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2010.11.11
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「甚だ遺憾に思っています」

のっけからそう言われて、毎朝新聞経済部の服部は苦笑いしたい気分だった。監督官庁として中央レジデンス投資法人の破綻をどのように受け止めているか、という問いに対する金融監督省の課長の答えがそれだったからだ。”遺憾の意”だけでは、わざわざ取材に来た甲斐が無い。

「すると渡部課長、やはり市場への悪影響が問題だと?」と、問い直すと、今度は意外にも突っ込んだ発言が飛び出した。「それもありますがね、我々としても困惑してるわけですよ。とにかく民事再生法適用申請に至る過程があまりに不透明だ。あれだけ不動産を保有していながら、担保を差し出すこともせずにいきなり破綻など聞いたことがない。なぜ戦わずに降参しなけりゃならんのかね?」

監督官庁さえも破綻を疑問視している。これはなかなかの収穫だ。

「それについては、社長の花井氏のコメントが取れてます。なんでも担保を差し出すと、倒産した際に投資家へ損害を与えるという話でしたよ」と、服部が問いに応じると、役人は言下に否定した。「そりゃキミィ、破綻ありきの発想ですよ。あのREITは死なずにすんだ。少なくとも我々に話を通すなりしてくれれば、やりようはあったのさ」

服部はメモしていた手を止め、驚いたように顔を上げた。取材相手から話を引き出したいときによく使う手の一つだ。

そのまま、「やはりレンダーに圧力、いや失礼、ご指導をなさって穏便にすませるとか、そういったことは可能だったと?」と聞くと、「そんなところです。他にも手はあるでしょうがね。だから計画倒産と聞いたときにピンと来たんだが、何かそういった噂でもあるのかね?」

渡部が逆に質問を返しつつこちらの目をじっと覗き込んできた。相手は役人にしては珍しく腹を割って話をしている。この先の付き合いも考えるなら、こちらも期待に応えたほうが得策だ。服部は咄嗟にそう判断した。

「実は、国内外のハゲタカファンドがかなり以前からあそこに接触していたってネタを掴んでまして・・」「ああ、電話でもハゲタカが暗躍とか言ってたな。どんなところだ?」「現在わかっているのは、第一プリンシパル、ゴードンサックス、CVSキャピタルといったところです」



「だがね服部君、正味の話、J-REITとは設立母体のいわば別働隊だ。親には逆らえんだろう。勝手に破綻させるなど出来るものか」宣言するように言うとまっすぐ服部を見据えてきた。

その通りだった。突き詰めて言えば、REITとは親会社の利益を捻り出すための道具なのである。その親会社に派遣されている人間が勝手な真似を出来る道理はない。

「ですが課長、たとえばその母体が死に体だったとしたらどうです?」服部は不敵な笑みを浮かべながら切り返した。頼りなさげだった当初の雰囲気は、いつしか影をひそめていた。

【雪風ファンドのJ-REIT小説(10)】





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最終更新日  2010.12.07 23:14:25
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