教育再生会議の第二分科会による「親学」提言についての毎日新聞の記事
しばらく教育問題日記が続いております。
私はあの「提言」が嫌です。
それは、「押し付け」だから、「家庭の問題に国が介入するから」ではありません。
それ以前の問題として、議論の粗雑さとまとめ方のイイカゲンさが嫌なのです。
「提言」を出そうとするきっかけとなった、 4月17日の議事要旨
を読むと、
この日の分科会では、最近の脳科学から子どもの発達上の課題や働きかけ方を理解しようというヒアリング(=学習会)と、親学のヒアリング(=学習会)が行われています。
で、委員さんたちは感想を述べ合っていらっしゃるわけです。
「親学」の提言内容は、毎日新聞の記事を読む限りでは、
4月17日の分科会内容だけでなく、それ以前の分科会の討議内容も踏まえてはいるのですが、
かなりの比重で4月17日に話された内容が盛り込まれています。
「母乳」も「子守唄」も「5歳からは長時間TVを見せない」も「観劇」も、
「思春期からは自尊心が低下しないようつとめる」も、
この17日の分科会での発言が反映されていますから。
私の中のアラームが鳴るのは、この4月17日の分科会の議論が、
「脳科学」から得られた発達に関する知見をもとに展開されているということにあります。
「授乳中にTVをつけない。5歳からは長時間TVを見せない」や、
「幼児段階であいさつなど基本の徳目、思春期前までに社会性を持つ徳目を習得させる」
などという妙に細かい指摘は、この「脳科学」から得られた知見に基づくものなんですね。
「親学」のヒアリングのレジメにも、
「脳の発達段階に応じた関わり方」という項目がありますから、
「脳科学と発達」がこの日の分科会の基本路線だったのではないかと考えられます。
このヒアリング(=学習会)の成果に
委員それぞれの身近な体験に基づく
情緒的な感想が、この「親学」提言の骨子なのではないでしょうか。
で、これって、
私は思います。
「子どもの発達」を科学的にとらえようとする試みは、
教育学でも心理学でも精神医学でも、
20世紀の間にいくつもの理論が立ち上げられ、
先駆者の知見が後進の研究によって
強化されたり否定されたりまた見直されたりしてきました。
「脳科学」に基礎を置こうとする「発達論」も、
一つの(現在の)流行、と考えておく必要があります。
絶対視することはできません。
もちろん、
「子どもの成長・発達の吟味検討―脳科学的基礎を中心に」というテーマで
ヒアリングをなさった、安彦忠彦早稲田大学教授も
ご自身の論を絶対のものとして提起なさっているわけではないでしょうし、
「脳科学と乳幼児期の教育について」というテーマでヒアリングをなさった、
津本忠治独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターユニットリーダーは、
配布資料のまとめの最後で、
「こころの問題を脳科学的に理解し、解決法を見出せる可能性が出てきたが、子育てや教育への応用にはさらなる脳研究が必要」と書いておられます。
(ご存知のとおり、教育再生会議の座長、野依良治先生は、この独立行政法人理化学研究所
の理事長ですが・・)
けれども、これらの科学的見地に、情緒的な感想が加わると、
実感に科学的裏づけがついたように錯覚してしまいがちです。
科学的裏づけを得たと錯覚してしまう、というのは、
客観的で、個別の事情を超えた普遍的な一般性があるかのように見えるということ、
だと私は考えます。
そして、「錯覚」はあくまでも「錯覚」にすぎません。
「子育てに悩む親が多い」「子どもの育ちがかわり、子どもが変わってきた」
「保護者が変わってきた」という実感は、多くの人が持っていると思いますが、
その実感は、実は立場によって異なっているはずです。
分科会の各委員にしても、経験も生活圏も異なるのですから、
どのような経験に基づいてそれぞれの実感が生まれてきたのか、
その検証を抜きにして一般化するのは非常に危険な行為だと思います。
けれども、科学的な根拠があるかのように見えると、
検証せずとも「実感」を「科学」と結びつけることがたやすくなります。
現状の実感だけでなく、「解決方法」の「実感」も同様に、
無批判に一般化しやすくなります。
もしかしたら、その「実感」は、「実感」を感じている人の文化的な制約を受けた
ステロタイプにすぎないのかもしれないのに。
さらに、「親学」提言の骨子に腹が立つのは、議事要旨にみられる感想披露大会から、
恣意的に拾い上げた項目でなりたっているように見えることです。
けれど、ここから先を批判するには、正式発表を待つしかないですよね。
毎日新聞の記者の受け取り方、取り上げ方にもバイヤスがかかっていないとは言い切れないのですから。
ちなみに、教育再生会議のホームページには、
4月26日の第二分科会配布資料と議事要旨
が、UPされました。
残念なことに、発言者のお名前は掲載されていません。
4月17日の会議の分は発言者の委員のお名前が書かれていたのに。
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