本盤『ヒア・カムズ・ルイ・スミス(Here Comes Louis Smith)』は、ブルーノートで最初に出された彼の作品であるが、厳密にはブルーノートで制作された作品ではない。プロデューサーとしてトランジションなるレーベルを設立したトム・ウィルソン(このプロデューサーは後にボブ・ディランのプロデュースなどを手掛けることになる)が吹き込んだものであった。つまりは、同レーベルの倒産によって宙に浮いた音源をブルーノートのオーナーのアルフレッド・ライオンが買い取り、レコード化したものであった。
デビュー盤と言っても完成度は高い。ダグ・ワトキンス(ベース)のほか、アート・テイラー(ドラム)とトミー・フラナガン(3., 4., 6.のピアノ)ならびにデューク・ジョーダン(1., 2., 5.のピアノ)が演奏をぐいぐいと牽引する。バックショット・ラ・ファンク(Buckshot La Funke)なるクレジット名のアルト・サックス奏者(4.を除く)も登場するが、これはキャノンボール・アダレイその人。当時すでにエマーシーと契約していたキャノンボールが変名で登場しているという訳である。
Louis Smith (tp) Buckshot La Funke [Cannonball Adderley](as: 1.~3., 5., 6.) Tommy Flanagan (p: 3., 4., 6.) Duke Jordan (p: 1., 2., 5.) Doug Watkins (b) Art Taylor (ds)