ポケットの中にいつも少女

ポケットの中にいつも少女

2005.07.13
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カテゴリ: 小説
Wish
WISH

 あらすじ
 大学生の志田尚也は、1年前に母と義父を亡くし、小学生の弟・裕一郎を養っている。
 そりの合わない親戚の手前もあり、生活レベルの維持のため意地を張ってバイト三昧の生活を送る尚也だったが、裕一郎や、尚也の先輩で裕一郎の担任の高野孝之が危惧するように、無理な生活は続かなかった…。
 全てを無くしたと思い自棄になる尚也に、孝之は…!?

**************

 堂本ミカさんの絵と子供に惹かれて買ったこの本。月村先生の初単行本です。
 どうでもいいけど笑っていいか~?サブタイトル「愛と成長の物語」って誰が付けたのよ…(爆笑)

 投稿デビュー作という事らしいのですが、なるほど書きなれない感じの文章で、月村作品にしてはかなり直截な…と言う印象が強いです。
 でも、すごくのめりこんで読みました。


 幼い頃から欲しいものは手に入った事がない。だから「欲しがってはいけない」…そう思いながらも弟と高野という手放したくない存在が現れてしまった尚也は、自分が彼らに側に居て欲しいのだと言う気持ちを伝える事が出来ない代わりに、彼ら自身が尚也を選んでくれるように必死で環境を整えようとしているのです。
 しかも、その尚也の心配というのはあながち的外れでもなく、共感できちゃうんですね。

 一方の高野氏はというと、こちらはちょっとかなり出来すぎ君な感じが否めませんが、愛されて育ったがゆえの自信が、程よく尚也と読者を引っ張っていってくれます。
 家族の問題などともきちんと向き合っていて、作中尚也が一人語ちているようにちょっと偽善的な匂いもしないでもないですが、それ以上に色々感じさせてくれる作品です。

 この作品で最も印象に残った台詞は、高野と気持ちが通じた後も後ろ向きな尚也に、バイト先のスナックのママが言った
「…(略)幸せを権利って言っていいのは子供だけなの。大人になったら幸せになる権利なんてないの。あるのは自分で自分を幸せにする義務だけなのよ」
 …泣けますね。

 書き下ろしの高野視点の「あ、」もすごくいい感じです。
 「あ」のつく関係。どんな関係だと思います?
(2001/12/23)

エッグスタンド エッグスタンド
エッグスタンド

 あらすじ
 歯科医の森住の隣人は、家族と離れて暮らす高校生・透。少し訳ありの家庭事情で冷めた気質の森住だが、世間知らずの透の世話を何くれとなく焼くうちに、なんとなく情のようなものが湧いてきた。そんなある日、見た目の気楽さからは想像もできなかった透の秘めた悩みを打ち明けられて…?



 視点が森住であるせいか、ひたすら淡々とした印象だった表題作。
 深とした心の表面に漣のような感情が広がる感覚が、とても切ないです。

 森住は、ラストで自覚するように、卵の殻の中に閉じこもったような心の持ち方をしています。無意識に心が張った自衛の為の壁なので、傷つかないけれど、変わりに全ての対外的な感情が膜を通したように希薄。
 そんな森住の卵にひびを入れたのが、天真爛漫なようで実はとても臆病な透です。
 自分の性癖にコンプレックスを持っていながら鬱々とふさぎこむのではなく、周囲を気遣い明るくある透の健気さは、森住が世話を焼くきっかけとなった高校生らしい非常識さとは違い、頭ではなく心でしか知り得ない「大切な事」で、心と心だからこそ触れ合う事が出来たんだろうなと思いました。


 この続編では透が最低最悪の逃げ方をするのですが、でもこれもすごく共感できちゃうんですよね…
 森住の妹・文乃の台詞が印象的。
「…(略)持続していく好きっていうのは、見た目の善し悪しでもなきゃ、性格の善し悪しでもないのよ。要は一緒にいて快適か不快かっていう、そういう相性みたいなものなんじゃないかな。(略)…」
 当たり前の事なんだけどね。それに気付けたら幸せ。

 松田さんの幸せをお祈りしています(^人^)
(2001/12/23)

レジーデージー
レジーデージー

 あらすじ
 人気ミステリ作家ユニット「ワンプラスワン」の片割れ・大須賀一夜は、訳あって田舎に引っ越した。そこに尋ねてきた隣人は、なんと人気絶頂のアイドル・川嶋大志だった。おまけに「ワンプラスワン」のファンだという大志に妙に慕われてしまって…

**************

 月村さんには珍しい、社会人同士の話。設定こそ派手ですが、至って穏やかな水面のような物語です。
 主人公達は、それぞれ人間関係の上でトラブルを抱えています。でも、最初と最後でその問題に変わりはなく…2人出会ったことで劇的に解決したりはしないんですね。
 何か大きな事件が起こると言う訳でもありません。せいぜい、町内会行事に参加したりするくらいです。
 この作品は、そういったドラマと言うよりも、特に「心」を読ませてくれる作品だと思います。 

 最初と最後ではっきりと違うのは、一夜の気持ちだけなんですが、自らのコンプレックスに対した時に、大志という支えがあるだけで全く違う気持ちでいられる自分に気付くシーンには、とても共感を覚えました。
 同じシーンの一文を引用させてもらいましょう。

 考えてみれば、僕達の日常なんて無駄なことばかりだ。
 その無駄を、僕はとても愛しく思う。


 そんな気持ちを思い出させてくれるこの作品を、私はとても愛しく思います。(2001/12/30)


「エッグスタンド」は花丸ノベルズ版を読みました。
…全部品切れとか絶版で、ちょっとショック…





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最終更新日  2005.07.13 14:31:58
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