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「国防軍」
産・読「憲法改正の論議を」
自衛隊観艦式で大勢の招待客らを乗せて航行する護衛艦。憲法における自衛隊の位置づけが問われている=10月14日、神奈川県沖(酒巻俊介撮影)
周辺国の反発招くと朝・毎
公示の衆院選に向けた自民党の政権公約で、憲法改正により自衛隊を国防軍と位置づけることが明記された。これについて野田佳彦首相が「名前を変えて中身が変わるのか」と論戦を仕掛け、安倍晋三自民党総裁が「自衛隊は軍隊でないと詭弁(きべん)を弄するのはやめるべきだ」と反論した。
「国防軍」のテーマで社説を掲載した4紙の論調は、「国防軍」を支持する産経・読売と、批判的な朝日・毎日とが完全に対立する構図となった。
産経は「国際的には軍隊と認められながら国内的には軍隊と認めていない自衛隊とは一体、何なのか」と安倍氏と同様の見地に立ち、読売も、安倍氏の反論は「もっともな見解である」と賛意を示した。
大陸間弾道弾を飛ばすような組織にするのかとの野田首相の発言にも、産経は「軍拡や戦争につながるかのような印象を与えている」「議論のすり替え」とし、読売も「殊更に有権者の不安を煽(あお)ろうとする選挙戦術」として、ともに問題視した。
対して朝日と毎日は「強い危惧を感じざるを得ない」(朝日)、「名称変更する積極的意義は、確かに不明」(毎日)と反発した。その上で、政権公約は名称の変更にとどまらず「『普通の軍隊』に近づけたいということだろう」(朝日)、「他国並みの軍隊に衣替えしようという意図があるのかもしれない」(毎日)と詮索(せんさく)する。
「軍の復活」が周辺諸国に不信感や反発を呼びかねないとの見方でも両紙は一致している。
しかし産経は「独立国として国家や国民を守るために必要な強い軍隊を保持するという当然のことが戦後、疎(おろそ)かにされてきた」ことこそ問題だとの認識を示し、「国の守りを憲法上、どう位置付けるべきか」「安倍氏が国防軍を打ち出した前提は、憲法改正であることを忘れてはなるまい」と、憲法改正への本質的な論議を求めた。
読売も同様だ。「憲法に、自衛のための組織を明確に記すことは当然だ。自衛隊の法的な位置づけを巡る混乱に終止符を打つべきである」と強調した。
日経と東京は、自民党の政権公約発表を受けた社説の一部でこの問題に触れていた。日経は「自民党はこれまで改憲を党是としつつ、実際の動きは慎重だった」とし、「自衛隊の国防軍への改組」などには幅広い議論を、と慎重さを望んだ。東京は「改憲は喫緊の課題なのか」「自衛隊の国防軍化には、あえて反対したい」との姿勢だ。
産経と読売は、憲法改正に対する野田首相の"変節"をただした点でも共通する。「首相は『私は新憲法制定論者』と自著で語っていたではないか」と問うた産経は「民主党は国の守りをどう考えているのか」の見解を明確にせよと促した。
読売もやはり、首相が自著で自衛隊を「きっちり憲法の中で位置づけなければいけない」と主張していることを挙げ、「民主党は憲法で自衛隊や自衛権をどう位置づけるのか、方針をまとめるべきだ」と提言した。
現在の自衛隊のままで「有事対応や抑止力としての機能」は「国民の信頼を得ている」と朝日は言う。しかし中国による領海侵犯が相次ぐなど、わが国を取り巻く防衛環境は極めて厳しい。国民はむしろ、有事の際の日本の国防力に不安を感じているのではないかと思われる。
「『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』とする憲法9条が、いかに現実から遊離しているか」(産経)。すべての議論はここから始まるのではなかろうか。(清湖口敏)
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