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2024年06月03日
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カテゴリ: 雑感



「光る君へ」に戻ると、枕草子は定子を元気づけるために執筆されたというエピソードがでてくる。さすがに紫式部のアドバイスはないだろうが、元気づけるという動機は学説にもあるという。枕草子は楽しいことしか書いていないが、これは清少納言が勝気であったためと言うよりも、定子を元気づけるためといった方が説得力がある。以前、枕草子を読んだときには、正直言って、どうでもよいことばかりを書いたつまらない随筆という印象があったのだが、あらためて読み直してみると、これが非常に面白い。
最初の春はあけぼの…の段でまず、こんなきれいな情景を思い出してみてよと誘い、平生昌や翁丸のエピソード、好きな山や市の段では、あの頃、あんな面白いことがあったわよね、あんな話でもりあがったものよねというような肉声が聞こえてきそうである。没落した人が過去の全盛期の回想にふけるのは今の人の感覚では空しいとかなんとかいうのだろうけど、当時の定子と清少納言の間ではそういう素晴らしい時代の楽しい想い出だからこそ残しておきたいという了解があったのかもしれない。そしてそれが定子の生きる力にもなっていた。「光る君へ」で今後の枕草子執筆がどう描かれていくか興味深い。清少納言は書いたものをその都度定子に読み聞かせ、当時を知る女房達も一緒に聞いたのかもしれない。当時は紙は貴重であり、漢籍などの学問書籍は別にすれば、書いたものは何人かに読み聞かせるという場合が多かったという。狭い貴族社会の中では、登場人物に知った名前も多かっただろうし、思い当たることも多い。また、急速に没落していった中関白家に対する同情もあった。枕草子は貴族社会の中で人気を博し、そこに描かれている美意識や人間観察にみるべきものがあったので、時代を超えて後世に残っていった。
徒然草も若い頃に読んだときには、こんな貧乏くさくて枯れた随筆のどこが面白いのだろうと思っていたが、年齢を重ねて読んでみると、意外と面白い。枕草子も、いままで読んだときにはどうしても面白さが分からなかったが、今、改めて読み、ようやく面白さがわかりそうである。





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最終更新日  2024年06月03日 12時54分08秒
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