Nij

2007.06.23
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カテゴリ: 短編小説


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夕焼けが冷たい黒になる時間に、僕は毎日ラジオをつけた。宿題をしながら聞いて歌って外を見て、電車に揺られる会社帰りのサラリーマンにピースする。



夕飯を終えて風呂から出て、冷たい黒空が静かな紫に変わると、僕はイヤフォンをつける。銀色のメタリックな四角くて古くさいけど味のあるラジオは広い窓から降りてくる広い広い星空を映して、そのボディーを美しくする。まだ夕焼けから吸収したあったかさが少しだけ残ってて、ボリュームを変えようと触ると、少し気持ちがいい。


*


今夜11時からチャンネルNIJでは、一夜だけの特別番組『星空模様のラヂオ』を放送するぜ!是非聴いてね!


*


さて、はじまりました!一夜だけの特別番組『星空模様のラヂオ』!この番組では、相手に届かなかったはがきの中で面白そうなものをピックアップして、無断でみんなの耳に届けよう!というものだぜ!一応本名は隠すから、もしかしたら本人も宛先人も自分のものだとは分からないかもしれないね!

それじゃ、最初のはがきを見ていこう!ん?これは不思議だな!恋文でも手紙でもない。なんだか物語のようだぞ!男の子から女の子へのはがきだ!


*


レンズが空から降ってきたんだ。
秋の木の葉のようにひらひらと夕焼けを通り抜けて、それは僕の右手にさらりと落ちた。薄くて冷たい、レンズだった。

日の光を通すとアスファルトは虹色になった。レンズが光の形を変えて虹を作っていたんだとおもう。とにかく、僕はその不思議なレンズが大好きになって、帰り道をずっと虹色にした。



家に帰って、風呂に入って寝る前に、窓の外を、レンズ越しに見てみた。そうするとレンズには君が映った。やさしく笑いかける虹色の君の顔に見とれて、僕は一晩そこで過ごしたんだよ。


でも今日もそれを持って世界を虹色にしていたら、割れちゃった。破片はひらひらと空間を舞って雨上がりの湿った地面に落ちたんだ。僕は思ったよ、ああ、なんてことだろう、とね。

上を見ると虹がかかっていた。虹の向こうに君を描いて、僕は走ったんだ。虹がどこにあるのかも分からないし、君がそこにいるのかも分からない。それでも僕は走ったんだよ。虹色の過去が見たくて。




結局虹には辿りつけなかったけど、やっと分かったんだ。過去に色なんかないってね。これからの日々に色をつけていくことしか僕たちにはできない。だから僕はレンズを落としたところに戻って、破片をもっとばらばらに踏んづけた。で、家に帰ってこの手紙を書いたんだ。


*


??

なんなんだろうね!
でも、なんとなく、面白かったぞ!
彼女に届かなかったのが残念だな!いや、彼女なのかな?


はい、次のはがきは…


*


眠たくなったから、僕はラジオのスイッチを切って、ベッドに入った。
全然、面白くない夜だった。





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最終更新日  2007.06.23 17:38:30
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