ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2010.12.21
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カテゴリ: 国際経済
ユーロの憂鬱 (16)

実質を伴わず、形だけ整える。こういうEU存続の知恵は、波風の穏やかな平時には効果を発揮します。しかし、一度リーマンショックのような大型台風が発生すると、その弱点が露になります。巨大ロボットのバーツが、てんでに手前勝手な方向に動き始めるからです。

実際の動きで、その点を確認して見ましょう。リーマンショック後のEUでは、加盟国の抜け駆け合戦が大きな波紋を呼びました。

その波紋は、アイルランドが一方的に、国内の預金は全額保護すると発表するに及んで、頂点に達しました。2008年の年末のことです。

世界的な信用不安の高まりの中で、各国の金融機関は、預金者による預金引き出しが殺到するのではないかと、密かに恐怖を感じていたのです。引き出しが殺到して、1日でも支払いが遅延しようものなら、危ない銀行のレッテルを貼られて、ついには倒産に追い込まれることが、必定だからです。

こうした恐怖に脅えたアイルランド政府は、慌てふためいて、預金の全額保護を決定し、発表したのです。確かにアイルランドで、預金の取り付け騒ぎが起こってしまえば、同国の金融機関は次々に倒産し、それが震源となって、EU全体に波及することになるでしょう。

そうなれば、EUだけでなく、世界全体で金融メルトダウンが起きることになりかねません。預金の全額保護は、金融メルトダウンに対する予防措置である。アイルランド政府はこう主張しました。

一応もっともらしいのですが、この主張を単一の金融市場である、EUの現実の中においてみると、そこに大きな落とし穴のあることが分ります。アイルランドの決定が伝わると、先ずはイギリスの金融機関が大パニックに陥ったのです。イギリスの銀行の大口預金者が、次々に自らの預金をアイルランドの銀行に移し変える行動に出たのです。

預金者にとって、自己の資産を守ることは、何より大切です。預金が全額保護されないかもしれないという恐怖感から解放されるなら、預金を移し変えるのは当然の行動です。アイルランドの銀行に預けかえれば全額保護されるのです。そしてインターネットバンキングの時代では、ワンクリックでこの作業は完結するのです。


                            続く





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最終更新日  2010.12.21 21:20:54
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