ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2011.02.22
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カテゴリ: 国際政治
チュニジアからエジプトへ…(25)

そしてバーレーン、リビアへ

チュニジアからエジプトに拡大したアラブ革命の狼煙は、イエメンからバーレーン、リビアへと広がりました。エジプトほどには、イスラエル寄りではないリビアで、内戦状態と表現されるほどに、革命の火が燃えさかるとは、自分の迂闊さに腹を立てているところです。

とりあえず、緊迫度の高いリビアのことを先に記します。リビアの革命の発火点は、東部のベンガジでした。そしてリビアの油田は、この東部に集中しています。リビアの独裁者カダフィは、首都トリポリを核とする西部の出身です。

政権を掌握したカダフィは、東部の油田から得られる収入の大半を、自らの出身地である西部地域に投じて、東部地域を貧しいままに放置して来ました。それゆえ、1969年の政権掌握後40年を越えるカダフィ独裁の下で、東部は何度も反旗を翻し、その都度鎮圧されてきました。そして今回、2月15日に始まった東部の決起は、東部地域の民衆蜂起に対する備えとして派遣されていた軍部を巻き込み、油田地帯を含む東部地帯の支配権を握るまでになっています。

従来とは様子が違ってきています。西部のトリポリでも、職のない若者中心にハンカダフィの動きが広まり、出動命令を受けた空軍による、市民に対する空爆が行なわれるという、事実上の内戦状態に立ち至っています。チュニジアやエジプトにはなかった事態が起きているのです。

これには、チュニジアやエジプトにはなかった2つの事情が絡んでいます。1つは前述した西部と東部の対立です。リビアは基本的に部族社会が強固に残っています。しかも東部にしかない油田から得られる収入のほとんどを我が物としてきた西部が、油田収入の全てを東部に取り戻されて、黙って引き下がるとは考えられないことです。ここにカダフィ政権側の付け入る隙が残っています。

そして二つ目は、カダフィの親衛隊は、リビアの正規軍ではなく、豊富な原油収入の一部を使って、彼が高給で雇い入れた傭兵部隊だという事実です。各地で情け容赦なく、リビア民衆を銃撃したり空爆したりと、殺戮をほしいままにしているのは、この傭兵部隊(=外人部隊)なのです。

こうした事実に反発した正規軍部隊は、次々に反カダフィの陣営に移っているようですが、装備の点で最も優れているのは、カダフィ親衛隊の傭兵部隊なのです。しかもその傭兵部隊にとって、雇い主であるカダフィの失脚は、自分たちの失職を意味します。リビアは厄介なお荷物を抱えているのです。



平然と民衆の殺戮を命じる独裁者、その命令を忠実に実行する大統領親衛隊という名の傭兵部隊、彼等に対するリビア正規軍と部族社会の怒りの大波がカダフィ一派を、ここ数日のうちに飲み込まない限り、リビアは大変なことになりそうです。
                              続く





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最終更新日  2011.02.22 20:58:47
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