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2026年08月12日
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カテゴリ: 読書
角川新書「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」について、讀賣新聞特別編集委員の橋本五郎氏は7月19日付同紙に、次のような書評を書いている;




 モンゴル抑留は満州侵攻を助けてくれた見返りに、ソ連が自軍の確保した日本人捕虜をモンゴルに提供したことで生まれた。ソ連軍は目標にした数を確保するため、軍人だけでなく無差別に「日本人狩り」を行った。その結果民間人の割合は1割を超えた。劣悪の環境のため抑留者の死亡率はシベリア抑留を凌(しの)いだ。

 にもかかわらず、日本政府は誠実に対応したのか。シベリア抑留のような抑留者に関する外交文書は全くない。身元特定のための職員派遣も2018年になってからだ。抑留者は母国に見捨てられてきたのだ。その国に代わって著者はモンゴル諜報(ちょうほう)機関の門をこじ開け、公文書館に足を運び、1600人以上の抑留者の死亡記録を持ち帰った。全国を回って遺族を捜し出し記録を届ける「死亡記録配達人」となって、11道府県の抑留者20人の遺族に届けた。



 取材し、報道すればそこで一応終わる。それが記者の常だが、何かそこまで著者を駆り立てたのか。何よりも国の「不作為の罪」への怒りだった。知った者の務めとしてあなたたちのことは忘れません、という自責を込めた覚悟にほかならなかった。その意味でも「鎮魂の書」なのである。著者は抑留者の名前を一人一人、ふりがな付きで明らかにしている。「歴史は、個々の人間の人生の積み重ねである」という歴史観のもとで、大河のような歴史の中に一人一人の人生を織り込みたいと思ったからだ。

 同じジャーナリストとして、同じ一人の人間として、その崇高なまでの使命感に、読み終わってしばし頭(こうべ)を垂れざるを得なかった。


井手裕彦著「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」(角川新書)1320円

<いで・ひろひこ> 1955年、福岡県生まれ。ジャーナリスト、元読売新聞記者。著書に『命の嘆願書』。


2026年7月19日 讀賣新聞朝刊 12版 10ページ 「国家の不作為の罪 問う」から引用

 私が就職したのは、戦争が終わって25年くらい経ったころで、その会社の一年先輩の方は、自分の父親は敗戦のときにソ連軍の捕虜となってシベリアへ抑留されて、早めに帰国できたので自分が生まれたのだ、というような話をしてくれたのでした。シベリア抑留は人数も多かったせいか、政府も無視するわけにはいかず、それなりの保証のようなことをしたようであるが、モンゴル抑留者には何の手当もなしというのは、いかにも片手落ちである。せめて一人でも多くの国民に、戦争被害の実態を知ってほしいものである。





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最終更新日  2026年08月12日 14時31分45秒


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