ロシアのウラジミル・プーチン大統領は2月21日に連邦議会で年頭の演説を行い、その中で「新START条約(戦略兵器削減条約)」の履行を停止、アメリカやNATOによる核施設の査察を許可しないと語った。ウクライナを舞台としてアメリカ/NATO軍がロシア軍と戦っているわけで、驚きではない。
ロシアとアメリカは軍事的な緊張を緩和するために幾つかの条約を結んだが、ソ連の消滅で自国が「唯一の超大国」になったと考えたアメリカの支配層はそうした束縛から逃れようとする。
ジョージ・W・ブッシュ大統領は2001年12月、「ABM(弾道ミサイル迎撃ミサイル)条約は、将来のテロリストやならず者国家によるミサイル攻撃から国民を守るための政府の方針を妨げている」と主張、02年6月に同条約から脱退した。また、ドナルド・トランプ大統領は2019年2月にINF(中距離核戦力)条約の破棄を通告、同年8月に失効している。
アメリカのジョー・バイデン大統領はポーランドを訪問する前日の今年2月20日、キエフを突如訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対して軍事的な支援を約束した。これまでアメリカ/NATO軍はウクライナの兵士を訓練、同国へ多額の兵器をウクライナへ供給、傭兵を送り込んできた。
ウクライナでの戦闘は2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権がアメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチによるクーデターで倒されたところから始まる。そのクーデターをヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民は拒否、ドンバスで内戦が始まったのだ。
内戦の当初、戦力はドンバスの反クーデター軍が勝っていた。ネオ・ナチ体制を嫌ったウクライナの軍人や治安機関の隊員が合流したことも大きかったと言われている。
アメリカ/NATOはクーデター政権を支えるために軍事力の増強を始めるが、それには時間が必要。そこで時間稼ぎに使われたのが「ミンスク合意」だ。昨年12月7日に アンゲラ・メルケル元独首相 は合意の目的が時間稼ぎにあったことを認めている。その直後、 フランソワ・オランド元仏大統領 はメルケルの発言を事実だと語った。
アメリカの属国と化しているドイツでは アンナレーナ・ベアボック外相が今年1月24日に欧州議会で「われわれはロシアと戦争している」と主張 、そうした状況でウクライナのロシア領攻撃をアメリカ政府が支援するなら、それはアメリカとロシアとの戦争ということになる。
話し合いによる解決をアメリカやイギリスの政府は潰してきた。戦況は一貫してウクライナに不利だが、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はアメリカ/NATOの命令に従い、ウクライナを破壊している。アメリカ/NATOはロシアを疲弊させることしか頭にない。
すでにウクライナは国として機能していないが、それでもアメリカ政府は戦争の継続を要求している。例えば、2月10日にはセレスト・ワランダー国防次官補がウクライナ軍によるクリミア攻撃に反対しないと発言、2月16日にはビクトリア・ヌランド国務次官がウクライナ軍によるクリミアの軍事基地攻撃を支持すると語っている。
アメリカやイギリスの支配層はウクライナでの戦闘を利用してロシアだけでなくヨーロッパを破壊しようとしている。この戦略はソ連が消滅して間もない1992年2月に作成された「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に書かれていること。
そのドクトリンに基づいてネオコン系シンクタンクPNACは「アメリカ国防の再構築」を2000年に発表、それに基づいてジョージ・W・ブッシュ政権は政策を策定する。その政策を打ち出す切っ掛けになったのは2001年9月11日の出来事である。
この日、何者かがニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)を攻撃、その出来事を利用してブッシュ政権は国内のファシズム化を推進、国外で侵略戦争を本格化させた。
2003年3月にアメリカ軍は従属国の軍隊を率いてイラクを先制攻撃しているが、それから間もない2004年から05年にかけてウクライナの選挙に介入した。大多数の住民がロシア語を話す東部と南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチの政権が樹立されることを阻止するため、抗議活動を演出したのだ。いわゆる「オレンジ革命」である。
ブッシュ政権が選んだビクトル・ユシチェンコは2005年1月から2010年2月まで大統領を務め、新自由主義を導入、大多数のウクライナ人が貧困化た。富は欧米の支配層へ流れたが、その手先になった一部のウクライナ人も巨万の富を築く。いわゆる「オリガルヒ」だ。
そこで、2010年1月から2月にかけて行われた大統領選挙ではヤヌコビッチが勝利する。その結果に反発したバラク・オバマ大統領は7月にヒラリー・クリントン国務長官をキエフへ乗り込み、新政権に対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、西側の植民地になることを望まないヤヌコビッチ大統領はこの要求を拒否。そこからオバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。