定例の内閣官房長官会見で「事実に反する質問」があったなどとして、昨年12月末に首相官邸の報道室長から東京新聞の特定記者の質問を事実上封ずる申し入れが内閣記者会に行われたことが大問題になっています。12日の衆院予算委員会で、追及された菅義偉官房長官は「事実に基づかない質問に起因するやり取りが行われる場合、内外の幅広い視聴者に誤った事実認識を拡散させるおそれがある」などとして正当化しました。
野党議員が「事実に基づかない報道は問題だが、事実が分からないから取材する。事実に基づかない取材を封ずるのは、取材の自由、表現の自由、国民の知る権利を封じることになる」(国民民主・奥野総一郎議員)と批判したのに対し、菅氏は「取材じゃないと思いますよ。決めうちです」と、語気を強め言い放ちました。
しかし、まさに事実を確かめるのが取材であり、事実が分からないから取材するのです。とりわけ、権力が国民に対し隠したがる事実を追求して明らかにするのが政治報道の本質です。それを通じて国民の知る権利に奉仕し、民主主義を実現する不可欠の存在として報道機関には特別の役割があるのです。
内閣記者会への申し入れ文書では「正確でない質問」がヤリ玉にされています。「事実に基づかない取材」「正確でない質問」は「取材じゃない」という権力者の議論がまかり通れば、およそ政治取材は不可能です。恐るべき安倍政権のファッショ的体質を示すものです。
ことの発端は、昨年12月、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設の海域で県民世論を踏みにじって土砂投入がされる中、東京新聞の記者が「埋め立て現場では、赤土が広がっており、沖縄防衛局が実態把握できていない」と質問したことです。官邸は「明らかに事実に反する」とか「汚濁が広がっているかのような表現は適切でない」などとしていますが、赤い土を載せた船が確認され、無人機による空撮でも埋め立て海域が濁っている様子が確認されていました。一方、防衛省は現在も、投入された土砂に赤土が混入しているかの成分検査を行っていません。事実を解明する責任は国の側にこそあります。
新基地建設反対の県民世論、無法な土砂投入への国民的批判に追い詰められる中、さらなる批判を恐れる安倍政権が、強権をむき出しにする姿が浮かび上がります。
そもそも安倍政権は、国民に対し事実を隠す政権です。安倍首相が12年に政権復帰して最初に強行した立憲主義破壊の立法が秘密保護法でした。何が秘密かも秘密とされ秘密と指定された外交、防衛に関する情報の探知行為が広く処罰され、取材の相談も「共謀」罪として処罰されます。国民の命運にかかわる情報を、重罰の威嚇の下に報道機関からも遠ざけているのです。
事実が隠された状態で「事実はどうなのか」という質問が封じられるなら、まさに暗闇社会となってしまいます。これ以上の安倍政権による立憲主義破壊、民主主義破壊の暴走を許さないたたかいを広げるときです。(中祖寅一)
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