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時々、もしカミさんが先に亡くなり一人になってしまったら、自分の最期はどうなる
のだろうか、遠くに住む娘には頼れないし、介護付き有料老人ホームに入るしかない
のかと不安になることがしばしばあった。
新聞広告でこの本を知り早速買って読んで見た。家族がいなくても今の介護保険シス
テムでも自宅で幸せな最後を迎えることが書かれており少しは安心した。
【主な内容】
1.同居者がひとり増える、つまり二人世帯になると生活満足度が最低になる。
同居者がもう一人増えて三人世帯になると生活満足度はやや上昇し、さらに
四人以上になると、つまり多世代世帯になると、生活満足度は独居高齢者と
ほぼ並ぶ水準になる。
2.二人世帯とは、「夫婦世帯」か「親一人子一人世帯」のいずれか。夫婦世帯
は別名「空の巣」期とも呼ばれて、子育てを終わった目標喪失のカップルが
顔を見合わせる危機の時期。
3.天皇ご一家は決して三世代同居をおこなわない。
4.日本の年寄りの幸福は、家族の中の老後となるかもしれが、「ひとり暮らし」
は三世代世帯に匹敵する満足度が得られる。
5.独居高齢者で子供のある人とない人とでは、生活満足度は全く変わらない。
日々の暮らしの上では別居している子供がいようといまいと、生活満足度
は変わらない。
6.二人世帯の満足度が最低。女性の満足度が男性の満足度よりさらに低い。
「ふたり暮らしは妻のひとり負け」状態。
7.ふたり老後の幸せの7箇条
秘訣① それぞれに納得している
秘訣② しっかり分業できている
秘訣③ 別々の価値観でもかまわない
秘訣④ 目の前の不満は些細なことと割り切る
秘訣⑤ ふたりのときから、ひとりのときを想定する
秘訣⑥ 時間的、空間的に距離をあける
秘訣⑦ 自ら自分の世界に入りこむ
8.ひとり暮らしのふたりが、同じ屋根の下で暮らすようにできることが、
ふたり老後の理想型。実現できている人は多くない。
9.はじめからひとりだと寂しくない。ひとりっ子であったので、ちっとも
寂しくも不安もない。他の人が寂しいといったりするが、まったく理解
できない。
10.いちばん寂しいのは、気持ちの通じない家族と同居している高齢者、事実
高齢者の自殺率は、予想に反して独居高齢者より同居高齢者の方が高い。
11.「満足のいく老後の条件」
①慣れ親しんだ家から離れない
②金持ちより人持ち
③他人に遠慮しないですむ自律した暮らし
12.家族のいない老後はみじめ、という固定観念を跳ね返したかった。
13.メディアでは「高齢者の独居」イコール社会問題のような描き方が多い。
独居と孤独は違う。反対に同居イコール安心でもない。
14.2019年の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳、90歳を
超えて生きる確率は男性が4人に1人、女性が2人に1人以上と言われ
ている。
15.健康寿命の定義
平均寿命からフレイル(虚弱)期間(日常生活に制限のある不健康な状態
の期間)を引いた残り、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく
生活できる期間」
16.「最期は病院で」から「最期は自宅で」へ。病院死以前には、日本人は在宅
で死んでいた。1976年に病院死と在宅死の割合が逆転した。
17.現在の在宅死は新しい在宅死。地域の医療・看護資源がかつてなく充実して
きた。大量死時代の大半の死が、加齢に伴う疾患からくる死。予期できる死。
緩慢な死。
18.多くの高齢者が介護保険でケアマネージャにつながる。介護保険の要介護
認定率は高齢者全体では平均2割程度。加齢とともに上昇し、80代後半
では5割、90代では7割から8割に達する。
19.多くの高齢者は死ぬまでの間に要介護認定を受けるフレイル期間を経験
するため、たとえのぞんでも、ピンピンコロリなんてわけにはいかない。
20.要介護認定を受けた高齢者はケアマネージャがつくだけでなく、疾患が
あれば、訪問医と訪問看護師につながる。在宅のままゆっくり下り坂を
下って、ある日在宅で亡くなる。医療の介入は要らない。医療は治す
ためのもの、死ぬための医療はない。医師の役目は、介入を控えること、
そして死亡診断書を書くこと。
21.年寄りの容態が急変したり、死にかけの現場を発見したら、まちがっても
119番しないこと。まず訪問看護ステーションに連絡する。訪問看護
ステーションは24時間対応を義務付けられている。
22.病院は死に場所ではなくなった。最近では施設で看取りをやってくれるところ
が増えた。施設の機能はそこで生活が24時間完結すること。これを全制約
施設と呼ぶ。その典型が刑務所。施設はある意味刑務所のようなもの。
23.サービス付き高齢者住宅が許認可の壁が低いので雨後竹の子のように増えた。
施設とは違ってたんなる賃貸住宅。転倒事故が起きても自己責任で事業者の
責任は問われない。「サービス付き」というのは食事と安否確認がつくという
程度。
24.最近の動向は医療・介護・住宅複合ビジネスが増えたこと。いまいちばん儲かる
介護系ビジネスはサービス付き高齢者住宅に外付けの訪問介護を入れ、そこに
さらに訪問看護と訪問医療をつけるもの。費用は20万から30万。
25.サービス付き高齢者住宅の品質はほとんど野放し状態。自宅を離れて賃貸住宅で
集団生活をしなければならない理由もない。家賃を払わなくてもすむ自宅で、
訪問介護・訪問看護・訪問医療の三点セットを外付けすればよい。
26.施設はもういらないが持論。2015年施行の医療・介護一括法で施設入居の条件
が要介護3以上に厳格化されてから、待機高齢者は激減した。それでも待機高齢者
全員を収容するだけの施設をつくれば、29万人分の施設が必要。日本は「収容所
列島」になってしまう。
27.病院がガマンできるのは、いずれ出て行く希望があるから。施設は入ったが最後
死ぬまで出られない。
28.個室特養はいずれ在宅介護に移行するための過渡期の産物だったと位置づけられる
との思いが消えない。事実、世界の高齢者介護の流れは施設から住宅へと完全に
シフトしている。
29.高齢者も障害者も、老若男女が集まるふつうの街にふつうに住む、それをノーマ
ライゼーションという。街が変われば、施設はいらなくなる。
30.看取りのコストは「病院」>「施設」>「在宅」
31.日本の介護保険はもともと独居の高齢者が在宅で死ぬことを想定していない。
介護保険の要介護認定制度は、これ以上使わせないという関門のようなもの。
32.家賃を払わずにすむ持ち家を保有している年寄りが、わざわざ賃料を払って
施設に入居する理由がわからない。居住コストにかかる費用を自費負担サービス
に充てればもっと手厚いケアを受けられる。
33.介護保険は独居の住宅看取りを想定していない。医療保険では禁止されている
自費サービスと公費サービスの混合利用を、介護保険では厚生省は積極的に
勧めている。
34.在宅ひとり死の費用は30万から300万まで。
35.あばら家だろうがゴミ屋敷だろうが、住み慣れた自分の家に最期までいられる
ほどお年寄りにとって幸せなことはない。
36.「死ぬのに医者はいらない。」医者は死んだ後に死亡診断書を書いてもらうため
に要る。あらかじめ主治医として訪問医療を受けていれば、医者に立ち会って
もらわなくても死亡診断書は書いてもらえる。
37.死ぬのに医者は要らない、看護師だけでじゅうぶんお看取りができる、さらに
最近では介護職の人たちの経験値もあがり、介護職だけでお看取りができる
ようになってきている。
38.孤独死するのは圧倒的に男性、しかも年齢は50代後半から60代。高齢者
ですらない。中高年男性問題であって高齢女性問題ではない。
39.女おひとりさまは、男おひとりさまと違って、友人ネットワークを確保している
ひとが多い。
40.孤独死男性には非婚者とシングル・アゲイン(離婚者)も多い。生涯非婚率は、
男性が4人にひとり、女性が7人にひとりに達する。
41.離別後単独親権しか認めない日本では親権の8割以上が母親に行く。離別女性は
シングル・マザーになる可能性が高い。
42.日本では別れた父親は、親権を放棄するだけでなく、慰謝料もじゅうぶんに払わず
取り決めた養育費の支払いも滞りがちになる。
43.孤独死の定義
①単身者が自宅で死んで、
②立ち会い人がおらず、
③事件性がなく、
④死後一定時間以上経過して発見されたもの
(一定時間とは東京都では24時間、他の自治体では48時間から72時間)
44.すでに死亡していれば、今さら119番する必要はない。まして不審死でなければ
110番する理由もない。死亡診断書を書いてもらわないと荼毘に付せないから
主治医が必要となる。
45.要介護認定を受けていれば、かならずケアマネージャーがつき、持病があれば
主治医がつく。加齢はゆっくり進行するので、高齢者の死は予測できるゆっくり
死。
46.ケアマネージャーがつき主治医がつけば、死亡診断書は書いてもらえる。医師法
の規定では「死亡前24時間以内に患者を診察していること」が条件であるが、
この運用はもっと柔軟。
47.「見守りは監視とすれすれ」戦時中には向こう三軒両隣とか「隣組」という相互
監視システムがあった。プライバシーのない息の詰まるような監視社会。
48.ほとんどの高齢者がいやおうなく経過するフレイル期に介護保険のお世話になる。
要介護認定率は年齢とともに上昇し、平均寿命を超えた90歳以上では、女性
83.0%、男性67.0%。7,8割以上の高齢者が介護保険のお世話になって死ぬ。
49.要介護認定を受ければ、ケアマネージャーがつき、訪問看護が入り、デイサービス
のお迎えが来る。週に2回でもひとの出入りがあれば、「1週間以上経過して発見
される」という事態は避けられる。
50.「孤独死」の定義のうちの②の「立ち会い人のいない死」。三世代同居の家族でも
働ける者は全員出払っているので、寝たきりの高齢者が、日中独居であることは
ざらにある。施設だって職員が数時間毎に見回りに入るだけ。病院だって看護師が
24時間張り付いているわけではない。
51.病院や施設にいれば「立ち会い人のある死」になるとは限らない。
52.看取り立ち会いコンプレックスは臨終に立ち会いたいというのは死ぬ側ではなく、
死なれる側のこだわり。
53.別れと感謝は、相手の耳に聞こえるところで、相手に伝わるあいだに、何度でも
言っておく。一期一会と思えば、友人たちにも「あのときのあなたの親切は忘れ
ない」とか「あなたのこんなところが好き」と口に出していう。
54.「孤独死」とはよばれたくないと『在宅ひとり死』ということばを創った。
55.認知症発症率は5人にひとりと下がったが、高齢者の絶対数が増えているので、
2017年には800万人、2025年には一千万人を超えると予想されている。
56.まさかあの人がと思うような、知的能力も高く、好奇心も強い学者先生たちが、
認知症になっている。認知症診断の「長谷川式スケール」で有名な精神科医
長谷川和夫さんが自ら認知症になったと公表。
57.認知症は病気ではない、老化現象の一種。
58.認知症の発症リスクには、糖尿病や難聴、睡眠時無呼吸症候群、歯周病などが
挙げられているが、疫学的相関であって、原因かどうかはわからない。
59.認知症になるのは、「自己責任」という考え方が広まるのが恐ろしい。
60.認知症は不便だが、不幸ではない。ほんの少し手伝ってもらえばひとりでも
生きていける。
61.生きるとは、食べて、出して、清潔を保つということ。これが食事、排泄、入浴
という3大介護。
62.認知症になったら誰かに意思決定を託さなければならない。子どもなどの家族が
代行してくれるが、家族といえども当事者と家族の利害は一致しない。
63.「当事者にとって最善の利益」を代行するのが、成年後見。家族に頼めない、
頼れない高齢者が増えるにつれて、成年後見のニーズが増大。成年後見には
特別の資格は要らない。
64.後見人を一人だけ指名するのは危険。「善意の他者」はいつ「悪意の他者」に
変わるかもしれないから。成年後見は社協や福祉公社、福祉生協やNPOなど
社会的に信頼のおける団体に託すほうがよい。
65.成年後見には制度に欠陥があり、契約は本人の死亡時まで。たとえ臨終に立ち
会っても、そこから先の遺体の処理や葬儀、埋葬には一切関与しない。
66.成年後見、身上監護、死後事務委任の3点セットを引き受けてくれる事業者が
登場してきた。
67.「みんな認知症になるんだ」それを前提に「認知症になってもよい」ではなく
「認知症になってよい」社会へ。さらにそれを前提に「認知症に備える」社会へ。
68.日本尊厳死協会はまだ自己決定能力のあるうちに、どんな死に方をしたいか、
事前指示書(リビングウィル)を文書で残す。
69.安楽死と尊厳死は違う。安楽死は積極的自殺幇助、尊厳死は消極的医療抑制。
終末期に心肺蘇生術や気管切開、胃瘻、点滴などの「無益で偏った延命処置」
を本人の意思で拒否すること。
70.医療費がもっとも嵩むのは終末期の1ヶ月ということが言われ、終末期の延命
措置を(保険外)の自己負担にしてはどうかという意見がある。
71.終末期とは死んでから初めて事後的にわかるもの。今から終末期と定義すること
はできない。終末期医療にコストがかかるというのは思い込み。
72.死の直前1ヶ月間にかかるコストは全医療費の3%にすぎない。死亡直前の医療費
抑制が医療費全体に与えるインパクトはさほど大きくない。
73.安楽死は積極的自殺幇助、尊厳死は終末期の医療抑制、前者は医療が介入して死期
を早めるもの、後者は終末期に医療の介入を抑制するもの。
74.尊厳死(death with dignity)はヨーロッパ語圏では安楽死にも使われる用語。
75.安楽死は「生きる価値のある生命」と「生きる価値のない生命」とを選別する思想。
76.安楽死を求める社会は緩和医療が遅れている社会。
77.よい人生とは最大限の自立である。
78.オランダの2015年に全死亡数に占める安楽死割合は5.6%、「自ら死ぬ日時を
決めて死ぬスタイルが18人に1人の割合。」
79.認知症者には過去と未来がなくなり、現在だけがある。認知症の安楽死は不可能。
生まれてきたことに自己決定はない。死ぬことに自己決定があると思うのは傲慢。
80.介護保険の前には、在宅看取りなんて、できなかった。ましてや独居の在宅看取り
は、考えることさえできなかった。
81.介護保険20年の蓄積は、現場の経験値とスキルを上げることで、手が届かなかった
可能性を現実にしてきた。
82.「家族の責任」である介護を他人に委ねることには抵抗があった。家に介護の必要な
年寄りがいることを世間から隠しておくような風潮があった。
83.日本の介護保険はドイツの介護保険とイギリスの高齢者福祉をお手本に模倣したもの
といわれるが、似て非なるもの、両者の折衷案を超えた独自の制度。
84.「介護は家族(だけ)の責任ではない」と「介護の社会化」の一歩を踏み出した。
85.税と保険の混合。介護保険財政は2分の1が保険料、残り2分の1が税金、その半分
4分の1が国費、残りの4分の1を都道府県と市町村が折半する。
86.介護保険の事業主体は市町村という基礎自治体。サービス提供事業者に介護サービス
をアウトソーシングするという方式。
87.保険加入者がサービス提供事業者と契約を結び、一定額のサービスを受け取る権利を
行使できるようになった。
88.ケアマネージャー制度の導入、行政から独立、だが事業者所属を認める。事業者所属
を認めたのは制度の設計ミス。ケアプランの報酬を上げてケアマネージャーが独立を
保てるよう、処遇を改善することが必要。
89.介護保険で働くワーカーに資格を要求することで、専門職にした。介護は「女なら
だれでもできる」非熟練労働であるという、従来の偏見を払拭するには大きな役割を
果たした。
90.要介護認定制度の導入と相対的に高い給付水準。要介護度は1から5まで。最重度
の5だと月額サービス給付料の上限は36万円程度になる。
91.介護保険は中流階級の家族介護負担を軽減するという政策意図をもって設計。介護
保険についても使わなくてはソンという権利意識が生まれた。税方式だったらこんな
意識は生まれなかった。
92.実質増税というべき保険料の強制徴収は初年度4兆円程度の準市場を創り出した。
2019年度には11兆円規模に達する。準市場とは政府が公定価格で管理する市場。
93.介護保険がもたらした大きな変化のひとつは、ケアという労働がタダではない、
という意識が広く定着したこと。これまで女が家でやってきた介護はタダ働き。
この介護というタダ働きが「見える化」したことの効果は大きい。
94.介護保険の効果のひとつは、家族介護に「他人の目」が入ったこと。
95.介護保険の訪問介護は身体介護と家事援助の2本立て。実際の現場ではどこまでが
家事援助でどこからが身体介護からは線引きは困難。
96.介護保険は「失われた90年代」に日本国民が成し遂げた変革のうちで、個々の
家庭に直接影響する、最も大きい変革。この変革を成し遂げたのは団塊世代の有権者
たちだった。介護保険を作ったことは団塊世代の政治的功績。
97.家族の介護力が失われた高齢者の在宅生活を支えるには、介護保険の力が不可欠。
98.おひとりさまが安心して家に居られる社会、というのは、子どもが親を安心して
ひとりで置いておける社会、ということにほかならない。
99.ひとり暮らしは「孤立」ではない、ひとりで死んでも「孤独死」ではない。「在宅
ひとり死」ができるようになったのは、介護保険のおかげ。介護保険がスタートして
から20年。現場の経験値は確実に蓄積された。「在宅ひとり死」は現場の専門職
の支えがあればできる。
100.日本の介護保険は、制度も担い手も、ケアの質も、諸外国の福祉先進国にくらべて
も決して見劣りしない。