海上自衛隊の護衛艦、「さざなみ」(4600トン)と「さみだれ」(4400トン)がソマリア沖に派遣された。日本関係の船舶を「海賊」から護るのだという。この海域で海賊が出没するようになった大きな要因はソマリアの混乱にあるのだが、その原因を作ったのはアメリカ政府にほかならない。
しばしば「アフリカの角」とも呼ばれるソマリアは戦略的に重要な位置にあり、独立が困難な環境にある。インド洋から紅海を経てスエズ運河を抜け、地中海へ入るための入り口に面しているため、このルートが封鎖されると船は南アフリカの喜望峰を回らなければならなくなる。そこで、ソマリアを自分の支配下に置きたいと考える人物、組織、あるいは国が出てくるわけである。
1993年にはアメリカ軍が軍事介入しているのだが、その時には首都モガディシュでの戦闘でヘリコプターが撃墜され、20名近い米兵が戦死、ソマリア側は数百名が殺されている。映画「ブラックホーク・ダウン」は、このときの戦闘を描いている。
この戦闘に参加したひとりが特殊部隊「デルタ・フォース」のウィリアム・ボイキン中将で、ジョージ・W・ブッシュ政権では国防副次官に就任している。ボイキンのボス、つまり国防次官はネオコン(新保守)の大物、ステファン・カンボーンであり、国防長官はドナルド・ラムズフェルドだった。いずれも戦争に積極的な人物だ。
ボイキンによると、彼はモガディシュで「奇妙な暗黒の印」を見つけたという。「邪悪な存在、暗黒のつかいルシフェルこそが倒すべき敵なのだと神は私に啓示されました」と教会で演説する様子が撮影されている。要するにイスラムを敵視するカルトの狂信的な信者なのだが、イラクで掃討作戦を指揮したのがこのボイキン。こんな人物を要職に就け、掃討作戦を任せる政権のカルト性も明らかだ。
その後もアメリカはソマリアでの活動をやめていない。アフリカの角がイスラムの勢力圏に入ることを阻止するため、「イスラム法廷連合」と戦う武装組織にCIAは秘密裏に、毎月10万から15万ドルを渡していた。ジブチに駐留中していた米国防総省のJCTF(統合連合機動部隊)を介して資金は提供されていたと報道されている。
しかし、この武装組織はイスラム勢力に敗北してしまう。2006年のことだ。そこで登場してきたのがエチオピア軍。とりあえず同国軍はイスラム勢力を首都から一掃するのだが、これは戦術的な撤退にすぎず、予想されていたように戦争は泥沼化した。アフガニスタンにしろ、イラクにしろ、ソマリアにしろ、中国戦線で苦しむ日本軍と同じような状況になっているとも言える。アメリカはソマリアを混乱させ、ソマリアの混乱は海賊を生み出し、その後始末に日本も参加しているわけである。
軍事負担の軽減と戦争ビジネスの維持拡大を実現するためには、日本が憲法第9条を廃止して部隊を世界に展開してほしいはずで、今後もアメリカ政府は日本に対して派兵を要求してくると覚悟する必要がある。ソマリアへの護衛艦派遣はその一里塚にすぎない。