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ヒロへ 私は今日、はじめてあなたに手紙を書いてます。なかなか言い出せないこと、逢って話すにはチョッと勇気がいることがあるので手紙を書くことにしました。 私がこの街にやってきたのはヒロに出逢う一月くらい前です。実は私には以前、お付き合いをしている人がいました。高校時代の同級生で、二年生の時からのお付き合いでした。彼は高校を卒業すると大学に進学し、遠い街へ行ってしまいました。離れていても気持ちは一つだと私は信じ、会えない時間がさらに私の心を彼へと向けました。だけど彼は違いました。次第にこちらからは連絡が取れなくなり、ついにサヨナラを告げられました。 彼は向こうで新しい恋を見つけたそうです。 私はたくさん泣きました。泣き続ける日が何日か過ぎました。でも、いつまでもこのままじゃいけないと思い、気持ちを切り替えるために勤めていたお店を辞めてこの街へとやってきたのです。今のお店は前のお店からの紹介です。とても忙しいお店です。 私は今まで以上にがんばってお仕事をしました。そして心の中から少しづつ彼が消えてゆき、泣いて過ごしていた日々もいい思い出だと思うようになれました。そんな時にヒロに出逢ったのです。 私はこの街がとても気に入っています。お店のオーナーはいい人だし、お客さん達も気さくであたたかい人ばかりです。この街はまるで私をやさしく包んでくれているような雰囲気を持っている素敵な街です。 そして、この街にはあなたが居ます。「コインランドリーが出逢いの場所なんてあまり人には自慢できないね」ヒロはたまにそう言って笑いますね。でも私はそうは思いません。出逢った場所や切っ掛けなんてどうでもいいんです。 ヒロはとても前向きで、私はいつも刺激を受けています。お仕事の話をする時のあなたの瞳が私は大好きです!まだお互いにお仕事をしている姿は見ていませんね。でも私はあなたが汗を流して働く白衣姿を勝手に想像しています。 休みが合わないから昼間は一緒に過ごせないのがチョッと寂しいけど、お仕事が終わった後のほんの束の間のデートが今の私には、とっても幸せな時間です。 私は特別可愛いわけではないし、これといった取り柄もありません。だけど早く一人前の美容師になって自分のお店を持ちたいという夢はあります。そしてヒロと一緒にお互いの夢を話している時間がたまらなく愛しいんです。 ヒロと出逢ってもうすぐ一年、この街で暮らす切っ掛けになった過去の失恋をあなたに話そうかずっと迷っていました。この手紙が私の気持ちの全てです。 こんな私でよかったらこれからも宜しくおねがいします。 ヒロミ 「これ、あとで読んでほしいの……」ほんの少し前、別れ際に渡されたヒロミからの手紙。僕は部屋に戻るとすぐに封を切った。手紙を読み終えたあと、心を暖かい何かに包まれたような気がした。こんな感情は初めてだ。僕は、たまらなくヒロミの顔が見たくなり彼女に電話した。 「手紙、読んだよ。読んだらどうしてもヒロミに逢いたくなった。これから行ってもいいかな……」 「……うん」 僕は、はじめてヒロミの部屋で朝を迎えた。 fin ※このお話はk-pan chefの創作によるフィクションです。最後まで読んで頂き有難うございます!
2009年10月25日
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もちろん、エーちゃんのことである。もちろんなんて言ってしまったが知らない人もあろう。日本のロックシーンに燦然と輝く「矢沢永吉」は今年で六十歳、世で言うところの還暦を迎えたのである。「えー、矢沢は今年で三十になりまして……」昔見たエーちゃんのライブドキュメント映画「RNU&RUN」の中で彼が言ったのがもう三十年前かよ!あの頃のエーちゃんはもちろんメッチャかっこよかったけど、先日ドームで行われたライブは物凄かった!BS放送されたのを録画して、あれから毎日見ている。声は出るし、動きも全然衰えていない。あのパワフルなライブを見てからオイラの中で何かが変わったような気がする。オイラはエーちゃんと同じ干支、ちょうど一回り下なのである。負けちゃあいられないのである!ロックンロール最高ー!エーちゃん最高ー!
2009年10月13日
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毎日仕事に追い回されている見習いコックの僕「ヒロツグ」に大きな心の支えが出来た。料理の世界に入ってからは無我夢中で仕事以外の事は考えられ無かったけれど、ふとした切っ掛けから気持ちを許せる彼女が出来たのだ。深夜のコインランドリーで椅子から転げ落ちそうに居眠りをしていた僕を見かねて起こしてくれたのが彼女「ヒロミ」だった。 美容院に勤めるヒロミは見習い美容師。僕たち二人は同じ見習い同士で、すぐに打ち解けあい、自然に付き合いが始まった。 最近、シェフは僕が変わったという。「なあヒロ、お前最近仕事に身が入ってきたな!前より全然動きが良いよ。その調子でこれからも頑張りな!」 「ヒロちゃん、最近お客さんに対する顔がとても優しくなったわね」ヒロミもオーナーにそう言われたらしい。 自分では気がつかなかったけれど、大切な人が出来たという充実感が仕事に対してもいい影響を与えてくれるようだ。 高校生の時から僕は今の店で皿洗いのアルバイトを始め卒業後、そのまま就職した。シェフは仕事に対しては厳しいが人間味のあるとても魅力的な人で僕の憧れだった。しかし、シェフは僕がこの店で見習いとして働きたいとお願いした時には良い返事をくれなかった。 「コックとしてこれから身を立てたいのならもっと大きな店で仕事にも人にも揉まれないとダメだ。ここで身に付けられることはたかが知れている」そう言われたが、僕はどうしてもシェフの下で働きたくて何度もお願いした。「じゃあ三年、長くても五年。期間限定で俺がみっちり 基礎を仕込んでやる。その後は俺の伝手でどこか探してやるから、そちらで頑張りなさい」そんな経緯があったのだ。 僕のキャリアはもうすぐ二年になろうとしている。シェフが言ってくれた言葉が今では何となく解かる様になってきた。仕事に慣れてくるともっと上を目指したくなり、違う調理場も見てみたくなってきた。もう少し頑張ってシェフの仕事を身に付けたら僕はこの店を卒業しようと考 え始めている。 ヒロミにそんな僕の思いを話すと大いに賛成してくれた。彼女もオーナーに同じようなことを言われる時があるみたいだ。「私だって何時までも今のお店に居ようとは思ってないの。一度は都会の、流行を追っているようなお店で働いてみたいもの!」 僕もヒロミも勤めているのは個人経営の小さな店。会うのはいつも夜の営業が終わった後だけど寝不足などで店に迷惑をかけられない。深夜の短いデートのあと、それぞれのアパートに戻る。「見習いのうちは仕事を優先にした付き合いをしよう」二人で交わした約束だからほんの短いデートでも今は我慢をする。 二人は会うと好きな音楽や映画などの他愛の無い話もするが、日々接している仕事の話になることが多い。いくら好きで始めた仕事とは言え、愚痴りたくなることもある。お互いに愚痴話の時には自然と相手の聞き役に徹し、新しい仕事をおぼえた時や苦手な仕事をクリアした時などは自分の事のように喜び合ったりする。 僕らは掛け替えの無いパートナーを得て、少しづつだが前に向かって歩いているんだ。 fin ※このおはなしはセルクルシェフの創作によるフィクションです。
2009年10月06日
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我が一年B組の高校生活初の文化祭の出し物が模擬店に決まった。「それじゃあ、メニューは無難にカレーライスでいいですか?」進行役がこれまた無難に話を進める。「カレーライスだったら、うちの近所にあるカレー屋さん、とても美味しいんです!お店のレシピは教えてくれないと思いますけど、私たちでも簡単に作れる美味しいカレーの作り方を聞いてみます 」 (あっ、またあのお節介女がしゃしゃり出てきやがった)僕は心の中でつぶやいた。チョッとくらい可愛いからって、みんなチヤホヤしすぎだっつーの!だからつけ上がるんだよ! 「あのー、僕がバイトしてるレストランのハヤシライスもチョー美味いっすけど!」(あっ、またやっちまった……)あいつがでしゃばると、僕はよせばいいのについつい対抗してしまう。 「おっ、また始まりました!1B名物、委員長と副委員長の対決!」クラスのみんなは僕らのそんなやり取りをいつも面白がっている。ちなみに委員長はあいつ、副委員長は僕。クラス委員の肩書きは担任が勝手に決めたもので、僕らの学力とか、中学の実績とは全く関係が無く、厳正なる気まぐれで決めたそうだ。 「それじゃあ、模擬店のメニューはカレーライスの他にハヤシライスを追加して、ハーフアンドハーフっていうのはどうだ?それでさあ、お客さんにどっちが美味しかったか判定してもらうなんてのは面白くねーか?」 「うん、それいいね!賛成!」みんなの拍手が教室中を支配する。僕らの担任がいらぬ提案をしてくれちゃたから面倒な展開になってしまった。 「委員長と副委員長の文化祭対決が思わぬ形で実現しました!当然の事ながら、調理責任者は言いだしっぺのご両人でよろしいですか?」お祭り好きの進行役が少し興奮気味にみんなを煽り立てる。 「意義なーし!」みんな大盛り上がりでこれは僕とあいつでやるしかなさそうだ。よし、腹を決めて今度こそあいつに勝ってやる! あいつは余程自信が有るのだろう、僕を見てニヤっと笑いやがった。くそー!憎らしいんだよ!見下したようなその不敵な笑顔!でもやっぱりチョッと可愛い…… 僕とあいつは中学からの同級生。家も割りと近く、小学校は違うけど存在は知っていた。 中学一年から三年間同じクラスになり、何の因果か一緒の高校を選び、またもや同じクラスだ。そして悔しいけれど何をやってもあいつの方が一枚上手、だからつい僕の対抗心に火が付いちゃうんだ。 高校生になって約半年、クラスも大分まとまり始めてきた。店作りはみんなのアイディアを出し合った結果、昭和レトロ調に落ち着いた。日本の洋食の原点と言えるハヤシライスとカレーライスを昭和チックな雰囲気で食べてもらおうと言うのがコンセプトだ。 ハヤシライスチームは僕のバイト先のシェフにレシピを伝授してもらった。教わったのは市販のデミグラスソースを利用した簡単に出来る物だったが結構本格的な味で自信作に仕上がった。カレーチームのあいつにも試食してもう。 「えっ?これが市販のソースを使って作った味なの?すごいじゃない!めっちゃ美味しいよ!敵ながら天晴れね」生意気なんだけどあいつの良い所は意地を張らず、素直に自分の気持ちを伝えることだ。その点は僕も好感を持っている。 僕らハヤシチームもカレーチームの試食をする。やはりカレー店のシェフにコツを伝授されたらしいそのカレーはどこかホッとするやさしい洋食屋さんの味っていう感じだ。 「うん、これが昭和の香りなのかなあ?どこか懐かしい味のこのカレーはお客さんの心を掴みそうだね。これはいい勝負になるぞ!いまから本番が楽しみだ」僕もあいつにエールを送る。店作り担当の連中もがんばってくれた。昭和の時代に活躍した卓袱台やら扇風機、炊飯器など結構物置に放置している家が有るもので、それらを調達し、雰囲気作りに大活躍してくれた。 僕らの教室がだんだん昭和チックに変身していく様を見ていたら担任にけしかけられた勝負など、僕の気持ちの中ではもうどうでもよくなっていた。僕のハヤシライスとあいつのカレーライスで文化祭が盛り上がってくれればそれでいい。それが僕の素直な気持ちだった。 文化祭当日、僕らの店は大繁盛だった。昭和レトロ調な雰囲気が大いにうけて若い人から年配者まで、大勢のお客さんが来店し、僕たちの料理を食べてくれた。 あれからもう十二年の月日が流れた。僕は今日、久しぶりに昔バイトしていた洋食屋に来ている。もちろんオーダーはハヤシライスだ。カウンター越しにオヤジさんが懐かしそうに僕に話しかける。 「なあ、あの時の勝負、結局どっちが勝ったんだっけ?結果はおしえてくれなかったよなあ」 「さあ、どうでしたっけ?お前、覚えてる?」僕の左にはあいつが座っている。 「うーん、カレー屋のおじさんにはカレーが勝ったって言ってあるから、ここっとのオヤジさんにはハヤシっていうことで手を打ちましょう!」 「なんじゃそりゃ!まあ、どうでもいいや、今さら。あそこのカレーが美味いのは俺も認めているしね」 僕ら二人の笑顔の真ん中には僕らの一粒種がチョコンと座り、ハヤシライスを頬張っている。 fin ※お話はセルクルシェフの創作によるフィクションです。 最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
2009年10月03日
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