Nij

2007.04.04
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カテゴリ: 短編小説








なんてさびしいのだろうか。いっそ借りなければよかった。そう思わせたのはほかでもない彼女の泣き顔だった。卒業式に代表で答辞を読んだ彼女は、やっぱり僕には合っていなかった。だから僕は本当に日本に残るべきではなかったのだ。彼女には、僕は合わなかった。


今なら、彼女がまるで別世界にいる人間のように思える。必死で鉛筆を握らないとテストで上位に入れなかった僕に対して、天才肌の彼女はすべてにおいて当たり前のように上位を奪った。なのに謙虚でふつうで、そこに僕は何かを奪われた。


でも、そう、やっぱり僕には高すぎる人だったのかもしれない。少なくとも、昔の僕には。あるいは彼女はやはり僕のことを思って一緒にいたのかもしれない。すべてを知っているような気になっていた僕をも知り尽くして、まるで時を我慢するかのように。



僕は耐えられなくなってDVDをパソコンから取り出した。もう無理だ。なにが?って、別に彼女の泣き顔を見ていられないわけじゃない。彼女は僕に見られてはいけないのだ。こんな劣等感があるだろうか。資格として僕がそこにいる価値が誰にでもなくその場所という時間に取り消されたこの劣等感を。

感動、ではなかった。ジーンとくるその感はなんとなくそのような気がしたけれど、実際そうではなかったと僕は思う。それは何を隠そう僕の僕に対する嫌悪感であって、そして彼女に対する孤独感だった。彼女に対する孤独感?よくわからないが、ほかにことばが見当たらないのだ。



彼女はまるで僕という存在を自分の中から放り投げたかのようにふるまっていた。僕のためのではなく、学校のための涙だった。僕は彼女の中にはいないようだった。彼女は決して僕のほうを見向かず、ただ涙の滴る自分の頬だけを見つめて、壇上に立ちつくしていた。




畜生、卒業がなんだ。僕はやりきれなくなった。もう、嫌になった。どうすればいいのだろう。過去に戻ったところで彼女に失敗するのが関の山だろう。それでも僕は何かをしなければいけないという使命感を感じた。彼女のメールアドレスは知っていたけれど、きっと返ってはこないはずだ。送るにしても、なにを書けばいいのかもわかりはしない。


中途半端な男だった。自分の残像に嘆いても、それに触れられるようにはならない。だから僕は言った。彼女の顔を僕の脳味噌から剥がし取るべく、泣き崩れながら、ひざまずきながら、僕は言った。






「捨てさせてくれ」

くしゃくしゃになった古いプリクラの上の君は、僕に微塵の興味も示さず、微笑んだ。



*



意味はわからなくたっていいんだ。





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最終更新日  2007.04.04 17:03:16
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