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2022.06.13
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テーマ: 読書(8289)

本のタイトル・作者



老後とピアノ (一般書 357) [ 稲垣 えみ子 ]

本の目次・あらすじ


1章 40年ぶりのピアノ 
2章 弾きたい曲を弾いてみる
3章 動かぬ体、働かぬ脳
4章 ああ発表会
5章 老後とピアノ

コラム 大人のピアノのはじめかた
付録1 私が挑んだ曲一覧


引用



なるほど私にとってピアノとは、老い方のレッスンなのかもしれない。
どれだけ衰えてもダメになっても、今この瞬間を楽しみながら努力することができるかどうかが試されているのだ。登っていけるかどうかなんて関係なく、ただ目の前のことを精一杯やることを幸せと思うことができるのか?もしそれができたなら、これから先、長い人生の下り坂がどれほど続こうと、何を恐れることがあるだろう。


感想


2022年146冊目
★★★★

著者は1965年生まれ。朝日新聞社で編集委員をつとめ、2016年に50歳で退社。
私の認識は「報道ステーションに出てたアフロの人」。
気づけば何冊も著書を読んでいた。
稲垣さんの「やってみたシリーズ(私命名)」今回は「ピアノ弾いてみた」。

ブックカフェで顔見知りになった雑誌「ショパン」の内藤会長。
何か書いてよ!という無茶ぶりでピアノがないまま始まった挑戦企画。
原稿料はブックカフェのピアノを練習に使わせてもらうことと、先生をつけてもらうこと。

幼い頃に嫌々練習していたピアノ。嗚呼ピアノ。どうしてあなたは苦い思い出とともにあるの。
そんなピアノ、大人になった今、弾けたらいいなあ…なんて…。

というわけで稲垣さんは練習を始めるのだけど、始めてみたらのめり込み、毎日2、3時間練習する常軌を逸した没頭っぷり。
発表会でも開くんですか?

時間の無駄?
そうだろうか?

というのが、この本の問い。

そんなことして、何になるの?
いまさら、何の意味があるの?



無理だったんじゃない?
もう若くないんだから。
もうやめてしまおうか?

でもそのたびに、すこうしずつ、前とは自分の中の何かが変わっていることに気づく。
その音が、また前へ進む力をくれる。

大人がピアノを弾けるようになったって、そこには生産性も効率性もまったくなくて、つまりはそれが自分が今から行く「老い」でもある。
けれどもはや何者かになれる必要はなく、ただ今のこの「自分」のままに、楽しめばいい。
昨日の自分と今日の自分。確実に日ごと老いて衰えていく自分。
そこに、出来ることが増えていく自分がいたら。

ねえ、それって、楽しいよね。

私も同じだ…と思いながら読んだ。
私は、毎朝英語の勉強を1時間~2時間やってる。
ほぼフルタイムで仕事をして残業もして、子供は小学1年生と保育園の年中でまだまだ手がかかり、寝かしつけも必要で、ご飯も作って掃除もして洗濯もして…。
1日は24時間しかない。
そのなかで1、2時間を毎朝英語の勉強にあてる。

何してんだろな、私。

たまに思う。
仕事で使うわけでもない。
海外へ行くことも当分なさそうだ。
完全な自己満足。
いったい何やってるんだろうな、私。
途端にすべてが虚しくなる。

でもその時に、過去のノートをぱらぱらめくって、思う。
私は、1年前には分からなかった「過去分詞」の身体感覚を身に着けている。
この単語もこの単語も、意味が分かるようになった。
長い英文を見ても「おえっ」と思わなく…いや、だいぶましに…なった。
分厚い洋書も、ごまかしごまかし読めている。

もしかしたら私、このまま続けたら、もうちょっと先まで、行けるかもしれない。
そうしたらまた、違う景色が見えるかもしれない。

惰性でスマホのアプリを立ち上げて、今日もラジオ英会話を聞く。
楽しい。
楽しいんだ。
だから、やりたいんだ。続けたいんだ。
役にたたなくてもいいんだ。私がそれでよければいいんだ。

そんなことして、何になるの?
それくらいの英語力で、何になるつもり?

鼻で笑った人も、冷笑した人も、いたけれど。
私はそれに返す言葉を持たず、曖昧に言葉を濁したけど。

稲垣さんは、いつか一音だけしか出せなくなっても、という。
その一音が最高の一音であるように、練習出来たら幸せだ、と。
それは死ぬ時まで、永遠に楽しめる。
生産性と効率性の外側で、ただ一音を噛みしめて。
なんて幸せな人生だろう。

趣味、と言う。あるいは別の名前でもいい。
こんなこといいな、できたらいいな。
いっぱいいっぱいある、それらを。
夢、と呼ぶのかもしれない、とふと思う。

叶えられるのは、私だけだ。
今の自分だけが、死ぬまで夢を叶え続けられる。

そんなことして何になるの?

何にもならないよ。
でもいいんだ。
だからいいんだ。
ただ私が毎日楽しくて、死ぬまでずっと、幸せになるだけ。

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最終更新日  2022.12.04 00:54:15
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