《櫻井ジャーナル》

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2023.10.30
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 イスラエル軍のガザに対する攻撃で8000人以上の住民が殺されたと言われている。イスラエル軍は地上部隊も投入しているようだが、まだ総攻撃を始めたわけではない。総攻撃を始めた場合、ハマスは全長500キロメートルのトンネルで結ばれた地下施設から反撃する。

 2006年7月から9月にかけてイスラエル軍の地上部隊がレバノンへ侵攻した際、ヒズボラに敗北、イスラエルが誇る「メルカバ4」戦車も破壊された。イスラエル軍はガザの地下施設を化学兵器で攻撃するとも言われているが、そう簡単ではない。

 今回の戦闘でハマスはアメリカ製の武器を使用していることが映像から確認されているが、これはアメリカ/NATOがウクライナへ供給したものだと推測されている。そうした兵器の約7割が世界の闇市場へ流れているという。

 ハマスは10月7日に奇襲攻撃したのだが、攻撃の準備に1年程度は必要だろう。その間、イスラエルの情報機関が察知できなかったのなら、大変な失態だ。ガザを収容所化している壁には電子的な監視システムが設置され、人が近づけば警報がなるはずだが、そうしたことはなかったようだ。

 また、​ アメリカ政府はハマスの奇襲攻撃から数時間後、2隻の空母、ジェラルド・R・フォードとドワイト・D・アイゼンハワーを含む空母打撃群を地中海東部へ移動させた ​。レバノンにいるヒズボラ、あるいはイランの軍事介入を牽制することが目的だとされているが、それほど早く艦隊を移動できたのは事前に攻撃を知っていたからではないかと考える人もいる。

 そもそもハマスの創設にはイスラエルが深く関係している。ハマスは1987年12月にシーク・アーメド・ヤシンがイスラム協会の軍事部門として創設した。イスラム協会が設立されたのは1976年。その前、1973年にはムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)が作られているが、いずれもシン・ベト(イスラエルの治安機関)の監視下で行われた。

 イスラエルは第3次中東戦争で占領地を拡大させた。その際、イスラム諸国は動きが鈍く、最も勇敢に戦ったのはヤセル・アラファトが率いるファタハだった。PLO(パレスチナ解放機構)はファタハが中心的な組織だ。そこでイスラエルはアラファトを失脚させようと必死になる。そのアラファトを抑え込むため、イスラエル政府はハマスを創設させたのだ。

 シーモア・ハーシュも書いているように、​ ベンヤミン・ネタニヤフは首相に返り咲いた2009年、PLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとしている ​。そのためネタニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。ところが今回、カタールはイスラエルを厳しく批判、敵対関係にある。アメリカとイスラエルはハマスの罠に落ちた可能性もあるだろう。

 アメリカのジョー・バイデン政権はウクライナでロシアに敗れた惨状から人びとの関心をパレスチナへ向けることに成功、ガザからパレスチナ人を一掃、さらにレバノンやシリアを占領して地中海東岸の天然ガスをイスラエルに独占させるという道筋がハマスの奇襲攻撃で見えたのだが、ガザに対する攻撃がそうした道筋を消した。

 ムーサ・アブ・マルズークが率いるハマスの代表団は10月26日、モスクワでロシアの政府要人と会談した。マルズークはロシアへ向かう前、ドーハでイランのバゲリ・カニ外務副大臣と会っている。そして​ 10月29日、イランのエブラヒーム・ライシ大統領はイスラエルが「レッドライン」を越えたと宣言 ​、またロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣によると、近日中にパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長がモスクワを訪問してウラジミル・プーチン大統領と話し合うという。

 すでにレバノンとの国境周辺でイスラエル軍とヒズボラの戦闘が始まり、イラクのアメリカ軍基地だけでなく、シリア領内に不法駐留しているアメリカ軍も攻撃されている。イラン軍は軍事演習を始めた。

 ヒズボラ単独でもイスラエル全域を攻撃できる戦力があるが、イランが関与してくるとイスラエルだけでは対応できない。アメリカ軍が介入してくると、世界大戦へ発展する可能性があると懸念されている。アメリカ軍には単独でイランを制圧する戦力はなく、イランはホルムズ海峡を封鎖できる。ガザに対するイスラエル軍の攻撃ではサウジアラビアもパレスチナ側につくはずで、中東から「親イスラエル国」へ石油が供給されなくなる事態も想定できる。ヘンリー・キッシンジャーが企画したかつての「オイル・ショック」とはわけが違う。

 ​ ハマスの代表団がロシアを訪問する数日前、プーチン大統領がロシア軍参謀総長のヴァレリー・ゲラシモフと会談するため、ロシア軍の南部軍司令部を訪れた ​。原子力潜水艦から射程5500キロの弾道ミサイルを発射したこと、カムチャッカから射程1万2000キロの弾道ミサイルを発射したこと、TU-95爆撃機から射程5500キロの巡航ミサイルを発射したことについて、ゲラシモフはプーチンに報告したようだ。アメリカに対する報復攻撃のテストだったと見られている。






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最終更新日  2023.10.30 13:19:44


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