音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年01月18日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ
スイング感+アルトのトーン+スタンダード美曲群の"三位一体"


 アルト・サックス奏者のジャッキー・マクリーンは、プレスティッジとの契約が切れた後、ブルーノート・レーベルに立て続けに録音を行なう。ブルーノートでの初レコーディングは1959年1月だったが、この時の音源は後日までリリースされず(後の『ジャッキーズ・バッグ』に所収)、同じ年の5月録音の 『ニュー・ソイル』 が同レーベルの第一作となる。本盤『スイング・スワング・スインギン(Swing, Swang, Swingin')』は、ブルーノートからの二作目で、同年10月に吹き込まれたものである。

 『スイング・スワング・スインギン』というタイトルは、ブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオンが名付けたものである。しかし、"マクリーンがスイングし、それゆえに名盤"などと単純に結びつけて先入観を持ってしまってはいけない。ライオン自身の言葉(本盤のオリジナルのライナーに記載されている)によれば、「彼らはやって来て、スイングし、帰っていったので、そのアルバムを『スイング・スワング・スインギン』と名付けた」。つまり、"彼(マクリーン)"ではなくて、"彼ら(マクリーンを含む本作のメンバー)"なのである。したがって、この4人の演奏に"スイング"を求めるのは間違っていないが、マクリーンだけにそれを求めるのはよくないと思う。なぜなら、本作にはスイング感以外のよさがあるにもかかわらず、スイングにこだわるとそちらを聴き逃してしまうかもしれないからだ。

 さて、筆者の考える本盤のよさは"三位一体"である。その1つめは上述のスイング感。これは少し聴いてみればすぐにわかるように、マクリーン個人と言うよりは、演奏メンバー全体のものである。ドラムのアート・テイラーの演奏はもちろんだが、ピアノのウォルター・ビショップ・JRが随所でスイング感を煽るいい演奏をしていると思う。そして全体として見れば、これら二人にベースのジミー・ギャリソンを加えたスインギーな下地の上にマクリーンがのっかっているようにすら聴こえる。

 "三位一体のよさ"の2つめは、マクリーンのサックスの音である。そのトーンはとにかく艶やかである。なおかつ本盤はワンホーン(他の管楽器はなし)なので、特にそれが際立っている。その意味では、マクリーンを初めて聴く人にも向いているし(実際、筆者が最初に聴いたマクリーンのリーダー作は本盤だった)、別にマクリーンにこだわらずとも、"アルト・サックスの演奏でも聴いてみようか"と思った人にも推薦できるアルバムである。

 さて、"三位一体"の3つめは、"選曲"である。プレスティッジ時代のマクリーンは、レーベルの意向に沿って活動する以上、なかなか自由に演奏・録音ができなかったという。けれども、ブルーノートではかなりの自由を手に入れた(このことは、別にマクリーンに限らず、他の多くのミュージシャンに関しても当てはまる)。結果、マクリーンは、本作においてはスタンダード曲を多く選び、快演を繰り広げた。本人いわく、「ブロードウェイのミュージカルで使われている曲が好き」で、また、「ラウンド・ミッドナイトがいちばん好きだけれども、これをアルトで演奏するのは難しい」とのこと。ともあれ、本作でマクリーンは思い通りに録音に関わることができたのであろう。好きな曲を好きなように吹く。そんな環境が与えられたからこそ、マクリーンは好きな曲を選び、気持ちよくスイングしながら吹くことができた。結果、艶やかなトーンの快演を繰り広げることになったのだと思う。

 上記のように考えながら聴くと、タイトルの"スイング"という語ばかりに振り回されてイメージを作ってしまう必要はないように思える。無論、録音に立ち会ったライオンとしてみれば、「彼らはやって来て、スイングし、帰っていった」わけで、このタイトルしかつけようがなかったというのは頷ける。けれども、録音から半世紀を経た現在、今の私たちが聴くとすれば、ブルーノート移籍という過去の文脈も含めた上での上記の"三位一体"の組み合わせ、それゆえの見事なまでの快演に思いを馳せながら聴くのもいいのではないだろうか。


[収録曲]

2. Let's Face The Music And Dance
3. Stable Mates
4. I Remember You
5. I Love You
6. I'll Take Romance
7. 116th and Lenox

Jackie McLean (as)
Walter Bishop Jr. (p)
Jimmy Garrison (b)
Art Taylor (ds)

録音: 1959年10月2日






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Last updated  2017年10月21日 15時42分46秒
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