

私は乗馬経験があるが、ラクダも乗った高さは馬ぐらいで思ったよりは低い。エル・オレンス(=アラビアのロレンス。 神坂智子『T・E・ロレンス』
に出てくる)気取りで背筋を伸ばすと、遠く広がる朝の砂丘がよく見渡せた。ラクダの頭には毛がまばらに突っ立つように生えている。まつげは黒くて長い。歩く途中でオシッコやフンをするやつもいたが、フンはウサギやシカみたく、丸でコロコロしている。
涼しい朝の空気を吸いながら 月牙泉
の近くまで、砂丘と砂丘の間の、ちょっと緑のあるところをたどってゆく。中央写真は、自分の影を撮ったもの。右写真は、まぶしすぎてハレーション気味だが、我らがラクダ隊の影が左下に写っている。私のラクダは最後尾だったので、後ろを振り返ると誰もいない砂丘が広がり、急斜面の、朝陽に照らされた部分と影の部分とが、くっきりしたコントラストですばらしい。前の方を行く数頭のラクダには首に鈴がついていて、それが一つ一つ微妙に違う音色でカランコロンと素朴に鳴り、辺りの静寂に吸いこまれてゆく。


左は、月牙泉参観券の表と裏。珍しくプラスチック製。表にあるような建物は昔の想像図だろう、見当たらない(右画像)。裏には「敦煌県から南へ16キロの鳴沙山脈に三日月型の泉がある。熱い風が吹いても砂に埋もれることなく水深は深い。青緑色を保ち格別に甘い味わいが特徴。古くから多くの美しい伝説が語り継がれる人気スポット」などと書いてあるようだ。
裸足になり、その斜面に挑戦した。足に触れる砂は少し暖かい程度で心地よい。ただサラサラと崩れてゆくので、一足ごとに足首まで埋まる。斜面の傾斜もずいぶんきつい、30度かそれ以上あるのでは? 砂がどんどん崩れるので、振り返ると巨人でも歩いたような大きな丸い足跡?が点々と続いている。どうにもならないほど息が切れてきた。立ち止まり、また登り、砂の中に手をつき、あえぐ。登れば登るほど砂の壁は私たちの前で大きくなり、その彼方に見える真っ青な空は遠のいてゆくように感じる。
Nと添乗員Wさんがギブアップした後も、Mと私はなりふり構わず登り続けた(右写真)。砂の感触が快いのだけが慰めだ。