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2006.07.03
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カテゴリ: 物語


 宿代の代わりに置いていくつもりだったリポDを開けて、二本続けて流し込んだ。ふつふつと可笑しさがこみ上げてくる。こんなところで何やってるんだろな。無事にひと晩過ごしたことで恐怖感が薄らいでいた。
 きっとこれは笑い話だ。今月は家賃が払えなくてさ。ひどいことするよね、大家も。とかなんとか、みどりは笑い飛ばすだろう。
 化粧水をパタパタと叩いて、髪をまとめて部屋を出た。外は雨が降っていた。
 駅前で朝食のドーナツをかじりながら、みどりにメールを打った。部屋を使わせてもらった。ありがとう。ねえ、部屋が空っぽだよ。今度は何をやらかしたの? 
 少し迷って(笑)と文末につけて送信ボタンを押した。
 みどりからの返信はなかった。

 それからずっと心配していたわけではない。わたしにはわたしの生活がある。金にならない翻訳バイトの締め切りとか、その程度のものであるが。
 それでもふとした拍子にみどりの顔が浮かんで、そのたびにメールを打った。どうしてる? 元気? そんな短い文面でのメールだ。相変わらず返信はなかった。

 そろそろ本気でまずいかもしれないと思いはじめたのは、三週間が経つ頃だった。
 みどりの意思で連絡を絶っているのだったら、それはそれでいい。しかし、何らかの理由があって連絡が取れないのだとしたら、最悪の事態も考えられる。
 最悪の事態とはなんだろう。監禁されて働かされている。まぐろ漁船。臓器売買。クスリ。そもそも生きているのか。
 みどりのお母さんに訊いてみようかとも思った。しかし、もし行方を知らなかったら、余計な心配をさせることになる。半年前のみどりの離婚でみどり以上に参っていると聞いている。離婚して東京に戻ってきたという知らせも、自分の母親よりわたしのほうが早かったくらいだ。余計なことはしないほうがいいだろう。
 わたしはみどりの男に連絡をとることにした。趣味の悪い黄色いカーテンを選んだ、妻子持ちの新しい男だ。反則は承知の上だった。まずは生きているか死んでいるかわかればいい。





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Last updated  2006.07.15 23:35:09
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