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東京地下道1949■第11回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画故買屋、伸藤は、写真の現像をおわり、ほくそえんでいた。この写真、いくらになるだろう。鉄から取り上げた地図だ。もちろん、今日会うソ連側の、MGBのエージエントだけに売るつけるつもりはない。アメリカの情報部OSSも、もちろん高く買うだろう。「それじゃ、金をたしかめろ。このカバンの中だ」 MGBのエージェントは言った。「いや、これはどうも、、、」 仲藤は地図の写真のはいった袋を置き、MGBのエージェントのカバンを開けた。瞬間、毒ガスが、かばんから、仲藤の顔面に吹きつけられた。仲藤は意識を失なった。男達は仲藤を車に乗せ、アルコールをむりやりに仲藤の口に流し込み、加えて服にもかけた。途中の橋の上で単をとめ、まわりに人がいないのをみはからって、神田川へ投げこんだ。「おい、あれは伸藤だぜ」「なに、伸藤だって」竜と鉄はアジトヘ帰る道で、遠くの橋の上のでき事に気がついた。鉄は、昨日の伸藤のあわて方から見て、あの地図が、かなり貴重なものだと感じていた。それを知る手がかりは、今の所、伸藤に聞くしかない。鉄を保安部に売ったのが、伸藤だとしても助けざるを得ない。鉄は竜に手助けをたのんだ。神田川へ人り、伸藤の沈んでいる所へ泳いでく。二人でひきずって、河岸へ寝かせた。幸い、死んではいない。水をはかせ、寝かしていると、目ざめた。ぼんやりと鉄と竜を認めた。「鉄か、お前に助けられるとは皮肉だな」 1人毒づいた。「くそっ、MGBの奴らめ」「あいつらは」「そうだ、アメリカ占領地区で暗躍するMGBのエージェントだ」「伸藤、教えてぐれ。あの地図は1体何なんだ。」 仲藤は少し考え込んだ。 「しかたがない。俺の命を助けてくれたお前の事だ。お礼に教えてやろう。あの地図は、戦国時代にトウキョウ城が造られた時の抜け穴の地図だ。抜け穴といっても、地下トンネルという意味だ。現在でもそれが在るとのことだ。江戸時代、長崎出島にいたシーポルトに、この地図を、ある日本人が手渡したらしい。ソビエト軍によって、オランダのシーボルト博物館が接収された時に発見されたのだ。現在、アメリカとソ連は微妙な状態にある。その地下トンネルが存在するならば、ソ建軍は地下トンネルを利用し、アメリカ軍の武器集積地点に大量の戦車を、気づかれずに送りこむことができるのだ。トウキョウ城は波らの手中にあり、出口は壁の下を通ってアメリガ軍占領軍区にたっしているはずなのだ。1勢にソ建軍戦車が出現し、重要なポイントを押さえれば、現在の軍事バランスはくずれ、アメリカ軍は、守勢にたたざるをえなくなる」「そうか、地図の事は、よくわかったよ。ありがとうよ」 鉄は、すばやく、ナイフをとりだし、伸藤のノドをかき切った。「何でだ、、」伸藤の目は、驚きの表情で、目から希望の光を失い、倒れた。「1度でも、俺をうらぎった奴は生きていちゃ困るんだ」「鉄、あの地図は大変なもののようだな。返せ。俺たちのグループのものだ。あれは」「ない、今は手もとにない。」「一体どうしたんだ。」「それか、地下壕の中で落したらしい。身体検査をしてもいいぜ。それより早く、アジトへもどろうぜ」アジトに近づき、竜は恵の名前を呼ぶ。返事はない。人の気配はない。やはり、あの襲撃で竜以外は皆、殺されてしまったようだ。アジトの堀っ立て小屋に入り、竜は立ちすくんだ。壁に紙切れが一枚。 「鉄、恵は俺があずかった。話がある。何の話かわかっているだろう。俺のアジトまで来い。ムサシ」竜はしばらく考え込み、おもむろに鉄になぐりかかった。「何をするんだ。」「はっきりしろ。お前何か隠しているな、恵とお前は俺たちが外へ出かけている間、一緒にいたことがある。何があったんだ。ムサシとか前の間に」「いや、何もない。昔の、話だろう」「うそをつけ。それなら、鉄が、恵をさらうばずがない」続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.31
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東京地下道1949■第10回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画■「鉄。どこにいるの、鉄、、」恵は思わず叫んでしまった。この長い通路の中で鉄とはぐれてしまったのだ。地下壕はトウキョウ市のすみずみに、はりめぐらされている。一つまちがえば、迷路のような地下道を堂堂巡りしかねない。恵は鉄とはぐれてだいぷの時間がたっていた。ろうそくも短くなっていた。恵はしかたなく自分達のアジトに帰ることにした。アジトには、兄達はまだ帰っていないようだ。寂しく恵は竜たちの帰りを待つ。遅い。いつもはこんなでない。不安がよぎる。 足音がした。恵はドアを急いで開け、叫んだ。「兄さん」目の前には180mを越すムサシの姿がそびえたっていた。その眼はにくしみと悲しみをたたえて、静かに恵をながめていた。■ 竜もかろうじて、攻撃からのがれていた。爆弾のショックで地面が割れ、地下壕に半死半生でふきとばされていた。竜は、トウキョウ市じゆうに攻防戦用に地下壕が存在していることを、恵から聞いていた。 恵は地下壕を知悉していた。ひまがあれば地下壕を歩きまわっていたようだ。今、ここに恵がいれば、竜は弱音をはいた。他の奴は助かったろうか。いや恐らく。あんなに激しい攻撃を受けのだ。助かっているはずがない。自分が助かったのも不思議だ。竜は、はるか、昔のこる、そう、もうはるか昔、御伽噺のような昔だ。その時期をを暗やみの中で思い知こしていた。彼は幼い恵を背中に負い、怒濤の様なソ建軍の攻撃をのがれたのだ。何回も兄、恵介からさずかった守り袋をにぎりしめ、つぷやいていた。「兄さん、助けてくれ。』と。兄は特攻隊で音信不通の状態だった。父や母と会うこともないだろうと竜は考えた。その代り、この恵を守り通さねばならぬ。唯一の肉親だから。そう竜はおもっていた。 トウキョウ市は戦後、アメリカとソ建により分断された。両軍共、トウキョウ市周辺に強大な部隊を集結している。東西陣営の対立が、この日本のトウキョウ市で顕在しているめだ。触発の状態にある。定期会談がいく度となく聞かれているが、雲行きがあやしい。そんな中で、竜は恵を守り、生きていかねばならなかった。力が総てだった。 ポケットをさぐると、ジッポー・ライターがあった。火をともし、出口を捜し始めた。どこまで続くか、わからない。永久に外にでられないかもしれない。武器も手にしていない。 前に光がみえたような気がする。急いでライターを消す。 光がゆっくりとこちらの方へ近づいてくる。竜は身をふせた。 ろうそくを前に、鉄がかずむずと歩いてきた。かなり疲れている。鉄は人の気配に気づき、ろうそくを捨て、ナイフを身構えた。 「誰だ。そこにいるのは。」 「さすがだな、鉄。俺たよ、竜だ」 「お前こんなところに、なぜ。」 「アメ公にやられたんだよ。米軍トラック襲撃に失敗し、このざまさ」「かれも似たようなものさ。お前も出口を披し困っているようだな」「そのようだ」「しかたがない。ここは共同戦線といくか」2-3時間ほど歩き回った後、ようやく、ろうそくの炎が風でゆらいだのだ。風の吹く方向へ進み巧妙に隠された出口へと導かれた。竜は恵のことが心配だったのでアジトヘ帰ることにした。鉄はしぶっていたが、やがて、それに同意した。鉄も恵の事が気になっている。しかし、‥保安部につかまっていたことが、竜にばれてしまう。その危惧が、鉄を不安にする。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.30
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東京地下道1949■第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画東京地下道1949■第9回上空から飛来した戦闘機ムスタングは、両翼の爆弾を雨を浴びせる。ナパーム弾が地上を燃え上げる。投下しおわり、爆弾のなくなった戦闘機は、機銃弾を空からあびせはじめた。風防からは、この殺戮を楽しむバイロ″トの顔がみえる。低空飛行でつっこんでくるのだ。ベビーギャングたちの勝利の戦場となるべき場所は、修羅場となり、墓場となった。機銃弾が、無機質な音で土ぼこりをあげ、地面をほりさげる度に、大地に鮮血が流れ、しみこんでいった。 二つの双眼鏡が、ま下の光灘をながめている。小高い丘がらは、この虐殺がー望のもとにみわたせる。 ロパートは思わず、叫んでいた。「死ね。みんな死ね。お前ら、ジャップ。くず野郎はみんな死んじまえ。お前ら、ガキが皆くたばったら、日本はアメリカの完全な領土になるんだ。なにしろ日本人がいなくなるんだからな」 ほおにガーゼをあてたライリーは、双眼鏡をおろし、傍らのロバートに言った。「ようし ロバート。もう少し前進だ。それからスコープ付きライフルを出せ、俺たちの楽しみはこれからだ」 彼らは、なんとか、戦闘機から逃れた少年達を今、望遠スコープの照準にとらえ、ねらい撃ちにするつもりなのだ。●「鉄、鉄おきて」 声がした。夢の中から聞えてくるようだ。どうやら、俺はまた死んではいないようだな。鉄はそう怒った。うすぼんやりした光が鉄の目をさす。まだまだ、くらくらする。声は床の下からかすかに聞えてくる。それは恵の声だった。「どうしたんだ。恵か」「しっー、あまり大きな声を出さないで」「だそうにも声はでないさ。あのロパートにえーらい目にあわされた。それよりお前、なぜこんなところにいる」「あなたのことが気になっていたの。あなたが、あの地図を奪ったから、どうせ仲藤の店にいくとおもったわ。米軍のジープがあなたを追いかけていくのを見たわ。車のナンバープレートが保安部のものだったから、つかまると息ったわ。きよう、それで保安部の独房の下へ忍びこんできたわけよ」「よく、ここまでこれたな。昔なじみにあえるのはうれしいぜ」「何いってるの。ふざけないで」ほんとに怒っている。「わかった。よし、はやくここから出してくれ。ロバートかライリーがまた来た日にや、、俺はぶっ殺れかねない」「いい。言うことをよく聞いて。右壁から約一mのところをさぐってみて。何か印があるでしょう。印のある床の上を思い切り踏みつけてごらんなさい」「少し、へこんだぞ」「そう、そこを何とか動かしてみて」 床は、鉄がひっぱると、穴が開いた。すばやく穴中にはいる。もと通りににする。暗闇の中に薄い光がもれている。声があった。「どうやら、また、あえたようね」「恵、一体この穴は」「しつ、この上はずっと保安部よ。気がつかたら、それっきるよ」 小さなろうそくを恵は持っていた。小さな声で、「この通路は、日本軍がトウキョウ市攻防戦の際作った地下壕の一部らしいの。これを伝っていけぱ何とか外に出られるわ。ついてきて。鉄」 恵は先に立ち、ずんずん歩んでいく。鉄はいためつられた体をひきずるように、光についていく。あたりは、ゆっくりと闇がもどていく。● 泥滓の中で、ベビーギャングの頭、ムサシの意識がもどってきた。同時に体がほてるように暑い。場所の感覚がもどってきた。顔をすこしもちあげる。まだ少し雪まじりの雨が降っていた。異臭がする。あたり1帯が燃えあがり、人間の形をした何かが焼け焦げていた。(続く)続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.29
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東京地下道1949■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画クモと聞いて、口もきけないほどふるえている鉄を、ブッチャー(屠殺人)ロバートは片手でつまみあげ、 下を歩み、新たなドアの前に立った。「それじゃ、しばしのお別れだ。テツ。寂しいがな。何か話すつもりになったら、ドアを必死にたたくんだな」 反動をつけ、鉄をほうりこみ、ドアをしめた。まつ暗闇だ。投げ込まれた時、鉄の体の下で何かぐしゃりと、つぶれ、ねばりついた。くもだ。体の上にタモがはいががろうとする。顔上にも、手の甲にもクモが続々とはいあがってくる。「くうう」鉄は腰がぬけそうになる。もうだまだ。体が、心が、、ドアの方へ必死ではいよっていく。その間にもズボンやシャツの中ヘ、ざったなクモがはいってくるのが、わかる。体じゆう、タモがはいまわる。「ヴわー、やめてぐれ。出してくれ。出してく、」 力の限り、 鉄はドアをたたく。しばらくして、ドアが開けられた時、もう鉄は気を失っている。水をかけられ。「竜のグループは、明日二時、有栖川宮公園、B地点で食糧運搬トラックを襲う。お願いだから、そのクモを、、」 そこまでしゃべり、鉄は慙愧の念にかられながら、意識をうしなう。 「隠れ家より、おもしろいことを言ったな。食糧トラックか。ちようどいい。やつら皆殺じだ。よし、こいつを独房にほおりこんでおけ」 ロパートは、近くの衛兵にそうどなり、いきようようとライリー大尉の部屋へ向う。いま得たばかりの情報を持ち、さあジャップをどう始末してやろうと、意気揚々と廊下を歩き始めた。●翌日は寒い日だった。昼頃からは天候がくずれ始め、雪まじりの雨が降る。舗装がまだ完全ではない、トウキョウの道は、泥濘の道となる。 M8装甲車が三台、食糧運搬トラックの先導を努めている。後には12台の食料トラックが続く。有栖川宮公園、B地点では、ムサシのグループの数人、がーmくらいの金属棒状のものを、にぎりしめていた。その他の者も、各々略奪したらしいアメリカ製の武器を手に手に持ち、待機している。今、食糧トラックが通過しつつある道の両側に、息をひそめた数百名のベビー・ギャングが身を隠している。 先導のM8装甲車が爆発した。あとかたもなく吹きとぶ。金属の土管状のものから発射された弾丸が、恐るべき破壊力をしめしたのだ。 米軍は応戦の姿勢をただちにとった。護衛兵が散開し、トラックからも、機銃が掃射される。 ムサジは自分達のみつけた砲の破壊力の大きさに呆然自失していた。 ムサシは知らなかったが、この砲は、旧日本車が、戦争末期限開発していた簡易無反動砲だった。本土決戦のため、昭和20年に試作されたもので、アメリカ軍のバズーカ砲に相当すると考えていいだろう。本土決戦の際はすでに輸送網が寸断されていたため、実戦には使用されなかった。ムサシ達ぽこれをトウキョウ市の軍需工場に放棄されていた軍用車の中で発見したのだ。 ベビー・ギャングは、トラダタの運転席を一つ二つねらいうちにしていく。やがて無反動砲のために、米軍は壊滅し、兵は逃げさったようだ。ムサシ達は、用心深く、運搬車に近づいていく。むろん、竜のグループもその中に混じっている。 食糧袋を焼けないうちにひきずタ出さねばならない。多くの浮浪児たちが、獲物にむらがるアリのように袋を奪っていた。 一入の少年が、袋を持ちあげようとして、下に落とした時、パニックが始まった。 袋の中は砂だった。 ムサシはすぺての袋を調べるように命じた。中身はすべて砂や石だ。「罠だ。皆すぐに逃げるんだ。ぐずぐずする」彼らは獲物をほうりだし、我先にと逃はじめた。 遅かった。爆音がムサシたちの耳にはいってくる。戦闘機だった。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.28
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地下道1949■第7回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画http://www.yamada-kikaku.com/「鉄,逃げられないぞ。出て来い!ナイフをまず投げ出すんだ」日本語で叫ぶ 鉄の隠れている木材置場にライトが照らされた。鉄はそのライトで目がくらむ。おまけに、相手は鉄の名前を知っている。ふるえが鉄の体を襲う。アメ公だ。どうやら仲藤の店からつけてきたようだ。伸藤のおっさん、俺のことばらしやがったな。と鉄は思う。「わかったよ。まだ殺らされたくない。いまでていくから、撃たないでくれよ」「ようし、ゆっくりとだぞ。ナイフを先に投げろ」 鉄は、あきらめた様子でナイフを二丁、遠くの地面へ投げだす。男が近づいてきた。「ようし、いい子だ。おとなしくしな」 その長身のアメリカ入が目前に来た時、服のエリから、鉄は三丁目の小型ナイフをひき出し、まうえから切りつけた。 ライリー大尉はとっさに身を投げだす。がナイフはわずかにほかをかする。さらに鉄は顔をねらい体ごと、突きこむ。ライリーは銃身でそれを防いだ。 鉄は、急激なショックを後頭部に受け、前にのめった。「大尉あぶなかったですな。あなたともあろう方が」 地面にのびている鉄の上に、大男のロバート軍曹のシルエットがかぶる。「このガキ、3つめのナイフを、服のエリに隠していやがったんだ。このしかえしはどうせたっぷり’としてやる」「それじゃ、こいつを拷問にかけて、竜たちの居所をさぐるわけですな。楽しみです」「そういうことだ。やり方はお前にまかせる」 ライリーは、ほほからしたたる血をしきりにぬぐっている。「くそ、ジャップめ、皆殺しだ」ロバートは、片手で鉄の体を軽々と持ち上げ、ジープの後部座席へほうりこんだ。鉄は椅子にしばりつけられている。格子窓から月光が差しこんでいる。寒々とした広い部屋だ。わけのわからない道具が所せましと並べられている。 平手打ちを受け、鉄が目を開けた時、目の前に、大男のにやにや笑いがあった。「鉄、竜たちは、いまどこにいるんだ。隠れ家をいうんだ」「知らないな。俺はもう竜のグループと手を切ったんだ。たとえ知っていてもアメ公なんかに誰が言うもんか」 強烈な打撃が鉄の腹に加えられた。椅子ごと鉄はとびあがり、壁に激しくぶつかった。水をかけられ、息をふき帰す。イスは形をとどめていない。「おい、鉄、さっきか前がナイフで切りつけた相手がだれか知っているか」鉄,はかたぐなにだまっている。「ハンターライリーさ」 鉄は驚いた。それじゃこの前にいるコヤツのは。「そうさ、俺が、有名なブッチャー(屠殺人)ロバートさ」同時に軍用ブーツが,顔にのしかかってきた。鼻血が噴出し。歯がメキメキと音をたてて折れた。「いいか、よく聞けよ。俺の上司の、ライリー大尉は非常のお怒りだ。何せお前にファニー・フェイスを傷つけられたからな。むろん、プレイドもな。だから俺はお前をじわじわとなぷり殺すことを許されている」ブッチャー(屠殺人)ロバートは、血まみれミンチ肉になっている鉄の顔をゆくりと見直す。相手の恐怖をゆっくり呼び起こし、犠牲者のその恐怖の有様を楽しもうとしている。「お前が何もしゃべらないなら、手の指から一本ずつ切り離していくぞ」そこでロパートは言葉を切る。そばの机の書類に目を落とした。「そのつもりだったが、俺は慈悲深いぜ。感謝しな」「もっと、いい、お前にとって好ましいことを思いついた。伸藤から耳よりの話を聞いたのだ。ごくんと、鉄は血まみれののどを鳴らす。「お前はクモが大嫌い、、、だそうだな。本当か」鉄の心臓が波うった。この世界で何も俺は恐れない。がクモだけは。「そうか。どうやら、まだいうつもりがないらしな。それに伸藤の話も確かめなければならんな」にやりと、ブッチャー(屠殺人)ロバートは、血まみれの鉄を覗き込んだ。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画http://www.yamada-kikaku.com/
2012.01.27
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東京地下道1949■第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画東京地下道1949■第6回鉄は、進藤の店テーブルの上の地図をわしづかみにする。 「それじゃ、悪い。じゃましたな。またな。進藤のおやっさん」あわてて、故買屋、進藤は鉄に呼ぴかける。「その地図、あずかって訃いてもいいぜ。高くは売れないだろうが、ものずきがいるかもしれない。銃弾二箱となら、変えてもいいぜ」 「ほう、価値のない地図と、銃弾二箱と」 鉄は進藤仲藤をにらみつける。「それくらいなら、こうだ。」鉄は地図をやぷろうとする。 「やめろ、それは・・・・。」 鉄は、進藤の服のエリをつかんだ。 「おっさん、悪い冗談はやめろよな。どうやらたいへんなものらしいな。この地図は」 進藤の眼をにらみつける。 「はっきりいいなよ。この地図は何だ。いわないと、明日からメガネをかけるのに不自由するぜ」 鉄の右手に、ナイフがにぎられている。 恐怖におぴえる進藤の目に、アメリカ軍占領軍のジープが近づくてくるのが、みえた。「いけね、アメ公だ」 風のすぱやさで、進藤の店から、鉄は走り去った。 息をゼイゼイいわせながら、首を押さえた進藤は、そのジープの乗り手が、上客の保安部のライリー大尉であることを認めた。「ガキめ、ただじゃすまさないぞ。この進藤を甘くみるなよ。ほえずらかかせてやる」 店の前にジープで乗りつけたライリー大尉に向い、しわがれ声で叫んだ。「今、走りでたガキをつかまえて下さい。奴は「ナイフの鉄」です。早く、大尉」ライリーはその声を聞くやいなや、ジーブを反転させ、鉄を追いかける。 鉄を始め、竜のダループは、このトウキョウのアメリカ軍占領地区では、「ベビーギヤング」として特にマークされている。 ライリーと、同乗して運転しているロバート軍曹は、各々トンプソン・ザブマシガンと、M3グリースガンを構えた。 進藤はあわてて、電話をかけていた。「地図をみつけました。いえまちがいなく、あの地図です。ええ、『ナイフの鉄』とい夕浮浪児です。今米軍のライリーが追いかけています。おそらくつかまるでしよう。ハンターの威名を持つライリーの事ですから。でも御心配なく、奴は保安部の入間ですから、「ベビーギヤング」竜のグループのことを聞き出すことに全力をあげるでしょう。地図ですか。いえまだ鉄が持っています。ご心配なく、奴が気づかないように地図のコピー写真をとりました。それじゃ、お札の方はお忘れなく、例の場所で」進藤は電話を切り、にんまりほくそ笑んだ。 『ナイフの鉄』は、相手をまけるはずと思っていた。なにしろ、このあたりは、鉄の庭も同然だった。相手はジープを乗り捨てたようだ。車でははいってこれない路地だった。路地にたむろする日本人たちが何がおこたのかと騒ぎ見守っている。 鉄の誤算は、相手が、「ハンター・ライリーとプッチヤー・ロパート」のペアだ、としらなかったことだ。 アメリカ保安部の「ハンターライリーとプッチヤー・ロパート」の名前を聞き、ふるえあがらない「ベビーギヤング」や浮浪児がいれば、お目にかかりたい。 餌食になった者、数百名。ほとんどが殺されゐか、半死半生の目にあわされ不愚者となっていた。彼らは年少者だからといって容赦はしない。彼らは生まれながらのサデイストのコンビで、ちょうどいい職場を、この東洋の占領地日本トウキョウで与えられていた。黒い影が、秘かに、おびえる鉄に近づいてくる。獲物を、ねらう肉食動物の動きを思わせる。鉄は敵の動きを息をひそめて見守りながら、ナイフを手ににぎる。手汗でナイフがすべりそうになる。恐怖ゆえのアドレナリンの分泌だ。 そいつは、まるで鉄のい場所を知っているかのごとく、肉迫してくる。影から判断して、どうやら相手はサブマシンガンを手にしている。やばいことになったと鉄は思う。かなりベビー・ギャング狩りに慣れている奴だ。続く090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.26
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東京地下道1949■第5回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画東京地下道1949■第5回 米軍食糧貯蔵庫は、ゆうに100万人の人々の口を養うことができる。トウキョウ市では餓死者が続出していた。食糧はいくらでも高く売ることができるのだ。食糧庫から、トウキョウ市内の米軍キヤンプヘ食糧が一日数回搬出されている。竜たちベビーギャングは、そのトラックをねらっていた。竜は、夜の闇にまぎれ、食糧庫に近づく。サーチライトが、あたりを照らし、番犬が鉄条網内でとき放たれ、動き回まっている。「竜、ひさしぶりだな」 背後から声がかかった。「おっと、銃には手をかけるなよ。こちらは4人。皆、すでに銃を手にしている。ゆっくりこちらを向きな」「ムサシか。ごこで、昔のしかえしを受けるわけか」「そうしたいのは、ヤマヤマなんだが、どうやら、お前もあれをねらっているらしいな」 上背180mをこえる大男、ムサシば貯蔵庫の方を指さす。ムサシはこのあたり一帯を、とりしきる浮浪児のグループ(ベビーギャング)の長だった。その支配下の戦争孤児の数は300名をはるかに越えている。 かって、竜は、このムサシに手ひどい仕打ちをしたことかある。「違うといっても隠しようがないな。そうだ。おれたちは、あの食糧庫の搬出トラックをねなっているさ」「実は、俺達も.あの車をねらっている」ムサシは、竜をじっと見つめた。 「そこで相談だが、手を引け、といっても引きさがるか前じゃない。」 竜の手に汗がしみでている。 「手を組むか」ムサシは威嚇的に言う。 「わかった。俺達のグループ人数では手にあまる仕事だと思っていたところだ」 「そうとなりゃ、話が早い。この3人は俺の知りあいだ。俺のグループと、こいつら各々の手下。それにお前のグループと5つのグループで襲撃することにする。それじゃ、俺の アジトヘ来てくれるか。」 「わかった。しかし、ムサシ、変なまねだけはするなよ」 「お前にそれを言われると不思議な気がする ぜ。ところで鉄は元気か。」 「でていったよ」 「いつ」「さっきさ。残念そうな顔つきだな」 ムサシは右手を竜の方へむけた。右手のくすり指が、第三関節からなかった。以前のいざこざの時、鉄のナイフが切り取ったのだ。「鉄とは会いたかったな」 ムサシの目に残忍な光が宿る。●鉄は、その時、故買屋、進藤の店を訪れていた。進藤の店テーブルの上には、例の地図が拡げられている。進藤は静かにその地図をながめていた。が、一瞬、驚きの表情があらわれたようだった。それが突然不機嫌な表情にかわる。その顔つきでテーブルの下に設置してあるスイプチを操作する。カシャカシャという音が上の方から聞こえてくる。 「だめだね、鉄。残念ながら、値打ちなんかない。高く買うわけにはいかないよ。もっと いい出物はないのかね。近頃はいい出物がなくて困っている。いいヤマに当らないのか。 竜はどうしている。今度はどんな仕事だね。いい仕事なら前金を渡してやってもいいよ」「おっさんには関係のないことさ」鉄がいう。(続く)20090501改定(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.25
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東京地下道1949■第4回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」東京地下道1949■第4回 鉄のどす黒い顔がうなる。「ああ、おおありだ。このグループの方針て奴だ。なんで全員が一度、竜よ。お前さんの前で獲物を、広げるなきゃならないのだ。でめえでとった獲物は、総て自分の物でいいじゃないか」「鉄。グループの掟を忘れたのか。相互補助ってのがグループの基本のルールなんだぜ。お前、それとも忘れたのか。お前、鉄が、アメリカ保安部隊に撃たれ、熱を出し、うなっていた時、ここにいる皆にな、看病してもらったことを」鉄の顔が赤くなり、しばらく黙って、それからまた、うなる。「それはそれ。これはこれさ」少し考えていう。「力のある者が、より多くをちようだいする。これがあたり前だぜ。涙ちょうだいの平等主義なんて、、アメ公だけでたくさんだ。ゲップがでるぜ。わかったぜ。俺はなあ、この相互補助のグループを抜けさしてもらうさ」「ああ、いい、でていけ」竜が声高におおじた。「兄さん」 竜の妹の恵が、兄をなだめようとした。そして鉄に言った。「鉄、いま、グループを離れるのね危ないわ。アメリカ保安部隊がベビーギャング狩りに力を入れているのよ。特にあなたは凶悪な部類「ウオンテッド・リスト」に載っているわ」恵は強く言った。「いい、鉄。考えなさい。考え直しなさい。グループには、いえ、竜兄さんにはあなたが必要なの。まして、明日の食糧車襲撃はどうするの」鉄に悲しそうに恵に言った。「恵、お前には世話はなっているが、これだけはどうもな。俺は、やはり、集団行動ってのが性にあわないんだ。それに俺には、この守り神があるからな」 鉄は、愛しい子供の様に、服の袖からナイフを取り出し、刃を口びるでなでる。「いい、ほおっておけ、恵」 竜のきびしい声がとぶ。「こいつにかまうんじゃない」「でも兄さん」「ふふ、兄妹けんかは、ほかでしてくれよ。おみやげにこのトカレフはもらっていくぜ」 鉄は、今日の獲物「トカレフ」に再び手をのぱす。竜の拳銃が火を吹く。鉄にあたってはいない。「何をするんだ」 鉄は、反射的に竜にナイフを投げようとし、一瞬思いとどまった。「よしな。そのトカレフは、置いていくんだ」 鉄は竜をにらんでいたが、しばらくして、ニヤリと笑う。「わかったよ。トカレフは、竜、お前さんへの最後のプレゼントだ」 鉄は、アジト入口のドアを開け、荒々しくでていった。不思議なことにカバンの事はー言もいわなかった。隠れ家に、しばらく静寂があった。 「さあ、みんな気にするな、それよりカバンの中が問題だな」 カバンの中は書類がほとんどで、ずぶぬれたった。ロシア語でかかれていた一片の紙片がビニール袋につつまれていた。 もう1枚はは日本語だったが、古い文字でくづし字であった。「どうやら地図のようだな」 仲間の一人が言う。 「まん中の大きな部分は、江戸城の様だな」「金になりそうか」「わからん。伊藤にでもみせるか」伊藤は、古買屋で、竜たちは時々、獲物を売っているのだ。 その時、突然、部屋が暗闇になる。部屋じゆうの明かりであるロウソクが、消えている。誰かが竜をなぐりつけた。物音がした。皆一瞬、身動きができない。気をとりなおした者が、ろうそくの火を再びつけた。数本のナイフが、壁や机にささっていた。ナイフの刃が、部屋じゆうのろうそくのしんの部分をぶち切っていたのだ。「おい、見ろ、地図がないぞ」「くそっ、鉄のしわざだ」 「まだ、間に合う。おいかけよう」「そうだ。いまなら、すぐ近くにいるはずだ」「やめて分け」竜がー声いった。「なぜですか。竜さん」「今日はもう、遅い。これ以上争いたくはない。闇やみでは不利だ。ナイフはあまり音をたてないからな。それに、明日は、大仕事がまっている。体を休めて分け」不承不承、部下の連中はこたえる。「そうですか。竜さんがそう分っしゃるなら」「くそっ、鉄の奴、こんどあったら、ただじゃおかないぞ」「おまえの腕では、鉄に殺されるのがオチだぜ。やめておけ」「そういわれりゃ、そうだな」変に納得している。 皆、笑った。「よし、皆、明日にそなえて、もう寝るんだ」 恵は、兄の竜に言った。「兄さん、ありがとう。鉄を追いかけないのね」「おしい奴だぜ、あいつも」といいいながら、竜はでかける準備をしている。「で、それは、兄さん、今からどこへ行くの。」「明日の現場下見だ。俺一人だけな」(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.24
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東京地下道1949■第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画「さあ今日の取り分だ」 竜は顔をみわたしながら、目の前につみあげられた物資をわけ始めた。彼らは十才をいくつも越えてはいない浮浪児達だ。竜は波らの主領である。 自らの力で食物や闇物資を手に入れたのだ。恐喝、かっぱらい、強盗、その他いろんな呼び方がある。この時代とこの場所で生きのびていくための手段であった。 竜のアジトであるはっ建て小屋からも焼け果てたトウキョウ市の[新しい壁]が見えている。 その壁は。日本人に希望を与えるものではない。日本人の心と体を。いわゆる「本土決戦」以上に疲弊させるものだった。 竜は「本土決戦」当時は、新潟県に疎開していた。そこで「愛国少年団」に属していた。赤い星をつけたソビエト連邦軍、ソ漣軍の「T34戦車」が進撃してきたのは、昭和二十年十月三日。 第2次世界大戦末期、ドイツでのポツダム会談で、日本の占領政策に関して、アメリカの新人大統領トルーマン大統領は、老獪なソビエト連邦の首相スターリンに圧倒されたのだ。「これは日露戦争の復讐なのだ。それに、ノモンハン戦役のね」加えて、アメリカ、ネパダでの原爆実験の失敗が、トルーマン大統領に追いうちをかけた。しぶしぶ、トルーマンは、ソ連軍の対日本戦参戦を認めたのだ。それは、第2次大戦、つまり大東亜戦争での日本の敗北と連合国の分割占領を意味した。チャーチル以下イギリス軍の反対も、アメリカ参謀本部の反対も押しきられていた。あのグルジア人でロシア革命以前、列車強盗でもあったヨーゼフ、つまり暗号名鉄の男スターリンのずるがしこいほほえみに。そして、日本の運命が変わった。 北海道、東北の海岸は、ドイツと対峙していた欧州戦線からシベリア鉄道を経由して大急ぎで輸送されたソ連軍の艦隊老上陸用舟艇で埋め尽された。少しでも多くの土地を。そして日露戦争の敵を! 竜の兄は、すでに沖縄で特攻隊として出撃していた。お別れに、兄はお守りを竜と恵にさずけた。 兄は消息不明といなったが、竜と恵はそのお守りを後生大事ににしていた。新潟県に疎開先の校舎はふきとばされ、「T34戦車」キャタピラで、人体と建築物が混じり合い押しつぶされた。機関銃や爆撃、大砲、嗚咽、叫び、悲鳴であたりは充満していた。まさに地獄だ。鮮血をニイガタの大地に流し、友達は殺されていったのだ。竜や恵には、特特の人生観というものが形成されていった。 竜と恵が、トウキョウ市にたどりつけたのは、僥倖と呼ぶより他はない。やがて日本は連合軍に全面降伏した。日本全土は廃虚と化していた。連合軍が日本という得物を得たのだ。トウキョウ市は、アメリカ軍とソ連が分割占領を行なった。 机の上にトカレフ挙銃が傲いてある。「誰の獲物だ。これは」 竜はまわりの皆を見渡しながら、尋ねた。「俺さ」鉄だった。鉄は使いなれたナイフをいじくりながら答えた。皆の目が鉄に注がれる。 以前にも、鉄はコルト45をアメリカ保安部隊からくすねてきたことがある。鉄はこのグループの中でも、このあたり一帯でもー目おかれる存在となっている。それは、小さな社会にさざ波を起す。つまりは、グループの長としての竜の地位をもおびやかしていることになる。 鉄はナイフに関して天賦の才をもつ。それゆえ、あだ名が「ナィフの鉄」「この地区にきた露助からとりあげたものだ」 鉄はロシア製の苦いタバコをくゆらせながらつぶやいた。「その挙銃と一緒に、そのカパンもいただいたのさ」 鉄は、うす汚れた黒革のダレス型鞄を指さした。「どうせたいしたものははいっていないと思うぜ。米ソ定期会談に来ていた奴かもしれない」「とにかく中をしらべてみょう。」 仲間の一人が、カパンのキーをいじり始めた。 突然銃声がした。一瞬全員が身がまえる。鉄だった。カバンのカギがふきとんでいる。「この方が早いさ」「この野郎、おどかしやがって、ここをどこたと思っているんだ」 誰かがどなる。「竜のアジトさ。遠うかね」「俺のやり方に文句でもあるのか、鉄」竜がなじった。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.23
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東京地下道1949■第2回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画アメリカ軍占領軍情報部(OSS)の一部屋に一人の日本人が,大きなデスクを手前に腰かけている。彼の青白い顔に汗がにじんでいる。時々、時計に視線を向けいらだっていた。 乾公介、名目は「占領軍付日本人通訳」だが、OSSのメンバーの一員である。 彼,乾公介は確かにあせっていた。理由は死期がせまっているからだ。癌の宣告を受けていた。あと3ケ月とないだろう。それまでにあのプランを完遂し々ければならない。それは、彼の宿願であった。 いまや、彼の命脈を保っているのはその計画のみである。双肩に重くそれがのしかかっている。アメリカ人が、一人いそいで乾の部屋へはいってきた。 「どうやら、我がアメリカ保安部は、あの地図をMGB(在日占領軍ソ連保安省)のエージェントから手にいれることに失敗したようだ」「よかった。地図はまだ、やつら、保安部の手にはけいらなかったのですか。それでいいんです。地図を持っていたイワノフ大尉はどうしたのです」「保安部がライフルでしとめたとのことだ。が、先に自殺し、地図のはいったカバンは見つていない。死体の前が河だったので、おそらく投げ込んだものと思われる」「わかりました。その地図が保安声の誰かの手にはいらないか留意しなければなりませんね」「そうだ。引続き、我われわれ保安部は、MGBのエージェントの監視を続けよう」瞬間、血の気がうせて、乾は、自分の机の上につっぷしそうになる。「乾チーフ、だいじょうぶか、休が悪いのでは」「いやなんでもないです。だいじょうぷです」 OSSの内部では、波が宿摘の病にあることは誰も知らない。「この仕事を頑張らせて下さい」 乾はそう言い、立ち上がった。占領軍情報部(OSS)の窓の外は焼けのこったトウキョウ市の無残な姿が横たわっていた。 アメリカ占領軍情報部の接収しているショウワ・ビルからはトウキョウ市全部がみわたせる。トウキョウ市は日本の首府であった。そのトウキョウ市を壁が真ふたつに分断していたo 壁の向こう側は、、極東ソビエト軍の占領地区なのだ。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.22
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東京地下道1949■第1回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画地下道1949■第1回1949年 日本トウキョウ。 男達が争っていた。いや一名の男が数名の男に追われている。逃げる男はスラブ系の顔をしている。アメリカ軍占領地区、トウキョウ市の町中で追跡が行なわれている。 追う一団は、トレンチ・コートで身をかため、一般市民の姿をしているが、訓練を受け死者の持つ独特の体臭がする。彼らは入がいない場所にぐると、コルト45を各々と取りだし、前の逃げる男へ弾をあびせる。 逃げている男も、オーバーコートからトカレフ挙銃を出し、振りむきざま、撃ちかえす。男の射撃の腕は一段上手らしい。たちまち後の2人の男が倒れた。前の男は大事そうに、カパンをかかえている。 やがて、追撃している男に応援が来た。ライフルを持っている。彼はスコープに逃亡者をとらえ、男の肩を阻撃した。 男はうずくまり、死力を尽し、カパンを目の前の河へほおり投げた。 河は雨の降った後で、水かさが増していた。一濁流で流れも急だ。 このいちぶしじゆうを見ていた一入の浮浪児がいた。すばやく河に棹さし、そのカバンをひっかけひろいあげた。少年は隠れた。 追撃して来た狩人達は、倒れている獲物のそぱに立つ。男は歯に隠していた毒カプセルを飲んで死んでいた。 男達はあたりを見わたす。 カバンを探しているようだった。しかし、一時間後、彼らはあきちめたらしく、ひきあげていった。 その隠れ場所で息をひそめていた少年は、カバンを手に出てきた。死体の手からトカレフ挙銃をひっべがし、河のそばへひきずり、死体を投げ落とした。それから、意気様々と「竜」のアジトヘ向かった。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2012.01.21
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第8回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第8回ー最終回私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。残滓が飛び散っていた。滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。手になみだ石をにぎりしめていた。 リーラが私の側まで歩いてきた。 しばらくだまって私をながめていた。 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。「きようならミユー」 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。「さようなら、リーラ」 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。もちろん規則違反だ。私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。 光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。別れの花火のようだった。なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。この地球に、、一人、、取り残されたのだ。癒される事のない寂しさ。私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。場所の記憶がある。それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として子孫を、、急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。「リーラ」と、思わず叫んだ。叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、それがなみだ石に染み込んでいった。(完)20111210改定1975年作品(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.20
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第7回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第7回「私が、代表者です。名前はリーラです」 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですもの」 リーラ、そうだ。彼女はリーラだった。ミユー。それが私、日待明の本名?僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。リーラ、彼女は私の妻だった。いや、今も私ミユーの妻だ。 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだそして同時に、私の記憶は分解された。偽りの記憶が埋め込まれたのだ。 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。今の自分に戻った私の意識。 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、上の空だった。「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」滝という名の男の声が耳に入ってきている。 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。「滝さん。いい。ですか」リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。地球は本当に美しかった。そうなのだ。夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。 あれから何年たってしまったろう。今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。仲間は私の体に特殊処置を施した。私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。今の今まで、私自身を忘れさっていた。 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。どうやら、滝は力にうたえるらしい。近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。(続く)●090921改訂●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.19
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第6回 人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。今日がその日だ。 「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」ふっと滝は鼻で笑いながらいう。しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。ゆっくりと、滝が口を開いた。「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のところまで案内してもらおうか」「わからないんのだ。覚えていないのだ」僕はあわてて、ごまかそうとする。「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」 滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」「僕は、、一体、誰だ、、、」「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」世の中がまるで180度回転したみたいだ。僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと僕の背中に照準あわせているのだ。涙岩へは小一時間ほどかかった。悪路だった。村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。この頑丈さは。何者なのだ。それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。「まて、日待クン」滝は、道の徒切れていて、僕を止める。山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、そこに人の気配がした、樹木のそばに隠れる。涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。村人以外の人が、かなりいるようだ。あきらかに、村の人口よりは多い。気づかれないように、そっと草陰から眺める。涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし大声で叫んだ。「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」 どこからともなく突然、爆音がきこえた。夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプターが5機、飛来してくる。「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」 「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。何てことだ。彼女だった。(続く)●090921改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.18
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第5回 バスのとびちった部品の影に、滝が倒れていた。「滝,しっかりしろ」 滝は目をあけた。服がやぶれ、血がにじんでいた。すこし焼けこげてもいた。一、二度、頭を振って、滝は上体をおこした。不思議そうな顔をして、滝は僕をみつめていたが、ポケットに手をつっこんでから、ゆっくりといった。「日待、君はケガをしなかったのか」「ああ、そうさ、運転手は?」あたりをしばらく見渡してみた。「どうやら、ダメなようだな」 ポツリといった。 滝は、僕の目をじっとみつめ、口を開いた。「日待、どうだ、ここらでもうはっきりさせないか」その表情は、これまでの饒舌な滝のものではなかった。別人のようだった。「何のことだ。何のことを言っているのだ」僕は体をこわばらせる。「日待、いや、君の本当の名前まではわからないが、、まだ、しらばくれる気なのか。君と君の仲間のことさ」「僕の仲間?」滝は立ちあがり、少しよろけたが、僕の肩に手をかけた。「はっきりいえよ、日待。それとも」「まってくれ、滝、一体お前、どうしたんだ」そ時だ。隣にあるバスの残骸が爆発した。おもわず僕達は体をふせた。「そうだ。滝、はやく頭屋村へいこう。むこうで、君のケガをみてもらおう」「ふっつ、どうやら、頭屋村までは、君が、案内してくれるつもりらしいな」と皮肉っぽく言う。 いったい、この滝の変心は、なんだ。僕はバスの転落、体を包み込んだ緑色の光、滝の豹変、わずかの間に起こった事で混乱している。それにしても、あの緑色の光は、涙岩の色に似ている。と僕は思った。頭屋村までは、まだかなりの距離があった。僕は、滝、彼も、いや彼こそ本当の名前は何だ、、もう話をする気がしなかった。冷たい沈黙が、僕達の間にあった。が、二人は村へ向って歩きだす。滝に肩をかしていた。バスの通り道へあがり、夕ぐれの中を歩きだした。村までの風景は、僕が出かける前と、少しも変わっていなかった。おぼろげな記憶だったけれども、はっきりと一致していた。ようやく村へたどりついた時、来てはいけないところへ来た、そんな気がした。僕をよよつけない何物かがあった。体がぞくっとした。 最初に滝の傷をみてもらもらおうと思った。しかし急に「彼女」のことも思いだし、どうしても会いたいと思った。彼女の姿を浮べ、不安を振り払おうとした。 手近かの家からは光がもれている。「ごめんください。」 答えはない。「誰もいないんですか」無断で家にはいっていく。人の気配がない。隣の家家にも、同じように走っていって声をかける。やはり誰もいない。そして、不思議だが、村じゅう、物音一つしない。誰もいないのか?滝は、ポケットからタバコ箱くらいの小さな機械をとりだし操作していた。さっきから滝が触っていたのは、これだったのか。「滝、村には一人もいない。おかしい」「やっぱりな、思った通りだな」 滝は、傷のせいか、疲れた顔をしていたが、不思議に目眼だけは、力があった。獲物を前にしたハンターの眼だ。「いいか、もう、はっきりしたらどうなんだ、日待よ」「何のことをいっていろんだ。滝、君はバスが転落した時から、何をいいたいんだ。人が変ったみたいだよ」「ふう、簡単な話じゃないか。日待、最近、この田舎の、頭屋村へ来る人々が増えていたこと。パスの中で老人が言ったこと。そして、今現在、この頭屋村にはな、人っ子一人いないこと。すなわち、今日が。涙岩のくずれる日だ。今日は涙岩伝説の日だ」 僕はその意味するところに、打ちのめされる。そうか。今日が、涙岩がこわれる日に違いない。すなわち、数百年に一度の日なのだ。(続く)●090901改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.17
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第4回 「ええ」僕は答える。 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」 滝がいいかえす。 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行きたくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんですわ。」「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」 滝がいう。「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」「ボリョルナ。タタシーみたいだな」「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしかないんです」運転手は言い返す。「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。もうすぐ、あえるかもしれない。心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。彼女を。、、かなり昔からずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。「どうしたんだい、日待(ひまち)、まっさおだぜ、お前の顔」 突然、バスが横に激しくゆれた。窓の景色がひと回りした。体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくなり、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’ 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとながめている。 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.16
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第3回そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。知り合いといっても最近知り合ったばかり。彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。僕は滝を連れてきたくなかった。他の地域の人間には見せたくないのだ。が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。何があるのだ。唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 「あんたら、東京の方からきなすったかね」「ええ、そうですけれど」 僕が、答えた。「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山(カンタチヤマ)の方へやっぱりいくかね」「ええ、、、やっぱりの口ですな」そらなという表情で滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」「いや何も」 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりmmとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。彼女に会いたい。一目でいい。あの人は頭屋材出身だといっていた。駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっとしてその中に彼女がはいっていないだろうか。いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。それは、この田舎バスから始まったのだ。 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。あまり乗りごこちはよくない。「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」と、滝は、僕、日待明(ひまちあきら)の名前を気安く呼ぶ。「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」 滝がしゃぺった。 「あんたらも、神立山の方へいくだか」後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。「僕は、頭屋村(トウヤムラ)の出なんです。頭屋村へかえるんです」 僕が答えた。「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」「あんた、そのこというたらいかんがね」老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるのやなあ。クワバラ、タワバラやは」「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」滝がしゃぺった。老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違うようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」「これや、これ」今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.15
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第2回 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。 こんな僕でも恋はする。 その彼女、香月和子(こうつきかずこ)に出会ったのは、去年の十二月。仕事の関係で知り合った。 彼女の眼をみた僕ははっととする。同じ種類の入間だ。 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。彼女と知り合い、それ以後倹は彼女にひかれていた。ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。外見は20才くらいにみえるのだが。僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。まるで何百年もいきているように感じられた。「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」「仲間だって」「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」「旅?」「私達、旅立つ日が近づいている」 彼女はさびしそく言う。「二度と、、、「会えなくなる」「そんな」「悲しい?。そう、、これをあげる」 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。「これは何」 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。「なみだ石」 彼女は去っていった。「なみだ石」 僕はつぶやく。きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。彼女のあとは追いかけなかった。 なみだ石、聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。 そして、決心した。涙岩をみよう。ふるさとへ帰ろう、、と。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.14
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。列車は。僕の故郷に向かっていた。故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村(とうやむら)へたどりつくことができる。 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。 僕、日待明(ひまちめい)は頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。その草原を深い森がかこんでいる。「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがっていく。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」と、、、 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみをとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。と思った時から始まっていた。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2012.01.13
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ロボサムライ駆ける■第62回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ■第七章 血闘場(9)『それは、私が解決しよう』 空洞にいる人々の心に心柱の声が響き渡った。「おお、心柱さまがしゃべられるぞ」 居並ぶ人々は、古代都市にいる全員が耳を傾ける。 クルトフ、シュタイフの聖騎士団。 山本の率いる反乱ロボット。 水野、斎藤の率いる西日本都市連合軍。 徳川空軍、徳川旗本ロボット、早乙女主水。 徳川公、落合レイモン、夜叉丸、足毛布博士等である。『水野、斎藤、反乱ロボットを接収すること相成らぬ。 また反乱ロボットの皆、よく聞いてくれ。足毛布一族、われらをこの千年にもわたって守ってくれたのじゃ。それゆえ、憎むこと合いならん。また、夜叉丸はわしがレイモンつかわせた霊人間なのじゃ。 足毛布博士、落合レイモンは、このわしとともにこの古代都市を再開発、研究せよ。 徳川公は、早乙女主水と東京へもどり、東日本の内政を改めよ。 それから、クルトフ、シュタイフ、二人はルドルフとロセンデールに告げよ。私が解放された以上、日本への神聖ゲルマン帝国の侵入は、たやすくないぞとな。以上だ』「おおーっ、さすがは心柱、みはしら様じゃ」 喚起の声と、失望の声があがっていた。が、いまや、みはしらさまにしたがう他はないのだ。「主水、わしの手元に戻ってきてくれるか」 足毛布博士が頼むように、主水に言う。「が、博士、幾ら生みの親とはいえ、拙者は義に生きとうございます」 思わぬ答えに足毛布はたじろぐ。「義とは?」 足毛布は不思議なものを見るような目をした。「徳川公のおつかえして、日本につくすことです」 キッパリと言った。「おお、よういうた。主水。足毛布博士、主水をお預かり申す」 徳川公廣が、博士に礼をした。そうそうにここから主水を連れ出すつもりだ。 しかし、博士は主水にたいして罵詈雑言をはく。「主水よ、私を裏切る気か。お前を作り、ここまで育てた私をな」「博士、それは…」「よいか、誰がお前、主水をあのNASAの空軍基地から助け出してやったと思うのだ。よいか、お前のために私は防御レーザーにより傷を負ったのだ、わかるか主水。自らの息子よりもお前のことを愛していたのだぞ。それをお前は裏切り、あまつさえ、この西日本から出ていこうとするのか。これをこれを裏切りと呼ばずして何と呼ぶのだ」 足毛布博士の怒りは治まりそうになかった。「主水、これを見よ」 足毛布はふところから、たばこを出して大地へ捨てた。「…」「今、捨てたのはお前のロボットストレス対処用の薬が入ったタバコじゃ。よいかもう二度と手には入らぬ。材料はアメリカ製じゃからな。これが親である私に対する裏切りに対する復讐の一つだ。これからも油断するなよ。生みの親を捨てたお前に災難が降りかかろうぞ」「主水、気にするな」 徳川公がやさしく声をかける。「お前は正しいのだ」『主水よ…』 みはしらさまが、主水に話しかけた。『忘れものじゃ。返してくれぬか』「はっ…」 主水はどきまぎする。『そのクサナギの剣どじゃ、しばらくは用はなかろう』 主水はまだその剣を握り締めたままだった。「しばらくですと」『そうじゃ、その剣を再び使うときは、運命の七つ星すべてそろった時じゃ』「運命の七つ星。それは一体…」『主水、それは…、お前の運命じゃ。いずれわかるときがあろう』 恨めしげに眺める足毛布を背にしながら、主水は徳川空軍の飛行船に乗った。「だんな、だんな…」 話しかけるものがある。鉄だった。下半身は吹き飛び、担架に乗せられている。「あっしは、もうだめでさ。手も足もでませんや」「鉄、お前…」「えっ、だんな、どういたしました」「そんなシャレを言ったから大丈夫だろう。 手つだいできようよ。足がないぐらいでな」「だんなも人が悪いや」 それを受けて「これ、鉄、俺は人ではない。ロボザムライ早乙女主水じゃ」「決まったね、ダンナ」 少しは元気を取り戻した主水である。 飛行船は、地下空洞から上空へ飛び上がって行く。第七章 血闘場 (10) マリア=リキュールはロセンデールの首をくわえて逃亡後、行方不明となる。 ヨーロッパのいずこかに住んでいるといわれている。 びゅんびゅんの鉄は、マリア=リキュールから受けた傷がもとで現在療養中である。 知恵は、外国のロボット奴隷解放運動で活躍しているらしい。 サイ魚法師は、太平洋岸を現在荒らし回っていると風の便りに聞いている。 足毛布博士は、京都の研究所で、侍ロボット改良版を製作中と聞く。早乙女主水にそっくりで、主水2というネーミングらしい。 落合レイモンと夜叉丸は、まだ西日本エリアに残って、古代都市研究を行っている。 現在でも古代都市のことは日本国内では秘密となっている。 水野と斎藤は、みはしらさまの指示にしたがい、ロボット奴隷制をいやいやながら廃止した。 生き残った、クルトフとシュトルフ率いる聖騎士団は、飛行船「飛天」「高千穂」に乗せられ、インド洋上でヨーロッパ連合の船に乗り移り、帰っていった。 ロセンデールは、みはしらさまが言ったたように復活したと風のうわさに聞く。 徳川公国のお主(かみ)と早乙女主水は、東京エリアの徳川公国にまだ住んでいる。 主水は自分の病気を直そうと必死である。 ■ロボサムライ駆ける完■■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(10)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/http://ameblo.jp/yamadabook/
2012.01.12
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ロボサムライ駆ける■第61回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第七章 血闘場(8)「よいか、反乱ロボットの諸君。今回は大目に見よう。首謀者を出せば全員を許そう」水野が言った。「そうだ、その通りだ」斎藤が続けた。「貴様たちも我々人間がいなければどうにもならんのだぞ」 斎藤は憎々しげに言う。 主水は反乱ロボットたちを助けようと「いかん、ロボット旗本の方々、存分にお味方くだされい」 主水は、飛行船で到着して傍観していた徳川空軍・旗本に言った。「主水、止めるのじゃ」 徳川公があわてて制した。「なぜでございます。お上」「よいか、我々は西日本を征服するのが目的ではない。我々東日本と西日本は政治体制が異なる。この制度、壊すこと、相成らぬ」 徳川公のきつい怒りの言葉であった。「さようでございます。さすがは徳川公」 水野が喜んで言う。「主水殿、お恨みもうす」 山本が言った。「主水のおじさん、肝心のとき、役にたたないねー」 知恵がいう。首をうなだれる主水。 反乱ロボットは、西日本都市連合政府軍によって収容されそうとなる。反乱ロボットは、軍に収容されるため動きはじめる。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(8)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/http://ameblo.jp/yamadabook/
2012.01.11
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ロボサムライ駆ける■第60回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(7)「反乱ロボットの諸君も鉾を納めていただきたい」 反乱ロボットの方へ向き直り、徳川公は語り掛ける。「なぜだ」「君たちの目的は自らの身分制度打破であろう。ゲルマン帝国との戦いが目的ではないはずだ。今のままではゲルマン帝国との戦いになってしまう」 徳川公はじゅんじゅんと諭した。「それでは足毛布博士を我々に渡していただこう」「何と」「足毛布博士を血祭りに上げる」 反乱ロボットたちは言った。「そうだ。そうしなければ我々の憤りは吐けぬ。何のために多くの仲間が死んでいったことか」 足毛布博士が、他の人々の群れから押し出されてきた。「足毛布博士に手を出すこと、拙者が許さぬ」 主水は叫んでいる。「主水殿、どうなされた」 皆が驚いている。「貴公、我々を裏切るおつもりか」「お許し下され、皆々様。やはり、足毛布博士は父でございます」 悲しげに主水は言う。「が、主水殿。我々反乱ロボットの目的の一つは、足毛布博士の処刑ですぞ」「そうだよ、主水のおじさん。おいらたち子供ロボットが偉い目にあったのもみんなこの男のせいなんだよー」 知恵が言う。「もうよい、主水。私をおとなしく反乱ロボットたちに渡せ。そうしないとお前の命も危ない」 足毛布博士は言う。 その様子を見ているレイモンは隣にいる夜叉丸に小声でささやく。『博士も役者よのう。夜叉丸、まあ様子を見ておれい。面白いことが起こるぞ』「それは、一体」 主水が反乱ロボットに押さえられている。足毛布博士を跪かせ、数人のロボットが刀を元上げる。 足毛布博士は頭を項垂れている。 刀を降り下げようとする。が、一瞬後、体が動かなくなる。「これはどうしたことだ」「どけ、私が変わる」 何人ものロボットが、続々と足毛布博士の首を撥ねようとするが、それができない。 体が固定してしまう。 足毛布博士がゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと反乱ロボットに向かう。慢心の笑みが浮かんでいる。それも皮肉な笑みだ。「よいかロボットの諸君。私は君たちの父なのだ。父は子供のICチップに最終指令をコマンドしてあるのだ。私を殺さぬようにな。このコマンドは君らの心の奥深くに埋め込まれている。誰も気付かぬ。またいかなるロボット工学博士でも、そのコマンドは解除することができぬのだ」「足毛布博士、流石よのう」 水野が叫んでいた。西日本都市連合のロボット軍隊がいつのまにか、古代都市の大空洞に結集していた。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(7)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/http://ameblo.jp/yamadabook/
2012.01.10
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ロボサムライ駆ける■第59回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(6)地下大空洞に声が響き渡っている。「皆、剣を下げよ。これ以上の戦いは無用だ。シュトルフ、全員に命じろ」意外なことにクルトフが命令していた。「しかし、クルトフ様」 シュトルフが抗弁しようとする。「だまれ、シュトルフ。ロセンデール様がなくなった今、これ以上は無用だ。我々はもう空母も機械城もないのだぞ」「そうです。公式には日本と神聖ゲルマン帝国は交戦していないのです」徳川公が言葉を継いだ。「我々としては心柱が目覚められた現在、わざわざことを荒立てる必要はない」 斎藤も一言加える。「それゆえ、我々は武装を解除します。よろしいな、シュタイフくん」「はっ。クルトフさま」シュタイフは渋々命令に従う。聖騎士団は、武器を下げた。シュタイフの胸の内にはにがいものが込み上げてきた。『ロセンデール殿下、お許しください。私はあなたをお守りできませんでした。このクルトフめは、一三人の諸公のうちの誰かから、ロセンデール殿下を滅ぼすために遣わされたに違いないのです。その証拠を握ることはできませんでした。殿下、この敵は必ず…』(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(6)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/http://ameblo.jp/yamadabook/
2012.01.09
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ロボサムライ駆ける■第58回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(5-2)「リキュール、何をしておるのじゃ」 怒りの声が女に飛んでいる。 リヒテンシュタイン博士は、自分の実験室で資料をまさぐっている我が娘を発見していた。リヒテンシュタイン研究所は、博士がロボットでありながら、新しいタイプのロボットを研究していることで、世界でも有名であった。「ま、まさか、お前、私の発見をロセンデールに…」 少し考えていたリヒテンシュタイン博士だが言う。「わかったぞ、今までロセンデールに情報を流しておったのは、お前だったのか。我が娘だとは気付かなかった」「今頃、気が付いたのですか、お父様。まあ頭の古いタイプのロボットのお父様としては仕方がないですわね」「何を言う…」 階下での二人の大声の、ののしりあいを聞き付けて、登場するのはリキュールと双子ロボットであるマリアであった。「いったい何があったの」 研究室で睨み合っている二人のロボットに気付く。「お父様。まあ、リキュールお姉様もどういうことなの」「マリア、このお前の姉は裏切り者なんじゃ。ロセンデールに秘密を漏らしておったのじゃ」 博士は怒りにまかせて、リキュールを非難する。「どうして、お姉様」 マリアはリキュールに目を向けた。「どうしてですかって、マリア、お前はあの主水とかいう東洋のロボットにううつを抜かしてしまって目が見えなくなってしまったのですか。今の世界をご覧なさい。早く世界を統一しなきゃあ、大変なことになってしまうのですよ」 妹のマリアの方を向いてリキュールは毒ついた。「それとロセンデールに秘密をしゃべることは関係があるのですか」「この娘はロセンデールにたぶらかされおって。よし、今からロセンデールの家に行こう、お前は留守番だ、マリア」「でも、私もいったほうが…」「いい」 それが、マリアが生きている二人を見た最後だった。二人は邸から出て行く。悲劇はこの後おこった。 二人の遺体がロセンデール家から送り返されてきた。 『当家に侵入しょうとして殺された』との添え書きつきで。 ロセンデールが、リキュールとリヒテンシュタイン博士を殺したのか。それははっきりとはわからない。 マリアは博士とリキュールの遺体を前に復讐を誓う。「お姉様。いい、あなたの記憶を私の電子頭脳の一部に移植するわ。だから、私は今日からマリア=リキュール=リヒテンシュタインとなるわ。ロセンデール卿、覚えてらっしゃい。きっと父の恨み晴らして見せるわ」「マリアどうした。なぜそんなに嘆き悲しんでいるんだ」 主水がリヒテンシュタイン博士の屋敷を訪れていた。「主水…、もっと早くきてくれれば……」 主水の胸元で泣き崩れるマリアでった。「お父様とお姉様が…、ロセンデールに滅ぼされたの」「が、リキュール殿はロセンデール卿の…」「そう、姉はロセンデールの愛人ロボットだった。でもこの状態よ」「ルドルフ殿下に訴えれば…」「だめよ。証拠がない。それに、ロセンデールはルドルフ殿下のお気に入りだもの」「おのれ、ロセンデールめ、この恨みはらさいでか」「復讐は、ロセンデールが他の国にいるときでないと…」 が、主水とマリアは、とうとうロセンデールの屋敷まできてしまっていた。ロセンデールの館は中世の城を模して作られている。回りに堀が巡らされている。「ロセンデール、姿を見せろ」 主水は長い間叫んでいた。やがて、ロセンデールが城壁の上から姿を見せた。「おや、これはこれは私の愛しいザムザを滅ぼした黄色いロボットではありませんか。それに黄色いロボットにくっついた裏切り者では…」 ロセンデールの嘲りの言葉に、急にマリアが珍しく、癇癪を爆発させていた。「ロセンデール、降りてらっしゃい。父と姉の敵…」「おやおや、麗人マリア、どうかしたのですか。そんな怒りは体によくありませんよ。私があなたの博士と姉を殺したですと…。間違ってもらっては困ります。二人は、私のこの屋敷に不法侵入しようとしたのです。それ故、自動装置が働き、二人を焼き殺してしまったのです。事故ですよ。事故」「ロセンデール、覚えていなさい。この敵、必ず打って見せます」「おやおや、マリア。恐ろしい表情ですね。あなたの姉リキュールはいくら怒ったって、このようなお顔は見せませんでしたよ」「止めなさい。私の姉を嘲るのは」「主水よろしいですか。愛しい者を失ったものの痛みがわかったでしょう」 ロセンデールの青い目に冷たい光が宿っていた。騒ぎを聞き付けてルドルフの親衛隊が駆けつけ、とりあえず収まったのであるが。ロセンデールは次々と刺客を二人の身を襲わせた。それ故、二人は神聖ゲルマン帝国より逃れたのである。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/http://ameblo.jp/yamadabook/
2012.01.08
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ロボサムライ駆ける■第57回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(5) 主水は過去を思い出していた。三年前、主水は大帝の前に膝を屈していた。「そちが早乙女主水か。日本からの留学ロボットか」 ルドルフが尋ねた。「さようでございます」 側には心配そうな顔をした、マリアが佇んでいた。「本来ならば、黄色いロボットなど会いたくはないのだがのう」 ルドルフ大帝は主水を見下すようにしゃべった。ルドルフは黄金のいすに座っている。ここはベルリン、ルドルフの宮殿、謁見の間である。 霊戦争後、ヨーロッパの大国となったのは、ルドルフ大帝率いる神聖ゲルマン帝国である。このルドルフの宮殿は、ヨーロッパ各国から贈られた美術工芸品で一杯だという。美的センスにおいてはヨーロッパ一だと思われていて、本人にもそう思っている耽美王である。財宝には眼がないのだ。「おまけに、そちはこのリヒテンシュタイン卿の娘マリア=リヒテンシュタインを嫁に迎えたいというのか」 黙って膝を曲げているだけの主水である。「これ主水とやら、返事をせぬか」 宮殿の誰かが声を掛けた。「さようでございます、殿下。ぜひともマリア=リヒテンシュタイン嬢を我が嫁に」「が、貴公知っておろう。マリアはビスマルク公の息子ザムザと婚約しておるのだぞ」 主水はルドルフを見上げた。「それも充分承知しております」 主水はキッとして答える。「ほほう、充分だと。どれくらい充分なのかな。では、マリアを掛けて、ザムザ=ビスマルクと対決するかな」 ルドルフは主水の胸を内を探るように尋ねた。「……」「どうじゃ。返事をせい」 その時、宮殿に急ぎ走り込んできたロボットがある。「大帝、こやつが何と言おうと決闘させて下さい」 金髪で、力強い顎、冷徹な青い眼、鷲鼻、おまけに二メートル二〇はある巨身。ザムザ=ビスマルクである。「この東洋の黄色い猿ロボットに、むざむざ婚約者を盗まれたとあっては我が家の名誉にかかわります。大帝、どうか決闘をお許し下さい」 息せききって言うザムザであった。「どうじゃな、主水。もし、この決闘の申し出を受けなければ、東洋の卑怯者として貴公の名は長く残るであろうよ」 ルドルフはひじ掛けに手を当て、足を組み、ゆっくりと言った。主水をけしかけているのだ。「主水、決闘だ」「主水、どうか、私のために決闘しないで。卑怯者と言われてもいいではないの。あなたがいなくなることが恐い」 側にたたずんているマリアが嘆いていた。「決闘しないというならば、私がマリアを殺すぞ」 ザムザがマリアを抱き抱えていた。ゆっくりと剣を抜く。「これ、ザムザ。大帝の前であるぞ。何をしでかすザムザ。恋の嫉妬に目が眩んだか」「いえ大帝、失礼をお許し下さい。ヨーロッパロボットが、この東洋ロボットに辱めを受けたこと、許しがたいのです」「決闘せざるをえないな、ザムザ」 主水がザムザの方をキッとにらみつけ、ゆっくり言った。 決闘場所は、ベルリンから離れた田舎の都市、ハイデルベルグである。決闘の町として有名であった。 決闘場には、多数の観客が詰め掛けていた。スタジアムの真ん中で二人は対峙しているのである。正式な決闘のため、ルドルフ大帝が役人を遣わしていた。 東洋のロボットを見ようと、人々は詰め掛けていたのである。二人の一挙一動にスタジアムから歓声が上がっている。空は決闘日和に、雲ひとつなく晴れ上がり、マイン川からの澄み切った風が二人の体をなでていた。 二人は長い間睨み合っている。「主水、容赦はしないぞ」「ご同様だ。ザムザ」 叫ぶやいなや両者は中央に躍り出た。 最初のひとたちが、主水の額を切った。「おおっ…」 という叫び声が観客から上がる。「ふん、口ほどにもないのう、主水」「あっ」 マリアが眼をつぶってしまった。「マリア、眼をつぶるな、お前の愛しい主水が我輩の手で倒れるのを見ろ」 勝ち誇るザムザ。瞬間、ザムザにすきが生じる。それを見逃す主水ではない。「と-つ」 その慢心の笑みの顔真ん中を主水のムラマサは突き抜いていた。「うわっ…」 観客のさざめきが主水の耳にも届いた。スタジアムは総立ちである。その時、スタジアムに何かが侵入してきた。「ザムザ君」 大きな悲鳴が、主水の後から聞こえた。「この黄色いロボットめが、私の愛しいザムザを…」 主水は、剣を、ザムザの顔から引き抜き、声の主の方へ振り返った。 白馬に乗ったやさ男が、にくしみの青い目で、主水を睨んでいる。怒りのオーラがそのあたりに満ち満ちていた。男はゆっくりと馬から降り、ザムザの体を抱き上げ、ほおずりした。「ザムザ、さぞつらかったろう」 そして、再び、主水の方を向いた。「主水とやら、今度は私が相手だ」 まわりの観衆から、宮廷人々が止めに入った。「お止めください、ロセンデール様。これは正式の決闘なのです」「いや、ならん。この黄色いロボットに一太刀打ち付けねば…」「存分にされよ。受けて立ちましょう」「何をほざく」 それが初めての出会いであった。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(5) 主水は過去を思い出していた。三年前、主水は大帝の前に膝を屈していた。「そちが早乙女主水か。日本からの留学ロボットか」 ルドルフが尋ねた。「さようでございます」 側には心配そうな顔をした、マリアが佇んでいた。「本来ならば、黄色いロボットなど会いたくはないのだがのう」 ルドルフ大帝は主水を見下すようにしゃべった。ルドルフは黄金のいすに座っている。ここはベルリン、ルドルフの宮殿、謁見の間である。 霊戦争後、ヨーロッパの大国となったのは、ルドルフ大帝率いる神聖ゲルマン帝国である。このルドルフの宮殿は、ヨーロッパ各国から贈られた美術工芸品で一杯だという。美的センスにおいてはヨーロッパ一だと思われていて、本人にもそう思っている耽美王である。財宝には眼がないのだ。「おまけに、そちはこのリヒテンシュタイン卿の娘マリア=リヒテンシュタインを嫁に迎えたいというのか」 黙って膝を曲げているだけの主水である。「これ主水とやら、返事をせぬか」 宮殿の誰かが声を掛けた。「さようでございます、殿下。ぜひともマリア=リヒテンシュタイン嬢を我が嫁に」「が、貴公知っておろう。マリアはビスマルク公の息子ザムザと婚約しておるのだぞ」 主水はルドルフを見上げた。「それも充分承知しております」 主水はキッとして答える。「ほほう、充分だと。どれくらい充分なのかな。では、マリアを掛けて、ザムザ=ビスマルクと対決するかな」 ルドルフは主水の胸を内を探るように尋ねた。「……」「どうじゃ。返事をせい」 その時、宮殿に急ぎ走り込んできたロボットがある。「大帝、こやつが何と言おうと決闘させて下さい」 金髪で、力強い顎、冷徹な青い眼、鷲鼻、おまけに二メートル二〇はある巨身。ザムザ=ビスマルクである。「この東洋の黄色い猿ロボットに、むざむざ婚約者を盗まれたとあっては我が家の名誉にかかわります。大帝、どうか決闘をお許し下さい」 息せききって言うザムザであった。「どうじゃな、主水。もし、この決闘の申し出を受けなければ、東洋の卑怯者として貴公の名は長く残るであろうよ」 ルドルフはひじ掛けに手を当て、足を組み、ゆっくりと言った。主水をけしかけているのだ。「主水、決闘だ」「主水、どうか、私のために決闘しないで。卑怯者と言われてもいいではないの。あなたがいなくなることが恐い」 側にたたずんているマリアが嘆いていた。「決闘しないというならば、私がマリアを殺すぞ」 ザムザがマリアを抱き抱えていた。ゆっくりと剣を抜く。「これ、ザムザ。大帝の前であるぞ。何をしでかすザムザ。恋の嫉妬に目が眩んだか」「いえ大帝、失礼をお許し下さい。ヨーロッパロボットが、この東洋ロボットに辱めを受けたこと、許しがたいのです」「決闘せざるをえないな、ザムザ」 主水がザムザの方をキッとにらみつけ、ゆっくり言った。 決闘場所は、ベルリンから離れた田舎の都市、ハイデルベルグである。決闘の町として有名であった。 決闘場には、多数の観客が詰め掛けていた。スタジアムの真ん中で二人は対峙しているのである。正式な決闘のため、ルドルフ大帝が役人を遣わしていた。 東洋のロボットを見ようと、人々は詰め掛けていたのである。二人の一挙一動にスタジアムから歓声が上がっている。空は決闘日和に、雲ひとつなく晴れ上がり、マイン川からの澄み切った風が二人の体をなでていた。 二人は長い間睨み合っている。「主水、容赦はしないぞ」「ご同様だ。ザムザ」 叫ぶやいなや両者は中央に躍り出た。 最初のひとたちが、主水の額を切った。「おおっ…」 という叫び声が観客から上がる。「ふん、口ほどにもないのう、主水」「あっ」 マリアが眼をつぶってしまった。「マリア、眼をつぶるな、お前の愛しい主水が我輩の手で倒れるのを見ろ」 勝ち誇るザムザ。瞬間、ザムザにすきが生じる。それを見逃す主水ではない。「と-つ」 その慢心の笑みの顔真ん中を主水のムラマサは突き抜いていた。「うわっ…」 観客のさざめきが主水の耳にも届いた。スタジアムは総立ちである。その時、スタジアムに何かが侵入してきた。「ザムザ君」 大きな悲鳴が、主水の後から聞こえた。「この黄色いロボットめが、私の愛しいザムザを…」 主水は、剣を、ザムザの顔から引き抜き、声の主の方へ振り返った。 白馬に乗ったやさ男が、にくしみの青い目で、主水を睨んでいる。怒りのオーラがそのあたりに満ち満ちていた。男はゆっくりと馬から降り、ザムザの体を抱き上げ、ほおずりした。「ザムザ、さぞつらかったろう」 そして、再び、主水の方を向いた。「主水とやら、今度は私が相手だ」 まわりの観衆から、宮廷人々が止めに入った。「お止めください、ロセンデール様。これは正式の決闘なのです」「いや、ならん。この黄色いロボットに一太刀打ち付けねば…」「存分にされよ。受けて立ちましょう」「何をほざく」 それが初めての出会いであった。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(5)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2012.01.07
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ロボサムライ駆ける■第56回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(4)「今頃気がついたのですか。そうよ、私はルドルフ大帝の秘密兵器。三人の流体ロボットの一人です」「ロセンデールの頭脳さえあれば、私たちのグループは再建できる。油断大敵よ、主水」「くっ、マリア=リキュール、最後の最後まで私に逆らうのか」「流体ロボットめ、もう一度これを食らえ」 側で見ていた夜叉丸の鉾が、再びリキュールに投げ付けられる。 が、今度は鉾はマリア=リキュールの体を突き抜ける。空気のようにマリア=リキュールは立っている。「これはどうした事だ」 夜叉丸がうめいた。「誰も私を傷つけられないのよ。私の体は特別製なんだからね」「博士、あのロボットは」 横で徳川公廣が足毛布博士に聞く。「ヨーロッパには三体あると聞いておる。異星の生体金属でできたロボットなのじゃ。ルドルフの特殊兵器」 マリア=リキュールはロセンデールの首を取り上げ、髪の部分をつかみ、祭壇から古代大和湖へダイブした。大きな水音が響き、水面を波打つ。「マリア=リキュール、待て」 古代祭壇の上から叫ぶ主水だった。 マリア=リキュールが消えた大和湖を見つめ続ける主水。膝をつき、うなだれている。「主水、どうする。我々の潜水艦があれば追いかけられるぞ」 側で見ていたサイ魚法師が、呼びかけた。「やめてくれ、サイ魚法師。マリア=リキュールを逃がしてやってくれ」 呆然とした顔で主水が言う。理屈に合わぬことを、主水は口走っていた。「しかし、ロセンデールが復活するかもしれんぞ」 なおも、執拗にサイ魚法師は言う。「もういい、サイ魚法師、申し出は有り難いが彼女のことは忘れたい。今はこの目の前のことを収めたいのだ」 主水の目はうつろだ。「すまぬが、ここではお前のいうことはきけん。さらばじゃ、主水」 サイ魚法師は、マリア=リキュールを追って、潜水艦に戻り、湖に潜行する。サイ魚はマリア=リキュールを追うつもりだ。ロセンデールに対する恨みがあるのだ。「頭、いずこへ」 乗組員は、戦いの様子を観戦していたのだが、急に法師が戻ってきたのでびっくりしている。「あの女ロボットを追え」「ラジャー」 潜水艦「水鏡」は急速に潜水する。『まて!まて!マリア、いやリキュールか。いい、どちらでもよい。なかなかよい女ではないか』 サイ魚法師は心の中で考えていた。『無駄ですよ。サイ魚法師』 どこからか、声が聞こえてきた。「そ、その声は…」『私は流体ロボット。この水中では、あなたがたの潜水艦よりももっと早く走れますからね』「ふふっ、物事はやってみなければ気が済まないたちでな、我輩は」『では、勝手にしなさい』「そう、勝手にさせてもらう」(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(4)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2012.01.06
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ロボサムライ駆ける■第55回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(3-2)「それではお相手申す。ロセンデール殿」 夜叉丸の姿が急に大きくなったような気がした。「あやつは、霊人間、このおはしら様より預かった人じゃ」 レイモンが小さく呟く。「ロセンデール、もう後がないぞ」 夜叉丸が呻いた。「まだまだよな、私はまけぬよ。夜叉丸くん」「夜叉丸くん、レイモンを見たまえ」 レイモンをシュトルフがつかまえていた。「君の泣きどころは、レイモンでしょう」「くそっ、ひきょうだぞ。ロセンデール」 ロセンデールが主水の方へ走り込み、主水の首にサーベルの切っ先をつける。「夜叉丸くん、君のような、化け物は私が相手にするより、他の人間に相手させます。わたしの柄じゃない。その前に、主水君、君の生命の流れを止めてあげましょう。私一人が死ぬ訳にはいきませんからねえ」「やめろ」 観戦していた群衆の中から飛び出して来る男がいる。足毛布博士だった。見る間に主水の体に取り付いている。「そいつは私の息子だ」 先刻とは顔色が変わっている。「助けてくれ、お願いだ。変わりに私を殺せ」 主水の上に覆いかぶさり庇う。ロセンデールに対して睨みをきかす。「おやおや美しい親子の愛情ですねえ。だが、足毛布博士、主水君一人を助けたところで流れは変わりませんよ」 ロセンデールは二人をコバカにしている。足毛布博士は、ロセンデールのしゃべりを聞きながら、気付かれぬように、主水の胸のある一点を、指で押していた。 嘘のように、主水の意識が回復する。渾身の力がみなぎって来る。どうやら、どさくさに紛れて、足毛布博士は主水の体にある、足毛布博士しか知らぬ回復点を押したようだ。「足毛布博士、おどきください。あなたを殺す訳にはいきません。あなたはこれからのヨーロッパ奴隷ロボット制確立にかかせない方ですからね。主水君をやれば、後の反乱ロボットは烏合の衆です」「できるかな、ロセンデール卿」 足毛布博士がにやりと笑い、主水の体から撥ね跳んだ。 主水が、クサナギの剣を力強く掴み、すっくと立ち上がっていた。「主水くん、き、君は」 あまりのことに驚くロセンデール。瞬間、ロセンデールに隙が生じる。「と…っ」 渾身の力を込めて、主水はクサナギの剣を振り下ろす。クサナギの剣が、ロセンデールの首と胴をみごと切り離していた。 鮮血が飛び散る。ロセンデールの赤い血が、祭壇に花のように咲いたのだ。 そんなばかなという顔を、ロセンデールはしてよろけた。ゲルマンの剣は手からゆっくり離れ、床に突き刺さる。「ロセンデール、仕留めたり」 主水が叫ぶ。右手高くクサナギの剣が差し上げられている。 が、ロセンデールの首が床に落ちる一瞬、拾いあげた者がいる。マリアだった。「う…」 人々の間からどよめきが上がる。皆が知らない間にマリアではなく、マリア=リキュールが復活していた。「マリア=リキュール、お前、流体ロボットか」 主水が信じられないものを見るように言う。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(3)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2012.01.04
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ロボサムライ駆ける■第54回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(3)「マ、マリア」 主水は倒れて身動きできない。「ああ…、マリア…」「ねえさん」 思わず、鉄が倒れたマリアの方に走っていく。マリアの体に触る。その時、鉄の脇腹に何かが突き刺さった。電磁ナイフである。そのナイフは、マリアの手から鉄の腹に深々と突き刺されたのだった。「うっ、ま、まさか、ねえさん」 信じられないものを見たような鉄。「そうです、今頃気がついたのですか」 マリア、いやリキュールは、ゆっくりと起き上がる。「今までのすべての情報はそれじゃ…」 つぶやく鉄。膝をつき、苦しげに鉄はマリアを見る。「そうです、私リキュールがロセンデールに伝えてたのです」「そ、それじゃ、あんまり主水のだんながかわいそうだ」「黄色いロボット風情から、そんな言葉は聞きたくないですね」 リキュールは、「それから、私を姐さんと呼ぶのも気に食わないのです。私の嫌いな黄色いロボットからねえ」 と言い置いて、握っている電磁ナイフのつかをぐっと押した。電磁波が鉄の体を貫く。ビクッビクッと鉄の体が動く。恨めしげに鉄がマリアの顔を見上げる。「ねえさん、そいつはあんましだ…」 鉄の下半身が吹き飛んで転がる。「鉄…」 主水が唸る。「夜叉丸、マリア=リキュールを倒せ」 観客の中から声が上がる。 レイモンが夜叉丸に命令していた。「御前、わかり申した」 夜叉丸が、背中から「鉾」を引き抜いて、祭壇に立っていた。「異国の女ばら、私が退治してくれよう」「ほほう、魔道師風情が何をおっしゃる。私の腕をとくとごろうじろ」「マリア」 倒れた主水が、とぎれとぎれにしゃべる。「ふふん、気安くお呼びでないですわ、このアジアの黄色いロボット」「お前…」 冷や汗がしきりと主水の顔を流れ落ちる。「ふふ、そのとおり。彼女リキュールは、昔から我々聖騎士の一員だったのですよ、主水くん」 後ろから、リキュールの肩を抱き、ロセンデールが勝ち誇って続ける。「貴様、先刻…。くそっ、背後で糸を引くのは、やはり、ルドルフ大王か」「陛下を、呼び捨てにしないでください!」 ロセンデールのハンサムな顔は赤くなる。「そうよ。ルドルフ大王は、ユダヤの血と黄色い血が一緒になって、白色帝国を脅かされるのを嫌っておいでなのよ」 リキュールは吐き捨てるように言った。「夜叉丸、薬を投げろ」 レイモンが夜叉丸に、自分の薬タンクを示した。「ですが、御前」「よい、このさいじゃ。後は何とかなろう。心柱をあやつらヨーロッパ勢に取られては後の祭りじゃ。まず、わしの体をより、あやつらを倒すことじゃ」 レイモンも青い顔をしていた。「それでは、御前、許されよ」夜叉丸は、そう叫び、レイモンの背中に張り付いている薬タンクを掴み、最上段から投げ降ろす。「やーっ」 夜叉丸が、落合レイモンの薬をばらまいた。祭壇は薬のほこりでまいあがっている。「ロセンデール、ここは私にまかせて。この夜叉丸とかと、勝負します」「OK、リキュール、君にまかせよう」 ロセンデールはしりぞいた。 夜叉丸とマリア・リキュールが対決していた。「マリア・リキュールとやら、私の鉾は特別なのだ」 夜叉丸は無表情に告げる。「ほう、どこが特別なの。聞かせてほしいわね」「それはこうだ」 夜叉丸が、力を込めて鉾を投げる。意外な展開だった。「何よ、これは」 目の前の出来事をマリアは信じられぬ表情で見る。鉾は、十倍に膨らみ突き抜ける。一瞬マリアの体をばらばらに吹き飛ばしていた。「ま、まさか」 ロセンデールが一瞬青ざめた。「日本古来の鉾。この古代都市では、古来から、皆様方の霊気を集めて膨張する」 冷徹に夜叉丸が言う。「そうじゃ、今回はわしの薬で膨張させたのじゃ」「くそ、マリア=リキュールの敵、私が貴様を倒してやる」 主水は祭壇の所で倒れたままだ。 主水は無視され、最壇上はタッグマッチの様相を呈している。「夜叉丸よ、お前の本当の力をお見せしろ」「よろしいので、レイモン様」「よいよい、少しは皆を驚かせてやれ」 レイモンは甲高い声で言った。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(3)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
2012.01.04
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ロボサムライ駆ける■第53回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(2)「この古代の神殿祭壇の上が勝負どころぞ」 主水は叫んでいた。「舞台にとって不足なしですね。わたしはこのゲルマンの剣で戦います。我が神に祝福あれ」 ロセンデールの顔も晴れ舞台での戦いであり、上気している。青い目がキラリと光る。 大空洞の外から、急に稲光がひらめく。ガーンという言葉が後から響いて来た。「主水君、貴公をこの刀のさびにしてくれましょう。それはとても名誉なことですよ」 ロセンデールは誇りを旨に、戦いに望んでいる。 電磁サーベル、ゲルマンの剣を抜き放つ。 再び、稲光がひらめく。光が回りに満ちた。 剣からは、またクサナギの剣とはことなる威力がある。「この戦い、望むところ。クサナギの剣の力、お見せする」 主水も、剣を抜く。ぴしーん霊気が放たれた。「だ、旦那は大丈夫ですかね、ねえさん」 鉄は、びびって隣にいるマリアに尋ねる。マリアは普通に戻っていた。「私にだってわかるものですか」 ロセンデールはマリアの方を見てにこりとする。「主水君、君が倒れれば、レイモンもマリアも刀のさびにしてあげましょう。心して打ちかかっていらっしゃい。私は、我が聖騎士団の者ほど、腕は甘くはありませんよ」 サーベルがビュウと唸った。 ロセンデールは、ヨーロッパの剣技大会でもトップレベルの腕だといわれている。 サーベルは突きが基本といわれているが、ロセンデールの技は単調ではない。なぎ、払うもテクニック中に含まれている。 おまけに手にするは、ゲルマンの剣。古来より伝わる名剣。神聖ゲルマン帝国の守り神である。 戦いは思わぬ方向に進んでいる。主水は防御の構えに入っている。ロセンデールが攻勢なのだ。 レイモンにしても、マリアにしても気が気ではない。「えーい、主水ったら、肝心なときに剣技がさえないのですから、だらしがないですわねえ、どうしたのですか」 味方のマリアがいらだち、罵声が飛んでいた。「うるさい、マリア。サーベルに対しては、お前ほどではないんだ」 そういった主水の頭がグラリと揺れる。視覚装置がおかしくなった。体のバランスが取れない。「ウ、いかん…」 どうしたことか、主水の持病が肝心なときに出てしまった。「いかん、この大切な時に」 足毛布博士が額に手をあてる。主水の様子に足毛布博士が気付く。「主水の様子いかがいたしました」 徳川公廣が尋ねる。「例の病気がでよった」「えっ、こんなときに……」 徳川公が唸る。 主水に、意識の空白が襲ってくる。「どうした、どうした、主水君」 ロセンデールがニヤリと笑っている。「私の腕に恐れを感じたのかね」 主水はふらふらし、ゆっくりと右腕が止まってしまう。 意識がフェイドアウト。 その姿のままで、主水はぎこちなくバッタリと神殿の床に倒れた。が、クサナギの剣は、手に握られたままである。「ほほっ、口ほどにもない人ですね。主水君」「主水、危ないわ」 後ろからマリアがすくっと立って、自分の愛刀サーベル「ジャンヌ」を手にしていた。「いい、ロセンデール卿。ヨーロッパの恨みをこの日本で晴らします」 マリアの顔はキッと厳しくなっている。「おやおや、麗人マリア君。美しい愛の世界の姿ですねえ。が、所詮君は女ロボットです。現在のヨーロッパチャンピオンの私を倒せるとお思いですか。ふふっ、おまけにこれは、ゲルマンの剣ですよ」「それは勝負してみてからいってほしいですわね」 ロセンデールはあることに気付く。「そうだ、マリア君、私の目をよく見てごらんなさい」 ロセンデールが声高かに叫んでいた。悪魔の表情である。「いかん、マリア。ロセンデールの目を見るな」 主水はロセンデールの狙いに気付く。ころがり、のたうつ主水は、マリアに叫んでいるつもりだ。が、いかんせん、その声は今マリアには届いていない。「まずいのう。マリアの別の人格が浮上するかもしれん」 徳川公がポツリとつぶやいた。 マリアは別人になりつつあるのだ。観戦している人々からどよめきが起こる。「別の人格ですと」 今度は足毛布が尋ねる。「そうなのです。マリア=リキュール=リヒテンシュタインは二つの心を持つロボットなのです。もう一つの心はリキュール。マリアの肉体にあるもう一人の人格」 徳川公はボソボソとしゃべる。「こんな時に…」 ロセンデールの剣が、あっという間にジャンヌの剣をたたきわり、続いてマリアの胸を貫く。「うっ」 と叫ぶ。「マ・リ・ア」 主水も叫んでいる。 ロセンデールは、ゲルマンの剣を、瞬間抜き取る。 どっと祭壇上に倒れるマリア。剣はマリアの中枢をついていた。「ふふん、マリア君も口ほどにもありませんねえ。手応えがありませんねえ。折角の、こんな晴れ舞台なのにねえ」 ロセンデールはゲルマンの剣をビュウと振った。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2012.01.03
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ロボサムライ駆ける■第52回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(1-2)「クサナギの剣じゃ。あれを持つ者は、この国の歴史を変革できると言われておる」 落合レイモンが唸った。「心柱があれを出現させよったか」 レイモンはしきりに感心している。「クサナギの剣をつかうのは、ロボットでも構わぬのでございますか」 徳川公が、落合レイモンに心配そうに尋ねる。「ロボット、人間の区別はない」「主水、どうじゃ。あれを抜いて、ロセンデールと戦え」 徳川公廣が言う。「が、お上、もし拙者に抜けますでしょうか」「あの剣が出現せしこと、まさに、お主が選ばれし者という証拠よ」 祭壇の剣を主水は触ろうとした。逆に剣の方から近づく感じがした。「これは一体…」 主水はその感覚に驚いてしまった。ひょっとして私のICチップには、秘密が。あの運命の七つの星とかいう、意味不明の言葉が何を意味しているのか。剣にもう一度触ることが恐かった。「さあ、もう一度、早く、刀を引き抜いてみよ、主水」 足毛布博士が呼びかけていた。『俺からの心からの贈り物を、主水恐れることはない。そちが、『運命の七柱』の一人ならばな…』 ゆっくりと主水はクサナギの剣に触る。手が剣に巻き込まれた。そんな気がした。剣と主水の手が一体化していた。 ずぶりと、剣は祭壇から抜かれる。その瞬間、剣からまばゆい光が射した。「おう…」 ため息ともつかぬ声が見守る人々から漏れた。 主水はクサナギの剣を高々と持ち上げた。主水の胸の真ん中がキラリと光った。「早乙女主水、このクサナギの剣にて戦いもうす」 同じ時、知恵の胸にも同じようにキラリと光った。「こ、これは…」知恵は回りを見渡す。誰も気付いていないようだ。「俺も運命の七柱の一人なのか…」「いや、旦那の晴すがた、かっこいいねえ、ねえさん」 が、鉄がみたマリアの眼は異常になっている。マリアは黙ったままだった。鉄は何かそら恐ろしいものを見た気になって、目をそらした。このマリアの急変の様子には、誰も気付いてはいない。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2012.01.02
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ロボサムライ駆ける■第51回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■第七章 血闘場(1)「だんな大丈夫ですかい」 なつかしい声が主水の耳元に響いた びゅんびゅんの鉄が急に現れていた。「ありゃ、徳川の殿様もおられる。これりゃ、殿様は誘拐されたんじゃなかったんですかい」「今、解放されたのじゃ」「じゃ、あっしは、今から殿様を介抱しますってね」 笑いをとろうとした鉄だったが、まわりの白い目に気付く。そういう雰囲気ではない。「おまえ、どうやってここへ」「へへぇ、だんな、上空をご覧なさいよ」 飛行船が、主水の視界を占めていた。地下空洞の天上部が抜けて、空が見える。「おおっ、心強いぞ」 徳川公国空軍「飛天」及び「高千穂」号が降下してきていた。「この殿様がね、心配して後からこれで追えっておっしゃったんで。おまけにロボット旗本組も乗せてきやしたぜ。いやっ、殿様って先見の明がおありだ。が、敵に誘拐されちまってのがどうもね」「もう、鉄さんたら、いいかげんにしなさい。ああっ、主水、大丈夫なの」 マリアも続いて降りてきた。主水の腕の中に飛び込んで来る。 大きな空洞がこの地下古代都市のうえにうがかれていた。「おお、あんな大きな穴がいつできたのじゃ」 主水が抱き着くマリアに尋ねた。「私達の方もびっくりしたわよ。急に近畿新平野の中心が陥没するのですもの」「この飛行船のレーダーが、とらえやしてね。早速に駆け付けてきたってわけでさあ」「ところで、ロセンデールはどこなのですか」 マリアが尋ねた。彼女の緑の瞳は復讐に燃えていた。「先刻、逃げ出しおったのじゃ」 そういう二人の前に、上空に、神聖ゲルマン帝国のバイオコプターが現れている。背後には聖騎士団が続々と現れていた。「主水君、逃げた訳ではありませんよ。古代都市が現れるのを待っていたのですよ」 バイオコプターから、ロセンデールの顔が見えた。「ロセンデール、ひきょうだぞ。一対一の勝負だ。降りて来い」「ふふん、日本のロボット風情に卑怯物と呼ばれるのも豪気ですね。その挑戦にのりましょう」「よろしいですか。他の方は手出ししないでください」 ロセンデールは同じバイオコプターにいるクルトフらに告げる。「しかし、殿下」 クルトフが難色を示す。「よろしいのです。私のいうようにしてください」「もしか、お負けになれば……」「クルトフ君、そんなわけがないでしょう、私が日本のロボットに負けるなんて」「主水どの、大丈夫ですか」 反乱ロボットの長、山本一貫が心配そうにいう。「まかされよ、この早乙女主水の一世一代の見せ場でござる」 ロセンデールが、バイオコプターから降りて来た。 が、シュトルフが率いる後続のバイオコプター部隊は攻撃の間をはかっている。「クルトフ様、念には念を」 シュトルフの声がクルトフに聞こえる。「シュトルフ君、心強い言葉ですねえ。後詰めは頼みましたよ」「お任せあれ。クルトフ様」「主水よ、神殿の中に隠れている剣を取るのだ」 足毛布博士が叫んでいた。足毛布博士の表情が急変していた。「よいか、主水。お前のICチップは特別に選ばれたロボットにしか使われないチップだ」『そうか、足毛布博士。あやつが、早乙女主水が我々の探している運命の七柱の一人のロボットなのか』 急に心柱が足毛布博士に言葉を投げていた。「そうです。みはしら様。あの主水が古来から伝わる伝説の石を、心に使ったロボットの一人なのです」 足毛布博士が丁寧に答えた。『そうならば、私めも手助けせねばなるまい』心柱が言葉を続けた。 神殿の床の真ん中から、棒のようなものが突出する。「おおっ、あれは一体」 人々が驚く。(続く)■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(1)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2012.01.01
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