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2018.10.22
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カテゴリ: 観照 & 探訪
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日曜日(10.21)の午後、大津歴史博物館で始まったこの企画展を鑑賞にいくことと併せて、近辺の未探訪地を訪れてきました。少し探訪で試行錯誤しましたが、撮った写真などを整理・編集して、ご紹介したいと思います。当日は、JR湖西線の「大津京駅」と大津歴史博物館の間にある未訪史跡の探訪を兼ね、往復しました。

この往還区域はこちらの地図(Mapion)をご覧いただくとわかりやすいでしょう。

JR湖西線の大津京駅を出て、南西方向に位置する京阪電車石山坂本線の京阪大津京駅の方向に進みます。京阪電車の踏切を西に横断すると、あとは京阪電車と平行する道路沿いに南に進みます。道路の西側が山上町、東側が御陵町です。御陵町は 「皇子山総合運動公園」 になっています。
この南北の道路沿いが、秋にふさわしく「アートな」道なのです。 今回は西側の歩道を歩いたのですが、歩道に貼られたタイルは、水が流れているようなデザインが取り入れられています。


1枚ずつ撮っていくと、同じ絵柄がありますので、ここでは重複を避けます。

これは 「大津絵」 と呼ばれています。

  大津絵の筆のはじめは何仏 

元禄4年(1691)、大津の乙州 (おとくに) 宅で新年を迎えた松尾芭蕉が正月4日に、この年の最初の句としてこの発句を詠んだのです。 なんとこの発句が大津絵という言葉が文献にみえる最初のもの だと言います。 (資料1)

余談ですが、芭蕉は元禄3年(1690)4月6日、大津の国分山の幻住庵に入り、在庵中に「幻住庵記」を書いています。幻住庵を出た後は、膳所にある義仲寺の無明庵を居所としました。9月末に、一旦上野に帰りますが、冬、京都・湖南に出て来て、川井乙州宅で越年したのです。そして、上掲の発句が作られたのです。 (資料2)

いつから大津絵が始まったのかは定かではないようです が、17世紀前半の『近江名所図』(サントリー美術館蔵)に「大津絵を掛ける勧進僧の姿が描かれており、 おそらく17世紀の初期には、東海道を上り下りする旅行者用に土産物として絵が売られるようになったと思われる (資料1) そうです。当初は芭蕉の句にあるように、仏画が多かったようですが、次第に様々な絵が描かれるに至ったとか。

*オランダ商館長の江戸参府に随行したドイツ人医師のケンペルは、「追分村」(現在の大津市追分町や大谷町あたり)で絵師や仏具屋の多いことを記録している。
*井原西鶴作『好色一代男』に大津絵が遊女屋の屏風に貼られていたことを記されている。
(やなぎむねよし) が大津絵を高く評価した。柳は昭和5年(1930)にボストンで大津絵展を開催した。   (資料1)

大津絵の大宣伝となったのは、大津にも住んだことがある 近松門左衛門が作った浄瑠璃『傾城反魂香 (けいせいはんごんこう) 』だとか。この浄瑠璃は宝永5年(1708)に初演されました。 大津絵を描く浮世又平が主人公の浄瑠璃 で、この作の趣向がヒットして全国に大津絵の存在を知らしめたと言います。さらに、幕末には大津絵節が流行したそうです。 (資料1)

再び余談です。この浄瑠璃、「吃又 (どもまた) 」とも称されるようです。というのは、歌舞伎で全三段で演じられたものが、今は初段「土佐将監閑居」の場だけが上演を重ねるとか。この初段の通称が「吃又」なのです。又平は土佐光信の弟子ですが、吃音 (きつおん) の上に田舎者、女房のおとくと大津に住み、大津絵を描いていたのです。土佐の名字を許してもらえないことから、絶望します。最後に手水鉢を石塔に見立て、そこに自画像を一心に描くのです。描いたあと、女房と死ぬ決心だったのですが、なんとその描かれた人物が手水鉢から抜け出て活躍するというもの。土佐光信はその技倆に感じて、又平が土佐光起と名乗るのを許したという筋です。勿論話はそこからさらに展開するのです。 (資料2)
これから、伊吹山の艾 (もぐさ) についての江戸時代のPRエピソードを連想しました。

歩道脇に、 「弘文天皇御陵参拝道」の石標 と近くで右の 案内板 が目にとまります。この案内板は山上町の南東角側に設置されています。この御陵は後でご紹介します。

石標のすぐ南、歩道脇に、こんなモニュメントがあります。

以前この道を歩いた時から気になっていた代物です。このご紹介をまとめるに際して、調べてみて、情報を得ました。 現代美術家・今井祝雄氏創作の『連鎖球体』という作品です
「いっぽう、カラフルなヴォワイアンとは異なり、アースカラーの球体の造形を1996年に制作した。滋賀県の主要地方道である伊香立浜大津線マイロード事業の完成を記念したモニュメント『連鎖球体』である」 (『成安造形大学紀要 第2号』) と作者が記されているそうです。 (資料4)
これでモヤモヤが一つ解消しました。



 南の方に、こんな景色が見えてきます。


「大津市制100周年記念」 のモニュメントです。上掲の塔のすぐ傍、北隣にあります。
これは「タイムカプセル」だそうです。 「タイムカプセルの扉が開くのは、2028年、市制130周年の市制記念日です」と下部の銘板に記されています。「大津市市政功労者の会」が設置されたもの。


        コンクリート造りの塔の下に、この球体が設置されています。
ここは、大津市市役所前です。市役所エリアの北東側にあります。
「柿本人麻呂歌碑」 です。昭和42年(1967)に大津市が建立したそうです。

  さざなみの志賀の大わだよどむとも昔の人に亦も逢はめやも

『万葉集』の巻一には、有名な
  春過ぎて夏来たるらし白たへの衣ほしたり天の香具山
という歌が載っています。
その次に、 「近江の荒れたる都を過ぎし時、柿本朝臣人麻呂の作れる歌」 という詞書に続き、長歌が載っています。それに対する反歌が二首詠まれていて、その二番目に載っているのが上掲の歌です。最初に詠まれているのは、
  さざなみの志賀の辛崎幸くあれど大宮人の船待ちかねつ    です。 (資料5)

後の時代に、 平忠度 が『千載和歌集』に収録されたことで名を残すことになった歌があります。
  さざなみや志賀の都は荒れにしをむかしながらの山ざくらかな  66

大津市役所のある辺りは、山上町の南側で御陵町になります。道路を挟んで東を眺めると、「皇子山総合運動公園」の中央部です。「多目的運動広場」になっています。

運動公園の入口を少し入ったところに、この塔が見えます。少し、立ち寄ってみましょう。

今は水が抜かれていますが、塔の北側には池が作られています。
その近くに 「びわこ国体記念植樹」という銘板 が置かれていました。


石段があり、上ってみると石敷の広場空間が広がっていて、西側に彫刻像が並んでいます。




                     びわこ国体を記念した彫刻像群なのでしょう。



第36回国民体育大会が1981年に開催され、この時の夏・秋季大会が「びわこ国体」だったのです 。そのときのスローガンは「水と緑あふれる若さ」でした。9月13~16日には、5競技が大津市・彦根市・湖東町で実施され、10月13~18日には、滋賀県下各地で39競技が実施されたようです。(資料6)
この年、第17回全国身体障害者スポーツ大会も滋賀県で開催され、この総合公園の陸上競技場も会場の一つとなったそうです。こちらのスローガンは「わたしにもこんな力が生きがいが」です。 (資料7)

再び西側歩道に戻ります。



     大津市役所に一番近いバス停が「別所」です。歩道の並木も紅葉していました。

別所バス停の少し先に交差点があり、大津歴史博物館への標識が出ています。
右折して、大津歴博へのゆるやかな坂道を上ることになります。

つづく

参照資料
1) 『図説 大津の歴史 上巻』 大津市編   p238-239, p91
2) 『芭蕉入門』 井本農一著 講談社学術文庫 芭蕉略年譜 p217
3) 『歌舞伎鑑賞辞典』 水落潔著 東京堂出版 p85
4) ​ 【ART】現代美術家・今井祝雄『連鎖球体』 @大津市役所付近 ​ :「写遊百珍」
5) 『新訂 万葉集 上巻』 佐佐木信綱編 岩波書店 p51-52
6) ​ 第36回国民体育大会 ​ :ウィキペディア
7) 『図説 大津の歴史 下巻』 大津市編 p185

補遺
親しみやすく奧深い「大津絵」の世界 ​  龍谷 2005 No.60 :「龍谷大学」
大津絵 ​  :「コトバンク」
大津絵とは ​  :「大津絵の店」
  ​ 大津絵の代表的な画題
大津絵美術館 ​  :「本山圓万院門跡」
大津絵-民画の魅力- ​  :「福岡市美術館」
傾城反魂香 ​  歌舞伎の演目 :「歌舞伎への誘い」
傾城反魂香 ​  :ウィキペディア
土佐光起 ​  :ウィキペディア
土佐派中興の祖・土佐光起の画業と「近世やまと絵」の魅力 ​ :「サライ」
今井祝雄 ​  :ウィキペディア
今井 祝雄 ​ :「ARTCOUTRT Gallery」

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Last updated  2018.10.22 20:52:44
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