奥さんとも別れるからって。そんな見え透いた嘘にずっと騙されてた自分が情けなくって」「そっかありがとう。話してくれて。俺のことも知りたい?」「いいよ、先生。先生のこと好きになったの私の方だから。気にしたらごめんね。」彼女のことがとても愛しく、思わず強く抱きしめた。
December 11, 2012
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外は雨が降ってきたようだ。窓から見下ろすと傘をさしている人が歩いている。(春の天気は本当に変わりやすい)ベッドに横になってBGMをつけて、そして目を瞑って深呼吸をした。(おれはいまここで何をしている?そして彼女は今)「お先に」突然バスローブ姿の彼女の声がした。長い髪が濡れないように後ろで束ねているのだが、首筋が見えて少し大人っぽいと感じた。「お酒飲む?」「そうだね。もう未成年じゃないしね」「それじゃ。シャンパンを用意しておくね。俺がシャワーからあがったら乾杯しよう」「OK牧場」思わずふきだしてしまった。「誰から聞いたの?」「おじいちゃん」「えっ」照れ隠しにすぐにシャワールームに行くことにした。(さすがにおじいちゃんと比較されたらきつい)洗面台のコップにピンクの歯ブラシ。彼女は歯磨きを済ませたらしい。(先に歯を磨くか)鏡を見ながら歯磨きをしていると、彼女の携帯の着信が聞こえてきた。彼女は誰かと話しているようだ。会話の内容を聞かないように、シャワーの音でかき消した。(彼女がどんな理由をつけているにしても、この場にいることに違いない。そして、今ここに自分がいること。この2つの現実を受け止めよう)
December 9, 2012
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「こんな時間でも船が動いてるんだね」「うん」「あっちが台場?」「うんそうだよ」ホテルの55階の部屋の窓からは全てが見渡せる。「風がないから波も静かみたい」彼女を後ろから抱き寄せる。「満足できた?」「うん。あともう少し」「何が?」「誕生日まであと5分」「じゃあ祝成人ということで乾杯しようか」「お酒飲ませてどうするつもり?」「それは気分次第かな」「いじわるね。ここまで来させて」海のほうから聞こえる汽笛。12時になったらしい。「おめでとう。きみもようやくこっちの人間だね」「それってオヤジのせりふだよ」「まあまあ。はいプレゼント」「ありがとう、開けていい?」「うん」「BVLGALIのアンクレット欲しかったんだ。つけてもいい」「もちろん。つけようか」彼女はいすに座って左足を伸ばした。青いペディキュアがいかにも若い。「このリボンは私の首に巻いてせんせいへのお返し」「おいおい」「...奥さんいてもいいよ。でもせんせいのこと好きなのは自由だよね...」「...もちろん」「いいよ。これ以上はノーコメントね」彼女は目を閉じて背伸びをした。たまらなく可愛らしい仕草に思わず強く彼女を抱きしめた。「いたいよお」「そろそろ寝ようか」「はいりょうかいです。お先にお風呂入ってきます」ライトを少し暗くした。
November 28, 2012
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タクシーに乗り換えて中華街へ。(こんな時間に中華街でラーメンとは。)歩いてもなかなかラーメン屋があるわけでもなく早々に中華料理の店でラーメンを頼むことにした。しばらく大通りを歩くと小道に横浜ラーメンの看板が見えた。「あそこどうだろ」「いいね。横浜ラーメンってどんな感じ?」「味噌のこってりとした感じかな。でも札幌ラーメンとは違う」「へえ。さすがラーメン通」閉店間際なのか待たずにカウンターに通された。自分たち以外にはサラリーマン風の客が数人いただけだった。「味噌でいい?」「ネギ味噌でしかも辛いのでお願いします」彼女はいつも辛いもの好きだ。クリスマスのイルミネーションの時期はとうに過ぎているのに港に続く道はライトアップされていていた。「ご馳走様でした。わがままに付き合ってくれてアリガト。それにしてもイルミネーションは時期はずれね。でもご褒美みたい、私たちの。ね、せんせい」「なに?」「もうひとつご褒美ちょうだい」イルミネーションツリーの下で彼女は突然立ち止まって目を瞑っていた。重なる二人は10秒ほどライトアップされていた。「ネギのにおいしたでしょ」「そうだね。ホテルにチェックインして口直しの飲みものでも飲もうか」「...」「どうした?」「せんせい」「なに?」「私、覚悟できてるよ」「なにが?」笑いながらホテルのほうへ歩く彼女と私は、道行く人の好奇の的になっていた。
November 27, 2012
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夏休みも部活が休部だから何もすることはない。カナとはその後連絡もなし。そしていつの間にか大学も始まり、試験の季節に。(この試験が終われば自分の誕生日だ。そしてまたカナと会う口実ができる)試験は要領の良さと失うものはないとの開き直りから、全勝だった。ただカナは学校の忙しさから東京から帰ってこれないとのことだった。「誕生日おめでとう」「ありがと。学校大変?」「うんずっとね。とにかく勉強しなきゃ」(真面目だよね。さすがにまわりにもいない)「おれはようやく試験終わって全勝でした」「良かったね」「カナもあと半年だね。がんばって」「うん」「クリスマスの時期会える?」「まだなんとも」(この返事ってだいたいバツなんだよな。いいかげんパターン読めるよ)「じゃあまた東京行こうかな」「...」「とりあえず勉強だね。また電話するよ」「うん。それじゃ」後味の悪さだけ残った。
November 26, 2012
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列車は大崎を通り過ぎていた。「今何時?」「もうすぐ9時20分だよ」「おなかすいたね」「そうだよ。待ち合わせは8時30分だったからね」いつのまにか微妙な間からは開放されたようだ。「おかしあるけど食べる?」「それじゃあ夕飯がおいしくなくなるよ」「はいわかりました。せんせい」「おい、ここじゃせんせいはやめてくれよ」少しあせって周りを見回した。「じゃあパパってのはどう。親子ぐらい歳は離れてるわけだし。フフ」「…」「冗談よ。せんせい」彼女は屈託なく笑った。彼女の無邪気さには天性のものがある。そしてそれは自分が全てを犠牲にしても欲しいものだった。少なくともずっとそう思ってきた。突然彼女が「今日はラーメンが食べたい」と言い出した。「横浜で?夜景を見ながら?」「今日は私の言うことを聞いてほしいの。せんせい」「10代最後だから?」「うーん。明日の誕生日もそれからずっと。奥さんと別れてからも」少し背筋が凍った。「うそよ。ははっ」小悪魔とはまさに彼女のことを言うのだろうか。「わかりました。ではおいしいラーメンのお店へ」横浜に着いた時は10時を過ぎていた。
November 26, 2012
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自分たち以外誰もいない列車の中で、2日間の予定を話し合った。「横浜の夜景が見てみたい」「55階のホテルの窓から全部見渡せる」彼女は突然心配そうな顔をして、「ねえ本当に大丈夫?」「なにが?」「判ってるくせに。私は法律的にはまだ子供なのよ。明日の誕生日までは」「確かに。だから0時になるまで我慢するよ」「ほんと女たらしね。一度痛い目にあうといい。。。。でも私だけなら許す」「もちろん」「じゃあ証拠は?」「うーん」少しの間、沈黙があった。
November 21, 2012
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残雪のある参道。春分の日が過ぎてもまだ日は短い。参道のわき道。陽が陰ってきて人通りもいつか少なくなってきた。ここなら誰の目にも触れない。二人は唇を重ね合わせた。あと3時間ほど。二人はまた日常の生活に戻っていく。そんな二人の逢瀬を誰も知らない。ふと昨日の夜を思い出していた。人目を忍んで待ち合わせて飛び乗った。2人の初めての遠出だった。
November 19, 2012
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待ち合わせは渋谷のハチ公前だった。彼女が町田に住んでいたこともあり、横浜へは東横線が便利だった。そして都内に慣れてない自分たちにとっては一番わかりやすい場所だった。恋人同士になって初めてのデート。(二人で会うことは何度もあったけど、前と何か変わるんだろうか)不安と期待の中でカナは現れた。カナは待ち合わせの時間には遅れることはない。コンサバ系の服装に、トレードマークのワンレングスをバレッタで留めて。(今日も相変わらずきれいな髪だ)「無事に待ち合わせできて良かった」「うん。連絡取れないしね。」(少しよそよそしいな。まいいか。それにしても1年半前にもらったポロの香水をつけてるのわかるかな)根岸線の桜木町を降りて動く歩道へ。予想通り横浜博は大混雑だった。パビリオンは1時間待ちは当たり前。でも時間が過ぎるのはとても早かった。(隣にカナがいるから)「外は暑いね。中は冷房効きすぎてるしね。風邪引きそう」「うん。でもこの3Dすごかったね」「そうだね。1時間も待ったしね」三菱のパビリオンを見終わったあと、通りすがりのカップルに写真を撮ってもらった。わたせせいぞうの「ハートカクテル」の二人がそこにいた。(タイトルは”2人のためのパビリオン”か)夜が黄昏て大観覧車がライトアップされた。「観覧車のる?」「時間がもったいないよ。1時間かかるでしょ」「そうだね」「S君聞いていい?」「いいよ」「山PがS君にも春が来たって言ってたけど。どうなったの?」「それっきり。何もないよ。山Pはほんとに余計な事言うよね。」(でも正直には山Pのおかげだが)6時を過ぎて会場をあとにした。カナはあしたも学校があるからだった。帰りの電車の中。「今日は楽しかったね」「うん」「実家にはいつ帰るの?」「8月に入ったら。新幹線で帰る」「そっかおれは夏休みはずっと実家で休養だから、すれ違いだね。今度いつ会えるかな」「・・・」カナは何故か無言だった。同じ想いだと思ってそれ以上聞かなかった。、(遠距離だけど、後半年近く辛抱すればいいことだから)
January 9, 2011
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カナとの電話は1時間を過ぎたあたりから内容が変わってきた。決別を宣告するつもりがいつの間にか「カナは自分と何故付き合えないのか」という問答に終始していた。「S君が嫌いなわけじゃないよ。どちらかというと好きなほう」「それじゃ何故付き合ってくれないの」「私は二人姉妹だし、姉は結婚して家を出たから、お婿をとらないと」「それは前に聞いてるよ。先のことなんて誰も予想つかないよ。俺たちまだ22だし。恋愛のスタートができないと結婚もできないんじゃない。」「・・・・」(少し展開が変わってきたな。)「俺たち付き合ってみない。きっとうまくいくよ」「でも私、来年の3月まで東京の研修終われないし」「これまでだって同じ町に住んでたわけでないし、会うときはカナはいつも新幹線を使ってたよね。」「そうだけど...」「遠距離だけどきっとうまくいくよ」「そう?...」電話してから3時間以上経過していた。(もしかしたら、もう少しでカナのこと口説けるかもしれない)「ねえ、カナ聞いて。お願いだから俺と付き合って。電話だけど、俺今土下座してるよ。お願いだからこのとおり付き合って」カナは笑っていた。そして聞こえないぐらいの声で「...いいよ。」「えっ。聞こえなかった?もう一度」「S君と付き合うってことに決めたたってこと」(決別するつもりで電話したのに、3時間もかけて口説くことになるなんて)「じゃ今度会うときは初デートだね。どこで会う?」「横浜の横浜博にいきたいな」(みなとみらいでやってるあれか。でもタイミングもいい)「わかった。おれも実家に帰るからその時に。チケット用意するね。長い時間ごめんね。もう朝だね」時計は4時を指していた。
January 9, 2011
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休学明けの初登校の日。梅雨入り前の晴天が続いていた。本当は心が晴れるはずなのに、医師からは「日なたは体の抵抗力を奪うから」という理由で太陽を避けなければならなかった。日のあたらないところでは名実ともに日陰者だった。教室の中、廊下を歩いている途中では何も身に着けていない感じだった。「この人から病気がうつらないだろうか」そんな意識から異常なまでに他人の視線が気になり、そして他人の声に耳が敏感に反応した。研ぎ澄まされた五感は、しばらくの間絶望感を増幅した。ただ耐えるしかない日々。しかし時間が過ぎることはとてつもなく長い。やがて絶望感を忘れる出来事がやってきた。夏休みにちょうど入った頃。(本当なら、強化練習に明け暮れていた時期なのに。新しく気持ちを入れ替えることにしよう。カナとの思い出はもうおわりにしよう。彼女の気持ちはこちらに向くはずもないのだから)東京のカナに自分の決別の想いを伝えるために電話をすることにした。「こんばんは」「Sくんこんばんは。どうしたの」「どうしてるかって思って。勉強忙しい?」「うん忙しいよ。まだ休みじゃないし。で、用件はそれだけ?」「違うよ。実はね、自分の気持ちに整理しようって思って」「・・・・」カナは沈黙した。「俺がカナのこと好きだってもうだいぶ昔に告白したよね。だから、もうカナのこと忘れることにしようって思ってる。俺たちは友達って言えるのかもしれないけれど。それは自分にとってはつらいから」「・・・・」「カナにはずっと返事ごまかされたけれど、もうはっきりさせたいんだ。自分の気持ちをはっきりさせたい」「嫌いなわけじゃないよ。でも。」「でも何?」「友達じゃない?」「そう」「友達以上になれないの?俺たち。それとも誰か?」「うーん。誰かは居ないよ。でもね。」カナとの電話は1時間を越えていた。決別の電話はいつの間にか意外な方向へ展開していった。
January 8, 2011
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「最近これ聞いてるんだけど知ってる?ドリームズ・カム・トゥルーって」「知らない」親友のNは舌足らずな声で答える。「じゃあ金曜の中山美穂と仙道敦子のでてる”卒業”って見てない?」「それなら知ってる」「オープニング歌ってるんだけど。」「聞いたことあるな」1990年の冬だった。休学をして復学しすでに半年が経過していた。カナとは恋人でありながら音信不通。(やはり東京と300キロ離れてる遠距離恋愛なんて無理があるのか)クリスマスには忙しいとの理由で断られ、恋人とは名ばかりでこの3ヶ月は会っていない。「S君変わったよ。前はそんなんじゃなかった。」彼女が言い残した最後の言葉が脳裏をよぎる。(まだ療養中だからか...)学部の後輩Kから久々に電話があった。「Sさん、お久しぶりです。具合どうですか?」「日に当たるなってことを守る以外は普通にやってるんだけどね」「今度飲みに行きませんか?身体も大分いいってことでしょう?」「うん徹夜しなければね。誰かサークルの女の子でも誘ってみる?とはいっても短大卒業した連中だけど。Kのファンもいることだし」「いいですね。じゃあ俺のほうから声かけときますよ。なんたってSさんくるんだったら10人ぐらい来たりして。テストが終わってからいいですか?3月に」「わかったよ。それにしても黒服がよく言うよ。」Kは当時マハラジャで働いていた。3月の土曜日。僕らは4人で居酒屋にいた。私とKそして2学年下で今年短大を卒業した亜紀と祐子だった。2人は卒業後は市内の保育園で働くことになっていた。「佐渡の合宿では本当に楽しかったですね。覚えてます?一緒に流れ星見たの?」「そうだっけ?みんなで一緒にってことでしょ」「ピンポーン!なんせSさんは私たちの学年でモテモテでしたから。ぬけがけできませんでしたよね」「よくいうよ。でも抜け駆けした後輩の連中は上級生にボコボコにされてたね。ありゃ良くない」サークルの中でいくつものカップルが誕生した中、自分は彼女の二つ上の学年の同期のカナと付き合っている。形だけだが。彼女たちと別れてKとの帰り道で。「Sさん今日は楽しかったですか?」「いやあ久しぶり楽しかったよ」「亜紀ちゃんからSさんへって手紙を預かってるんですよ。後でゆっくり見てください」「ラブレターか?でも亜紀ちゃんはKのファンだよね」「そんなこといいですって。また飲みに行きましょう。それじゃ」Kと別れた後、帰りのタクシーの中で手紙を読んだ。...先輩。突然の病気でさぞかし落ち込んでるんでしょうね。私たちはかげながら応援してますね 亜紀 祐子...もしかすると今日の飲み会は彼女たちが企画したのか。そしてとても癒された気持ちになり、強く思った。(完全復活したら必ず何か彼女たちに恩返ししたい)桜の季節が終わり、ちょうど病気をしてから1年が経過しようとしていた。主治医から太陽の下で運動をしていいと言われた。待ちに待った瞬間だった。
January 4, 2011
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5月のGW明けからしばらくたって3週間の自宅療養になった。いわゆる自宅の一室における隔離だった。3週間の化学療法により排菌しないことが確認されれば復学できるということだった。はじめの1週間は今までのポジションを失ったことを受け入れられない自分がいた。絶望の気持ちの渦巻く中で朝日が昇り、夕日が沈んで夜になる。3食をとった後は3種類の薬を飲む。外には出られず、絶望感に襲われる。そして2週目になったころ、少し変化が現れた。(これからどうなるのだろう。)絶望感はいつの間にか消すことのできない不安に変わっていた。3週目になり、やっと現実が受け入れられるようになった。(俗に言う日陰者とはまさにおれのような男を指す言葉だ。ならばそのように生きるしかない)そしてこの時、無性に声が聞きたい人がいた。同じ東京にいるカナだ。電話だけなら病気に感染することも無い。カナから聞いていた電話番号にかけてみた。すると偶然カナが電話に出た。「S君お久しぶり。どうしたの?」「うん。カナの声が聞きたくなってね。電話したよ。どう勉強は忙しい?」「そう。1年で覚えなきゃいけないことだらけだからね。今も勉強してるの」「そうか。大変だね」「Sくんは?」「ああ。実は今ずっと東京にいるんだ」「え何で?いつから?会おうよ。」「2週間前からなんだけど。だけど会えない」「どうして?」断られたカナは急に不機嫌になった。「実は病気で今自宅療養中。結核なんだ」「...」「3週間で状況よければ復学できるんだけど」「そっか知らなかった。大変だったんだね」「3週間たったらまたN市に戻るよ。だからカナも東京で勉強がんばってね」「ありがとう。S君も早く元気になってね」「ありがとう。元気になれそうだよ。それじゃ」受話器を置いた瞬間、滝のように涙がでてしばらく止まらなかった。22年生きてきた中で経験したことの無い出来事だった。3週間が過ぎN市の病院で喀痰検査を行った。排菌していなかったとのことで休学せずに復学できることになった。のちに絶望の言葉の本当の意味を知るまでの一瞬の安息だった。
May 18, 2010
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4月になった。壮絶な進級試験を乗り越えたのもつかの間、体育会のテニスも夏の大会に向けてようやくレギュラーの座を得るポジションにつけていて、忙しい毎日が続いていた。食欲が旺盛な中なかなか体重は増えなかった。慢性的な疲労のせいか、時折倦怠感が襲った。ただ進級もしたし、部活も好調。アルバイトの家庭教師も掛け持ちで、忙しいながらも充実した毎日を送っていた。ボーリング同好会主催の大会のビラを配るために、県立女子短大の前でビラ配りをする余裕もあった。何もかもうまくいっていた裏で、自分の病が着々と進行していたことをこのときは知るはずも無かった。これを不幸というのだろうか、それとも否か。その日は突然やってきて全てを奪い去った。奨学金の申請のための健康診断。学部の隣の大学病院で受信することにした。「健康診断ですか?用紙はありますか?」「これです」「それじゃ。採血して、それから胸部X線撮影でそれから耳鼻科に行って...」「わかりました。最後に内科で診断書がもらえるのですね」受付から2時間半ほどして内科に戻った。(大学病院といえども待ち時間が診察の倍以上なのは問題だな)「Sさん。15番にお入りください」診察室前の着替え所で待たされる。(中の声は丸聞こえだな。プライバシーのかけらも無い)前の患者が出てきたようだ。次の患者は自分のようだ。奥から2人のドクターの声が聞こえる。「この影はどう思う?」「喫煙歴があるようですが、恐らくテーベーですか?」「おそらく」(テーベー?どこかで聞いたことがあるような...)しばらくして「Sさんどうぞ」「奨学金機構への健康診断ということですが、実は肺に影が見つかりまして」「どういうことですか?」「右肺上尖に2箇所。左肺上尖に1箇所陰影が写ってます。これは見逃せません」「私にはどれのことかわかりませんが」「ここです」その後、陰影が発現する疾患として、がんと結核の可能性を宣告された。このとき背筋がぞっとする思いがした。病が深刻だったからではない。テーベーは結核のことだったと思い出した。「阿寒に果つ」で純子がからかったあの病気。純子の呪縛は解けていなかった。そして半年前、偶然夢枕に立った純子が自分に宣告したことば。「あなたは24歳の誕生日を迎えられない」純子は自分を彼女の世界へ導こうとしていると。翌々日、喀痰検査で結核の確定診断が下された。1ヶ月ほどの休学と自宅療養そして1年間の静養。クラス全員の再健康診断の実施。感染ルートの調査。表舞台から裏の舞台へ。周囲の目や声に過敏になっていった。その日から何年ものあいだ服を着ていても裸同然の日々が続いた。
May 14, 2010
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あれ以来、ケイコとはあえて連絡することは無かった。進級試験の忙しさからとても勉強以外のことを考える余裕も無かった。そんなテストで忙しい最中、意外な人物からの手紙が届く。(ケイコか?いやこの筆跡はカナだ!) カナの手紙。...S君お久しぶり。カナは相変わらず忙しいけど、S君もテスト忙しいんだよね。ねえ、カナは今度の4月から東京に行くことになったよ。1年間限定だけどね。国内留学です。だから、山Pと3人で壮行会やってくれない?...(まったく突然手紙が来てこれか...でもまだ続きがある)...あともうひとつ知りたいことがあるよ。S君春が来たんだって?山PがS君浮かれっぱなしだって聞いたんだけどさ。その話を山Pに聞いたとき、目の前が真っ白になった...意外な彼女の手紙の内容だった。彼女は意外と恋愛に関してはうぶなのかもしれない。1年近く仕事で忙しいとかわされていたけど、自分がカナに告白したことを忘れていたわけではなかったようだ。とにかく、カナの気持ちを少し知る機会になった。3月山Pとカナと3人で進級祝いとカナの壮行会をやった。相変わらずカナと距離はあったが、少しずつカナとの間の雪解けが近いことを予感させた。月末彼女は東京に引っ越して行った。
May 13, 2010
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1988年の正月がやってきた。サークルでは自分の周りでひそひそ話が聞こえてくるようになった。きっとケイコと街中を歩いてたのが目撃されたのだ。しかし、そんなことはどうでもよかった。早く状況を整理しなければいけない。自分の気持ちがカナにあることをケイコに話さなきゃいけない。「ねえ。急に話したいってこと。何?」「ケイコごめんね。実は...今忘れられない人が居るんだ。」「...そんなのわかってた...」「えっ」「でもね、私の気持ちはどうなるの。こんな気持ちになった私はどうしたらいい?」「ごめん。友達からのつもりだったけど、それ以上は...」「...全然わからないけどとにかく、今日は帰る」「ちょっと待って。」彼女は、顔色ひとつ変えずに去っていった。(こうするしかなかったんだ)1週間ほどして、ケイコから手紙が届いた。最後に会ったときと比べてとても落ちついた感じだった。...この前はごめんなさい。突然だったので、どうしてよいのかわからなかったので。でも正直に話してくれて良かった。...Sさんが私にとって初めて好きになった人だったの。今でもそう。だからもう一度やってみようよ。私きっと代わりになれるから。...読みながら胸が痛くなった。ケイコの純真さを思うともっと違うやり方で伝えるべきだったかもしれない。とにかく彼女を傷つけてしまった。すぐに彼女に電話することにした。「ケイコ。ごめんね。傷つけるつもりじゃ無かったよ。でも、自分も変わろうとしたんだけど変われなかった。」「私、待つよ」「じゃ、しばらく連絡しなくてもいい?」「うん。待ってる」それがその年でのケイコとの最後の会話になった。
May 13, 2010
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クリスマスイブは土曜日だった。ただケイコは仕事があって、その日は会えなかった。翌日の日曜日会うことにした。ケイコとは駅で待ち合わせをして、カフェで昼食をとった。ケイコは髪が長い。そして好みの赤い服がとても目立つ。二人で歩いていると通りすがりの女性が彼女の髪に釘付けになる。ケイコを自分のアパートに呼んで用意したクリスマスケーキを食べた。あらかじめ用意していたマイケルJフォックス主演の「摩天楼はバラ色に」のビデオを見た。「私、もう帰るんですか?」「うん、明日仕事でしょ。駅まで送ってくよ」「...」(彼女の機嫌損ねたかな)僕たちはクリスマスの間際にできたにわかカップルに違いなかった。ケイコとの気持ちの温度差を感じながら、心の中の隙間に満たされない何かを感じた。そしてケイコもそう感じていたに違いない。「おい、S。最近彼女できたんだって」「ああ、早いな。誰から聞いた?」「サークルの女の子に見られたらしいぞ。すげえ髪の長い女の子じゃん」「間違いなくそれ俺だな」「そっか、いよいよカナはあきらめたか」あえてその返事は山Pにはしなかった。そのとき初めて虚しさの言葉の意味を理解した。(自分が好きなのはやはりカナなのだ)
May 13, 2010
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11月に県立短大のダンスパーティーがマハラジャであるというので、クラスの4人組で行くことになった。イケメンで元マハラジャ黒服のH、話題豊富で人気者のA、そしてAと仲の良いパチンコ仲間のKと私の4人だ。今回は知り合いがいなかったので完全なアウェイだった。そしてダンパという名の体裁のマシな合コンか街頭ナンパに近い状況だ。さらに状況は私にとっては不利だった。HとAは当時最強のタッグを組んでいた、モテモテの二人組みだった。残されたKと私は完全に見劣りするばかりか、仲があまり良くなかった。最強組は早々と短大の女の子とお知り合いとなり、話もどんどん弾んでいく。取り残された負け組はテーブルの隅で相槌を打っているだけ。(このままではいけない!)テーブルを後にして、フロアへ出陣することにした。Dead Or AliveやMICHAEL FORTUNATI など聞きなれた曲ばかりが流れる中、お立ち台でボディコンで踊る連中には目もくれず、適当にあわせて踊りながら周りを見回す。すると真正面に、赤いドレスの髪の長い一際目立つ女の子がポツリと一人で踊っている。(あまり遊びなれてない感じの子だな。声を掛けてみよう!)「今日は一人ですか?」「友達と二人です」「そうですか。良かったら僕も友達と二人なんですけどあっちのテーブルでお話しませんか」「いいですよ」退屈してたKに声をかけたら一緒に来ると言った。彼女はケイコという子で隣町から職場の同僚と遊びに来ていたOLだった。(今日は短大の貸切では無かったんだな)「これから場所を変えて飲みに行きませんか」「いいですね」僕たちはカラオケに行くことにした。彼女たちの職場は同性ばかりで、ストレス発散も兼ねてマハラジャに来たとのこと。どうりでお立ち台に乗る感じじゃなかった。また遊びましょう、ということでケイコと私はお互いの電話番号を交換した。「Sさんて柳場敏郎ににてませんか」「いや高校時代からひょうきん族のさんまに似てるって言われてたけど。柳場敏郎は初めてだよ。どっちも歯に特徴があるよね。アハハ。とりあえずほめ言葉だよね。ありがとう」帰り際にKに聞いた「どうだった?」「ま何も無かったよりはいいだろう」「彼女と会ったりしてもいいかな?」「別にいいよ。俺タイプじゃないし」クリスマスは1ヵ月後に控えていた。カナのことは忘れかけていた。
April 11, 2010
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佐渡の合宿が終わって間もなくMから電話があった。それを聞いて山Pは「お前とMが二人で泊まるわけにはいかないからな。当然俺もお前の家に厄介になるよ」こうして、3人で繁華街で飲んでから、私のアパートに泊まることになった。彼女は酒には自信があるらしい。私たちは散々飲んだ挙句、アパートに戻った。アパートでもしばらく飲んで、山Pが先につぶれた。この状況では先に眠るわけにはいかず、彼女も目をパッチリ開けていた。「山P寝ちゃったね」「うん。先輩眠くないよ」「じゃ。夜の海岸散歩する?」アパートの200メートル先は海浜公園だ。真夜中の2時くらい。まだ熱いためか散歩をしている人や、つりをしている人がいたのが意外だった。彼女は隣で歩きながら、少し距離を縮めてくる。(山Pは彼女のことを気に入っている)たわいのない話をすることにした。「あゆみちゃんは彼氏がいるの?」あえて彼女の同郷の女の子の話をした。「何でですか?先輩やっぱりあゆみちゃんのこと好きなの?」「そうじゃないよ。でも同郷でしょ。高校時代の彼氏が地元にいるって聞いたから」「そう。あゆみちゃんは彼氏に縛られてるんだよね。彼女は遊びたいみたいなのに」「ふうん」「でもね。あゆみちゃん先輩のこと気に入っているみたいだよ。S先輩に迫られたら拒めないかもだって、言ってた。うふふ」さすがにこれは聞いてないふりをした。(結構こいつおしゃべりだな)アパートにもどってみるとまだ山Pは眠っていた。私は早朝連の準備をして、テニスコートに出かけた。「昼前に戻ってきます。ごゆっくり」2人をアパートに残して出かけた。 晩夏のテニスコートは早朝にもかかわらずかなり暑い。数時間前まで飲んでいた酒が体力を消耗していく。4時間あまりの練習のあと、午後の練習に備えてアパートに戻った。部屋に戻ると2人がいた。ただその場の空気が普通ではないことに気づいた。エアコンのない暑い部屋で窓を全開にし、少し寄り添う感じの二人。(きっと何かあった感じだがここで何かを言うまい)「シャワーを浴びたらまた練習に行くので。合鍵はポストに入れてといてね」早々に部屋を出たい気分になっていた。夕方になって再び戻ったとき2人の姿は無かった。その後2人はどうなったか?山Pにはあえて聞くことはしなかったが。 ただこの日の出来事は後で事件になっていた。夏休み明けの女子寮では彼女が「S先輩の家に泊めてもらった」と言いふらしてうわさになってたらしい。まったく厄介な話だ。「S先輩の家にMが泊まったのは本当ですか?」「ああ、山Pと朝まで3人で飲んで最後にアパートに寄ったって感じだけど」サークルではそんな弁明に終始追われた。(軽はずみな行動だったな)しかし、そんな噂話もカナの耳まで入るわけもなく、カナとの距離は平行線だった。相変わらず仕事が忙しいのか連絡もとりあってない。 「もう、カナはやめとけば」山Pの忠告は現実的だけれどもとそれも虚しく感じた。新学期が始まると進級をかけたテストに追われ、 学園祭の準備のシーズンへと続いていく。そんな中、「県立女子短大のダンスパーティーに遠征」なんて話が舞い込んできた。
March 13, 2010
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キャンプ場の夜はBBQで始まった。どうやら今日は私たちだけの貸切状態らしい。今回のキャンプではひとつ気にしていたことがあった。短大の1年生であゆみっていう目立った子がいて彼女がキャンプに来ているかどうかということ。 ただ自分がそんなことを気にしているなんて誰にも話してはいない。山Pが1ヶ月前にこんなの子がいるって聞かされていた。「サークルにお前のこと気に入ってるあゆみっていう1年生がいるんだって。でも彼氏が地元にいるみたいだけど」結局彼女はキャンプには来なかった。 天気は良く晴れていたので、慣れてはいないものの簡単に火がおこせた。女の子たちが野菜を切って、男たちが焼くというお決まりの光景。しかし酒が入ってくるにつれ、いつの間にかマイクとカラオケ登場。酔っ払った男達がマイク片手に大音量で大暴れ。さすがにこれは雰囲気台無しで、少数グループは抜け駆けして、こっそり海岸へ肝試しへ。もちろん自分も。くじ引きでは1年生の女の子2人と3人組で肝試しへ。「暗くて帰り道わからなくなりそうだね」「大丈夫先輩がいるから安心だもんね」「うん。でもあんまし怖くないですね。意外と明るいし」10分ほど歩いて静かなる砂浜へ。水平線にイカ釣り漁船の灯火が等間隔で見えていた。「ここからどれぐらいのところに船があるんですかね?」「わからないけど遠いに違いないよ。それにしても幻想的な景色だね」このシチュエーションではどんな相手どうしでもカップルになれそうな気がする。「うがーっ!」突然お化けもどきの山Pが突然背後から走ってきた。「おいキャンプ場でえらいことが起きてるぞ。地元の人がカラオケで頭にきて怒鳴り込んできたらしい」「肝試し終了、キャンプ場に戻ります。」戻ると地元の漁師の人が怒鳴っていた。自分は朝早いのに、遅くまで騒いでいる私達にかなり頭にきていたらしい。1時間かけてようやくお引きとりしていただいた。その後はいくつかのグループに分かれてテントに入って静かに怪談話やお酒をのんだり。早々にお休みになった女の子達もいた。怪談話も飽きて、外に一人でタバコを吸いに行くと誰やら近づいてくる女の子がいる。山Pのお気に入りのMだ。「S先輩飲んでますか」「結構飲んだよ。君は?」「まだ飲めますよ」「それにしても佐渡は星がきれいだね」「流星群きてるの知ってます?」「そうなの。あ今見えたよ」「私も見ました」「何かお願いした?」「無理でした。でも先輩にお願いしたいことあるんですけど」「え、何?」「今度N市に遊びに行くのでS先輩の家に泊めてください」「う、うん。おれは部活は早朝連だから早いし、山P誘って、夜は飲みにでも行く?」正直、後輩の女子を一人で泊めるのはいやだった。山Pはこの子のことを気に入ってたし、3人ならまだ言い訳になるか。 翌日、戦場の跡のように酒やビール瓶が転がっていた。さらには酔いつぶれて地面に転がっている輩も何人かいた。地元の人を怒らせて後味の悪いキャンプ場を私達は早々に退散することにした。帰りのフェリーの中でこのキャンプではあまり収穫はなかったと考えながらも、「Mを家に泊める」という約束を半ば後悔し始めていた。
March 12, 2010
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(佐渡のキャンプ場で)北陸のN市には海岸線沿いに素敵なキャンプ場がいくつもある。サークルの企画で30人近くで夏休みの2日間合宿を兼ねて、佐渡でキャンプをすることにした。N市から佐渡まではフェリーで2時間ほどかかる。さらに両津港から約1時間ほど車で走って、僕らはキャンプ場に着いた。海までは歩いて10分くらい。泳いだり、釣りを楽しんだりいくらでも好きなことができる環境だった。 サークルの1年生の女の子が続々と合流してくる。普段のジャージ姿じゃ想像できない開放的な格好に山Pからはため息がもれた。「あれはちょっと反則じゃねえ?」「うん。目のやり場にこまるな。なんか勘違いしてるよね?」「あっ!あれはみ出てねえか」「えっ。それは気のせい。多分」山Pはすでにオヤジ目線。 全員そろうまではまだ数時間掛かる。僕らは早速テントの設営を始める。8月初旬の陽射しはかなり強く、とにかくのどが渇いた。昼からすでにビールを片手にそして反対の手で山Pのビデオカメラをもってふざけながらまわし続ける。「写ってるよ」「ちょっと真面目にテント建てろよ。あと7つもたてるんだぜ」「なあ、山P。カナとはね。付き合ってくれって言ったのに返事がないよ。多分これってふられているんだろうか」「うん、その通り。いろいろ状況を照合するとそうだね。でもやっぱ告白したんだ」山Pは冷静に分析して答え、そして続けた。「いい加減カナのことあきらめたら。遠距離だし。それに今日のご馳走は何か期待せずにはいられないよ。」確かに今日は何が起きてもおかしくない気がするが...「S先輩、このテントの棒が入らないんですけど」1年生の女の子2人が声を掛けてきた。「うーん。どれどれ」2人の熱い視線を感じるのは気のせいだろうか。慣れないテントの設営に戸惑っていると、その隙に女の子達が質問攻めをしてくる。「S先輩は札幌の高校出身ですか?」「そうだよ。親は今は東京だけど。親が転勤族でね」「体育会のテニスもやってるんですか?」「落ちこぼれだけどね」「私たちも高校では硬式やってたんですよ。今度教えてくださいね」「う、うん。あテント設営完了です」山Pはなぜかこっちを見てニヤニヤしている。缶ビールの空き缶が散乱しだした頃には、キャンプ場からは水平線に夕日が沈む。闇の訪れとともに、忘れられない夜の宴がスタートした。(つづく)
March 10, 2010
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カナがハワイから帰ってから、お土産があるというので会うことになっていた。そして自分もカナに卒業記念のプレゼントを渡すことにしていた。一通の手紙を添えて。 始まりは友達だったから、気持ちの整理をつけようと思った。結婚とか先のことはまだ考えないで、遠距離でも恋人として付き合って欲しいと。慎重な彼女の性格だから、きっと即答なんてありえない。手紙がいいと思った。彼女のハワイのおみやげはPoloの香水だった。体臭なんて気にならない当時、どんな時につけるかも判らなかったけど、きっと彼女が好きな香りに違いなかった。(この香水が自分のイメージなのか)当然このとき渡す予定だった彼女へのプレゼントの選択を後悔した。彼女へのプレゼントはテディベアのぬいぐるみだった。彼女は微笑んでそのプレゼントを受け取ったが...間違いなくきっと後で笑いの種にされただろうが。そんな不安が的中するかのように、その後何の音沙汰も無く新生活がスタートし、あっという間に4月が過ぎた。彼女からの連絡は無かった。5月になって思い切って電話することにした。「どう仕事は忙しい?」「うん。毎日残業でね。玩具の使い方でいろいろ勉強しなければならないの」「S君はどう?」「念願の一人暮らしをはじめたよ。一人暮らしって結構大変だよね。それに実習と部活とサークルとバイトの掛け持ちで。暇なしだけどね。」お互い忙しいということでしばらく会えない感じだった。それにしても手紙のことについては触れようともしない彼女。(やはり友達の一線は越えられないのか?)そして電話も途絶え途絶えとなり、いつの間にか夏になっていた。テストも実習もそこそこにこなしたものの、部活のテニスは相変わらずの万年イレギュラー。ただ8月に入って一大イベントがあった。彼女のいなくなった後も続けていたサークルの夏合宿が佐渡のキャンプ場に決まっていて、参加することになっていた。
March 6, 2010
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カナとの初デートの待ち合わせ場所は大通りの四つ角の本屋の前だった。バブル景気の真っ只中。大通りは建築ラッシュで、デザイナーズの店があちこちに進出していた。そんな自分も例外なく時代の波に乗っていたのか。成人式のために揃えたデザイナーズのスーツを着て15分前から待ち合わせ場所に待機していた。間もなくカナが現れた。背は自分より少し低い感じ、そして黒のストレートのいわゆるワンレングス。今風の女子大生のおしゃれな着こなしだった。僕らは並んで歩く。まさにわたせせいぞうの「ハートカクテル」のなかのワンカットのように。通りすがりのすれ違う女子高生達はまず自分の姿を見て、そしてカナの姿を見る。そしてうすうす感じていた。 (ハートカクテルのような、ぼくらはお似合いのふたり)デートコースは決めていた。(これまではカフェバーのはしごで敬遠されたこともあったな。プールバーにしよう) ビリヤードブームがやっと落ち着いてきた頃。あまり待たずに店に入ることができた。ナインボールをしながら、カナに話しかけた。 「4月からは職場は忙しいの?」「そう。S君も学部に上がるから大変なんだよね。あと4年なの?」「ダブらなければね」現実的な会話だった。この人と結婚するならあと4年は待つのか?ということなのだろうか。そしていつの間にか結婚の話にもなった。「結婚する人は婿に入ってもらわないと。お姉ちゃん結婚してでてったし」そういうカナはニコニコしながら、マイペースに続けて話す。「あー、白球も落ちちゃった」「フリーボールだから9番ご馳走様」彼女ともしかして結婚?頭の中でイメージしてみた。彼女は4月から社会人、そして自分が社会人になるのは4年後。そして付き合えても遠距離恋愛 。好きだという感情とは別に、極めて非現実的な状況を悟った。カナは3月に卒業旅行で友人とハワイに行くと言っていた。戻ってきたらまた会う約束をしたが、まるで冬の裏日本の天気のように冴えない気分だった。
March 6, 2010
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(28年前のバレンタインデー) 周囲への誤解が解けるのには3ヶ月ほどかかった。「おんなったらし」そんな声が背後からいつも聞こえてきた。 ただ、年下の彼女とはそのまま仲良く下校したり、わだかまりのない日々が続いた。いつの間にかクラスの中は受験を1ヵ月後に控え、ぴりぴりしたムードに変わっていた。「女性が男を食い殺す」という迷信のあった60年に一度のひのえ午生まれは、出生率の際立って低い年だった。渡辺淳一に傾倒していた彼女といえば、彼女から意外にバレンタインのチョコレートをもらうことになった。「彼女がいても、もらってくれるよね」と相変わらずマイペースだった。(どういうつもりなんだろうか)彼女の志望校は北学区ではトップの学校だったが、そんな彼女の目指す進学校でさえ ひのえ午の影響で倍率は1を切っていた。自分はといえば彼女を作る代償として猛勉強をする約束を親としたが、意外と公約が果たせるような状況となっていた。私は渡辺淳一の通った高校へ受験をすることにした。「阿寒に果つ」の舞台を見るために。 バレンタインデーでは彼女が手作りチョコと手編みマフラーを用意してくれた。中2にしてはよくがんばったなという感じだったが。彼女以外の二つのチョコレート。最後の一つは3年間同じクラスの女の子だった。 「ありがとう」複雑な気持ちで受け取った。 「阿寒に果つ」で「夜でも雪が解けるのね」と純子が俊一に言った言葉。そんな言葉が当てはまる札幌の3月のなかばに、彼女も自分もお互いの志望校に合格することになった。高校に入ると同時に年下の彼女とは疎遠になっていつの間にか別れていた。中学時代の出来事は全て遺物のような存在に変わった。 そして、驚くべきことに高校では意外な人物が待ち受けていた。純子だった。
February 20, 2010
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彼女は赤い下着だった。そういう下着を見るのははじめてだった。「私結構胸あるでしょ」と上機嫌な彼女。そして今度は私の服を脱がし始めた。いつの間にか下着一枚になっていた。「やっぱり、やめようこんなこと」彼女は今度は私ののどに手を押し当てて押し倒そうとした。強引な女の子だなと思いつつも、横になって彼女のことを右手で顔から足まで撫でた。(いつもはこうして自分の気持ちも相手と同じように昂ぶるのに。こんなに虚しい気持ちになったのは初めてだ)「やっぱりできないよ。ごめんね」彼女にソフトなキスをして、服を着るように促した。さっきまで笑顔でいた彼女からいつの間にか笑顔が消えていた。彼女は服を着て立ち去っていった。 それ以来彼女とは1回だけ顔を会わせた。お互い目をあわす事はなかったが。何事も無かったような感じだった。後日、この話を同僚に話した。「あれでよかったよね。」彼女をよく知る同僚はノーコメントだった。虚しさだけが残っていた。
February 18, 2010
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カナたちの短大は海辺にあった。夏には海水浴客の車で、校舎の周りの道路はいつも大渋滞していた。やがて夏が終わって、学園祭シーズンが到来していた。土曜日の部活の最中、同級生の部員に声を掛けた。「明日あいてる?。S短の学園祭だけど、一緒に行かない?」「いいねえ。マハラジャでダンパもあるんでしょ。行きたいねえ」僕ら2人は翌日の日曜のS短の学園祭に行くことになった。校門では来客を待つ短大生達。僕らが男だからか、好奇な視線を感じた。校門を入って校舎に入る時は女子の人数が倍にも膨れ上がっていた。女の園の中に入るまでには、さらに勇気が必要だった。深呼吸して玄関に入った途端、見慣れた顔があって驚いた。カナだった。「S君、きたんだ」「うん。カナ、友達と来てるんだけど案内してくれない?」「うん。いいよ」僕らはカナに案内されて中に入った。「Sせんぱーい」とサークルの下級生達が声を掛けてきた。人懐こい彼女達と違って、同級生のサークルの女の子達は僕達がカナと一緒のところを見ると、少しよそよそしい感じだった。(連れはサークルの奴じゃないし、カナも自分もサークルじゃコンパ要員だもんな)肩身が急に狭くなった感じがした。「カナ。おれ達今日のダンパに行けないの?」「そんなことないよ。チケット売ってる子なら知ってるよ」「じゃ紹介して。カナは行かないの」「...」「予定ないなら、行こうよ。おれ達行くし」「じゃ行こうかな」「じゃマハラジャでね。」僕らはしばらくして校舎を後にした。 「とりあえずチケット、ゲットしたね。マハラジャの前で待ってるよ」「ネクタイとゴム忘れんなよ」「お前じゃあるまいし」カナがちゃんと来てくれるかどうか心配だった。 パーティー開始の時刻のマハラジャの中。僕らは当時流行のDCブランドのスーツでそろえていた。「ようこそ、S君、お友達?」ミツコだった。サークルの時のジャージ姿と違って、今日はイケイケのボディコンだった。「やる気満々だね」「あは。今日は台の上にも上がるからね。そうだ、カナももう来てるよ」 サークルの女の子でマハラジャに来たのはカナとミツコだけらしい。(サークルの女の子はみな真面目だからな)カナはVIPルームにいた。恥ずかしい思いでVIPルームに行き、「ねえ、踊ろうよ」「いやだよ」「そんなこと言わずに。じゃカウンターに行かない?」「それだったらいいよ」カナは踊るのが好きじゃないようだった。それと比べミツコは。すでにお立ち台に上がっていた。「ミツコは生き生きしてるね。フーだって、おかしいね。ところでカナは来年就職したら忙しい?」「うん。結構幼児教育に力入れてるところなの。いっぱい勉強することあるみたい。S君は卒業まであと5年もあるんだよね。そんなに勉強してどうするの?」「まあね。来年はおれも実は授業が忙しいんだ。ところで、カナは映画好き?グッドモーニング・ベトナムって面白い映画あるんだけど今度見に行かない?」思い切って、さりげなくデートに誘ってみた。「うん、いいよ」意外にあっさりOKだった。そしてドライマティーニを一気に飲み干して思った。(とうとう言っちゃったよ。でも、とりあえずふられないでよかった)Bananaramaの「 I Heard a Rumour 」が頭の中で響き渡っていた。
February 1, 2010
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夏休みに突入し、突コンの日がやってきた。体育会の強化練習をほどほどに繰り上げて、夜のコンパの準備をした。今日のお目当ては、やっぱりカナだった。カナがどんな子なのか楽しみしていた。カナとやまPとミツコは県内の同じ市の出身だったのもあり、僕ら4人は同じテーブルで飲んだ。「やまPは頭のいい高校でてるんだよ」「そういうミツコとカナは同じ高校?」「教えなーい。 S君は実家は東京なんでしょ」「そうなんだ。でも高校までは札幌。親が転勤族でね」「カナは卒業したらどうするの?」「地元で幼稚園の先生になる」「ミツコは?」「わたしも同じ」カナは初対面にもかかわらず、お酒を飲んではいろいろな話を楽しそうに話す。生き生きした目をして素敵な笑顔を振りまきながら。そしてロングのストレートの黒髪とその髪をまとめる目を引くバレッタ。まだ20歳になったばかりなのにどこか大人っぽい。(それでいて、子供が好きなのか。不思議だ)「今度学園祭なんで、遊びにきてね」 カナは私たちに言い残して最終の新幹線で帰っていった。コンパの帰りにミツコに聞いた。「カナは彼氏いないんだよね。」「うん。そうだよ。どうしてそんなこと聞くの?」ミツコは微笑んでいた。(ミツコは遠まわしに今の会話をカナに伝えてくれるに違いないな)街中にマイケルフォーチュナティの「GIVE ME UP」が響き渡っていた。
January 18, 2010
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週に2回の運動系サークル。大学の男子寮と他の短大の女子寮の有志のサークルだった。2年の時に途中入部したのと、自分の学部は一人もいなかったためか、なかなかサークルの中には馴染めなかった。ただ、寮の同じ階のやまPとコンビでバスケット大会で活躍する機会があった。おかげでMVPに選ばれてようやく飲み会の席でみんなの前で紹介された。こうなったら溶け込むのは早い。飲み会は部屋の修理代を払わされるなどいつも荒れている中で、酒は強いほうだったので、先輩につぶされることなく2次会まで生き残っていった。バスケット大会で同じチームだった当時4年生の男の先輩と短大の2年で自分と同じ途中入会のミツコと一緒のテーブルになった。「お前、ボーダーのシャツにピンクのサングラスはねーだろ。結構軽い感じだけど、彼女とかいるの?」「軽く見られるんですけど、ただいま募集中です」「へー、彼女居ないの。どんなタイプが好みなの?」「色白で髪がストレートで長くてふっくらした感じですかね」「それって、カナだよね」「そうそう。カナがぴったり」今日の打ち上げには来ていなかったけどミツコの友達のカナっていう女の子がいるらしい。コンパの時しかあまり来ないらしいが。ハートカクテル気取りで大学2年半ばでで2度の大失恋をし、カップルになってる周囲がうらやましい頃。(カナってどんな子だろう)結局この日は、この2次会でつぶれて記憶を失って寮まで戻されていた。翌日財布の中身を調べながら思った。(お札ばら撒いた気がするけど...とりあえず少し残ってるからいいか。それにしても頭が痛い。どうやって寮まで帰ったんだろ)体育会の部活はサボってしまった。後日サークルの水曜日。ミツコはサークルの中ではではおしゃれでひときわ目立った存在だったが、途中入会だったので、私と同じでなかなかなじめないでいた。ミツコが体育館のバレーコートの横に座る私に声をかけて隣に座った。「あんなに飲んじゃね。つぶれるよ」「おれ変なこと言ってなかった?」「それは大丈夫。最後はやまPと一緒にタクシーで帰ってたよ」「そう。良かった」(ミツコはこの中の先輩の誰かが気になっているんだろうな)暑い夏の季節がやってきていた。夏休み突入の前にまたコンパがあるらしい。ミツコは最後にひとこと言ってコートの中に入っていった。「今度の突コン、カナもくるよ」
January 12, 2010
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その日の教室ほど、他人の視線を意識した日はなかった。1時間目はよりによって自習。女子同士の会話のひそひそ声が気になってしょうがない。そんな雰囲気を打ち消すように、修学旅行以来ほとんど会話をしていなかった彼女が突然声をかけてきた。「ねえ。この数学の問題教えてよ」「ああ、いいけど」(おれより勉強できるくせにこんな時に何でおれに聞くのか)彼女の横で数学の問題を解いていると、後ろから彼女のことを嫌ってるクラスの女子の一人が「彼女が居るのにそんなことしていいのかな?」(終わった。完全に誤解している)一瞬凍りついてしまったが、第2波が致命傷となった。すぐさまとなりで数学を教えていた彼女が大きな声で「えっ、彼女いたの?ごめんね。誰?いつから」(お前も昨日のこと知ってたのか?それとも知らないで言っているのか)クラスは自習どころではなくなっていた。あまりの騒ぎに隣のクラスの担任が怒りにきてひとまずの収集がついたが。 放課後、数人のクラスの女の子に呼び止められた。「下級生と付き合ってると低く見られるよ」「低くってどういうこと」「下に見られるってこと」昨日のが彼女じゃないことはあえてここでは弁明しなかった。(ここでは下手な弁明はしないほうがいいだろう)ただ、彼女達が自分を呼び止めて、このときそんなことを言った理由はあとで知った。 (混乱の原因は自分だから、自力で収拾を計るしかない。まずは、彼女の信頼を取り戻すために一緒に下校するようにしよう)
January 11, 2010
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小学校以来、女の子と2人で下校することは初めてだった。70センチほどのパーソナルスペースを空けて2キロほど離れた二人の家まで歩いた。僕らは”同じマンション”に住んでいたから。 自分が周りからどんな目で見られているかなんて気にしたことはなかった。ただ、恐らくこれがただで済むはずはないことがわかっていた。突然彼女が切り出した。「部屋の間取りは?」 「3LDKだよ。君の家は」「4LDKです」「そうか」 「何人兄弟ですか」 「3人兄弟だよ。君は?」「2人兄弟です」(ずいぶんへんてこな会話だな)そんな会話をしていた時、寄り道をしていたクラスの女性徒数人とばったり出くわした。「えーっ。そうなんだ」この時、事の重大さに始めて気づいた。(おれは今取り返しのつかないことをしている。ただクラスの女の子は無視するしかない。後で何とでも弁明できる。今はこの彼女に、付き合っている人がいることを知らさねばならない)「実は君に話さなければいけないんだけど」「何ですか」「実は今付き合っている人がいるんだ。その子が、写真が欲しいと言ってると思って誤解してあげしまったんだ。だから、申し訳ないけど写真のことは忘れて欲しい。今日はそれを君に謝るためにこうしてここにいるんだ」「......そうなんですか。わかりました。じゃ私の家はここなのでさようなら」「ごめんね。さようなら」(とりあえず問題は一つ去ったが)家についてしばらくすると電話が鳴った。母親が電話に出て一瞬不機嫌な顔になり「女の子からよ」彼女は電話に出るなり泣きながら話し始めた。「今日、3階から見送ろうと思って見てたの。そしたら...」「違うんだ。実は...」彼女に全てのいきさつを話した。彼女と写真の女の子が同じ人だと思っていたこと。そして彼女にいま自分が付き合っている人がいるということ話したこと。だんだんと彼女の気持ちが落ち着いてきた。「じゃあ私のこと嫌いになったわけじゃないんですね」「もちろんそうだよ」(誤解は解けたかもしれない。ただもう少し人を傷つけないマシな方法あったんだろうに) ようやく落ち着いたと思ってほっとしたのはこの瞬間だけだったかもしれない。翌日の教室は弁護人なしの法廷に変わった。
January 11, 2010
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初デートは短い夏休みのとある一日。私の友達と彼女の同級生のダブルデートで2対2で遊園地に行った。2隻のボートにカップルが分かれて乗ったりした。別に緊張も何も無かった。彼女は少し緊張していた様子だったが。ただ帰った日に両親にこっぴどく怒られた。「受験生の癖に、こんなことはやめなさい」このコトバは意外にも自分に隠れていた反骨精神の炎に火をつけることになった。「兄貴と同じ高校に行けば良いんでしょ!」兄貴の高校とは渡辺淳一の高校のことだった。あまりにも無謀だった。当時目指していた高校より2ランク上の学校だった。特に多くを期待しないこの恋愛ごっこかもしれないが、こんなことであきらめたくもない。しかし、いつまで意地を張れるかだ。 短い夏休みが終わった。学校では僕らの交際は内緒だった。ただ彼女が不思議なことを電話で言う。「写真をあげた人とはどういう関係ですか?」「え、前に君にあげたよね」「いいえ私じゃありません」(彼女と別人?そんなはずないと思うけど) 何日後かにその事実が判明した。下の学年の女子でちょっとワルのグループの一人が教室に来ていた。「〇〇に写真渡したでしょ。彼女と今度学校一緒に帰ってくれない」「え、〇〇って知らないけど。誰」「同じマンションで毎朝会ってるでしょ?」同じマンションの男友達に聞いた。「お前知らないの?おれ達毎朝会ってるでしょ」次の朝の登校で、マンションで彼女の姿を初めて見た。(彼女のことか。同じマンションに彼女がいたのは正直知らなかった)少しワルなのか前髪が長くて顔が少しよく見えなかったが。「お前あの連中敵に回さないほうがいいよ」「どういうこと?」「写真渡したんだから、一度一緒に話して今の事情説明すべきだろ。このままシカトしたら下の学年の女の子にリンチにあったりして。アハハ」「笑い事じゃないよ」結局、臆病ものだった自分なのか、彼女には何も話さないまま、”写真”の女の子と一緒に下校する約束をしてしまった。この決断が、あとあといろいろな問題を引き起こす引き金となってしまった。 「
January 11, 2010
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「今度飲みに行こうよ」「じゃおれの友達を誘っていい?」相手は24の出向先の女の子。実は彼女は職場では「遊んでいる」として評判だった。彼女が私のことを気にしているのはうすうす気づいてはいた。だが2人きりでは会うつもりは無かった。当時駅前のマンションに住んでいた。大学時代の友人が1週間程、傷心で家に滞在していた。半年前に式を挙げたあと、地方に出向して新婚生活を始めていたが、奥さんが男と蒸発してしまっていた。ともかくその時は彼を慰めるために、一度カラオケに行った。彼の傷心は癒え、本当によかった。その時は何も無く。彼女とはバレンタインでチョコはもらったけどそれっきりだった。半年後、私は地元に戻ったが、月に一度2泊3日で出向先に来ていた。駅前のホテルに泊まって。ある日、仕事が終わってホテルの部屋に戻ると電話が鳴った。「今日2人でのみに行こうよ」「でも人目もあるし良くないよ」「人目のつかないところならいい?」「でもやっぱりだめだよ」突然違う大声で「1回ぐらい飲みに行ってあげれば良いじゃん!」(誰、彼女の友達?)結局、後押しされた形で、彼女が車で迎えに来て飲みに行くことになった。居酒屋では、彼女は車だから飲まず、私もほとんど酒が進まなかった。1時間ほどして「明日仕事だし、この辺で今日は終わりにしようか」「じゃホテルまでおくっていくね」ホテルの駐車場で「ありがとう。じゃさよなら」「さよなら」帰ったのを見届けたつもりが、彼女は突然車を降りてホテルのフロントに駆け込んでいく。(何のつもり?あっ待て)「すいません。〇〇さんの部屋の鍵をお願いします。」「ちょっと」ホテルのフロントマネージャーは苦笑いしながら鍵を渡した。彼女はそのまま一人で走ってエレベーターに乗り行ってしまった。(なんと恥ずかしい。ただ何とかしなければ)部屋をノックすると彼女はドアを開けた。「どうしてこんなことするの?」「それより、これからどうする?」「おれは彼女も居るし、ねえ帰って」「私彼女居ても構わないよ」彼女はトレーナーの上下を脱ぎ始めた。(最初からそのつもりだったのだな)
January 9, 2010
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「虚しさの中で芽生えていたもの」修学旅行が終わって淡い期待も消え、限りなく失恋に近い気持ちになっていた。(このまま彼女の一人もできずに卒業か)夏休み前の、ようやく良い季節が訪れた北海道ではライラックが咲き乱れていた。この短い夏の土地では、この時期そこに住む人間をより開放的な気持ちに変化させていくようだ。私もまだ受験勉強にも身が入る気分ではなかった。そして私の周囲も例外ではなかった。昔から鈍感な私だったが、登下校や休み時間の間に誰かの視線を感じていた。それも一人ではない。数人の視線だ。ある日ちょっと顔を知ってる後輩の女の子に教室で呼び出されて「写真を欲しいって女の子がいるんですけど、先輩の写真もらえますか」「うん。いいけど」(下の学年におれの事を気にしている人がいるのか。少しうれしいが...)「悪いことには使わないでね」数日後に写真を渡した。相手は誰か教えてもらわなかった。(この先なにか展開があるのかもしれない)そして数日後、予想通り進展があった。数人の下級生の女の子達が帰り道の行く手を塞ぐ。一緒にいた同級生はニヤニヤしながら先に帰っていった。一人の女の子が前に出て「先輩、これ読んでください」(写真の彼女の登場か。それにしても度胸あるもんだな)生まれて初めてもらった”愛の告白のあるラブレター”。「付き合って欲しい」という大胆な内容に、彼女のことを何も知らないのに何故か付き合う気持ちになっていた。(自分から好きになって成就する恋愛などほとんどないのだ。古い恋愛とは早く決別しよう。簡単なことだ。ただ、自分を好きになってくれた人を好きになればいい。)夏休みに入る日、彼女は自宅マンションのエントランスまで手紙の返事を取りに来ていた。「君の事よく知らないけど、友達というか先輩後輩からということでいい?」北海道の短かくて涼しい夏に、ひときわ暑い陽射しを感じている自分がいた。
January 9, 2010
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3泊4日の修学旅行の初日は5時間ほどの函館までの列車移動と青函連絡船での移動でほとんど終わってしまった。ただ、あんなに長い時間が過ぎるのが早く感じたのは、なんとも乗り物酔いをしなかったおかげだろうか。最初はグループ内で遊んでいたが、だんだん飽きてしまう。そのうち男女グループが交流し、それぞれの思惑が交錯していった。当然この異常に興奮した心理的な状況下では、多くのにわかカップルが誕生していた。クラス単位で男女それぞれ数グループが組んで自由行動をともにするが、1ヶ月前のグループ決めで、早くも前哨戦があった。あわよくば「好きな異性のいるグループと一緒に」という駆け引きは、早い者勝ちだったのにかかわらず、みんな慎重すぎてダサ組みがイケ組を落とすようなありえない組み合わせになってしまった。彼女とは違うグループになったが、修学旅行できっと何かあるに違いないと思っていた。しかし、実際は仲が悪かった。リコール騒動のあと、私が署名をしていないにもかかわらず、彼女は私を執拗に責めた。「何故あんな連中の味方するの?馬鹿じゃない」「おれは署名してないよ。でも生徒会が使途不明金があるの事実だろ」「あなたは違うと思ってた」「おれはどっちの味方をするつもりもない」彼女への気持ちの確信は4ヶ月前のホームルームだった。大雪の翌日の快晴の日で、雪の校庭で突然雪遊びに変更になった。私の方に雪だまを投げて私のことを追いかける彼女。担任は私たちのことを「高気圧」と呼んでみんなの前でからかった。でも私達はそのことは無視していた。肯定も否定もしなかった。駆け引きだったのかもしれない。でも思った。(彼女とはきっとそのうち付き合うことになるだろう)彼女のグループは私の男グループとはあまり接点が無かった。むしろ私の周りの男は彼女を敬遠している。(二人きりになるチャンスがあれば)今になって文通は返事しかせず、自分からは書いたことは無いことに気づいた。結局初日の移動でも、ホテルの中でも二人で話す機会は無かった。(話す機会があれば 「付き合ってほしい」って言えるに違いないのに)翌日、奥入瀬渓流の遊歩道でようやく話す機会が巡ってきた。「私、高校受験は北の学区で受けるから別々の高校になるね。」「そうか。でもお前は頭が良いから同じ学区でも、おれは同じとこには行けないよ」てっきり渡辺淳一の母校に進むものだと思っていたが。(そういえば2年の時に恋愛相談を受けた彼には結局振られたようだが、きっと同じ高校には行きたくはないのだろう)淡く抱いていた気持ちに水を差された感じだった。結局はそれ以上の会話をすることも無かった。この瞬間、自分の修学旅行は終わり、苦痛と睡魔のなか、再び長い帰路が始まった。(ホントにおれって情けない)
January 5, 2010
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彼女の気まぐれさに振り回されたあの思い出したくない一人旅の後、私は彼女と少し距離をおくことにした。(もう2度と文通の返事など書くものか)わがままで気まぐれな彼女は、やはりクラスでは浮く存在となっていた。クラスの女子の中心にいた彼女はやがて孤立し、同学年の他のクラスのインテリグループと行動をするようになっていく。そしていつの間にか彼女は生徒会の書記局長になっていた。一方、クラスでは目立たない様に振舞う自分だったが、担ぎ出されて思いがけず代議員に選ばれてしまった。ただ彼女はいつも自分より上にいた。中3になる前の時期、インテリで、教師に媚を売る形で他の生徒から目の敵にされていた生徒会に対し、反抗心と反権威を謳ったパワーは最高潮に達し、生徒会役員へのリコール運動へと進展していく。あんなに彼女に傷つけられたが、リコール運動がいざ始まるとクラスのほとんどが署名したのに、自分は「最後に署名するよ」と言って結局最後まで署名しなかった。(クラスの大多数で選ばれた代議員だが、リコール投票は自由意志のはず。)冷めた気持ちはリコールの不成立の結果を招いた。(自分の気持ちは今どこにあるのだろうか)やがて1982年の北海道に初夏が訪れた。修学旅行は十和田湖に行くことになっていた。中学最後のイベントを前に、二人の距離は微妙に接近していった。
January 4, 2010
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1986年。Nと自分は大学で同じ学部の同級生だった。彼とのもうひとつの接点は体育会の硬式テニスで一緒だったことだ。高校時代テニスを少しかじっていたものの、さぼって退部した自分と運動音痴のN。スタートは私のほうが上だった。私達が親友と呼べるくらい仲がよかった理由。それは大学生になっても彼女が出来ない程晩熟だったこと。だから僕らは朝から晩までいつもテニスの練習に明け暮れていた。しかしレギュラーをとるほどうまくはならなかった.私とNの関係はスタジオジブリの93年公開の「海がきこえる」の杜崎と松野のような関係だ。杜崎が私で松野が彼だが。特にNが眼鏡をかけてインテリのところがそっくりだった。そして当時はやはり僕らも当時の髪型や格好をしていた。原作と違うのは私達二人が女性の趣味が違うことだった。だから一人の女性を奪い合ったことは無かった。Nはとりわけ女性の趣味が悪いほうだった。自称「面食い」で、いわゆる「性悪」と呼ばれる女性に何度も恋をし、失恋した。好きな女性のことは知り尽くしているくせに、判っていながらうまく女性に利用されてしまう。利用されていることを忠告しても聞かない。当時私も全く脈の無い女性を2年ほど想い続けていた。ある時、Nが風邪を引いたと電話で聞いた。冬で部活は休みだった。見舞いで誰かが訪れる訳でもなく、Nの家にカレーを作りにいった。いつか2人は”男同士”とうわさされる様になっていた。お互いに彼女が出来たのはそれから4年後だった。「海がきこえる」で杜崎と武藤里伽子が再会する最後のシーン。わたせせいぞうさんの「ハートカクテル」でもこういうシーンがよくあったなと思い返す。ホームで半年振りに再会する武藤里伽子は短い間に大人の女性に変わっていた。自分に対する態度も昔と違って、柔らかい感じに見えた。杜崎は、彼女が自分を想っていることも最近知った。そして自分が彼女のことを好きだという確信もそこにあった。(あの頃はこんな恋愛にあこがれていたよな)いつの間にか杜崎達と当時の自分がシンクロしてることに気づいた。
January 3, 2010
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(1995年4月から1年間、300キロ離れた地へ出向し、遠距離恋愛をすることになった)月に1度か2度、日曜日をはさんで連休をとっていた。目的は2つ。ひとつは研究の継続のため。もうひとつは彼女とゆっくりすごすためだった。彼女は職場で2年目で、ちょうど問題のある後輩の扱いに悩んでた時期だった。6月のある日のこと。その日は土曜日で、研究室で5時過ぎまで彼女の仕事が終わるのを待っていた。彼女は研究室まで私を車で迎えに来た。そして私の顔を見るなり声を上げて泣き崩れた。「いったいどうしたの」「......」(よっぽどのことがあったのか。声にならないようだ)実は問題の後輩が経営者を訴えるために、職場に義理の親を寄こして、怒鳴り込まれたらしい。おまけに職場の先輩として自分達が、いじめをしたとして責められたそうだ。後で聞いたら、後輩が勤務中に仕事をサボって、漫画を隠れて読んでいるのを注意したら、逆ギレしたらしい。きっと義理の親は根も葉もないことを本人から聞かされていたようで話が全くかみ合わなかったようだ。経営者は私のもと上司。穏やかな人で、争いごとには慣れてない。きっとスタッフ達の弁護もろくにできなかったに違いない。(よっぽど悔しかったんだろうな)その日はお酒を飲みながらゆっくり話を聞いてあげることにした。いつしか彼女はいつもの穏やかさを取り戻していた。日曜の夜、最終の新幹線の時刻。駅のロータリーで彼女の車の中。「ここでいいよ。仕事のことあんまり気にするなよ。おれがいなくてもがんばるんだよ」「うん」時速200キロでまた彼女と離れていく。2時間して駅前のマンションに着いた。明日からまた仕事だ。彼女からファックスが届いていた。(とも、ありがとう)短いけど、心のこもった言葉だった。そして思った。(いつの間にか彼女は自分を名前で呼んでくれている)あと300日を切っていた。またひとつカレンダーの日付にバツをつけた。2人の関係にまた少し進歩があった気がした。
December 27, 2009
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「29歳のクリスマス」が過ぎ、彼女と2年目の1995年の3月を迎えていた。(あと1ヶ月で遠距離恋愛が始まる)そのころはすでに彼女はようやく自分の家にも遊びに来るようになっていた。家の主は久しぶりに戻ってきていた。「4月から月に一度はこっちに戻ってくるから、この家の留守番をしてもらっていい?」出向の関係で300キロほど離れた二つの家を行き来しなければならなかった。「わかったよ。掃除をする人がいないとね。」「おれファックスを買おうと思うんだけど」「なんで?」「遠距離だから電話何度も掛けられないし、ファックスなら言いたいこともまとめて書けるよね。」「じゃ家でももう一台ファックスがいるね。」引越しと言っても、送るのは洋服とパソコンぐらいだった。あとは家に残して。3月の終わり。明後日から新しい職場での仕事が始まる。2人は新幹線のホームにいた。「月に1度は会えるからね。あとはファックスで」「...」彼女は大粒の涙をためていた。(やはり、彼女が好きだ。ただそれを検証する大事な1年に違いない)「またね」彼女をホームに残して新幹線は走り出した。その日、早速ファックスを取り付けて彼女に送った。数分後に彼女からのファックスが届いた。そして目を通して急に寂しい気持ちにかられた。「とも、愛してる」
December 26, 2009
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「魂の無い肉体は苦しむことはない」その言葉通り過度の精神的な衝撃を受けると人間の脳は危険回避するように思考しなくなるようだ。あれ以来情熱的だった脳もその記憶すら消し去ろうという勢いだった。いつしか彼女は国家試験をパスし社会人になっていた。自分はというとプロジェクトに打ち込むことで、自分の呼吸の存在を守っていたようにも思える。自分と彼女の関係はといえば恋人どうしであることは間違いなかった。ただ古い恋愛への罪悪感は消え去ることは無かった。「やっぱりあの人なのね。忘れられなかったのね」「ごめん」裏切りの代償は果てしなく大きかった。かつての友人はみな自分を非道な人間と思って離れていった。しかし、そのことすら脳が麻痺して無関心だった。新しい恋を受け入れていない自分もどこかにいた。夏から秋にかけて旅行に行ったし、もっとどこかに行ったはずだった。ただその記憶の一つ一つをたどろうとしても思い出せない。もう後には引き返せない。仕事だけが唯一の救いだった。そしてプロジェクトが実を結ぶ10月をなんとか迎えたのだった。いつの間にか街角にはマライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」が流れていた。流行のトレンディドラマの主人公は奇しくも自分と同じ29才。今の自分とシンクロしていた。そしてこう思った。(今の恋の行方はまるでドラマのように先が読めない。未来に任せるしかないか。次春からの1年限定での遠距離恋愛で自分の気持ちを確かめればいい)(終)
December 24, 2009
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「真夜中のスカイダイビング」ツインの別々のベッドに横たわる二人。月明かりとネオンの明かりが彼女の横顔を照らす。彼女は眼を開けて天井のほうを向いていた。「隣にいってもいい?」「うん」二つの枕を立てて背もたれにして並んだ。右手で彼女を抱き寄せて長めのソバージュを撫でた。「この髪にずっと触れたかった。こうなると思ってた?」「思ってました」「おれでいいの?」「うん」今度は彼女と向かい合った。なかなか彼女は眼を合わそうとしない。彼女と眼が合ってから言う。「好きだよ」「うん私も。先生」彼女の呼吸をしばらく止めた。額と額を寄せて、鼻と鼻で触れた。そして彼女の手に触れた。自分よりひとまわり小さな手。まだあまり苦労をしていない滑らかな手のひら。彼女の指と指の間に自分の指を絡ませながら思う。(そういえば初めて女性と手をつないだ日から、女性を知るまでに10年もの歳月がかかった。自分ほど晩熟な男もなかなかいない)幻想的な月明かりの中でまだ見ぬ彼女の全て。(今を幸せと思わずして、いつが幸せか)情熱のオーラがゆるやかに二人を包んでいった。しばらくして静寂が訪れた。いつの間にかネオンは消えて月明かりだけになったようだ。ただ裸で横たわって自分を見ている彼女の顔を見るには十分な明るさだった。(この時空を彼女とずっと共有していたい。だが、この不安な気持ちは何故だろう。そういえば彼女が悲しげな顔をしているような気がする。気のせいかも)(違う。やはり何か大事なことがあるに違いない)不安は的中した。「あなたに話しておかなければならないことがあるの」「どういうこと?」「私のことを嫌いになるかもしれない。でも隠しておけないから」「わかったよ。それでなに?」彼女の言葉を聞いてまもなく、全身の力が抜けていった。そして真夜中のスカイダイビングのような絶望感に襲われた。そこにはもはや善悪を判断する気力も残されていなかった。舵を失った船の船長は正気の無い世界へ漂うことになる。(つづく)
December 24, 2009
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「月明かりの中で」彼女も好きだといっていたスパークリングワインを買って部屋に戻った。「じゃ、パーティーしようか」「国家試験がうまくいきますように」スパークリングワインをグラスについで乾杯。「そういえば家の人にはなんて言って出てきたの?」「勉強してきます。って」「それだけ?心配してないの」「うちは放任主義なので」(家が変われば、親の考え方も変わるものだな)話が進むにつれて、いつの間にか2人の距離が近くなっていた。ベッドの上で彼女のことを後ろからそっと抱擁する。振り向いて見上げる彼女。眼を瞑った2人の顔が10秒ほどさらに近づいた。「ずっと前からこうしていたかった」「知ってる」「でも振られた」「知ってる。でも振られて当然でしょ」彼女は眼を微笑ませながら言う。「明日もあるし、そろそろ寝ようか。お風呂入るから先に寝ててね」「うん」シャワーを浴びて部屋に戻ると、ダウンライトがついているだけで、部屋の中は薄暗かった。カーテンは開いたままで、月明かりが差し込んでいた。(もう眠ったのかな)窓のそばの椅子に座り、スパークリングの続きを飲みながら外の景色を眺めた。高層の部屋からネオンで明るい街並みが見える。ネオンの向こうには海が広がり、真っ暗で対照的だった。(水平線上に等間隔に見えるのは漁船の灯りか。この綺麗な夜景を2人で見たかった)(この街に来てもう8年になる。最初は田舎と感じて馴染めなかったが住んでみると意外と心地よく、それに女性も素敵だ...。そしてなによりも自分自身が変わった)寝ていたはずの彼女がいつの間にか隣に来ていた。「眠れなかった?」「うん」「どう。もう少し飲む?」「歯磨き済んじゃいましたから」「じゃ。夜景でも見てようか。あの赤い点滅が県庁だね。俺の家はあの辺だよ」「私の家は反対側で見えません」「外は寒いんだね。窓がこんなに曇ってるよ。それにしても寒くない?」彼女はTシャツにスウェット姿だった。「少し。なのでまたお布団にもどります」「うん」(彼女も少し気持ちが昂ぶってるようだ。)ハートカクテルは卒業することにした。
December 23, 2009
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僕らはホテルに戻ってきた。彼女は制服のままだったので、「明日の朝食は何食べる?30分位外に出てくるよ。その間に着替えとかお風呂も済ませてるといい」そう言い残して駅前の繁華街に向かった。観光客や合コンなのか、グループで賑わう街角の待ち合わせ場所。2月なのに久しぶりの晴れの日で、少し暖かくも感じる。(今日はこれからどうなるんだろう。それにしても彼女の可愛いさには脱帽させられる)当時はソバージュが流行っていた頃。彼女はとてもその髪型が似合っていて目立っていた。夏の日焼けのあとは、彼女が、同年代の普通の遊びたい盛りの女性と同じに違いない証なのだろう。幾本ものタバコを吸い終えると、明日の朝食のサンドウィッチを買いホテルに戻った。部屋の呼び鈴を押すとすぐ彼女が出てきた。彼女はフードつきのトレーナーにジーンズに着替えていた。(普段はこんな感じなのか)机とベッドには教科書が散乱している。「解らないことあったら教えてください」「わかりました。気が散って欲しくないんだけど、音出さないからテレビつけてもいいかな?」(バッグの中は教科書がいっぱいだったよな。やる気満々のようだ)それから1時間ぐらい、彼女は何かを書きとめながら時には独り言を言いながら机に向かっていた。家庭教師や塾講師は何年も経験あるが、勉強しているのを黙って眺めてるなんて初めてだった。(勉強に熱中している姿も悪くない)ようやく彼女が口を開いた。「先生は、占い信じますか」「質問は勉強の中身だけにしてください。でも、占いはあんまり信じないけど」「ふうん。そうなんですか」自分としては占いはあまり信じないというか信じたくはない感じだ。同棲相手がかつて占い師に自分のことを占った時のことを聞かされたのを思い出した。「あなたは結婚して子供ができればいいパパになれる」かつて自分の裏切りの果てに行き着いた不審の結果だ。ふとわれに返った感じだった。(今ここにいる自分って、最低な自分?)そんな思いをさえぎるように「勉強終わりました。とりあえず休憩です」「じゃ、お茶でも飲む?」「ウメッシュがいいです」「じゃ、パーティーしようか。買い物してくるね」(やはり彼女は頭がいいようだ)彼女を部屋に残して再び外出した。
December 22, 2009
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2週間後に国家試験を控えていた彼女。ただ試験はパフォーマンス程度の通過儀礼のようなお粗末なもの。それに彼女は100人近いクラスで成績はトップだった。”ホテルでの受験合宿”なんて体裁のいい口実。前回のデートの帰りの会話。「国家試験の勉強大丈夫?就職先決まってても、落ちると困るよ。」「まあ、大丈夫かな。でも勉強教えてください」「じゃ、お泊り合宿でもする?冗談だよ」「でも、解らないことあるので、やっぱり教えてください。」結局先月オープンした駅近くのホテルのツインルームを予約することになった。学校帰りの彼女を駅で待った。いつもは先に待っている彼女がなかなか現れない。バスが遅れているのか?遠くに彼女が現れた。制服の上に真っ白のコートを着ていた。肩には勉強道具の入った大きなトートバッグを担いで。(こりゃ目立つな。それにしても徹夜で勉強するつもり?)彼女が、横断歩道をわたって自分のほうに走ってくる。「ゆっくりでいいよ」と言いかけたその時、車の急ブレーキの音が。間一髪自分の手が彼女を引いていた。「大丈夫」「うん」「危なかったよ。無理しちゃだめだよ」「でも学校遅くなったのでつい。ずいぶん待ちました?」「いいよ。気にしなくて。それよりこのかばん、いっぱいだね」「今日は教えてもらおうといっぱい持ってきたんです」彼女は笑いながら答えていた。「とりあえず、ホテルに行って荷物をおきに行こう。それからおすしでも食べに行く?」制服の彼女といると少し罪悪感を感じているのか、周囲の目が気になった。幸い、知る人と会うこともなくチェックインして、僕らは部屋に入った。新築のホテルの匂い、高層階で薄暗くなり夜景の見える部屋。そして、惹かれはじめたふたり。(やっぱり、これでは勉強どころではないな)一度ホテルを出て、近くのおすし屋さんへ。ここも人目が付かないと下調べ済みだった。「何でも頼んでいいよ」「でも食べれないネタ多いんです。中とろとかの赤身と甘えびとうにが食べれません」「で何が好きなの?」「サーモンとイクラとはまちです」(こりゃ子供だね。安上がりなのは結構だが)食事もほどほどに僕らはホテルに戻ることにした。
December 21, 2009
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駅の南側の屋台村。人目に付きにくいため、お忍びで行くには最高の場所だった。「先生、風邪よくなりました?」「おかげさまで良くなったよ。プレゼンの前日、熱があったのにどうしても寒気が我慢できなくてね。熱いシャワーを浴びたんだ。そしたら1週間も寝込む羽目になったけど」彼女は笑っていた。少しづつ彼女のことも知っていく。彼女の好きな飲みものは、この前覚えた。「次もカシスソーダでいい?それと先生はやめて欲しいな。」「だって先生じゃないですか?」「それはね。周りが誤解するし、せめてさん付けでいいから、お願いします。」いたずらっぽいのか、私が困った顔をしているのを楽しんでいる。結局、彼女はしばらく名前で呼ばずに「先生」と呼んでいたが...。いつの間にか3度目のデートも12時を過ぎていた。「駅まで歩いていこうか」雪が一段と降ってきた。オフィス街のビルの入り口に彼女の手を引いて緊急避難。そしてそっと抱き寄せた。「すごい雪だね」「うん」「寒い?」「うん」(寒いはずだ。今日の寒さにしては少し薄着だ)少し強めに抱きしめた。彼女は自分より15センチほど背が低い。さっきまで笑っていた彼女がいつの間にか自分のほうを見上げていた。そして、いつになく真顔だった。はじめて見る真剣なまなざし。(なにか言いたげだな)そして口を開いた。「先生...私が、好きになってもいいですか?」「…。うん」突然の、予想外のコトバになにも考えずに返事をしてしまった。そして少し強く抱きしめながら、目を閉じて言葉の意味を反芻した。(彼女が、自分のほうを向いてくれた。でも)決断を迫る宣告だった。「モラトリアム」は残されていないと。3月に彼女は国家試験を控えていた。そして、次の約束は成り行きでホテルでの受験合宿ということに決まったが。
December 20, 2009
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東京のプレゼンのあと40度の熱を出し、仕事を休んで寝込むこととなった。しばらくは恋愛もお休みモードの気分だった。ただ、今度会う約束はしていた。(自宅の場所も知らないし、風邪を引いたことは伏せておこう)正直、少し一人でいたかった。(自分の気持ちを確かめたい)なにせ4年近くも他人の家に通い続けたのだから。おやつの隠し場所だって、お互いの財布の中身だって、そして指と指の間のほくろの位置だって知らないことは何もなかった。結ばれて間もない頃、彼女の背中に書いた(けっこんしよう)の指文字。周りが認めている間柄、そして将来をささやく声。突然彼女の親がやってきて、彼女の家の窓から飛び降りた記憶。(1階で本当に良かった)今いる部屋の主人はいつも外泊中で、ずっと空き家同然だった。そんな思いをよそに予期せぬ電話が掛かってきた。「プレゼンどうだった?」「おかげさまで上手くいったよ。でも久しぶりだよ、こんなにかぜひいたのはね。」電話の後、30分ぐらいしてドアをノックされた。「来たよ」「来て欲しいつもりで言ったんじゃない。それに少し距離をおこうって...」「分かってるよ。でも今日は特別」彼女は食事を作って帰っていった。一人残されて、複雑な気持ち。(いつも自分のこと優しいって言うけど、彼女ほど優しい女性はいない)週末、風邪もようやく治って新しい恋愛との再会の日がやってきた。「屋台村に行きたいね」と彼女(誰かに会うことも覚悟しよう。その方が自分の気持ちもはっきりするはずだ)
December 17, 2009
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