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その工作はジョー・バイデン大統領の命令でアメリカ海軍によって実行されたとする記事
2020年7月に国務長官だったマイク・ポンペオはNS2を止めるためにあらゆることをすると発言、22年1月にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナへ侵攻したならNS2を前進させないと宣言、その翌月にはバイデン大統領はNS2を終わらせると記者に約束しました。
爆破の1分後、イギリスの首相だったリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったと昨年10月30日に報じられましたが、その前日、ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だと発表しました。トラスはその4日前に辞任しています。
アメリカやイギリスが他国のパイプラインを破壊したことを示している状況証拠とハーシュの記事は矛盾しません。その記事をハーシュは掲載する有力メディアは存在しなかったようで、個人的にインターネットで発表しています。
ハーシュは1969年11月、南ベトナムのカンガイ省ソンミ村のミライ集落とミケ集落における住民虐殺事件を記事にし、それをAPが配信しました。アメリカ陸軍の第23歩兵師団に所属、ウィリアム・カリー中尉が指揮する小隊が事件を引き起こしたのです。アメリカ軍によると、ミライ集落で347名、ベトナム側の主張ではミライ集落とミケ集落を合わせて504名が殺されています。
この出来事を従軍記者や従軍カメラマンは知っていたはずですが、沈黙していました。この虐殺事件を告発したアメリカ兵もいましたが、議員は動きません。ハーシュはその告発を知り、アメリカ本国で取材して記事にしたわけです。
ハーシュは1972年からニューヨーク・タイムズで働き始めますが、言論統制が強化され始めていた1979年に同紙を離れ、ニューヨーカーへ拠点を移しました。
バラク・オバマ政権が中東から北アフリカにかけての地域でアル・カイダ系武装集団を利用して侵略戦争を始め、ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行した2010年代の半ばにはイギリスのLRB(ロンドン・レビュー・オブ・ブックス)を執筆の拠点にしますが、そこからも追われ、一時期はドイツで書いていました。そこでも書けなくなり、今回は個人的に発信したのでしょう。
ハーシュは国際的に著名なジャーナリストであり、決して「反体制派」ではなく、アメリカを中心とする支配システムを否定していません。だからこそメディアの世界で彼はそれなりの影響力を維持してきたのでしょうが、そうした人物でも有力メディアでは記事を書けない状況になっています。
ジャーナリストのむのたけじが「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会で「ジャーナリズムはとうにくたばった」と語ったのは1991年のことでした。(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)
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櫻井 春彦
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