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2022.01.07
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カテゴリ: 探訪
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5日、久々に地元宇治市の黄檗に所在する「 黄檗宗大本山萬福寺 」を訪れてきました。
日本三禅宗の一つ。あとの2つは臨済宗と曹洞宗です。

門前及び道路を挟んで西側の広場にこの が掲げてあります。
宇治市の東宇治図書館に向かう坂道の東側から萬福寺の塔頭があり、萬福寺周辺には昨年から幾つもの幟が立てられています。
令和4年(2022)4月3日が、宗祖隠元禅師350年大遠諱にあたる のです。
たぶん、春になると多くの参拝客が訪れることでしょう。

正月三が日を外して訪れたので、境内は静かなもの。参拝客を時折見かける程度でした。
久々に静謐さの中で拝観できました。静かに眺め得た萬福寺を細見風にご紹介したいと思います。


門前の道路から少し奥まった位置に「 総門 」が見えます。
現在の門は元禄6年(1693)に再建されました。中央の屋根が一段高く、左右を一段低くした ​中国門の牌楼 (ぱいろう) 式​ だそうで、 漢門 と呼ばれたとか。 (資料1)


由緒 」が掲示されています。

栄西が47歳より5年間二度目の入宋より帰朝して、臨済宗を広め始めたのが鎌倉時代の1191年。
道元が入宋から帰国し、曹洞宗を広め始めたのが鎌倉時代の1227年です。
それに対して、長崎の興福寺の僧逸然性融 (いつねんしょうゆう) に請われて決意し、 ​明僧隠元隆琦 (いんげんりゅうき) が長崎に渡来したのが江戸時代(第4代将軍家綱期)、1654年​ 寬文元年(1661)に禅寺が創建され ます。
隠元禅師は、中国明時代末期に臨済宗の法統を受け継ぎ、臨済正伝32世となり、中国福建省福州府福清県の黄檗山萬福寺の住持でした。そこで、 この地に創建された寺を黄檗山萬福寺と名付けられ ました。それ故、 中国の方は「古黄檗」と 呼ばれるそうです。 (由緒、資料1,2)

総門に張られた幕に葵の紋が描かれている意味が納得できます。


総門の正面には、 第5代高泉和尚の書「第一羲」の扁額 が掲げてあります。 (資料1)


お正月だからでしょうか、門の頭貫には 「天・開・泰・運」の四文字 の幡が吊り下げてあります。横書きとして素直に読めば「 天開泰運 」。「泰運」が「安らかなる気運。泰平の気運」 (デジタル大辞泉/小学館) を意味するので、天は安らかな気運を開くという意味で受けとめれば良いのでしょう。新しい年への祈念、寿ぎですね。

総門の左右の柱には、 高泉和尚筆の聯 ​(れん)​ が掲げてあります。 (資料3,4)
左には「聖主賢臣悉仰尊」、右には「宗□済道重恢廊」(第二字不詳)と。

「聯」は柱や壁などの左右に相対して掛けられた書の板のことです。
この本山萬福寺には聯44対、額40面(重要文化財)が掛けてあるそうです (資料1)

屋根に目を転じましょう。


屋根の棟の両端には、「 摩加羅 ​(まから)​ 」が置かれています。 摩加羅はガンジス河に生息するワニ をさす言葉だそうで、 ガンジス河の女神の乗り物 だと言います。 (資料1)
低い屋根の棟の鬼瓦

こちらは高い屋根の方 ですが、鬼瓦の鬼の部分が鬼ではありません。
おもしろい造形です。余所のお寺で見た記憶がありません。



総門前の道路を挟んで西側の広場周辺を眺めておきましょう。
まず最初に、

南北方向の離れた位置に 2つの井戸「龍目井」 があります。

右(北側)の井戸の背後に 案内板「龍目井」 が掲示されています。
「この井戸は寬文元年冬、隠元禅師が掘らしめられたもので、萬福寺を龍に譬へ、これを龍目となし、天下の龍衆、善知識が挙って此處に集まらんことを念願されたもの
 禅師曰く『山ニ宗あり水に源あり龍に目あり古に輝き今に勝る』」 (転記)


左右の龍目井の中間あたりの更に西側にこの 大きな木 が茂り、木の向こう側に 立石 があります。
お寺の売店で購入した小冊子には、「龍目井は龍の眼を、周辺の小川は口を、松は口ひげを表しています」 (資料1) という説明があります。
この木と並びその南側には松の木がありますので、これらが 龍の口ひげ に照応しているということでしょう。
 また、周辺に不規則に少し大きめの石が散在しています。
これらもまた、龍の顔の一部を表象させているのかも・・・・・。
ここには想像力を広げた見立ての次元が広がっています。

この広場空間には他にもいくつかのものを目にすることができます。
 この広場の北東隅には、 現代風の道標 が建ててあります。

切り出した地図を拡大したもの がこれです。右方向が北になる地図です。
西へ行けば、JR奈良線黄檗駅と京阪電車宇治線黄檗駅。門前の道を北に少し歩めば「宝蔵院」、逆に南に進めば「蔵林寺」と表示されています。


向かって右側(北)の龍目井から南西方向に 地蔵堂 があります。
格子戸から拝見すると、お地蔵さまはきれいに彩色されていました。


地蔵堂の南西方向、広場の西端にこの一画が見えます。
​手前に「宇治市の史跡紹介 駒蹄影園碑 (こまのあしかげえんひ) 」の掲示​ があります。




左側に「駒蹄影園趾」 と刻された石標が建てられ、
右側には「駒蹄影園記 」と上部に横書きし、下に銘文を刻んだ顕彰碑が見えます。

「鎌倉時代の初めごろ、宇治の里人たちが茶の種の蒔き方がわからず困っているところへ、通りかかった栂尾高山寺(とがのおこうざんじ)の明恵上人が馬を畑に乗り入れ、その蹄の跡に種を蒔くように教えたと伝えられています。この碑は、明恵上人への感謝とその功績を顕彰するため、大正15年(1926)に宇治郡茶業組合により建立されたものです。」 (宇治市の史跡紹介文を転記)

黄檗山萬福寺が創建される前のこの辺り、宇治郡大和田村には茶園が広がっていたということでしょうか。

中央に 明恵上人の歌碑 が建立されています。碑文の歌の文字は異なりますが、上掲紹介文に歌も掲載されています。

栂尾の尾上の茶の木分け植えて
(あと) ぞ生 (お) ふべし駒の足影     明恵



広場の南西端には、築地塀の 門に「白雲庵」の扁額 が掲げてあります。
隠元禅師が草庵に与えられた筆蹟だそうです。
白雲庵は元大本山萬福寺の塔頭の一つで、自悦禅師の開山だそうですが、現在は普茶料理(精進料理)の老舗になっています。 (資料5)

門前には、赤枠の白地に普茶と墨書された旗が風に揺らめいています。ちょっと風情を感じます。

敷地には酒樽で作られた茶室があり、現在は「自悦堂」として自悦禅師木像を安置して祀ってあるそうです。 (資料5)

 門前から庭を眺めると目の前に 七重の石塔 が見えます。
塔頭だったという雰囲気は残っています。
 石塔の軸部には僧像がレリーフされています。


この広場でもう一つ目に止まったのが、この 観光案内板 です。
こちらには「黄檗山萬福寺」について説明すると共に、道標を兼ねた表示があります。
併せて地図が掲示されています。

それでは、総門を通り、萬福寺の境内に入りましょう。

つづく

参照資料
1)『最新版フォトガイドマンプクジ』 萬福寺発行 萬福寺売店にて購入した小冊子 
2)『岩波仏教辞典 第二版』 中村・福永・田村・今野・末木 編集 岩波書店
3)『都名所図会 下巻』 竹村俊則校注  角川文庫  p106-110
4) ​ 黄檗山萬福寺(万福寺) ​ 都名所図会 :「国際日本文化研究センター」
5) ​ 白雲菴 ​ ホームページ

補遺
隠元隆琦 ​ :ウィキペディア
隠元 ​  :「コトバンク」
萬福寺 ​ :「臨黄ネット」(臨済禅 黄檗禅 公式サイト)
万福寺(福清市) ​ :ウィキペディア
福清市漁渓鎮 黄檗宗 黄檗山万福寺 ​  :「4travel.jp」
中国福建省の福清萬福寺から長崎の興福寺へ梵鐘が寄贈されました。 ​:「長崎県」
東明山興福寺 ​ :「東明山興福寺」
明恵上人 ​  :「栂尾山高山寺」
第二話 お茶の伝来と拡がり ​  :「綾鷹物語」
普茶料理 ​  :「黄檗宗大本山 萬福寺」

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Last updated  2022.01.23 10:45:58
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