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2010.10.29
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お預り資産状況 90,715,611円

「さすがにちょっとは減ったな。やっぱリーマンショックが効いたぜ。それにしたって、ククッ・・、1Kのボロアパートに住む俺が、こんな金持ちだとは誰も思うまいて」

鈴木耕太郎は、狭い部屋でPCに表示されたネット証券のトレード画面を見ながら一人ほくそ笑んでいた。

もうすぐ午後の取引が始まる。食べ終えたカップ麺を片付けるのももどかしく、ただ脇へ押しやると、再びPCに向かって動意株を調べ始めた。見るのは株価だけではない。売買高のうねりこそが大事というのが鈴木の信条だった。

「株の人気を反映した出来高や、騙しがいっぱいの板情報、それと株価の値動きから、モニタの向こうにいる人間の心を読むんだ。いや、連中の心理を読んだつもりになる。でもって、ここぞというとき勝負に出る。波に逆らわないように動くわけよ。全ては勘。コツを言葉にするなんて無理無理。強いて言えば損切りは機械的に、それ以外はヒラメキで決めるってぐらいのもんだ」

こんなやり方で、勝つことも負けることもあったが、鈴木の資産は割りと順調に増えてきた。しかし、時折彼は思う。「俺のやり方っていつまでも通用するんか?勘が鈍ったらオシマイなんかな?」

現にスランプに陥ることもあった。言葉で説明できないような感覚に頼っているだけに、ある日突然勘が働かなくなるのが怖い。中央レジデンスの情報に目が止まったのも、そんなぼんやりとした不安が頭をかすめている時だった。

その銘柄は、当日午前の東証値下がり率ランキングの上位に名を連ねていた。

中央レジデンス投資法人 92,000円 前日比▲7,000円



おろ?配当って年2万円も出るんか。鼻歌まじりに利回りを計算すると、税金を引いた後でも20%近い数字になる。予想分配だと確かにそうなる。

「なんだなんだ?3千万も突っ込めば配当だけでラクラク生活できるじゃん」思わずヒュ~と口笛を吹く。

本来、いくら投資すれば何円手に出来るといった考え方は危険極まりないものだ。利回りが確実であるかのように錯覚して、投資額を膨らませてしまいがちだからだ。しかし、そのとき不覚にも彼は予想配当に目を奪われ、いつもなら決してしない判断を下してしまった。

敬礼するようなポーズで、「コータロー行きま~す」と一人叫ぶと、売り注文が膨れ上がる寄り付き直前の板に思い切り買いをぶつけてしまったのだ。

「ヒャッホー!とりあえず後場寄り300口ゲット。年収600万確定~♪」

デイトレーダーで勝ち続けられる人間などほんの一握りに過ぎない。鈴木は安定した家賃収入という誘惑に負け、自分が定めたルールを曲げてしまったために、この後もさらに傷を広げることになる。

結局、彼が中央レジデンスの分配金を手にすることはなかった。

【雪風ファンドのJ-REIT小説(6)】
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。





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最終更新日  2010.11.06 09:31:07
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