さて、本盤『トゥア・デ・フォース(Tour de Force)』の大きな特徴は、悪く言えばそのアンバランスさ、よく言えばその緩急のつき具合にある。3.と5.がヴォーカル・ナンバーとなっていて、普通ならロリンズ自身がサックスで“歌う”のを得意とするところ、アール・コールマンのヴォーカル入りとなっている。このコールマンの起用は、ロリンズ自身の希望だったとのこと。冒頭の1.「イー・アー」にも典型的にみられるように、『サキソフォン・コロッサス』で発揮されているキレと閃きに満ちたインプロヴィゼーション曲が過半を占める中、上記ヴォーカル入りの2曲はしっとりとしたスロー・ナンバーで、コールマンの声にごく自然な感じでロリンズの“バラード吹き”としてのよさが絡む。