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すでにウクライナ軍は武器弾薬も兵士も不足、ロシア軍に勝てないことを西側の有力メディアも認めている。そうした中、ウクライナ軍はアメリカ軍のP-8ポセイドンと連携、セバストポリを「スカルプ(イギリス版の名称はストーム・シャドウ)」とS-200でロシア黒海艦隊の「司令部」を攻撃したのだが、本ブログでも繰り返し書いているように、そこには保守要員と警備員しかいない。指揮、統制、通信、コンピュータに関する部門は全てZKP(予備司令部)の地下にあり、その場所を特定するのも攻撃するのも難しいとされている。 ところが、ウクライナ軍の特殊部隊は9月25日、ロシア黒海艦隊のビクトル・ソコロフ司令官と33名の将校を殺害したと発表した。そのソコロフ司令官は発表の翌日、ロシア軍のリモート会議に登場し、ウクライナ側の情報が間違っていることを示した。その情報は西側の情報機関が提供していたはずで、その西側情報機関も赤っ恥をかいた形だ。 その会議でロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、9月だけで戦死したウクライナ兵は1万7000人に達すると発表した。6月4日にウクライナ軍がアメリカ/NATOの命令で始めた「反転攻勢」は破滅的な失敗に終わり、ロシア政府の推計によると、ウクライナ軍の戦死者数は7万5500人に達する。アメリカ側の推計でも、昨年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めてから約50万人のウクライナ兵が戦死したという。ちなみに、ロシア側の戦死者はその1割、つまり5万人程度だと考えられている。 これだけの犠牲を払っているにもかかわらず、ウクライナ軍は前に進めていない。ロシアが構築した「スロビキン防衛線」を突破できていないのだ。 すでにアメリカ/NATOの兵器庫は空で、生産力はロシアの半分だとも言われている。アメリカやイギリスがウクライナへ劣化ウラン弾やクラスター爆弾といった問題のある兵器を供給した理由のひとつはそこにあるともいう。 アメリカ/NATOはウクライナ軍に「バンザイ突撃」を繰り返させ、ウクライナ人全体に「総玉砕」を命じている。そこで必死に兵員を集めているのだが、必要な人数の約半数しか集められず、訓練もできていないという。ウクライナ国内で訓練できないため複数の国に分けられているという問題もある。強引に兵士を集めても社会が機能しなくなる。 ここにきてロシア政府は旧ソ連圏諸国を除く国々にガソリンやディーゼルを輸出することを禁止、注目されている。国内で不足しているとされているのだが、元CIA分析官のラリー・ジョンソンはロシア軍が大規模な軍事作戦を計画、その準備を進めている可能性があるとしている。
2023.09.30
昨年12月までNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めていたアンソニー・ファウチが現役時代、CIA本部でCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)の分析に参加したと指摘されている。本部へ入る際、彼は記録を残さなかった、つまり秘密裏に入ることができたという。 ファイザーやFDA(食品医薬品局)が75年間隠そうとしていた「ワクチン」に関する文書を医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワは分析、アメリカの国防総省はバラク・オバマ大統領の時代から「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めているという結論に達した。 この「ワクチン」の実態は遺伝子操作薬で、人間の細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させ、抗体を作るというもの。このスパイク・タンパク質が病気の原因になるため、人間の免疫システムは細胞を病気の原因だと認識して攻撃、炎症を引き起こす。そうした炎症を抑えているのが免疫の低下にほかならない。いわばAIDS状態にするわけで、VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も使われ始めている。 接種が始まる前からADE(抗体依存性感染増強)を懸念する人は少なくなかったが、懸念された通りになっているようだ。「ワクチン」を接種した後、それまで感染したことのない、さまざまな細菌性の病気にかかる人がいるとイゴール・チュドフは指摘しているが、そうした状態がVAIDSだ。 また、DNAの混入、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入といった問題も指摘されている。LNPは卵巣を含むあらゆる臓器に蓄積、生殖システムが破壊される可能性があり、人類の存続を危うくしかねない。 CIA本部を秘密裏に訪れたファウチが所長を務めていたNIAIDは「エコヘルス連合」会長のピーター・ダザックを介し、武漢病毒研究所(WIV)の石正麗を中心とするチームへ資金を提供していた。エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)にアドバイスする立場にもある。 このチームは、SARSに似たコロナウイルスの「スパイク・タンパク質」が人間などの細胞の「ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)」と結びつくメカニズムを研究、石はノースカロライナ大学のラフル・バリックとも協力関係にあった。 WIVはテキサス大学のガルベストン・ナショナル研究所やカナダのNML(ナショナル細菌研究所)と共同で細菌に関する研究を行い、タミフルやレムデシビルを開発したアメリカの製薬会社ギリアド・サイエンシズともつながる。 そのほか、武漢大学はデューク大学と共同で2013年に昆山杜克大学を設立しているが、デューク大学はアメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)と関係している。アメリカと中国との関係は2014年頃まで良好で、センシティブな研究を共同で行えたのだろう。DARPAは2018年からコウモリからヒトへコロナウイルスを伝染させる研究を開始、中国との国境近くに研究施設を建設している。 エコヘルス連合は2014年以来、メタバイオタのパートナーで、アメリカのUSAID(国際開発庁)のプロジェクトに参加。つまりCIAの資金を受け取っていた。このプロジェクトは世界規模の新しい疾病の脅威を予測し、予防することが目的だという。メタバイオタは2014年にエボラ出血熱に関して研究していたが、状況を悪化させたと非難されている。アメリカ国防総省はウクライナでも生物兵器の研究開発を行なっているが、その研究開発施設の運営にエコヘルス連合も参加しているという。 ウクライナでアメリカの生物兵器の研究開発施設を建設するという話が流れたのは2013年のことだった。アメリカ国防総省がハリコフ周辺にレベル3のバイオ研究施設を作ろうとしていると訴えるリーフレットがまかれたのだ。実際、建設されたとされている。 ジャーナリストのディリヤナ・ゲイタンジエワによると、ドニプロ、ミコライフ、リビフ、ウジホロド、テルノポリ、ビンニツヤ、キエフにも施設があるのだが、各研究所はハリコフより前の2010年から13年の間に建設されたという。こうした研究所はCBEP(共同生物学的関与プログラム)の下でDTRA(国防脅威削減局)から資金提供を受けていた。 アメリカ国防総省はウクライナだけに研究施設を建設したわけではない。中東、東南アジア、アフリカ、そしてジョージアを含む旧ソ連諸国にもある。 特に注目されているのはジョージアにあるルガー・センター(国立疾病管理公衆衛生センター)で、近くにアメリカ軍のバジアニ空軍基地がある。センターで軍事プログラムを担当しているのはアメリカ陸軍医療研究ユニット・ジョージアの生物学者と民間業者で、CH2Mヒル、バテル、そしてメタバイオタが含まれる。 彼らは外交特権を与えられているため、ジョージア政府の直接的な支配下に置かれることなく、外交特権のもとに米国政府のために仕事をすることができる。他の国でも同じ仕組みになっているようだ。その研究内容は生物兵器(炭疽病、野兎病)やウイルス性疾患(クリミア・コンゴ出血熱など)の研究、将来の実験のための生物試料の収集など。 バテルはアメリカの国土安全保障省の契約に基づき、メリーランド州のフォート・デトリックでバイオ研究所を運営、極秘実験を行なってきた。 この基地はアメリカにおける生物化学兵器の研究開発で中心的な役割を果たしてきた。日本の医学界が第2次世界大戦中に行った生物化学兵器の開発で生体実験を担当していた第731部隊の資料はここに持ち込まれ、研究者が派遣されている。同部隊の責任者だった石井四郎中将をはじめ、生物化学兵器の関係者の責任をアメリカ政府は問わなかった。 エコヘルス連合やメタバイオタはRSTP(ローズモント・セネカ・テクノロジー・パートナーズ)という投資ファンドから資金を得ていた。このファンドは2009年にハンター・バイデンとジョン・ケリーの連れ子によって設立されたローズモント・キャピタルの下部組織で、ハンターが率いていた。言うまでもなく、ハンターはジョー・バイデン大統領の息子である。RSTPの共同設立しゃであるニール・キャラハンはメタバイオタの顧問委員会メンバーでもある。 ロシア軍は昨年2月24日から巡航ミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃、機密文書を回収した。その中に含まれていた生物化学兵器に関する約2000文書の分析を行った結果、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したという。 回収文書の分析を指揮してきたロシア軍のイゴール・キリロフ中将によると、ウクライナにはアメリカのDTRAが管理する研究施設が約30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていた。ロシア国防省が発表したスライドによると、アメリカの民主党を病原体研究の思想的な支柱とし、その思想を実体化させる役割を負っているのが国防総省やCDCを含むアメリカの政府機関だ。 キリロフが記者会見でウクライナにおける生物兵器の問題について発表した翌日の3月8日、アメリカの上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官(当時)はウクライナの施設で研究されている生物化学兵器について語っている。マルコ・ルビオ上院議員の質問を受け、兵器クラスの危険な病原体がロシア軍に押収されるかもしれないと語ったのだ。つまりウクライナの研究施設で生物化学兵器の研究開発が行われていたことを否定しなかった。 COVID-19騒動を操ってきたのはアメリカの国防総省とCIAであり、その背後には両機関を動かす強大な私的権力が存在していると考えるべきだろう。マンハッタン計画と似た構図に見える。その私的権力を直視している日本人が多いとは思えない。
2023.09.29
厚生労働省は9月26日、7月分の「人口動態統計速報」を発表した。それによると死亡者数は12万0524人。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種が始まる前に比べるて大幅に増えている状況に変化はない。ファウチとCIAの連携 9月26日にはアメリカ下院コロナウイルス委員会のブラッド・ウェンストラップ委員長が保健福祉省の監察総監へ書簡を提出しているが、その中で、昨年12月までNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めていたアンソニー・ファウチがCIA本部へ出向き、同局の分析に参加した指摘している。その際、入局の事実は記録されなかったという。 COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)を引き起こすとされるSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)に関する分析を行ったのだろうが、この問題では早い段階から中国湖北省のWIV(武漢病毒研究所)が注目されていた。SARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が2019年12月の終わりに発見された場所の近いことがその一因だ。 中国のアカデミーやビジネス界はアメリカ支配層の影響下にあり、中国科学院のWIVへはNIAIDがコロナウイルスの研究費として2014年からエコヘルス連合を介してピーター・ダスザクの「エコヘルス連合」へ数百万ドルを提供、その一部は武漢病毒研究所の石正麗へ渡っていると伝えられている。NIAIDの上部機関であるNIH(国立衛生研究所)からWIVの石正麗へ研究費として370万ドルが提供されていたとも伝えられた。ちなみに、エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)にアドバイスする立場にもある。 石正麗はノースカロライナ大学のラフル・バリックと共同で2015年11月にSARSウイルスのスパイク・タンパク質をコウモリのウイルス(SHC014-CoV)のものと取り替え、新しいウイルスを作り出すことに成功している。コウモリのコロナウイルスを操作してほかの種を攻撃させる方法をバリックは石に教えたともいう。その後石正麗はWIVへ戻った。 WIVで石正麗を中心とするチームはSARSに似たコロナウイルスのスパイク・タンパク質が人間などの細胞のACE2(アンジオテンシン変換酵素2)と結びつくメカニズムを研究している。 WIVと同じように注目されている武漢大学動物実験センターはアメリカのデューク大学を関係が深く、両大学は2013年に昆山杜克大学を創設した。デューク大学はアメリカ国防総省の「DARPA(国防高等研究計画局)」と協力関係にあり、そのDARPAは2018年からコウモリからヒトへコロナウイルスを伝染させる研究を開始、中国との国境近くに研究施設を建設している。 2019年12月に武漢で発見された肺炎患者と同様、翌年の2月4日には横浜港から出港しようとしていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で現れた患者の症状もSARSと似ていたようだ。非常に危険な伝染病が出現したような印象を持った人は少なくないだろう。そしてWHO(世界保健機関)は2020年3月11日に病原体が特定されないままパンデミックを宣言、騒動が始まる。 しかし、世界規模で武漢やクルーズ船のような患者が出てくるようなことはなかった。例えば、ドイツではSARS-CoV-2の危険性は通常のレベルを超えていないと指摘し、戒厳令的な政策を推進したことは間違いだとする内務省の報告書がリークされた。シュピーゲル誌によると、内務省はこの文書についてステファン・コーンという内務省の官僚が個人的に書いたものにすぎないと弁明しているが、実際は同省のKM4というチームが作成したとものだという。 イギリス政府もSARS-CoV-2に過剰反応するべきでないと考え、3月19日にCOVID-19をHCID(重大感染症)から外している。エボラ出血熱のようなウイルス性出血熱やペスト、天然痘などとは違うと宣言したわけである。 WHOやアメリカのCDC(疾病予防管理センター)はパンデミック宣言を正当化するため、2020年4月、医学的な矛盾がなく明白な別の死因がないならば、あるいは適度な確かさがあるならば、COVID-19を死因としてかまわないと通達した。 また、パンデミックを演出するため、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査も利用された。これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術だが、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、ウイルス自体を見つけることはできない。 増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性も増える。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。 ちなみに、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40。Ct値をこうした数値に設定したならPCR検査は無意味だが、結果だけは出るので人びとを騙す材料には使える。この検査技術を開発、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRをウイルスの検査に使ってはならないと語っていた。 実は、PCRを診断に使う危険性をアメリカの有力紙も指摘している。例えばニューヨーク・タイムズ紙は2007年1月に掲載した記事で、PCRのような高感度の簡易検査は、伝染病が蔓延していると誤って判断させる原因になりうると警鐘を鳴らしている。 「パンデミック」と聞き、黒死病のように人びとが次々と死んでいく光景を連想する人もいたかもしれないが、そうした事態にはなっていなかった。パンデミックを宣言できたのは「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が流行(2009年1月から10年8月にかけての時期に)する直前に定義の変更があったからだ。「病気の重大さ」、つまり死者数が多いという条件が削られていたのだ。 パンデミック騒動を利用し、少なからぬ国が監禁政策(ロックダウン)をとり、社会の収容所化が進んだ。生産活動や商業活動は麻痺、個人経営の店や中小企業を中心にして経営状態が悪化し、倒産に追い込まれるケースも少なくない。サプライ・チェーンはダメージを受けた。 また個人を監視、管理する仕組みの導入も図られている。その核になるシステムはデジタルID。欧州委員会は2019年に公表した指針の中でEU市民向けの「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に導入する計画を立てている。 こうした騒動を利用してWEF(世界経済フォーラム)は資本主義の「大々的なリセット」を主張している。そのWEFを率いるクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組に出演、そこでマイクロチップ化されたデジタル・パスポートについて話している。まずチップを服に取り付けるところから始め、次に皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合するというのだ。一人ひとりの感情を監視するだけでなく、思想や記憶の管理も考えている。 しかし最大の問題は、COVID-19を口実にして人びとが接種させられた「COVID-19ワクチン」にほかならない。 医薬品業界で研究開発に関わってきたサーシャ・ラティポワの分析によると、「COVID-19ワクチン」の接種計画はオバマ政権の時代にアメリカの国防総省が始めている。 この「ワクチン」計画は、2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と関係している。「SDGs(持続可能な開発目標)」を実現するため、個人を特定するためのシステムに記録されていない人びとを管理する必要があるとされ、デジタルIDの導入が進められることになった。 「将来の『疾病X』の発生は避けられない」と「予測」し、将来のウイルス侵入に対する永遠の警戒を呼びかけているCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)は今後、「ワクチン」計画で中心的な役割を演じると考えられている。 この団体はWEF、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストなどによって設立された。ウェルカム・トラストの理事長だったジェレミー・ファラーは現在、WHOの主任科学者だ。 ウェルカム・トラストは2020年5月、ウェルカム・リープなる会社を創設しているが、そのCEOに選ばれたレジーナ・デューガンはアメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)で長官を務めていた人物である。 ジョー・バイデン政権は今年7月21日、生物学的脅威や病原体に対する備えと対応を指揮するというOPPR(パンデミック対策対応室)の発足とポール・フリードリックス退役少将のOPPR初代室長就任を発表している。これもCOVID-19とアメリカ国防総省との関係を示していると言えるだろう。
2023.09.28
ウクライナ軍の特殊部隊は9月25日、セバストポリにあるロシア黒海艦隊のビクトル・ソコロフ司令官と33名の将校を殺害したと発表したのだが、その翌日、ロシア軍のリモート会議に殺されたとされた軍幹部が登場、ウクライナ側の主張が間違っていたことを示した。 ウクライナ軍はアメリカ軍のP-8ポセイドンと連携、セバストポリを「スカルプ(イギリス版の名称はストーム・シャドウ)」とS-200で攻撃したと見られている。 しかし、本ブログでも書いたように、破壊された「司令部」には保守要員と警備員しかいない。指揮、統制、通信、コンピュータに関する部門は全てZKP(予備司令部)の地下にあり、その場所を特定するのも攻撃するのも難しいとされている。 過去の実績からするとロシア軍の防空能力は7割から8割のミサイルを撃墜でき、アメリカ軍の防空システムに比べると性能は格段に良いのだが、完全ではない。撃墜を免れたミサイルやドローンが命中する可能性もある。そこで、地下施設へ移動していたのだ。こうしたことをウクライナ軍もアメリカ/NATO軍も知っていたはずで、すぐにバレるであろう嘘をなぜついたのかは謎だ。
2023.09.27
カナダのアンソニー・ロタ下院議長は9月22日、議会にウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領のほか、ヤロスラフ・フンカなる人物を招待していた。下院議長はフンカを「ウクライナの英雄、カナダの英雄」と呼んで功績に称え、議場にいたゼレンスキーを含む人びとは一斉に立ち上がり、拍手するのだが、その光景を見て抗議の声を上げる人が現れた。 フンカは第2次世界大戦中、ソ連軍と戦ったとロカ議長は讃えているのだが、彼の所属部隊は第1ウクライナ師団(親衛隊ガリシア師団)、つまりナチスのSS(武装親衛隊)だったのだ。この師団は1943年半ばにハインリヒ・ヒムラーが8万人のウクライナ人志願者で編成したという。この師団はユダヤ人、ポーランド人、ベラルーシ人、スロバキア人に対する残虐行為でも知られている。 こうした背景をロタが知らなかったとは考えにくい。正体不明の人物を招待するとは思えず、常識的に考えて、カナダ政府は事前にチェックしたはずだ。 抗議を受け、ジャスティン・トルドー首相の事務所はフンカとナチス親衛隊の関係を知らず、全て下院議長が決めたと主張、下院議長は全て自分の責任だとして謝罪した。大戦中、ソ連軍が戦った相手はナチス体制下のドイツ軍とその同盟者である。何の情報も持っていなかったとしても、ロタ議長はフンカとナチスの関係に気づかなければおかしい。 そもそもトルドー政権で副首相と財務大臣を兼任しているクリスティア・フリーランドの家系はナチスと関係が深い。彼女の母方の祖父にあたるマイケル・チョミアックはポーランドで発行されていたファシスト系新聞の『クラキフスキー・ビスティ』で編集長を務めていた人物。ドイツに占領されていた当時のポーランド政府の要人と一緒に撮影された写真も残っている。チョミアックとドイツ軍の関係は、ワルシャワにあるポーランド政府公文書館でドイツ軍の記録から判明している。彼はウィーンでドイツのスパイ活動やプロパガンダ活動の訓練を受けたという。カナダは第2次世界大戦後、約2000名のナチス親衛隊を受け入れ、保護したと言われている。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、ナチスはウォール街やシティ、つまり米英の金融資本から資金援助を受けていた。そうした金融資本が作った情報機関がイギリスのMI6やアメリカのCIAだ。 ナチス政権に率いられたドイツ軍は1941年6月にソ連に対する奇襲攻撃「バルバロッサ作戦」を開始。西側には約90万人だけを残し、310万人を投入するという非常識なものだが、これはアドルフ・ヒトラーの命令で実行されたという。 1941年7月にドイツ軍はレニングラードを包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達。ヒトラーはソ連軍が敗北したと確信、再び立ち上がることはないと10月3日にベルリンで語っている。 また、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官だったヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しながら傍観していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) しかし、ソ連軍の抵抗でこうした予想通りにことは進まず、ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入する。ここでソ連軍に敗北、1943年1月に降伏した。この段階でドイツの敗北は決定的。ここからアメリカやイギリスは慌てて動き始める。 1943年1月にフランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相はフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談、「無条件降伏」という話が出てくるが、この条件はドイツの降伏を遅らせる一因になった。米英にはソ連対策を講じるための時間的な余裕ができたわけだ。 その年の7月に両国軍は犯罪組織の協力を得てシチリア島へ上陸、ナチスの幹部はアレン・ダレスたちと接触し始めた。「サンライズ作戦」である。ダレスは戦時情報機関OSSの幹部だったが、その前はウォール街の弁護士だった。その後、アメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させ、保護、そして雇用する。「ラットライン」、「ブラッドストーン作戦」、「ペーパークリップ作戦」などだ。 1943年春、ウクライナのステパン・バンデラ派OUN-BはUPA(ウクライナ反乱軍)として活動し始め、その年の11月には「反ボルシェビキ戦線」を設立した。UPAは「民族浄化」に乗り出し、ユダヤ人やポーランド人の殺戮を始める。その方法は残虐で、妊婦の腹を引き裂いて胎児や内蔵を取り出し、脅しのために灌木に引っかけるといったことをしたという。(Grzegorz Rossolinski-Liebe, “Stepan Bandera,” ibidem-Verlag, 2014) 反ファシズムのフランクリン・ルーズベルト米大統領は戦争終結後、ウォール街とファシストとの関係を追及する姿勢を見せていたと言われているが、1945年4月12日、ドイツが降伏する直前に急死する。必然的に彼が率いていたニューディール派の力は弱まり、ウォール街がホワイトハウスの実権を取り戻した。 ドイツが降伏するとOUN-Bを含む東ヨーロッパの反ソ連勢力はアメリカやイギリスへ接近、オーストリアのインスブルックへ逃げ込んでいる。1945年夏になると、バンデラたちはドイツの情報法機関を統轄することになるラインハルト・ゲーレンの機関に匿われることになる。当時、ゲーレンたちはアメリカの配下に入っていた。 反ボルシェビキ戦線は1946年4月にABN(反ボルシェビキ国家連合)へ発展、APACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)と共にWACL(世界反共連盟。1991年にWLFD/世界自由民主主義連盟へ名称変更)の母体になった。 こうした背景を考えると、カナダの議会でナチス親衛隊の元隊員がたたえられるのは必然であり、ウクライナを舞台とした戦闘は第2次世界大戦で米英が行ったナチスを利用した対ソ連戦の続きだということがわかる。バラク・オバマ政権がウクライナにネオ・ナチ体制を成立させたのも必然なのだ。
2023.09.27
岸田文雄首相は9月20日、大西洋評議会から「グローバル市民賞」を授与された。今年5月に広島で開催されたG7サミットで、議長国として「功績があった」と評価されたという。授賞式では欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長も話をしているが、彼女は広島や長崎に原子爆弾を投下したのはロシアだと思っているようで、話題になっている。
2023.09.26
セバストポリのロシア海軍基地に対する攻撃で使われた兵器はイギリスとフランスが共同で開発した空中発射型ステルス長距離ミサイル「スカルプ(イギリス版の名称はストーム・シャドウ)」のようだが、地上攻撃用に改造された相当数のS-200も発射されていたようだ。 9月13日の攻撃では潜水艦が損傷を受け、穴の空いた船体の写真がインターネット上を流れた。修復不能だとコメントする「専門家」もいたが、船体に変形がないことから損傷は表面的で修復は容易だと指摘されている。その損傷が軽微だったことから、命中したミサイルは450キログラムの爆薬を搭載したスカルプでなく小型ミサイルだと見られている。 9月22日にはセバストポリの「司令部」にミサイルが命中したが、ウクライナでロシア軍が戦闘を始めた段階でその「司令部」に常駐している人間は保守要員と警備員だけになったとされている。指揮、統制、通信、コンピュータに関する部門は全てZKP(予備司令部)の地下へ移動したのだ。 こうした攻撃は窮地に陥っているジョー・バイデン政権の戦争推進グループとウクライナ政府の宣伝に使われているだけで、軍事的な意味はほとんどないだろう。むしろ問題は射程300キロメートル、最大マッハ3のATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)にある。ATACMSはMLRS(多連装ロケットシステム)とHIMARS(高機動砲兵ロケットシステム)から発射できる。 アントニー・ブリンケン国務長官は9月10日、ABCニュースのインタビューの中で、この兵器を近いうちにウクライナへ引き渡すと発言、しかも目標の決定はウクライナが決めることだとした。この兵器でウクライナ軍がロシア領深くを攻撃することを容認しているということだ。ジョー・バイデン大統領もウクライナ側へそのように伝えたという。 すでにNATOはロシアとの国境近くにISR(情報、監視、偵察)のネットワークを構築、それらやP-8やRC-135、あるいはRQ-4Bのような無人機などとATACMSをリンクさせてロシアを攻撃する体制ができている。 ロシア外務省は昨年9月15日、ウクライナへのATACMS引き渡しは「レッドライン」を越す行為であり、ワシントンを「紛争の当事者」にするとアメリカ政府に警告している。ロシア軍の補給線やロシア領の奥に住む人びとを攻撃できるからだ。 ATACMSがウクライナへ供給された場合、ロシア軍はNATOのISRを破壊せざるをえない。もしロシア政府が戦闘のエスカレートを恐れて逡巡した場合、ウラジミル・プーチン政権は厳しい状況に陥る可能性が大きい。 一方、来年の大統領選挙で敗北すると予測されているジョー・バイデン政権は何らかのショッキングな事態を作り出そうとしているだろう。パンデミックで選挙どころではないという状況を作る可能性もあるが、今の様子を見ていると、ロシア軍にNATO加盟国を攻撃させようとしている。 戦争を推進してきたネオコンは核戦争で人類が死滅する道を選ぶか、ウクライナでの敗北を認めて自分たちが破滅するかという選択を迫られている。彼らはすでに「ルビコン」を渡ってしまったのだ。
2023.09.26
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はニューヨークへ乗り込み、9月19日に国連総会で演説した。ゼレンスキー政権の主張と事実の乖離を西側の有力メディアも認めざるをえなくなり、会場は冷たい雰囲気だった。 その演説の翌日、パンデミックの予防、準備、対応(PPPR)に関する宣言を国連総会のダニエル・フランシス議長が承認した。この文書を起草した人物はパンデミック条約やIHR(国際保健規則)改正案を書いた人物と同じで、パンデミックを口実にして世界各国から主権を取り上げ、WHOを支配している私的権力が世界を支配する仕組みを作り上げようとしている。 こうした計画を立てている人びとはPPPR宣言を全会一致で採択しようとしたようだが、9月17日には宣言に反対する書簡がフランシス議長宛に出されている。署名した国はベラルーシ、ボリビア、キューバ、朝鮮、エリトリア、イラン、ニカラグア、ロシア、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの11カ国だ。こうした国々の反対を無視、強引に議長が承認したのである。 こうした政策を推進する勢力はしばしば「グローバル主義者」、あるいは「全体主義者」などと呼ばれるが、実態はシティやウォール街を拠点とする私的権力であり、1970年代から進められた「民営化」や「規制緩和」など新自由主義的な政策で急速に力を強めたのである。 アメリカの第32代大統領、フランクリン・ルーズベルトは1938年4月29日、ファシズムについて、私的権力が国を凌駕する力を持ち、政府を所有している状態だと定義した。 また、ベニト・ムッソリーニが1933年11月に書いた「資本主義と企業国家」によると、巨大資本の支配するシステムが「企業主義」で、それは資本主義や社会主義を上回るものだとしている。これが彼の考えたファシズムである。 ルーズベルトやムッソリーニの定義によると、TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)とはファシズム協定だと言える。私的権力が支配するWHOに各国政府を凌駕する権力を与えるPPPRも世界をファシズム化する一環だ。「資本主義の大々的なリセット」も目的は同じである。 強大な私的権力が支配する世界では強者へ富は流れていく。「富める者が富めば貧しい者にも富がしたたり落ちる」という「トリクルダウン理論」なるものは人びとをファシズムへ導く虚言にすぎない。 この仕組みを成立させるため、全人類を監視、そして管理する仕組みを彼らは作り上げてきた。第2次世界大戦後、アメリカでは情報操作を目的とした「モッキンバード」プロジェクトは開始、市民を監視するためにFBIは1950年代からCOINTELPRO、CIAは1967年からMHケイアスを始めた。 電子技術が飛躍的に進歩、アメリカの電子情報機関NSAが全ての通信を傍受、記録、分析するシステムを築く。そのNSAはイギリスの電子情報機関GCHQとUKUSA(ユクザ)を組織、その下にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関を従えた。いわゆる「ファイブ・アイズ」だ。イスラエルの8200部隊(ISNUとも呼ばれている)はNSAやGCHQと同等の立場で手を組んでいる。 1965年4月に本格的な商業衛星インテルサット1号が打ち上げらたが、66年にNSAはPROSTINGというプログラムを始める。その中で西側の通信を傍受するためにNSAやGCHQが開発した地球規模の通信傍受システムがECHELON。ソ連の通信衛星をターゲットにしたプログラムはTRANSIEMTだ。(The Northwest Passage, Yakima Research Station (YRS) newsletter: Volume 2, Issue 1, January 2011 & Volume 3, Issue 7, July 2012) ECHELONの存在が明るみに出たのは1988年。ロッキード・スペース・アンド・ミサイルで働いていたマーガレット・ニューシャムが議会でそのシステムについて議員に話したのだ。彼女によると、NSAは共和党のストローム・サーモンド上院議員の電話を盗聴対象にしていたという。(Duncan Campbell, 'Somebody's listerning,' New Statesman, 12 August 1988) 現在、米英の私的権力は「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)パンデミック」を演出、それを口実にしてデジタルIDを世界に広めて人びとを監視する計画だ。チップ化し、将来的には脳に埋め込んで外部の巨大コンピュータと交信させると公言している。人間の端末化である。 この計画の背後には、2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」がある。その中で示された「SDGs(持続可能な開発目標)」を実現するため、個人を特定するためのシステムに記録されていない人びとを管理する必要があるとされ、デジタルIDの導入が進められることになったのだ。 2016年5月には国連本部でどのように導入を進めるかが話し合われ、ID2020というNGOが設立される。このNGOにはマイクロソフトも関係している。 WHOはPPPRの目的を「COVID-19のパンデミックから学んだ教訓を生かすこと」だとしているが、ロックダウンや「COVID-19ワクチン」の強制接種に失敗したことを反省しているのだろう。ロックダウンはソフトな戒厳令であり、監視システムの強化や生活のデジタル化は社会の収容所化にほかならない。強制接種は人びとに毒物を注入し、免疫システムを破壊することを意味する。 PPPRによって各国政府、もちろん人びとの意思に関係なく、私的権力の計画通りにことを進めたいのだろう。こうした彼らの計画を「カネ儲け」の視点だけから見ることは危険だ。
2023.09.25
クリミア半島のセバストポリをロシア海軍の黒海艦隊は拠点にしている。そこにある艦隊の「司令部」に対する攻撃に使われた2機の長距離巡航ミサイルはフランスから供与された「スカルプ」だと報道されている。これはイギリスとフランスが共同開発した空中発射型ステルス長距離兵器で、輸出版の射程距離は250キロメートルだという。なお、フランスで配備されているタイプの射程距離は500キロメートル以上。このミサイルはアメリカ軍のP-8ポセイドンと連携したウクライナ軍のSu-24爆撃機によって発射された。 戦闘状態にある現在、破壊された「司令部」は使われていなかったと言われている。本ブログでも書いたように、建物には保守要員と警備員しかいないのだという。指揮、統制、通信、コンピュータに関する部門は全てZKP(予備司令部)の地下にあり、その場所を特定することも攻撃することも難しい。軍の幹部がわざわざ地上の「司令部」に集まったとする話には疑問がある。 しかし、メディアの扇状的な報道もあり、ロシア国内ではウクライナ人をロシアとの戦闘に使っているNATO諸国に対して強い姿勢で臨むべきだという意見が強まっているという。 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は9月10日、ABCニュースのインタビューの中で、射程300キロメートルのATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)を近いうちにウクライナへ引き渡すと発言、しかも目標の決定はウクライナが決めることだとした。ジョー・バイデン大統領もウクライナ側へそのように伝えたという。その計画はバイデン政権の総意だと言えるだろう。 ロシア外務省は昨年9月15日、ウクライナへのATACMS引き渡しはロシアが設定した「レッドライン」を越す行為であり、ワシントンを「紛争の当事者」にするとアメリカ政府に警告している。 ATACMSをアメリカ政府がウクライナへ引き渡してもウクライナがロシアに勝つ可能性を高めるわけではないが、ロシア軍としてはNATOの標的を攻撃せざるをえなくなる危険性が高まると考えられている。そうした事態が1年以内に引き起こされたなら、大統領選挙どころではなくなるだろう。来年の大統領選挙でバイデンが勝利することは難しいとみられている。
2023.09.24
ロシア海軍の黒海艦隊はクリミア半島のセバストポリを拠点にしている。そこには艦隊の司令部があるのだが、そこをウクライナ軍は巡航ミサイルで攻撃、建物を破壊したようだ。ミサイルは、アメリカ軍のP-8ポセイドンと連携したウクライナ軍のSu-24爆撃機が発射したという。 この攻撃を絶賛したアメリカ軍の退役将軍もいたようだが、ロシアの軍事専門家アンドレイ・マルチャノフによると、破壊された建物には保守要員と警備員しかいない。指揮、統制、通信、コンピュータに関する部門は全てZKP(予備司令部)の地下にあり、その場所を特定するのも攻撃するのも難しいとされている。 過去の実績からするとロシア軍の防空能力は7割から8割のミサイルを撃墜できる。アメリカ軍の防空システムに比べると性能は格段に良いのだが、完全ではない。そこで本当の司令部は地下にあり、所在地は公表されていないわけだ。 こうしたことはアメリカ軍もウクライナ軍も知っているはずで、今回の攻撃は宣伝が主たる目的で、ロシア軍の動きもP-8が調査していたとされている。 ウクライナ軍はアメリカ政府やイギリス政府の命令でロシアとの戦闘を続けてきたが、昨年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めた直後にウクライナ軍の敗北は明らかだった。ドンバスを攻撃するために集結していた部隊がロシア軍の攻撃で壊滅してしまったからだ。 アメリカ側の推計でも、ロシア軍の攻撃開始から現在に至るまでに約50万人のウクライナ兵が戦死、ロシア側の戦死者はその1割、つまり5万人程度だと考えられている。 ウクライナ軍は必要な兵員数の約半数しか集められず、訓練もできていないという。ウクライナ国内で訓練できないため複数の国に分けられているという問題もある。強引に兵士を集めても社会が機能しなくなる。 追い詰められたウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「支援国」を怒らせるようは発言をするようになった。地上戦を続けることは難しくなっている。ジョー・バイデン政権は地上戦を諦め、中長距離ミサイルによる攻撃に切り替えるとも推測されていたが、そうした方向へ動き始めているようだ。 アントニー・ブリンケン国務長官は9月10日、ABCニュースのインタビューの中で、射程300キロメートルのATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)を近いうちにウクライナへ引き渡すと発言、しかも目標の決定はウクライナが決めることだとした。つまり、ロシア領深くを攻撃することを容認するということである。ATACMSはアメリカがすでに供給済みのHIMARS(高機動ロケット砲システム)で発射できる。 ロシア外務省は昨年9月15日、ウクライナへのATACMS引き渡しは「レッドライン」を越す行為であり、ワシントンを「紛争の当事者」にするとアメリカ政府に警告している。 元CIA分析官のラリー・ジョンソンによると、セバストポリ攻撃の拠点になったクレメンチュグ空港はロシア軍が巡航ミサイルで報復攻撃、Su-24やストームシャドウ・ミサイルが破壊されたという。
2023.09.24
アメリカ空軍のAMC(航空機動軍団)を率いるマイク・ミニハン大将が書いた2月1日付けの覚書の中で、自分の直感では2025年に中国と戦争になると書いている。アメリカはロシアだけでなく中国を攻撃する準備を進めてきたこともあり、無視できる主張ではない。その覚書が知られるようになり、ミニハンはその内容について弁明した。指揮下の部隊に危機感を持たせることが目的だったというのだ。 イギリスの金融資本は19世紀後半から帝国主義的な政策、つまり侵略と略奪を本格化させる。いわゆる「グレート・ゲーム」だ。この戦略を進化させ、理論化したのがイギリスの地理学者、ハルフォード・マッキンダー。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配し、内陸部を締め上げるというもの。この戦略をアメリカが引き継いだ。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」もズブグネフ・ブレジンスキーが書いた「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づいている。 この理論をより攻撃的にしたのがネオコン。1991年12月にソ連が消滅、国防総省を支配していたネオコンは92年2月に「DPG(国防計画指針)草案」という形で世界制覇計画を作成した。 当時の国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。そのウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから、DPGは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。「唯一の超大国」になったアメリカは他国に配慮することなく単独で好き勝手に行動できる時代が来たと考えたのだ。 そのドクトリンの中でドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れると宣言、そして「新たなライバル」の出現を阻止するとしている。旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、東南アジアにアメリカを敵視する勢力が現れることを許さないというわけだ。 しかし、アメリカの戦争マシーンに組み込まれることを嫌った細川護煕政権は国連中心主義を掲げる。細川政権は1994年4月に潰されたものの、同年6月に自民党、社会党、さきがけの連立政権が誕生した。 日本側の抵抗に怒ったネオコンはジョセイフ・ナイ国防次官補に接触し、同次官補は1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表して戦争マシーンへ日本を誘導する道筋を示した。 そうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)た。その10日後には警察庁の國松孝次長官が狙撃されている。 その年の8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載された。日本政府に対する恫喝になっただろう。 結局、日本は戦争への道を歩み始め、自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成した。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。 極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。 政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めていると昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。 日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。 しかし、ミニハンの「直感」では2025年までに中国やロシアを攻撃するための中距離ミサイルを準備しなければならない。昨年10月、日本政府が、アメリカ製巡航ミサイル「トマホーク」の購入をアメリカ政府に打診しているとする報道があったが、日本のミサイル開発を待っていられなくなったのかもしれない。 岸田文雄政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額し、「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。
2023.09.23
ポーランドのマテウシュ・モラビエツキ首相はウクライナへび武器供与をやめると9月20日に発言、注目されている。ポーランド国内の事情や穀物取引をめぐる対立も要因だと言われている。 ウクライナの穀物生産は西側の巨大資本が支配、生産物の大半は欧米に売られ、アフリカなどへ穀物を供給しているのはロシアだ。それに対し、ポーランド政府は自国の農家を守るためだとして、ウクライナからの穀物輸入を禁止、両国の関係は緊張している。 EUは5月、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアに対するウクライナ産穀物の輸出制限で合意したが、ここにきてその禁止措置を解除すると発表、ハンガリー、ポーランド、スロバキアは反対を表明した。 しかし、ポーランドとウクライナの対立が表面化した根本的な原因はウクライナでの戦闘でアメリカ/NATOがロシアに負けたことにあるだろう。アメリカ/NATOの勝利を前提として描かれたビジョンが崩れた結果だ。 ポーランドはウクライナの西側を併合する計画だったのではないかと言われているが、ビジョンの基本はネオコンが描いている。ウクライナを米英巨大資本の支配地にしてEUとロシアを分断、資源がある東部や穀倉地帯を奪う一方、ロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしているクリミアのセバストポリを抑え、NATOをウクライナへ展開してロシアに対する軍事的な圧力を強める予定だったのだろう。 ウクライナ情勢を理解するためには歴史を理解する必要がある。ドンバスを含む東部やクリミアを含む南部は革命後にロシアからウクライナへ割譲された地域で、住民の約7割はロシア語を話し、東方正教会の文化圏にある。そのためロシアへ戻りたいと希望する人はソ連が消滅するころにも少なくなかったが、西側資本の影響力が強まり、ロシア語文化圏に対する弾圧が強まるにつれ、そうした感情も強まった。 そうした東部や南部に住む人びとの思いは2004年の大統領選挙で形になる。ビクトル・ヤヌコビッチが当選しそうになったのだが、それを西側はひっくり返す。米英金融資本と関係が深い新自由主義者のビクトル・ユシチェンコを大統領の座につけるため、アメリカ政府は反ヤヌコビッチの宣伝と運動を展開、実現した。「オレンジ革命」だ。 ビクトルの妻、カテリーナはウクライナからアメリカへ移民した両親の子で、アメリカの民主主義人権労働担当国務次官補の特別補佐官などを務め、1998にふたりは結婚した。アメリカ政府はユシチェンコを操る強力な仕掛けを持っていたと言えるだろう。 しかし、ユシチェンコの新自由主義的な政策で国の富は欧米の巨大資本へ流れて行き、その手先になった一握りのウクライナ人が「オリガルヒ」と呼ばれる富豪になる一方、大多数の庶民は貧困化した。そこでウクライナの有権者は2010年の選挙でもヤヌコビッチを大統領に選ぶ。 この結果を米英の私的権力は受け入れられない。そこでバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ヤヌコビッチ政権を倒した。 ネオ・ナチは2004年以降、つまりオレンジ革命当時からバルト3国にあるNATOの訓練施設で軍事訓練を受けたと言われ、ポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたり、暴動の訓練を受けたと伝えられている。 東部や南部の人びとはクーデターを拒否、クーデタの翌月にロシアとの統合を求める住民投票を実施したクリミアでは95%以上が加盟に賛成(投票率80%以上)し、ロシアの保護下に入った。南部の港湾都市オデッサでは2014年5月2日にネオ・ナチが反クーデター派の市民を虐殺、ドンバス(ドネツクやルガンスク)の住民は2014年5月11日に住民投票を実施、ドネツクでは89%が自治に賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が独立に賛成(投票率75%)している。 クーデター後のネオ・ナチ体制はロシア語系住民を弾圧する一方、アメリカ/NATOは8年かけてキエフ政権の軍事力を増強、昨年3月にはドンバスに対する大規模な軍事作戦を計画していた可能性が高い。 その計画を実行するため、ウクライナ軍は地下要塞が建設されていたドンバス周辺に集結するが、その部隊が動く前にロシア軍がウクライナに対する攻撃を開始した。この段階でロシアの勝利は明らかだった。 そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役とする停戦交渉が始まり、双方とも妥協して停戦は実現しそうだった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATOへの加盟を諦めた。 2022年3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつける。その足でベネットはドイツへ向かい、シュルツと会った。ウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺したのはその3月5日だ。4月にはイギリスの首相やアメリカの下院議長がウクライナへ乗り込み、停戦交渉をやめてロシアと戦い続けるように命令した。 今年6月4日に始まった「反転攻勢」が破滅的な失敗に終わったが、そもそも昨年2月末の段階でウクライナは負けていた。それを受け入れられない米英やその属国は武器や資金を供給、ロシアと戦わせてきたのだが、その結果、約50万人のウクライナ兵が死亡している。
2023.09.22
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府の代表団が国連総会に出席したが、その際、メンバーは笑顔を見せなかった。アメリカのジョー・バイデン政権との間に亀裂が生じているとも言われているが、その推測を確認させる光景だと言う人もいる。 すでにゼレンスキー政権とバイデン政権との関係がギクシャクしていることは9月6日のミサイル攻撃でも指摘されていた。この日、ドネツクのコンスタンチノフカがミサイルで攻撃され、十数人が死亡し、30人以上が負傷したとされている。 ゼレンスキー政権は攻撃の直後からロシア軍によるものだが宣伝、西側のメディアはその主張を垂れ流していたが、同政権の代表団がニューヨークに到着した9月18日、ニューヨーク・タイムズ紙は、この攻撃がブーク発射システムによって発射されたウクライナの防空ミサイルによるものである可能性が高いとする分析を掲載している。これまでネオコンの広報紙的な役割を果たしてきたニューヨーク・タイムズ紙が伝えていることに注目する人は少なくないだろう。 ウクライナ政府が公開した映像を見ると、ミサイルはウクライナ軍がいる北西から飛来している。それは自動車のルーフに映っていたミサイルの動き、また通行人が北西の方向を見ていることからもわかる。また映像には発射音と爆発音が記録されているが、その間隔から発射地点が近くにあることがわかる。ロシア軍がいる場所はそこから20キロメートル以上離れているのだ。 アメリカでは有力メディアだけでなく映画界もゼレンスキー政権を支援してきた。ハリウッドのスターのひとりであるショーン・ペンはアーロン・カウフマンと共同で「スーパーパワー」と題するドキュメンタリー映画を監督した。これはゼレンスキーを英雄視する映画だ。 ペンもアメリカ政府の姿勢が変化していると感じているようで、CBSニュースの番組「フェイス・ザ・ネイション」に出演した際、バイデン政権が早い段階にF-16戦闘機を提供しなかったと不満を口にしている。 F-16は古いタイプの戦闘機で、「空飛ぶダンプカー」と呼ばれているF-35より戦闘能力があっても、ロシアの最新鋭機の敵ではない。その旧タイプの戦闘機を投入して意味があるとするならば、核ミサイルを発射できることだ。つまり、F-16を引き渡すということは核戦争の準備をすることに等しい。ペンは核戦争の危険性を認めているものの、可能性は低いと主張している。 ペンと同じようなことを主張していた軍人も存在する。2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO欧州連合軍最高司令官)を務め、ネオコン/シオニストと強く結びついているフィリップ・ブリードラブ大将は核戦争への恐怖がプーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと主張していた。 ペンたち以外にもゼレンスキーに関するドキュメンタリーを制作した人がいる。アメリカ海兵隊の元情報将校で、UNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めた経験のあるスコット・リッターだ。 彼は2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」をフランスの元情報機関員エリック・デネーゼと共同で制作、その中でゼレンスキー大統領はイギリスの対外情報機関MI-6の命令で動いていることを明らかにしている。(パート1、パート2)
2023.09.21
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9月18日にアメリカのニューヨークへ到着した。国連総会に出席するほか、ホワイトハウスを訪問、議会指導者と会談する予定だ。9月6日にはアントニー・ブリンケン国務長官がウクライナを訪問、戦況について協議したようだ。 西側の有力メディアはウクライナでの戦闘を煽り、ロシアは簡単に負けると宣伝してきた。バラク・オバマ政権からジョー・バイデン政権まで戦争を推進してきたネオコンの拡声器としての役割を果たしてきたわけだが、限界が近づいているようだ。 ウクライナのセルゲイ・クリヴォノス退役少将もゼレンスキー政権の「楽観的見通し」を批判している。6月4日に始まった「反転攻勢」が破滅的な失敗に終わったではないかと言っているのだ。 実際、ロシアが構築した「スロビキン防衛線」を突破できないことは明白で、ロシア政府の推計によると、6月4日以来、ウクライナ軍兵士の戦死者数は7万5500人に達する。アメリカ側の推計でも2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めてから約50万人のウクライナ兵が戦死したという。ロシア側の戦死者はその1割、つまり5万人程度だと考えられている。 この50万人という数字について欧州議会で質問されたNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は「簡単なことだとは約束していない」と答えた。これは「50万人」という数字を暗黙のうちに認めたのだと解釈する人もいる。 ブリンケン国務長官がウクライナを訪問、数百万ドルの新たな援助を発表した9月6日、ドネツクのコンスタンチノフカがミサイルで攻撃され、十数人が死亡し、30人以上が負傷したとされている。ゼレンスキーはロシア軍に攻撃されたと主張、西側のメディアはその主張を垂れ流していた。 しかし、ゼレンスキー自身が公開した映像を見ると、ミサイルは北西から飛んできているが、そこにはウクライナ軍がいる。駐車していた自動車のルーフに映っていたミサイルからも発射地点の方向がわかるが、通行人も北西の方向を見ている。また映像には発射音と爆発音が記録されているが、その間隔から発射地点が近くにあることがわかる。ところがロシア軍がいる場所はそこから20キロメートル以上離れているのだ。 これまでネオコン色が濃いニューヨーク・タイムズ紙でさえ、この攻撃はブーク発射システムによって発射されたウクライナの防空ミサイルである可能性が高いと分析している。ゼレンスキーのアメリカ到着に合わせて出されたことから、キエフ政権とアメリカ政府との間に対立が生じていると推測する人もいる。 ゼレンスキー政権にロシアとの戦闘を命令した米英両国政府だが、アメリカ/NATOの命令で「バンザイ突撃」を繰り返してきたウクライナ軍は戦闘員が足りず、勝つことは無理だろう。それでもゼレンスキーはカネを寄越せとアメリカに要求しているが、バイデン政権は別のことを考え始めているように見える。地上戦を諦め、中長距離ミサイルによる攻撃に切り替えると推測する人もいる。
2023.09.20
10月20日午後7時から「としま区民センター」7階会議室で行う「櫻井ジャーナルトーク」のテーマは「土壇場を迎えたアメリカ帝国主義」にする予定です。興味のある方は東京琉球館までEメールで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8Eメール:dotouch2009@ybb.ne.jp アメリカの支配層は自由、人権、民主主義という看板を掲げながら国外で侵略戦争を仕掛け、国内では管理体制を強化し、富を独占するための支配システムを世界に広げようとし、その切っ先をロシアや中国の喉元に突きつけています。1991年12月にソ連が消滅、「唯一の超大国」になったアメリカは好き勝手に行動できると考えるようになった結果だと言えるでしょう。その帝国主義的な姿勢が中露の反撃を招き、アメリカの支配層は窮地に陥りました。次回の「櫻井ジャーナルトーク」ではそうした状況について考えたいと思います。 アメリカにも憲法があり、人びとの権利が定められていますが、憲法の規定を無効にするためのプロジェクトCOGが1982年にスタートしました。ソ連が消滅した直後の1992年にはアメリカが「唯一の超大国」になったという前提で世界制覇プロジェクトが国防総省の「DPG草案」という形で作成され、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれています。 そのCOGとウォルフォウィッツ・ドクトリンは2001年9月11日から本格的に始動、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナというように火をつけ、今、東アジアの軍事的な緊張を高めています。アメリカはイギリスやオーストラリアとAUKUSなる軍事同盟を組織しましたが、彼らは相手が弱小国でない限り、基本的に自分たちが最前線に出て来ることはなくなっています。東アジアにおけるロシアや中国との戦争では日本や韓国が矢面に立たされそうです。 ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」にしろ、ズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」にしろ、ハルフォード・マッキンダーが1904年に発表した理論に基づいていますが、その理論のベースはイギリスが19世紀に始めた「グレート・ゲーム」、つまりロシア制圧プロジェクトです。 19世紀の終盤、イギリスは1899年から1902年にかけてのボーア戦争(南アフリカ戦争)で金やダイヤモンドを産出する南アフリカを奪い取ることに成功、アメリカは先住民を虐殺しながら西海岸に到達、1898年のアメリカ・スペイン戦争で南アメリカやフィリピンを奪いました。 イギリスは1839年から42年にかけて「アヘン戦争」、56年から60年にかけては「第2次アヘン戦争(アロー戦争)」で中国(清)に勝利しますが、内陸部を占領する戦力がありません。イギリスが日本で明治維新を仕掛けた理由はそこにあるのでしょう。 1853年にマシュー・ペリーが指揮する艦隊を江戸湾に送り込んだアメリカは67年にアラスカを手に入れ、ハワイも占領していますが、アメリカ支配層が最も欲しがっていた場所はカリフォルニアのはるか西にある「新たな西部」、つまり中国東北部だったと言われています。 ボーア戦争で重要な役割を果たしていたセシル・ローズは1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受けて南部アフリカでダイヤモンド取引に乗り出し、大儲けした人物。そのローズはネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレットらと支配者グループを形成、アルフレッド・ミルナーはその後継者です。 ローズは優生学を信奉していました。1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張してます。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務だというのです。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) イギリスでは19世紀にハーバート・スペンサーが適者生存を主張、競争で強者が生き残ってその才能が開発され、その一方で弱者は駆逐されるとしています。弱者に無慈悲であればあるほど社会にとっては「優しい」のだというのです。イギリスの人類学者、フランシス・ゴルトンは「遺伝的価値の高い者を増やし、遺伝的価値の低い者を減らす」ことで社会を改善できると主張していました。このゴルトンは優生学の創始者とされていますが、彼の従兄弟は『種の起源』で知られているチャールズ・ダーウィンです。 こうした思想はローズなどイギリスの支配者グループに影響を与え、アメリカの支配層にも影響を及ぼし、カーネギー研究所、ロックフェラー財団、ハリマン家のマリー・ハリマンらの支援を受けて優生学を広める運動が展開されました。そうした運動に感銘を受け、自国で実践したのがアドルフ・ヒトラーにほかなりません。 アメリカが掲げる自由、人権、民主主義という看板を支えているのはそうした思想なのです。
2023.09.19
アメリカのフィラデルフィアを拠点にするFIRE(個人の権利と表現財団)は9月6日、言論の自由に関する248大学のランキングを発表した。 トップはミシガン工科大学、最下位はハーバード大学、247位は同じアイビー・リーグのペンシルベニア大学だ。「名門校」とされるサウス・カロライナ大学が246位、ジョージタウン大学が245位、ノースウェスタン大学が242位、ダートマス・カレッジが240位、テキサス大学オースティンが239位。エリートを輩出する大学が下位に並んでいる。 アイビー・リーグに含まれる大学は初年度の学費が約6万ドルだとされている。出世の道が開かれているこうした私立大学へ入るためには多額の授業料を支払う資産とコネが必要だ。資産とコネがあれば相当愚かな人物でも入学が認められる。日本でも学費が高騰しているが、その比ではない。 そうした大学へ入るためには有名な進学校へ通う必要があるのだが、そうした学校の授業料も日本で想像できないほど高い。トルーマン・カポーティは『叶えられた祈り』の中でウォール街で働いているディック・アンダーソンなる人物に次のようなことを言わせている。 「二人の息子を金のかかるエクセター校に入れたらなんだってやらなきゃならん!」(トルーマン・カポーティ著、川本三郎訳、『叶えられた祈り』、新潮文庫)「ペニスを売り歩く」ようなことをしなければならないというのだ。アメリカの中では高い給料を得ているはずのウォール街で働く人でも教育の負担は重い。低所得層の子どもは教育を受ける権利を奪われているのが実態だ。 大学へは入れても授業料を支払うことが困難な学生は少なくない。少し前から話題になっているのは「シュガー・ベイビー」なるシステム。女子大学生(シュガー・ベイビー)と富裕な男性(シュガー・ダディー)を引き合わせ、「デート」のお膳立てをするというビジネス。売春の斡旋と見られても仕方がないだろう。現代版のクルチザンヌだと言う人もいる。 体を売らなければ大学へ通えないという状況はアメリカ以外の国でも問題になっている。例えば2012年11月イギリスのインディペンデント紙は学費を稼ぐための「思慮深い交際」を紹介するビジネスの存在を明らかにした。日本では「援助交際」と表現されている行為だ。 こうした状況を改善するためには法律面からの働きかけも必要になるが、そうした問題に取り組むような弁護士が出てきにくいシステムに変えられている。司法試験を受けるまでに多額の資金が必要になり、試験に受かっても司法修習生に対する給付制が廃止になって新人弁護士の多くは借金まみれ。カネになる仕事、カネを出せる人物や組織の仕事を弁護士になってからせざるを得ない。 学資ローンを利用すると卒業時に多額の借金を抱えることになり、その借金を返済するためには高収入の仕事、つまり富裕層のために働かなければならない。その仕事を失えば破産だ。医師や弁護士が権力者の不正に沈黙する理由のひとつはここにある。奨学金を得るには富裕層への従属が認められなければならない。 高等教育を受けようとすれば債務奴隷にならざるをえず、その結果としてアメリカでは教育水準が低下、日本もその後を追っている。かなり前から日本でも技術系学生のレベルが落ち、企業は中国やインドの学生に目をつけているという声を聞く。こうした西側の状況を反面教師にしたのか、中国やロシアではアメリカ方式の教育システムから離脱、成功したという。
2023.09.18
厚生労働省は9月20日から「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の追加接種を始める。この「ワクチン」の実態は遺伝子操作薬にほかならない。東京理科大学名誉教授の村上康文、そして東北有志医師の会の後藤均と駒野宏人は今回の接種について、メカニズムの上からもタイミングの上からも、これまで以上に危険だと警鐘を鳴らしている。 MRNAを細胞の内部へ送り込み、細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させる「mRNAワクチン」は人間の免疫システムに細胞が病気の原因だと認識させるため、炎症を引き起こす。自己免疫疾患だ。精巣の細胞にmRNAが入り込み、精子でなくスパイク・タンパク質を作り続けるケースも報告されている。接種前からADE(抗体依存性感染増強)を引き起こすのではないかと懸念する人は少なくなかったが、その通りになっているようだ。 免疫システムの「誤作動」による炎症を抑えているために免疫力を体は低下させるが、「ワクチン」にも免疫を抑える仕組みが組み込まれているようだ。いわばAIDS状態になるわけで、「COVID-19ワクチン」はAIDS誘発薬だとも言えそうだ。 VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も使われ始めた。「ワクチン」を接種した後、それまで感染したことのないさまざまな細菌性の病気にかかる人がいるとイゴール・チュドフは指摘しているが、そうした状態がVAIDSだ。 この危険な「ワクチン」を接種する口実に使われているコロナウイルスが現れた時期は紀元前8000年と言われ、人類との付き合いは長く、深刻な病気を引き起こすとは認識されていなかった。 ところが2003年に重症肺炎を引き起こすSARS-CoV(SARSコロナウイルス)が出現、19年に似た症状を引き起こす病気が中国湖北省の武漢で見つかり、翌年の2月4日には横浜港から出港しようとしていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者現れた。 武漢で患者が見つかった後、WHO(世界保健機関)は2020年3月11日に病原体が特定されないままパンデミックを宣言、騒動が始まるのだが、世界規模で武漢やクルーズ船のような患者が出てくるようなことはなかった。 ドイツではSARS-CoV-2の危険性は通常のレベルを超えていないと指摘し、戒厳令的な政策を推進したことは間違いだとする内務省の報告書がリークされた。シュピーゲル誌によると、内務省はこの文書についてステファン・コーンという内務省の官僚が個人的に書いたものにすぎないと弁明しているが、実際は同省のKM4というチームが作成したとものだという。 イギリス政府もSARS-CoV-2に過剰反応するべきでないと考え、3月19日にCOVID-19をHCID(重大感染症)から外している。エボラ出血熱のようなウイルス性出血熱やペスト、天然痘などとは違うと宣言したわけである。 アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は2020年4月8日に放送されたFOXニュースの番組で、病院は死人が出ると検査をしないまま死亡診断書にCOVID-19と書き込んでいると話していた。COVID-19の患者を治療すると病院が受け取れる金額が多くなり、人工呼吸器をつけるとその額は3倍になるからだという。当局は利益誘導でパンデミックを演出したわけだ。 実際、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は2020年4月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら、死因をCOVID-19として良いと通達、同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。 パンデミック宣言を正当化するため、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査も利用された。これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術だが、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、ウイルス自体を見つけることはできない。 増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性も増える。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。ちなみに、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 Ct値をこうした数値に設定したならPCR検査は無意味だが、結果だけは出るので人びとを騙す材料には使える。PCRを開発、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRをウイルスの検査に使ってはならないと語っていた。 PCRを診断に使う危険性をアメリカの有力紙も指摘していた。例えばニューヨーク・タイムズ紙は2007年1月に掲載した記事で、PCRのような高感度の簡易検査は、伝染病が蔓延していると誤って判断させる原因になりうると警鐘を鳴らしているのだ。 COVID-19騒動が始まった頃から、死亡者は深刻な複数の持病を抱えている人が多いと指摘されていた。ヨーロッパの中で早く感染が始まったイタリアの場合、死亡した感染者の平均年齢は81歳を上回る。90%は70歳以上。しかも80%以上は複数の慢性的な病気、例えば心臓病、糖尿病、癌などを抱えていたのだ。SARS-CoV-2が死因だと言える人は1%未満にすぎなかったという。 本ブログでは以前にも書いたが、イタリア健康省の科学顧問を務めるウォルター・リッチアルディは、SARS-CoV-2が直接的な原因で死亡した人数は死者全体の12%だとしていた。またこのウイルスが原因で死亡したとされる患者の中で96.3%の死因はこのウイルスではないとビットリオ・スガルビ議員は主張している。 イタリアにおける感染状況は過大に評価されている可能性が高いわけだが、逆に過小評価されている疑いがある国がアメリカ。CDC(疾病管理予防センター)で所長を務めるロバート・レッドフィールドは3月11日、アメリカ下院の公聴会で、COVID-19で死亡した患者がインフルエンザに感染していたと見なされていた可能性があることを認めた。 そのほか「COVID-19ワクチン」にはDNAの混入、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入などだ。LNPは卵巣を含むあらゆる臓器に蓄積、生殖システムが破壊される可能性が指摘されている。 COVID-19はSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)によって引き起こされるとされ、その変異株が発表されてきた。京都大学の宮沢孝幸准教授と大阪医科薬科大学助教の田中淳はその変異株の遺伝子配列を調べ、結果を発表しているが、その論文が世界的な話題になっている。 宮沢らによると、変異の蓄積や相同組換えといった自然界で一般的に観察されるようなゲノム進化の産物ではなく、全く新しいメカニズムで形成されたという結論に達したという。人工的に作り出された可能性が高いということだ。 少なからぬ人が指摘しているように、「COVID-19ワクチン」と名付けられた新薬はすでに多くの人を深刻な副作用で苦しめ、死亡させてきた。生殖能力を破壊するとも考えられている。この「COVID-19ワクチン」接種プロジェクトの中枢はアメリカの国防総省だ。 すでに大半の国では「ワクチン」の危険性を悟り、接種をやめた。いまだに接種を推進している国は日本だけである。次の接種が始まると、「ワクチン」による副作用が現れ、死亡者が増えるだろうが、AIDS化によって様々な病気に感染する可能性がある。そうした状況を利用し、再び「パンデミック」を宣言、選挙どころでなくしてしまうことも考えられる。
2023.09.17
ウクライナで大統領顧問を務めるミハイロ・ポドリャクはインド人や中国人について知的能力が低く、自分たちの行動の結果を分析しないと語ったようだ。科学的な成果を達成していても、世界情勢を理解できていないという。両国がウクライナの思い通りに動かないため、ポドリャクは苛立っているのかもしれない。 インド人や中国人だけでなく、ウクライナ政府には有色人種を差別する傾向がある。今年4月29日には、ウクライナ国防省がツイッターにヒンドゥー教の女神カーリーを嘲笑する絵を投稿して問題になった。 昨年2月24日にロシア軍がドンバス周辺に集結していたウクライナ軍のほか、キエフ側の軍地基地や生物兵器の研究開発施設などをミサイルで攻撃し始めた直後、インド人やアフリカ系の人びとはの国外への脱出を妨害されたり、棍棒で殴打されたり、差別されたりしている。 こうした差別は西側メディアも報道の中で行っていた。「目が青く、ブロンドのキリスト教徒」、要するに北欧系の難民は助けなければならないと叫んでいた記者が何人もいたのだ。 ウクライナで2013年11月から14年2月にかけてクーデターを実行した集団はステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチだが、この人びとはドイツのナチスと同じように北欧神話を信じ、アジア人の血が入っているとしてロシア人を蔑視している。 1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受けて南部アフリカでダイヤモンド取引に乗り出し、大儲けしたセシル・ローズはロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、そしてアルフレッド・ミルナーらと支配者グループを形成したが、優生学を信奉していたことでも知られている。 優生学の創始者とされているフランシス・ゴールトンは『種の起源』で知られているチャールズ・ダーウィンの従兄弟にあたる。ダーウィンはトーマス・マルサスの『人口論』から影響を受け、優れたものが勝利するという「自然淘汰」を主張していた。 1877年6月にローズはフリーメーソンへ入会し、その直後に書いた『信仰告白』の中でアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど、それは人類にとって良いことだと主張していた。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) セシル・ローズの意志で1902年にローズ・トラストが創設され、奨学生として選ばれたオックスフォード大学の大学院生に学費や生活費を支払う奨学制度が作られた。現在、アメリカで国家安全保障担当大統領補佐官を務めているジェイク・サリバンはエール大学時代、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学している。 2009年にバラク・オバマ政権の上級顧問になり、中東から北アフリカにかけての地域で実行された体制転覆工作に加わったマイケル・マクフォール、ビル・クリントンもローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学している。マクフォールは2012年1月に駐在大使としてロシアへ赴任した。この年の3月にはロシアで大統領選挙が行われ、ウラジミル・プーチンが当選している。この選挙で反プーチンの工作をマクフォールは指揮、「ロシアのリセット」を目論んだ。ちなみに、1993年1月から2001年1月までアメリカ大統領を務めたビル・クリントンもローズ奨学生だった。
2023.09.16
天然資源に関する問題を調査し、キャンペーンを実施しているNGOの「グローバル・ウィットネス」の発表によると、今年1月から7月までの間にEU諸国がタンカーで輸入したロシア産LNGは昨年の同時期に比べて40%増加したという。スペインはロシア産LNGの世界第2位の買い手であり、ベルギーがそれに続く。勿論、第1位は中国だ。 アメリカはウクライナをクーデターで手に入れ、ロシアからEUへ天然ガスを運ぶパイプラインをおさえた。昨年9月26日にはウクライナを迂回する「ノード・ストリーム」と「ノード・ストリーム2」が爆破されたが、アメリカ政府が実行した可能性が高い。スペインのテレサ・リベラ・エネルギー相は4月、EUの制裁協議にロシアのLNGも加わるべきだと語ったようだが、EU市場を必要としないロシアは傷付かず、ロシアの天然資源が必要なEUは壊滅する。 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から翌年の2月にかけてウクライナでネオ・ナチを利用したクーデターを実行、10年の選挙で当選したビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除した。 しかし、クーデターではヤヌコビッチの支持基盤でロシア語を話し、東方正教会の文化圏にあるクリミアや東部ドンバスを制圧に失敗した。アメリカ/NATO/ウクライナ西部の支配層はかつてパレスチナやユーゴスラビアで行ったように住民を虐殺し、追い出し、自分たちにとって都合の良い人々を移住させるつもりだったようだが、成功していない。ロシアにとってウクライナがNATOの支配地になるということは、ナチスが始めたソ連に対する軍事侵略、「バルバロッサ作戦」の新たなバージョンにほかならない。 ウクライナのクーデターには別の目的もあった。ロシアとEUを分断し、双方を弱体化させようということだ。ロシアとEUの接近はアメリカやイギリスの支配層にとって脅威である。 ロシアとEUを結びつける最大の要因は石油や天然ガス。EUの経済はロシアが供給していた天然資源なしには維持できない。つまり、ロシアの天然資源をEUから取り上げてしまえば、EUは米英資本に従属せざるをえない。 アメリカでは1970年代から新自由主義を導入、商品の製造を放棄して金融を軸に据えた。金融マジックだが、このマジックは人びとがドルを信仰することで成立する。その信仰を支えてきたのが軍事力と情報力にほかならない。 1991年12月のソ連消滅で新自由主義を推進していた勢力はアメリカが「唯一の超大国」になったと考え、世界制覇プロジェクトを本格化させた。そのベースが1992年2月に作成された「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。ウォルフォウィッツの仲間であるネオコンはNATOを東へ拡大、旧世代の「タカ派」も懸念する事態になる。そうした旧世代のひとりがリチャード・ニクソンだ。 ニクソンは1994年の段階でアメリカの傀儡だったボリス・エリツィンの政治的な影響力が低下していると指摘、ロシア議会で反米機運が高まっていると警鐘を鳴らし、そうした機運の高まりはエリツィンの後継者として反欧米の大統領候補を連れてくる可能性があるとしている。そして登場してきたのがウラジミル・プーチンにほかならない。 2001年9月11日の出来事でアメリカにはそのドクトリンに抵抗する勢力が消滅するのだが、プーチンを中心とする勢力はロシアを再独立させることに成功、状況は一変した。 アメリカの政策はドイツをはじめとするEUの経済を破壊し、人びとの生活は成り立たなくなる。生産活動を維持できなくなる企業に対し、アメリカは拠点の移動を働きかけているようだ。新自由主義で破壊した自国の製造業をEUの企業で補填しようというのだろう。
2023.09.15
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が朝鮮を突如訪問したのは7月25日のことだった。朝鮮戦争終結を記念する戦勝記念日の行事に出席するためだが、李鴻忠党中央政治局委員を含む中国の代表団とそこで合流している。アメリカが日本や韓国を巻き込んで整備している軍事同盟に対抗することが本当の目的だろう。 フランクリン・ルーズベルト大統領が信頼していたヘンリー・ウォレスが1945年1月20日に副大統領の座から引き摺り下ろされた後、同年4月12日にルーズベルト自身が急死、シオニストを後ろ盾にするハリー・トルーマン副大統領が昇格した。 トルーマン政権は大戦後の中国を国民党に支配させる予定で、20億ドルを提供しただけでなく軍事顧問団も派遣している。ところが1947年の夏になると農民の支持を背景として人民解放軍(1947年3月に改称)が反攻を開始、48年の後半になると人民解放軍が国民党軍を圧倒するようになり、49年1月に解放軍は北京に無血入城した。 大戦の終盤、米英金融資本がレジスタンス対策で組織したジェドバラの流れを汲むOPCは中国で国民党を支援する工作をしていたが、状況の悪化を受けて拠点を上海から日本へ移動する。その中心は厚木基地だった。 中国がコミュニスト体制になることが不可避になり、OPCを動かしていた金融資本は「反転攻勢」を目論む。その兵站拠点は日本であり、朝鮮半島が橋頭堡として想定された。物資を輸送するためには鉄道や港を抑える必要があり、戦争に反対するであろう労働者を抑え込まなければならない。 1949年10月に中華人民共和国が成立するが、その直前、国鉄を舞台とした怪事件が相次ぐ。7月5日から6日にかけての下山事件、7月15日の三鷹事件、そして8月17日の松川事件だ。共産党が実行したというプロパガンダが展開され、組合活動は大きなダメージを受けた。 1950年6月22日、ニューズウィーク誌の東京支局長だったコンプトン・パケナム宅で夕食会が開かれ、アメリカ側からはパケナムのほか、ニューズウィーク誌の外信部長だったハリー・カーン、ドワイト・アイゼンハワー政権で国務長官に就任するジョン・フォスター・ダレス(つまりアレン・ダレスの兄)、ダレスに同行してきた国務省東北アジア課長ジョン・アリソンが、また日本側からは大蔵省の渡辺武、宮内省の松平康昌、国家地方警察企画課長の海原治、外務省の沢田廉三が参加している。その段階で朝鮮半島では軍事的な小競り合いが始まっていたが、朝鮮戦争の開始日とされているのは夕食会の3日後、6月25日だ。朝鮮戦争は米中戦争の第1幕だと考えるべきである。 朝鮮戦争は1953年7月27日に休戦が成立、今年はそれから70年目にあたる。4月26日に韓国の尹錫悦大統領はアメリカのジョー・バイデン大統領と会談、ワシントン宣言を発表した。そこでは「核協議グループ(NCG)」の創設が謳われている。 アメリカは韓国のほか日本をメンバーにする軍事同盟を編成しつつある。すでにアメリカ、オーストラリア、インド、日本で「クワド」を編成しているが、インドはアメリカへの従属度が足りない。オーストラリアやイギリスと3カ国でアメリカは「AUKUS」という軍事同盟を組織したが、東アジアの国ではない。そこで日米韓軍事同盟なのだろう。7月18日にソウルでNCGの第1回会議が開かれた。ショイグの朝鮮訪問はこの直後だ。 勿論、アメリカを中心として軍事同盟国は「防衛」を主張するが、大戦後、アメリカは先制攻撃を繰り返してきた。 朝鮮の場合、ソ連が1991年12月に消滅する前にミハイル・ゴルバチョフから見捨てられていた。それに対し、アメリカ軍は1998年に金正日体制を倒す目的でOPLAN-5027-98を作成、99年には朝鮮の国内が混乱して金体制が崩壊した場合を想定した「概念計画」のCONPLAN-5029が作られ、2003年には核攻撃も含むCONPLAN-8022も仕上げられている。 2010年3月には米韓両軍が合同軍事演習「フォール・イーグル」を実施している最中、韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没する。韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域での出来事だった。 この沈没に関して5月頃から李明博政権は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始める。この主張には疑問が多く、CIAの元高官でジョージ・H・W・ブッシュと親しく、駐韓大使も務めたドナルド・グレッグもこの朝鮮犯行説に疑問を投げかけた。 そして11月には問題の海域で軍事演習「ホグク(護国)」が実施され、アメリカの第31MEU(海兵隊遠征隊)や第7空軍が参加したと言われている。そして朝鮮軍の大延坪島砲撃につながった。 日本も中国に対する攻撃の準備を着々と進めている。日本は1995年にアメリカの戦争マシーンへ組み込まれ、アメリカの戦略に基づいて軍事戦略を立てている。 自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成させたが、こうした軍事施設もアメリカの戦略に基づいている。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 これでは間に合わないと判断されたのか、昨年10月、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。
2023.09.14
アントニー・ブリンケン国務長官は9月10日、ABCニュースのインタビューの中で、射程300キロメートルのATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)を近いうちにウクライナへ引き渡すと発言、しかも目標の決定はウクライナが決めることだとした。つまり、ロシア領深くを攻撃することを容認するということである。ATACMSはアメリカがすでに供給済みのHIMARS(高機動ロケット砲システム)で発射できる。 ロシア外務省は昨年9月15日、ウクライナへのATACMS引き渡しは「レッドライン」を越す行為であり、ワシントンを「紛争の当事者」にするとアメリカ政府に警告している。ブリンケン発言はアメリカがロシア政府の設定したレッドラインを越えるという宣言だと見なされている。 アメリカはロシア壊滅を目指して2014年2月に戦闘を始めたが、その思惑は外れ、勝者はロシアだ。この戦闘の結果、兵士の能力、兵器の能力、生産力、資源量などでロシアがアメリカを圧倒していることが確認された。しかも戦闘の過程でロシアは弱体化するどころか、力をつけている。 アメリカやイギリスはウクライナに対し、劣化ウラン弾やクラスター爆弾といった問題の多い武器を供給しているが、その理由のひとつは兵器庫に通常の武器弾薬がなくなったからだとも言われている。 ウクライナでの戦闘でロシアの勝利が確定的な現在、ロシア領に対するテロ攻撃や長距離ミサイルでの攻撃で「戦っている」ことをアピールするしかなくなっている。ウクライナの敗北はジョー・バイデン政権の破滅につながる。破滅を受け入れられないブリンケン国務長官が妄想の中へ逃げ込むのは必然かもしれない。
2023.09.13
朝鮮の金正恩労働党委員長は9月11日、ロシアのウラジオストクに到着した。EEF(東方経済フォーラム)に出席し、ウラジミル・プーチン露大統領と会談するためだ。 アメリカは日本や韓国を引き連れて東アジアの軍事的な緊張を高めているが、そのために朝鮮を利用してきた。朝鮮が相手なら少々のことをしても大丈夫だと高を括っていたのだろうが、これからはそれなりの覚悟が必要になる。 しかし、日本人の大半はそうした覚悟ができていないだろう。ネオコンやその後ろ盾に従属することで自らの地位と収入を維持している日本の「エリート」はアメリカの強さを演出し、そのアメリカに従っていれば日本は心配する必要がないと日本の庶民に思わせたいのだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたように、ネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月にアメリカの国防総省はDPG草案という形で世界制覇プラン、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を作成。その中でドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れ、新たなライバルの出現を防ぐとしている。 このドクトリンに日本を従わせるため、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表したが、それと前後して奇怪な出来事が相次いだ。 例えば、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後には警察庁の國松孝次長官が狙撃されている。8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載された。 アメリカの戦争マシーンに組み込まれた日本は必然的に戦争への道を歩み始める。そして自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成させている。 この軍事施設はアメリカの戦略に基づくもの。アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 ところが、昨年10月、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。日本のミサイル開発を待っていられなくなったのだろう。 トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されている。 このミサイルを使う自衛隊の戦力は約25万人、予備役は約5万6000年、日本と同盟関係にある韓国軍の戦力は約50万人、予備役は310万人ということになる。アメリカ軍はオーストラリアを拠点にし、航空兵力は太平洋の島に分散させると見られている。 アメリカはユーラシア大陸の東岸で十分の手下を見つけられなかったようで、AUKUSなる軍事同盟を組織した。オーストラリア(A)、イギリス(UK)、アメリカ(US)のアングロ・サクソン同盟だ。そこへ日本は近づこうとしている。 明治維新、そして明治体制の東アジア侵略の背後にはアングロ・サクソン系のイギリスとアメリカが存在していた。琉球併合、台湾派兵、江華島への軍艦派遣、日清戦争、日露戦争と続くが、いずれも米英の戦略に合致している。 日露戦争で日本に戦費を用立てたのは、ロスチャイルド系金融機関のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフ。戦争の調停に乗り出したセオドア・ルーズベルト米大統領はハーバード大学出身だが、その先輩にあたる金子堅太郎と親しかった。ちなみに、関東大震災以降、日本に大きな影響力を及ぼすことになった金融機関は親ファシズムのJPモルガンだ。 日本政府の使節としてアメリカにいた金子は1904年にハーバード大学でアングロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説し、同じことをシカゴやニューヨークでも語った。日露戦争の後、ルーズベルトは日本が自分たちのために戦ったと書いている。こうした関係が韓国併合に結びついた。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) アラスカ、ハワイ、フィリピンを手に入れ、東アジア侵略を視野に入れていたアメリカにとって日本の韓国併合は願ってもないことだった。アメリカが最も欲しがっていた場所はカリフォルニアのはるか西にある「新たな西部」、つまり中国東北部だった。その場所に日本は「満州国」を建国することになる。
2023.09.13
ウクライナ議会の国家安全保障問題委員会に所属するフョードル・ベニスラフスキーは9月8日、ウクライナで医学または薬学教育を受けたすべての女性は10月から軍に登録しなければならないと発表した。同議会は昨年、動員法を改正して女性の軍事登録を可能にし、弁護士、プログラマー、音楽家、ソーシャルワーカー、会計士、ジャーナリスト、ビデオグラファー、科学者、獣医師、経営者などの職業に就いている女性も任意で入隊できるようになった。それだけ兵士不足が深刻だということだ。 ロシア軍は昨年2月24日からウクライナに対する攻撃を始めた。ミサイルや航空兵力が攻撃の中心で、地上部隊はドンバスの現地軍や傭兵のワグナー・グループなどに限られていたようだ。つまりロシアの正規軍はほとんどドンバスへ入っていなかった。ミサイル攻撃の目標は航空基地や生物兵器の研究開発施設だったとみられている。 ウクライナ軍は昨年3月からドンバスに対する大規模な攻撃を始める予定だったする情報がある。実際、昨年の年明け後にウクライナ軍がドンバスの周辺に集結、OSCE(欧州安全保障協力機構)によると、2月17日頃からウクライナ側からドンバスへの攻撃が始まり、18日、19日とエスカレートしている。 ドンバス近くにはウクライナ軍や傭兵だけでなく、アメリカやイギリスなどの国が特殊部隊もいたとみられているが、そうした部隊はロシア軍の攻撃で壊滅的な打撃を受けた。 その後、ウクライナ軍は45歳以上の男性だけでなく少年兵も前線へ送り出していると伝えられたが、今年に入り、60歳程度の男性が街角で拘束され、前線へ送り込まれているとする話も伝えられている。そして女性だ。 ドンバスでの内戦は2014年2月にアメリカのバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチを排除したところから始まる。 ヤヌコビッチは2010年の大統領選挙で勝利したのだが、支持基盤の東部と南部は住民の7割以上がロシア語を話し、正教会の文化圏に入っている。ウクライナ語を話し、カトリック文化圏の西部とは異質で、ウクライナは不安定な国だったと言える。そのバランスを選挙によって維持していたのだが、それをオバマ政権はクーデターで壊した。 クーデター後、ウクライナ軍の将兵や治安組織の隊員は約7割が組織から離脱し、一部は反クーデター軍に合流したと言われている。残った将兵の戦闘能力は低く、西側諸国が特殊部隊や情報機関員、あるいは傭兵を送り込んでもドンバスで勝利することは難しい状況だった。 そこで内務省にネオ・ナチを中心とする親衛隊を組織、傭兵を集め、年少者に対する軍事訓練を開始、要塞線も作り始めた。そうした準備のために8年間が必要だったのだろう。 その8年間にアメリカ/NATOはドンバスの周辺に要塞線を築く。ネオ・ナチを中心に編成されたアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルにはソ連時代に建設された地下施設、つまり地下要塞が存在、それを利用して要塞線は作られた。この要塞線はロシア軍に突破されてしまう。 それに対し、ウラジーミル・ゼレンスキー政権は今年6月4日に「反転攻勢」を始めたが、ロシアが構築した「スロビキン防衛線」を突破できない。そこでアメリカ/NATOは「総玉砕」戦法を強要、訓練が十分でない部隊に「バンザイ突撃」させてロシアを疲弊させようとした。 旧日本軍を彷彿とさせる無謀な戦法で突破口を開き、その後で精鋭部隊の第82空挺旅団を中心とする最後の戦略予備軍を投入する計画を立てていたと言われているが、早い段階で投入せざるをえなくなり、その精鋭部隊はロシア軍に殲滅されてしまった。 ところが、アントニー・ブリンケン国務長官はウクライナ軍がロシア軍に占領された領土の50%以上を取り戻し、「反転攻勢」はこ進展が加速していると主張しているらしい。その主張は本気だとも言われている。戦況を少し調べれば、この主張は妄想にすぎないことがわかる。 今から1年前、ゼレンスキー大統領が北東部のハリコフ州へ送り込んだ部隊はロシア軍を敗走させたと信じている人がまだいるようだが、実態は戦略的な撤退で、トラップだった。 この地域はステップ(大草原)で、隠れることが困難。ロシア軍は制空権を握っているほか、高性能ミサイルも保有している。実際、NATO/キエフ軍がハリコフへ深く入り込むのを待ち、ロシア/ドンバス軍は航空兵力やミサイルによる激しい攻撃を開始、侵攻軍に大きな損害を与えたと伝えられている。これをウクライナ軍の「大勝利」ということはできない。 撤退したロシア側の部隊はソレダル、そしてバフムート(アルチョモフスク)を制圧し、アメリカ/NATO/ウクライナが8年かけて築いた要塞線を突破した。ソレダルと同じように要塞線の重要な拠点だったマリウポルもロシア軍が解放している。 戦場にはドイツの「レオパルト2」やイギリスの「チャレンジャー2」といった戦車の残骸が残されているが、早晩、破壊されたアメリカの「M1A1エイブラムス」も戦場に取り残されることになるだろう。近い将来、日本でもそうした光景が見られるかもしれない。
2023.09.12
アメリカのジョー・バイデン政権は9月6日、ウクライナに対する最大で1億7500万ドルに相当する「安全保障」に関する追加支援を発表した。その中にはM1A1エイブラムス戦車用の120mm劣化ウラン弾が含まれている。ウクライナに引き渡されるエイブラムス戦車は31両だという。クラスター爆弾に続く問題兵器の支援だ。 劣化ウラン弾は1991年の対イラク攻撃でアメリカ主導軍によって使われている。メディアにリークされたイギリス原子力庁の秘密報告書によると、戦争中、約40トンの劣化ウラン弾が散布されたと推定されている。戦争後に増加した小児がんや謎の腹部腫脹は、少なくとも放射性砲弾が原因の一部であるとされている。 1999年3月にアメリカ/NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃しているが、その際にも劣化ウラン弾が使われた。ユーゴスラビア攻撃はネオコンが1992年2月に作成した世界制覇プランの幕開けだ。 1991年12月にはソ連が消滅、アメリカの国務省、国防総省、CIAなどを支配していたネオコンは世界制覇プロジェクトを始動させた。彼らはアメリカが唯一の超大国になったと認識、好き勝手なことができると考えたのである。 その世界制覇プランは1992年2月にDPG(国防計画指針)草案という形で作成された。この指針は国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心に書き上げられたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 ドクトリンの目的としてまず挙げているのは新たなライバルの出現を防ぐこと。警戒する地域には旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが含まれる。そしてドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れ、「民主的な平和地域」を創設するともしている。ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込むということだ。 しかし、日本側はそうしたプランに抵抗、細川護煕政権は国連中心主義を掲げたが、1994年4月に倒されてしまう。そして1995年2月、ジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表。この報告書を受け入れた段階で日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。この年、日本では衝撃的な出来事が続いた。 アメリカのビル・クリントン政権は当初、旧ソ連圏で戦争を始めることに抵抗していたが、スキャンダル攻勢でホワイトハウスは麻痺状態になる。状況が落ち着くのは、1997年1月に国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代する頃から。 1998年4月にアメリカ上院はソ連との約束を無視してNATOの拡大を承認、その年の秋にオルブライト国務長官はユーゴスラビア空爆を支持すると表明し、有力メディアは攻撃を正当化するために偽情報を広めていた。 ユーゴスラビアに対する先制攻撃ではスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊するだけでなく、中国大使館を爆撃している。大使館を空爆したのはB2ステルス爆撃機で、目標を設定したのはCIA。アメリカ政府は「誤爆」だと弁明しているが、3機のミサイルが別々の方向から大使館の主要部分に直撃していることもあり、中国側は「計画的な爆撃」だと主張している。 アメリカやイギリスがウクライナへ劣化ウラン弾やクラスター爆弾を供給する理由のひとつは、兵器庫に通常の武器弾薬がなくなったからだとも言われている。戦争を推進してきたアメリカやイギリスの政府にとって絶望的な状況なのだが、敗北を認めるわけにはいかない。かれらは「ルビコン」を渡ってしまったのだ。敗北は破滅を意味する。 劣化ウラン弾で戦況が変わる可能性はないが、使われれば住民の健康に深刻な影響が現れ、穀倉地帯が汚染で使えなくなる。アメリカ政府はウクライナ人やロシア人を殺すだけでなく、生態系を破壊しようとしている。
2023.09.11
ウラジーミル・ゼレンスキー政権が6月4日に始めた「反転攻勢」は失敗した。ウクライナでは高齢者を街で拉致して戦場へ送り込んでいるが、ここに来て女性を動員の対象にしようとしているとも報道されている。 ロシアが構築した「スロビキン防衛線」を突破するためにアメリカ/NATOは「総玉砕」戦法を強要、訓練の不十分た部隊に「バンザイ突撃」させてロシアを疲弊させようとしたが、その目的を達成できそうにはない。 旧日本軍を彷彿とさせる無謀な戦法で突破口を開き、その後で精鋭部隊の第82空挺旅団を中心とする最後の戦略予備軍を投入する計画を立てていたと言われているが、早い段階で投入せざるをえなくなり、精鋭部隊はロシア軍に殲滅されてしまった。 ウクライナでの内戦はアメリカのネオコンが仕掛けたのだが、その背後にはウォール街やシティを拠点とする巨大金融資本が存在している。その金融資本は現在、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリートをはじめとする「闇の銀行」を中心に動いている。 ウクライナへは膨大な兵器や資金が流入、「URB(ウクライナ復興銀行)」の設立も計画されている。国を破綻させて「民営化」、ウクライナの富を盗もうとしている。その計画の中心はブラックロックやJPモルガンだ。 ブラックロックは西側から供給される兵器や「復興資金」の使い道についてアドバイス、同社を率いるラリー・フィンクはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と関係が深い。JPモルガンやゴールドマン・サックスともゼレンスキー政権は協力関係にある。 2013年11月から14年2月にウクライナではクーデターが実行されたが、その後、ロシアからの支援を失ったウクライナの経済は破綻、ウクライナ国債の価格は下落する。それを買い占めていたフランクリン・テンプルトンというファンドは額面総額50億ドルの国債を買ったという。このファンドを操っているのはロスチャイルド家だ。破綻国にIMFが融資、その資金で二束三文になった国債を満額で買い取らせ、IMFが借金の取り立てるという流れができている。 しかし、約束を守らないアメリカ/NATO/ウクライナとの話し合いをロシアはしないだろう。ミンスク合意と同じように、アメリカやその従属国にとって話し合いは状況が悪い時の時間稼ぎにすぎない。 ウクライナを占領したうえでロシアを倒し、富を独占することは難しいのだが、ネオコンはウクライナ人を利用してロシアを疲弊させるという計画に執着いている。 ロシアにウクライナ攻撃を決断させた理由はNATOの東への拡大とネオ・ナチの存在。ここにきてフランスのニコラ・サルコジ元大統領はウクライナがEUやNATOへ加盟することに反対すると表明、モスクワとキエフの和解を求めた。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、ロシア政府とウクライナ政府は昨年2月末から3月初めの段階で停戦交渉、ほぼ合意に達していた。 停戦交渉を仲介したひとりはイスラエルの首相を務めていたナフタリ・ベネット。彼によると、話し合いで双方は妥協に応じ、停戦は実現しそうだった。 3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけ、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・シュルツ首相と会っている。ゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフがウクライナの治安機関SBUのメンバーに射殺されたのはその3月5日だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 こうした停戦の動きを破壊したのがアメリカ政府とイギリス政府にほかならない。停戦を実現する上で最大の障害はこのふたつの国だ。 この2カ国の情報機関、CIAとMI6は第2次世界大戦後、NATOの内部に秘密工作機関のネットワークを築いていた。そのネットワークはフランスのシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を試み、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領を暗殺したと言われている。 NATOがヨーロッパ支配の道具だと理解していたとみられるド・ゴールは、ケネディ大統領が暗殺されてから3年後の1966年にフランス軍はNATOの軍事機構から離脱させ、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出した。フランスがNATOの軍事機構へ一部復帰すると宣言したのは1995年。NATOへの完全復帰は2009年にサルコジ政権が決めている。サルコジはフランスをアメリカの属国にしたわけである。
2023.09.10
ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が2001年9月11日に攻撃された。いわゆる「9/11」だ。その年にスタートしたばかりのジョージ・W・ブッシュ政権は攻撃について詳しい調査をしないまま実行責任者をオサマ・ビン・ラディンだと断定、アメリカ憲法の機能を停止させた。同時にアフガニスタン、そしてイラクを先制攻撃、世界制覇戦争を始めている。 欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたウェズリー・クラークによると、ポール・ウォルフォウィッツは国防次官時代の1991年にイラク、イラン、シリアを殲滅すると口にし、9/11から10日ほど後にはイラク、ついでシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランの名前が記載された攻撃予定国リストを統合参謀本部で見たという。(3月、10月) この9/11の28年前、今から50年前の1973年9月11日に南アメリカのチリで軍事クーデターがあった。1970年の選挙で勝利、大統領に就任したサルバドール・アジェンデはアメリカによる帝国主義的な支配に反対していた政治家で、巨大資本から敵視されていた。そして巨大資本の代理人であるヘンリー・キッシンジャーを後ろ盾とするオーグスト・ピノチェトがアジェンデ政権を倒したのだ。キッシンジャーの手先として動いていたのはCIAの破壊工作部門である。 クーデターの布石としてCIAはチリ軍参謀総長レネ・シュネイデルを殺害した。この軍人は憲法を遵守する考え方の持ち主で、CIAにとって好ましくない人物だった。さらにアメリカの金融機関やIBRD(国際復興開発銀行、通称「世界銀行」)はチリへの融資をストップして経済面から揺さぶりをかけ、労働組合はストライキで社会を不安定化させていた。チリに限らず、CIAは労働組合を支配下に置いている。 CIAやイギリスの対外情報機関MI6は1960年代からイタリアで破壊工作を連続して実行していた。第2次世界大戦中、西ヨーロッパでドイツ軍と戦ったのは事実上、レジスタンスだけ。そのレジスタンスの主力がコミュニストだったことから大戦後もイタリアやフランスはコミュニストが強く、米英の支配層はレジスタンス人脈を嫌っていた。コミュニストではないが、レジスタンスに参加していたフランスのシャルル・ド・ゴールの命が狙われた理由もここにある。 例えば、イタリアでは1969年にパドゥア大学とミラノの産業フェアで爆弾テロ、そしてミラノのフォンタナ広場にある国立農業銀行が爆破された。1970年にクーデターが試みられ、74年にはボローニャ近くで列車が爆破され、80年にはボローニャ駅が爆破されている。 国立農業銀行を爆破したひとりとされているステファノ・デレ・キアイエは1970年のクーデター未遂の後にスペインへ逃げ込み、その後はイタリアとスペインとの間を自由に行き来している。1974年4月には有力貴族でファイスストやCIAとの関係が深いバレリオ・ボルゲーゼとチリを訪問、ピノチェトと会談した。 1975年春にはチリの情報機関DINAのオフィサーだったマイケル・タウンレイが西ヨーロッパへ派遣され、現地の右翼活動家をリクルート、亡命している反体制派を「無力化」する手配をしている。そして1975年10月、ピノチェト体制に反対する運動を組織していたベルナルド・レイトンがローマで銃撃され、重傷を負った。デレ・キアイエの協力を得ての作戦だった。(Jeffrey M. Bale, “The Darkest Sides Of Politics, I,” Routledge, 2018) 1976年9月にはアジェンデ政権で外務大臣などを務めたオルランド・レテリエールがワシントンDCで暗殺された。CIAが暗殺計画を知らなかったとは思えないが、その時のCIA長官はジョージ・H・W・ブッシュ(ジョージ・W・ブッシュの父)にほかならない。 チリのクーデターはオーストラリアの情報機関も協力していた。この事実を知ったゴウ・ウイットラム首相はASISに対してCIAとの協力関係を断つように命令した。 ASIS以外にもオーストラリアには情報機関があり、いずれもアメリカの指令で動いていた。その仕組みをウイットラム政権が揺るがすことを恐れたアメリカ政府はウイットラムの排除を目論む。CIAは1975年11月、イギリス女王エリザベス2世の総督であるジョン・カー卿を動かしてウイットラム首相を解任している。 カーは第2次世界大戦中の1944年、オーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣されてCIAの前身であるOSS(戦略事務局)と一緒に仕事をし、大戦後はCIAときわめて深い関係にあった。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987) ウイットラムが解任された後、オーストラリア政府が米英支配層の政策に逆らうことはなくなった。
2023.09.09
人類は絶滅の危機に直面している。 1991年12月にソ連が消滅した直後の92年2月にネオコンはアメリカ国防総省の「DPG草案」という形で世界制覇プランを作成、アメリカをロシアや中国との核戦争へと導いてきた。 また、医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワによると、彼女が情報公開法によって入手した文書を分析した結果、国防総省はバラク・オバマ大統領の時代から「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種計画を始めている。この薬の実態は遺伝子操作薬で、すでに深刻な副作用を引き起こし、少なからぬ人を死に至らしめた。人間の免疫システムと生殖能力を破壊しつつあるとも懸念されている。 安全性を調べる通常のプロセスを無視して「COVID-19ワクチン」の接種は始められたが、それを可能にしたのはWHO(世界保健機関)が2020年3月11日に行ったパンデミック宣言。死亡者が爆発的に増えているわけではなかったが、定義の変更で可能になっていた。「豚インフルエンザ」が流行(2009年1月から10年8月にかけての時期に)する直前に「病気の重大さ」、つまり死者数が多いという条件が削られていたのである。 2019年12月の終わりに中国湖北省の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されてCOVID-19騒動は始まった。翌年の2月4日には横浜港から出港しようとしていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者が見つかり、人びとを恐怖させることになるのだが、「SARSと似た重症の肺炎患者」が街にあふれ、死者が急増するという事態にはならない。 しかも中国では軍の陳薇が対策を指揮、短期間に事態を沈静化させることに成功する。陳はSARSが2002年から03年にかけて流行した際にも対策を指揮、その時の経験を活かしてインターフェロン・アルファ2bを使ったところ、効果があった。 この医薬品はキューバで研究が進んでいるもので、リンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できた。この事実は中国やキューバなどで報道され、中国の習近平国家主席がキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたとも伝えられている。(ココやココ) また、駆虫薬として知られているイベルメクチンがCOVID-19に有効だということがメキシコの保健省と社会保険庁によって確認された。また抗マラリア薬のクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日にウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載されている。 武漢やクルーズ船などで病気を引き起こした病原体と世界の街で流行した病気の病原体はおそらく違うが、いずれも有効な薬が存在、安全性が確認されていない遺伝子操作薬を接種させる必要はなかった。 ネオコンは1990年代にユーゴスラビアを手始めとして、旧ソ連圏に対する軍事作戦を開始、NATOを東へ拡大させ始めている。1941年6月にドイツ軍はソ連に対する奇襲攻撃を始めた。西側には約90万人だけを残し、310万人をソ連に対する攻撃に投入するという非常識なもので、「バルバロッサ作戦」と呼ばれている。ウクライナとベラルーシに対する攻撃から作戦は始まっている。 ロシアのウラジミル・プーチン大統領はバルバロッサ作戦と同じ失敗を繰り返さないと宣言していた。ウクライナとベラルーシにNATOが入ることを許さないということだ。 しかし、その前にネオコンはウクライナ侵略を始めていた。2014年2月にはネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除したのだ。そのクーデターにヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民が反発、南部のクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバスでは内戦が始まった。 その内戦はドンバス側が優勢だったため、ドイツとフランスが仲介役になり、「ミンスク合意」が成立する。これはクーデター体制の戦力を増強するための時間稼ぎだったことを後にドイツのアンゲラ・メルケルとフランスのフランソワ・オランドが認めている。 メルケル元首相は昨年12月7日にツァイトのインタビューで、ミンスク合意はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語り、オランド元仏大統領はその事実を認めている。キエフ政権は合意を守らないのは当然だった。 合意成立から8年、アメリカ/NATOはキエフ側の戦力を増強するために武器弾薬の供給や兵士の訓練を進める。それによってキエフのクーデター体制はドンバスの反クーデター軍に対抗できるようになり、昨年の年明け後、ウクライナ軍がドンバスの周辺に集結した。 ドンバスの周辺にアメリカ/NATOは2014年から8年かけて要塞線を築いていた。ネオ・ナチを中心に編成されたアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルにはソ連時代に建設された地下施設が建設されていた。この要塞線を利用してロシア軍を封じ込め、クリミアを別の部隊に攻撃させる計画だったとも推測されている。 しかし、ロシア軍はアメリカ/NATOの計算通りには動かなかった。昨年2月24日から巡航ミサイルなどでドンバス周辺のウクライナ軍を殲滅、さらにウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃している。その際、機密文書を回収した。 その中に生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていたが、ロシア軍はそれを分析する。その結果、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したという。敵兵だけでなく、動物や農作物にもダメージを与えられる生物兵器を開発しているのだという。 ロシア軍による攻撃でウクライナ東部にあった研究施設は破壊されたが、西部地域の施設では研究開発がまだ行われているとされている。アメリカ国防総省はそうした拠点をケニア、シンガポール、タイなどで新たに建設しているようだ。日本に作られていないとは言えないだろう。 生物兵器の開発には遺伝子操作の技術が使われる。プーチン大統領は9月1日、新学期を迎えた小学生を前でその技術の話をしている。遺伝子技術は「恐ろしい破壊力を持つ武器」を生み出す可能性があり、倫理的な縛りが必要だと語ったのだ。その発言を撮影した動画がソーシャルメディアに投稿されている。小学生というクッションを置き、世界にメッセージを伝えたのだろう。 現在、「パンデミック条約」で各国から主権を奪おうと画策しているWHOも遺伝子操作に熱心だ。この組織が創立時から協力関係にあるというロックフェラー財団と共同で情報を管理するシステムを築こうともしている。COVID-19騒動を見れば、WHO、そしてビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などそのスポンサーたちに倫理を尊重しているとは思えない。
2023.09.08
アメリカのジョー・バイデン大統領は8月18日に韓国の尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相をキャンプ・デイビッドに招き、軍事問題について話し合った。中国やロシアとの戦争を想定、日米韓の三国軍事同盟を構築しつつあると言えるだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、自衛隊はアメリカの戦略に基づき、すでに南西諸島でミサイル発射基地を建設している。2016年には与那国島、19年には宮古島と奄美大島、今年3月には石垣島で駐屯地が建設された。 アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書には、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画が記載されているが、そうしたミサイルを配備できそうな国は日本だけだと分析されている。 しかし、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされている。 ところが、昨年10月、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。自力開発が難しいのか、事態の進展が予想外に早いのだろう。 トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。このミサイルを使う自衛隊の戦力は約25万人、予備役は約5万6000人、日本と同盟関係にある韓国軍の戦力は約50万人、予備役は310万人ということになる。アメリカ軍はオーストラリアを拠点にし、航空兵力は太平洋の島に分散させると見られている。 アメリカの対中露戦争で日本は最前線の拠点、韓国は大陸侵攻の橋頭堡になる。琉球の併合、台湾への派兵、江華島事件、日清戦争、日露戦争という明治維新後の流れと同じになりつつある。 日本が中国やロシアに向かってミサイルを発射すれば、当然、反撃される。ウクライナでアメリカ/NATOは昨年3月にドンバスを軍事侵攻する予定で、住民を殺戮し、ロシア軍をドンバスへ誘い込もうとしていたという推測もある。 そのドンバス周辺にアメリカ/NATOは2014年から8年かけて要塞線を築いていた。ネオ・ナチを中心に編成されたアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルには、ソ連時代、核戦争に備えて地下施設が建設されていた。ソレダルの地下にある岩塩の採掘場は深さが150メートルから280メートル、空間の高さは30メートル、全長は200キロメートルに達し、鉄道も敷設されている。 日本が攻撃されることを想定すると、同じように地下要塞を建設しようと考えても不思議ではない。都市部では50メートル程度、山間部では1400メートル余りの地下施設を建設、そこに高速列車を走らせようとするかもしれない。
2023.09.07
アメリカは8月29日、日本と韓国を引き連れ、朝鮮半島沖で合同ミサイル防衛訓練を実施した。その前、8月18日にジョー・バイデン米大統領は韓国の尹錫悦大統領と日本の岸田文雄首相をキャンプ・デイビッドに招いて軍事問題について話し合い、その直後にアメリカ軍は自衛隊とオーストラリア軍を引き連れて南シナ海で洋上演習を、また韓国軍と乙支フリーダム・シールドをそれぞれ始めている。 それに対し、朝鮮の金正恩労働党委員長は9月10日から13日に開催が予定されているEEF(東方経済フォーラム)に出席するため、ロシアのウラジオストクを訪問すると伝えられている。ウラジミル・プーチン政権は朝鮮との関係を強めつつあり、7月25日にはセルゲイ・ショイグ国防相に率いられたロシアの軍事代表団が朝鮮を訪問、中国の代表団と合流して朝鮮戦争終結を記念する戦勝記念日の行事に出席していた。この3カ国は今後、軍事的なつながりも強めそうだ。 このように現在、東アジアの軍事的な緊張が高まっているのだが、その切っ掛けを作ったのは菅直人政権にほかならない。2010年6月に発足した菅内閣は尖閣諸島に関する質問主意書への答弁で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張、同年9月に海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕している。 1972年9月に田中角栄と周恩来が日中共同声明に調印しているが、その際、尖閣諸島の問題を「棚上げ」にすることで合意している。その合意を破ったのだ。その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。 昨年8月2日にはアメリカの下院議長だったナンシー・ペロシが突如台湾を訪問、「ひとつの中国」政策を行動で否定した。1972年2月に大統領だったリチャード・ニクソンが北京で中国を「唯一の正当な政府」と認めたところから始まったアメリカと中国の友好的な関係を傷つける行為にほかならない。 軍事的な緊張が高まる東アジアで最も好戦的な姿勢を見せている国は日本だろう。自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作り、23年には石垣島でも完成させている。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけだと考えている。 その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。 日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。 極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。 日本政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めていると昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。 日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。 こうした当初の計画では準備が間に合わない事情がアメリカに生じ、トマホークを購入することにしたのだろう。それだけ事態は逼迫しているということになる。 バイデン政権が東アジアで軍事的な緊張を高めている理由のひとつはウクライナにおける戦いでアメリカ/NATO軍がロシア軍に負けたという事実がある。 ウクライナにおける戦闘でアメリカ/NATOに支援されたクーデター体制軍が負けることは明らかで、有力メディアと使って「ウクライナが勝つ」と宣伝してきたジョー・バイデン政権の求心力は衰えてきた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領のスポンサーだったイホル・コロモイスキーが最近、逮捕された。ゼレンスキーにはイギリスの情報機関MI6という後ろ盾が存在しているが、ここにきて反ロシアのネオ・ナチが暴走気味だ。 ゼレンスキー政権が今年6月4日に「反転攻勢」を始めるが、戦況を考えれば、この作戦が成功するはずはなく、予想通りに失敗した。その事実をアメリカの有力紙も認めざるをえなくなっている。例えばワシントン・ポスト紙は自分たちが宣伝していた「反転攻勢」で進展はないことを認めた。 武器弾薬が枯渇、兵士も足りないことからアメリカ/NATOはウクライナ軍に無謀な突撃を繰り返す「玉砕戦法」を命令、ロシア軍を疲弊させ、その上で温存していた「精鋭部隊」を投入するつもりだったようだが、そうした状況を作れないまま「精鋭部隊」を使わざるを得なくなっているとも言われている。その精鋭部隊もすでに殲滅された。第2次世界大戦終盤の日本軍を見ているようだ。 バイデン政権を担いでいるネオコンをはじめとする勢力が危機感を強めているもうひとつの理由はBRICSの影響力が拡大していることにあるだろう。アメリカがロシアや中国に負けていることを理解している世界の国々は、これ以上アメリカの理不尽な要求を受け入れたくないと考えている可能性がある。 ニジェールでフランスの傀儡政権がクーデターで倒された後、クーデターを実行したリーダーのひとりで国土防衛国民評議会の副議長を務めているサリフー・ムーディー師団将軍はマリを訪れた際にワグナー・グループの幹部と会い、支援を要請したと伝えられた。 同グループを率いていたエフゲニー・プリゴジンは8月23日、モスクワからサンクトペテルブルグへエンブラエル・レガシー600で向かう。その途中、その飛行機が墜落して死亡したとされている。 8月21日から24日にかけてBRICSの年次総会が南アフリカのヨハネスブルグでは開かれ、金融問題が議論されていた。その会議にウラジミル・プーチンが参加することをアメリカは妨害したが、ビデオリンクで参加して重要なメッセージを発信していた。基軸通貨を発行する特権を利用して世界を支配してきたアメリカにとって、自らの支配システムを揺るがす事態が進展しているのだ。 ウクライナでの戦闘でロシアを経済的に攻撃するため、アメリカは自分たちが管理している金融システムを利用した。そうした攻撃に対する対策を立てていたロシアは大きなダメージを受けなかったが、アメリカに対する世界の信頼度は大きく低下している。昨年以降、BRICSへの関心は爆発的に高まったという。アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦がBRICSに正式に加盟することを会議の主催者である南アフリカ共和国のシリル・ラマフォサ大統領は発表した。 こうした会議が開かれている日にプーチンがプリゴジンを暗殺することはありそうにない。
2023.09.06
ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2001年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された。いわゆる「9/11」である。 その前日、国防長官だったドナルド・ラムズフェルドは軍事予算のうち2兆3000億ドルが行方不明になっていることを認めていた。これは大スキャンダルだったが、9/11のため、この問題は吹き飛んでしまった。 また、ネオコンに担がれていたブッシュ大統領の「財布」と言われていたエネルギー投機会社エンロンの破綻が不可避の状態で、経営内容にメスが入れられようとしていた。ところが倒壊した7号館に保管されていた膨大な関連書類は消えている。 エンロンを生み出した新自由主義的な強者総取りの政策は社会を破壊し、人びとの怒りは高まっていた。2001年7月にイタリアのジェノバではG8サミットが開かれたが、そこへ約20万人が抗議のために集結、取り締まり側は暴力行為をでっち上げる事態になっていた。 また9月10日から11日にかけて、大統領の父親であるジョージ・H・W・ブッシュ元大統領はフランク・カールッチやジェームズ・ベイカー3世とリッツ・カールトン・ホテルでシャフィク・ビン・ラディンと商談していた。 ブッシュたちアメリカ人3名は巨大投資会社カーライル・グループの幹部だったが、商談相手が問題。ジョージ・Wは9/11の直後、詳しい調査をしないまま実行責任者をオサマ・ビン・ラディンだと断定したが、シャフィクはオサマの兄弟だからだ。 ビン・ラディン家はサウジアラビア最大の建設会社を経営、アフガニスタンでCIAは対ソ連戦の主力戦闘員として、サウジアラビアから派遣されたムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使っていた。その戦闘でビン・ラディン家の会社は建設機械を使い、地下要塞網を建設したと言われている。 ところが、9/11では複数の旅客機がサウジアラビアなど中東出身の人びとにハイジャックされたとされている。証拠はないのだが、そういうことにされ、人びとの目はサウジアラビアに向けられた。 当時、サウジアラビアの駐米大使として赴任していたのはバンダル・ビン・スルタン。「バンダル・ブッシュ」と呼ばれるほどブッシュ家と親しい関係にあった。バンダルは後にサウジアラニアの情報機関、総合情報庁を率いることになる。彼の後任大使になるトゥルキ・ビン・ファイサル・アル・サウドは2001年8月31日、つまり9/11の11日前まで総合情報庁の長官を務めていた。 9/11の直後、ジョージ・W・ブッシュ政権は詳しい調査をしないまま「アル・カイダ」が実行したと断定、その「アル・カイダ」を指揮しているオサマ・ビン・ラディンを匿っているという口実でアフガニスタンへの攻撃を始めている。 その一方、国内では「愛国者法(USA PATRIOT Act / Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001)」が制定された。この法律は340ページを超す文書だが、それを議会は提出されて1週間で承認してしまった。 この法律によってアメリカ憲法は機能を事実上停止、令状のない盗聴や拘束、拷問が横行することになった。民主主義を放棄したわけだが、この法律のベースになった法案を1995年2月に提出したとバイデンは自慢している。愛国者法の一部は2015年に失効したものの、「自由法」という形で復活。今ではさまざまな形で愛国者法は生き続けている。 ロナルド・レーガン時代、アメリカでは憲法の機能を停止させる仕掛けをつくっている。「COG」だ。このプロジェクトはロナルド・レーガン大統領が1981年に承認した「NSDD55」から始まる。COGは上部組織と下部組織に分かれ、上部組織は「プロジェクト908」、下部組織は「フラッシュボード」とそれぞれ呼ばれていた。 COGプロジェクトは極秘にされていたが、1987年7月に開かれたイラン・コントラ事件の公聴会において、ジャック・ブルックス下院議員が触れている。オリバー・ノース中佐に対し、「NSCで一時期、大災害時に政府を継続させる計画に関係した仕事を担当したことはないか?」と質問したのだ。この計画とはCOGプロジェクトにほかならない。 ノースに付き添っていた弁護士のブレンダン・サリバンは質問に動揺し、委員長のダニエル・イノウエ上院議員は「高度の秘密性」を理由にして、質問を打ち切ってしまう。イノウエ議員はCOGについて知っていたということだ。 ブルックス議員が取り上げた当時、COGは核戦争を前提にしていたのだが、1988年に変質する。大統領令12656が出され、その対象は「国家安全保障上の緊急事態」に変更されたのだ。そして2001年9月11日、「国家安全保障上の緊急事態」が起こった。9/11だ。 ジョージ・H・W・ブッシュ、フランク・カールッチ、ジェームズ・ベイカー3世、バンダル・ビン・スルタン、オサマ・ビン・ラディンたちを平和的だと表現することはできない。CIAと関係が深いことも事実だ。 しかし、H・W・ブッシュやベイカーは1980年代からネオコンと対立していた。当時、ブッシュやベイカーたちはイラクのサダム・フセイン体制をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と認識していたのだが、ネオコンはフセインを倒して親イスラエル体制を樹立、シリアとイランを分断して両国を制圧しようと目論んでいた。最終的に「大イスラエル」を樹立、つまり中東全域をイスラエルに支配させようとしていたと言われている。 また、ソ連消滅後、H・W・ブッシュやベイカーはNATOを東へ拡大するつもりはなかったようだが、ネオコンは拡大させてロシアを制圧しようとしていた。ジョージ・H・W・ブッシュが再選されなかった理由はこの対立にあったとも言われている。 選挙でブッシュに勝ったビル・クリントンもCIAと関係が深く、第1期目は旧ソ連圏への軍事作戦に消極的だった。そのクリントンはスキャンダル攻勢にあう。スキャンダルが沈静化するのは1997年に国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代してからだ。その後、NATOは東へ拡大、2014年2月にはクーデターでウクライナにネオ・ナチ体制を樹立した。 こうしてみると、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジェームズ・ベイカー3世、バンダル・ビン・スルタン、オサマ・ビン・ラディンなどは9/11の実行グループではない可能性があるように見える。一種の予防措置として実行グループが秘密工作に引き摺り込んだのかもしれない。
2023.09.05
中国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為)は8月29日に「Mate 60 Pro」と名付けられた新しいスマートフォンを発表、オンラインストアで予約販売を開始した。この携帯電話が搭載する同社のKirin 9000Sは5Gに対応しているとされている。アメリカ政府は2019年からファーウェイがアメリカ企業から先進的なチップやソフトウェアを購入することを制限しているが、そのひとつの回答がこれだ。 アメリカをはじめとする西側には中国だけでなくロシアも過小評価、ハイテク製品を開発する能力がないと信じている人が少なくない。ロシアの戦闘力や生産力は低く、兵器の製造に必要なマイクロチップは回線から間も無く枯渇し、兵器庫は空になって降伏すると好戦的エリートは信じていたという。 生産力の点で中国がアメリカより優っていることを理解しているアメリカ人も存在していた。そのひとりがアップルを率いていたスティーブン・ジョブスだ。 2011年2月、バラク・オバマ大統領はシリコン・バレーの幹部たちと食事をともにした際、ジョブスに対して同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけたのだが、拒否されている。 ジョブスによると、アジアでは生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実、労働者の技術水準が高いという理由からだという。アップル側の推計によると、iPhoneを生産するためには約20万人の組立工と約8700人のエンジニアが必要で、それだけの陣容をアメリカで集めるためには9カ月が必要だが、中国なら15日ですむという。 アメリカが抱える最大の問題は教育にある。最高レベルの教育は維持されているようだが、生産現場で必要な中間レベルの技術を持つ人を育成できていない。庶民から教育を受ける権利を奪ったアメリカのシステムは国を弱体化させている。アメリカに従っている日本でも学生のレベルが落ちているようだ。 しかし、それでもアメリカは優れていると妄想している人がいる。その中にはジョー・バイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌランド国務副長官代理、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官らが含まれている。 ウクライナでの戦闘でも彼らはロシアがすぐ無条件降伏すると考え、「戦犯法廷」も夢想していたというが、「経済封鎖」は機能せず、武器弾薬が枯渇したのはアメリカ/NATO/ウクライナ。ロシアの勝利は決定的だが、それを認めるわけにいかないバイデン政権はウクライナに「総玉砕」を要求、東アジアに火をつけようとしている。 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅した時、アメリカが唯一の超大国になったと考え、世界制覇プロジェクトを始動させた。これは本ブログで繰り返し説明してきた。 ところが21世紀に入るとロシアでウラジミル・プーチンを中心とする勢力が再独立に成功するのだが、それでもアメリカの好戦派は自分たちが世界の支配者だと信じていた。例えば、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文もそうした考えが反映されていた。それには、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近いとされている。 その考えが間違いだということは2008年8月に判明している。イスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が北京で夏季オリンピックが開かれていた期間を狙い、南オセチアを奇襲攻撃したのだが、ロシア軍の反撃で完膚なきまで叩きのめされたのだ。 イスラエルは2001年からジョージアに武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練しはじめている。イスラエルから供給された装備には無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムなども含まれていた。 当時のジョージア政府にはヘブライ語を流暢に話す閣僚がふたりいたことも知られている。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当しているテムル・ヤコバシビリだ。 そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、同年7月にはコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問している。南オセチアへの奇襲攻撃はその翌月だ。アメリカ政府の承認を受けての奇襲攻撃だったのだろう。 アメリカはアル・カイダ系武装集団を使い、2011年春にリビアやシリアへ軍事侵攻、13年11月から14年2月にかけてウクライナではクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。中東でもウクライナでもロシア軍の兵士や兵器の能力がアメリカ/NATO軍を上回ること明確になり、世界各国のアメリカ離れを促進する一因になった。 アメリカをはじめとする西側は生産力も資源量も軍事力もロシアや中国より劣っているのだが、勝てると信じている。今年7月6日から9日にかけて中国を訪問したジャネット・イエレン財務長官は居丈高な姿勢を示し、強者総取りの新自由主義へ復帰することを要求した。その要求を中国政府が受け入れるとは思えない。
2023.09.04
中央アフリカの大西洋岸にあるガボンで2023年8月30日にクーデターがあり、アリ・ボンゴ大統領を含む要人らが拘束されたという。最近アフリカではスーダン、マリ、チャド、ギニア、ブルキナ・ファソ、ニジェール、そしてガボンというようにクーデターが続いている。 ガボンは1960年8月にフランスから「独立」しているが、これは帝国の衣替えにすぎない。その後もフランスの影響下にあったが、2022年6月にイギリス連邦へ加わり、アメリカの影響力も強まった。イギリス陸軍は密猟対策という名目でチームを派遣、軍事訓練を行っている。 アリは1967年から2009年までガボンの大統領を務めていたオマールの息子。汚職や人権侵害で評判の良くない人物だが、8月26日に実施された選挙では勝利している。フランス、イギリス、アメリカの利権構造の手先として機能しているボンゴ家は強い。言うまでもなく、こうした欧米の国々がガボンに食い込んでいる理由は石油をはじめとする資源の存在だ。 ニジェールでは7月26日に大統領警護隊がフランスの傀儡と言われているモハメド・バズーム大統領を拘束、国境を閉鎖し、非常事態を宣言した。 これに対し、アフリカの資源を略奪してきた欧米諸国はクーデターを批判、その手先であるECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)は軍事行動を起こすと恫喝、フランス自体が軍事介入する可能性も言われているのだが、ハードルは高い。 ニジェールでクーデターを実行したリーダーのひとりで国土防衛国民評議会の副議長を務めているサリフー・ムーディー師団将軍はマリを訪れた際にワグナー・グループのエフゲニー・プリゴジンと会っている。同グループの支援を要請したのだが、ロシア側は慎重だった。 そのプリゴジンはロシアへ戻った直後、モスクワからサンクトペテルブルグへエンブラエル・レガシー600で向かうのだが、その途中で飛行機が墜落、乗っていた10名が死亡したとされている。 アフリカのクーデターには植民地支配への人びとの怒りがあるだろうが、アメリカがフランスをアフリカから追い出そうとしていると考える人もいる。米英支配層はドイツやフランスを潰そうとしているわけで、可能性はあるだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたことだが、近代ヨーロッパは略奪の上に築かれている。「十字軍」の実態は強盗団であり、財宝だけでなく知識を盗み出した。その略奪がなければ、14から15世紀のルネサンスは実現しなかっただろう。 15世紀から17世紀にかけての「大航海」も実態は略奪だった。スペインやポルトガルはそのときにアメリカ大陸を侵略、莫大な量の貴金属を盗み、先住民を酷使して鉱山開発も行った。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山だ。1545年に発見されたこの銀山だけで18世紀までに15万トンが運び出されたとされ、スペインが3世紀の間に南アメリカ全体で産出した銀の量は世界全体の80%に達したと言われている。16世紀の後半にスペインはフィリピンを植民地化、銀を使い、中国から絹など儲けの大きい商品を手に入れる拠点として使い始めた。(Alfred W. McCoy, “To Govern The Globe,” Haymarket Books, 2021) そうした財宝を運ぶスペインの船を海賊に襲わせ、奪っていたのがイギリス。エリザベス1世の時代にイギリス王室が雇った海賊は財宝を略奪しただけでなく、人もさらっていた。ジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、ウォルター・ローリーといった海賊にはナイトの爵位が与えられている。(Nu’man Abo Al-Wahid, “Debunking the Myth of America’s Poodle,” Zero Books, 2020) 北アメリカでも先住民が虐殺された。その後、植民地のヨーロッパ人とイギリスが対立、1775年にはイギリス軍と植民地軍が軍事衝突し、植民地側は76年に独立を宣言した。 その宣言には「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と謳われているが、先住民は人間として扱われていない。勿論、奴隷も人間として扱われていない。アメリカの独立とはその程度の代物にすぎない。 イギリスを中心にヨーロッパでは19世紀に資本主義が広まるが、その矛盾を解消するためには他国を侵略し、略奪する必要があった。それが帝国主義だ。イギリスはターゲット国同士を戦わせ、戦力不足を傭兵でカバーしてきた。明治維新の背後でイギリスが暗躍していた理由もそこにある。 第2次世界大戦後、アメリカはターゲット国の軍人を利用したクーデターで略奪システムを築き、1960年代からは傭兵を現地採用している。例えばベトナム戦争では山岳の少数民族が使われ、中東ではムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)で傭兵システムの「アル・カイダ」が作られた。
2023.09.03
コロナウイルスは紀元前8000年には存在していたと言われ、人類との付き合いは長い。深刻な病気を引き起こすとは認識されていなかったのだが、2003年に重症肺炎を引き起こすSARS-CoV(SARSコロナウイルス)が出現した。 そして2019年12月、中国湖北省の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が見つかり、翌年の2月4日には横浜港から出港しようとしていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者が見つかると人びとの恐怖は高まる。それ以降、世界を「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)」なる悪霊が徘徊し始めた。 武漢やクルーズ船内ではそうした重篤な肺炎を引き起こす病原体が存在していたのかもしれないが、その後、SARSと似た重症の肺炎患者が世界の街にあふれ、死者が急増するという事態にはならなかった。さまざまな手段を使って「感染者」や「死亡者」を水増し、あるいは捏造してイメージが作られただけだ。感染が広がった何らかの病原体が存在していたとするなら、それは武漢やクルーズ船内で病気を引き起こしたものとは違うだろう。 COVID-19騒動が引き起こした最大の問題は「ワクチン」というタグが付けられた遺伝子操作薬にほかならない。これは全く新しい薬で、安全性の確認はされていない。 最も多く使われた「mRNAワクチン」はmRNAを細胞の内部へ送り込み、細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させるというもの。人間の免疫システムは細胞を病気の原因だと認識して攻撃、炎症を引き起こす。精巣の細胞にmRNAが入り込み、精子でなくスパイク・タンパク質を作り続けるケースもあるようだ。 そうした炎症を抑えているのが免疫の低下。いわばAIDS状態になるわけで、VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も使われ始めている。「ワクチン」を接種した後、それまで感染したことのない、さまざまな細菌性の病気にかかる人がいるとイゴール・チュドフは指摘しているが、そうした状態がVAIDSだ。接種が始まる前からADE(抗体依存性感染増強)を懸念する人は少なくなかったが、懸念された通りになっているようだ そのほか「COVID-19ワクチン」にはDNAの混入、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入なども問題だ。LNPは卵巣を含むあらゆる臓器に蓄積、生殖システムが破壊される可能性が指摘されている。 こうした危険な「COVID-19ワクチン」を接種された幼児にも深刻な副作用が出ているが、それだけでなく、「ワクチン」を接種した母親から生まれた新生児にも副作用が出ているという。 「COVID-19ワクチン」の接種を計画していたきた人びと、つまりアメリカ国防総省は、乳児や人間の生殖能力を破壊することで人類の力を破壊、あるいは著しく制限しようとしている。「ワクチン」メーカーは哺乳類の受胎サイクルを破壊する実験を行っていたという。 妊婦は医師から接種を勧められていたが、アメリカのCDC(疾病対策センター)の所長を務めていたロシェル・ワレンスキーも接種を勧めていた。問題の「ワクチン」が安全で効果があり、妊婦が接種することは必要だと信じ込ませる心理作戦のために130億ドルが投入されたとされている。 カネを受け取った団体の中には産婦人科医を監督している産婦人科のNGOも含まれていたという。彼らが取り交わした契約では、「ワクチン」の危険性を語った場合、受け取った全てのカネを返さなければならないことになっているという。日本の政治家、官僚、学者、編集者/記者などがカネに関して潔癖だということはあるだろうか? ところで、ロシアでは昨年7月、外国の巨大医薬品メーカーからロシアの医療関連機関の幹部へ多額の資金が渡っている事実が明らかにされた。ウラジミル・プーチン大統領はユーリ・チカンチン連邦財務監視庁長官と会談、それを問題にしている。連邦財務監視庁はFSB(連邦安全保障局)と共同で医療世界におけるカネのやりとりを止めさせるために調査を始めたという。
2023.09.02
今から40年前、つまり1983年の8月31日から9月1日にかけて大韓航空007便はソ連領へ侵入、重要な軍事基地の上空を飛行した後、サハリン上空でソ連の戦闘機に撃墜されたと言われている。この旅客機はアンカレッジを離陸して間もなく航路を逸脱、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が設定したアラスカの「緩衝空域」と「飛行禁止空域」を横切るのだが、その際、NORADは旅客機に対して何も警告していない。担当官が怠慢だったのか、事前に許可をえていたのかいずれかだろう。この出来事はソ連とアメリカとの間で軍事的な緊張が高まっている最中に起こった。 アメリカではジェラルド・フォード政権(1974年8月から77年1月)の時にデタント(緊張緩和)派が粛清され、軍事強硬派がホワイトハウスの実権を握った。その際、台頭してきたのがネオコンだ。ジャーナリストのジョセフ・トレントによると、フォード大統領は日本に対し、日本の核計画に干渉しないと約束していたという。(Joseph Trento, “United States Circumvented Laws To Help Japan Accumulate Tons of Plutonium”) フォード政権で行われた粛清の中でも重要なものは国防長官とCIA長官の交代。国防長官はジェームズ・シュレシンジャーからドナルド・ラムズフェルドへ、CIA長官はウィリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ替わっている。ブッシュはエール大学時代にCIAからリクルートされたと言われているが、父親のプレスコットはウォール街の銀行家だった時代からアレン・ダレスと親しかった。 そのブッシュを含むアメリカの情報機関人脈は1979年7月、エルサレムでイスラエルの情報機関人脈と会議している。主催したジョナサン研究所の創設者であるベンシオン・ネタニヤフはウラジミール・ヤボチンスキーの秘書だった人物で、イスラエルの首相となるベンヤミン・ネタニアフの父親でもある。 アメリカから会議に参加した人物にはブッシュのほか、CIA台湾支局長を経て副長官を務めたレイ・クライン、CIAでソ連脅威論を宣伝していたチームBのリチャード・パイプス、ジャーナリストを名乗るアーノウド・ド・ボルクグラーブやクレア・スターリングなどが含まれる。なお、チームBにはポール・ウォルフォウィッツもいた。会議ではテロの原因をソ連政府の政策、あるいは陰謀だと主張し、ソ連を国際テロリズムの黒幕として非難している。 1981年1月にロナルド・レーガンが大統領になるが、ブッシュはその政権で副大統領に就任。1982年10月にはスウェーデン領海へ国籍不明の潜水艦が侵入、大捕物が展開された。その潜水艦は捕獲されなかったものの、根拠が曖昧なままソ連の潜水艦という印象が広まり、スウェーデンにおける反ソ連感情は劇的に高まる。 1980年までスウェーデンでソ連を脅威だと考える人は国民の5~10%に過ぎなかったが、事件後の83年には40%に跳ね上がり、軍事予算の増額に賛成する国民の比率は70年代の15~20%から事件後には約50%へ跳ね上がっている。(Ola Tunander, “The Secret War Against Sweden”, 2004) 追跡が始まった1週間後にスウェーデンではアメリカの支配層から嫌われていたオルオフ・パルメが首相として返り咲く。1969年から76年にかけてもパルメは首相を務めているが、その時もこの人物はアメリカ支配層にとって頭痛の種だった。潜水艦騒動はそのパルメを抑え込むことになる。なお、パルメは1986年2月28日に暗殺された。 日本では1982年11月に中曽根康弘が内閣総理大臣に就任、翌年の1月に彼はアメリカを訪問、その際に日本を「巨大空母」に例えている。インタビューしたワシントン・ポスト紙によると、中曽根は「日本列島をソ連の爆撃機の侵入を防ぐ巨大な防衛のとりでを備えた不沈空母とすべきだ」と発言、さらに「日本列島にある4つの海峡を全面的かつ完全に支配する」とし、「これによってソ連の潜水艦および海軍艦艇に海峡を通過させない」と語ったのである。 それから間もない1983年4月から5月にかけてアメリカ海軍は千島列島エトロフ島の沖で大規模な艦隊演習「フリーテックス83」を実施する。この演習には3空母、つまりエンタープライズ、ミッドウェー、コーラル・シーを中心とする機動部隊群が参加した。 演習では空母を飛び立った艦載機がエトロフ島に仮想攻撃をしかけ、志発島の上空に侵入して対地攻撃訓練を繰り返したとされている。米ソ両軍は一触即発の状態になったのだが、この演習を日本のマスコミは無視した。(田中賀朗著『大韓航空007便事件の真相』三一書房、1997年) そした中、大韓航空007便はソ連の領空を侵犯、しかも重要な軍事基地の上空を飛行したのだが、NATO軍はその年の11月、ヨーロッパで大規模な演習「エイブル・アーチャー83」を予定していた。これを軍事侵攻のカモフラージュだと判断したソ連政府は核攻撃に備える準備をはじめるように指令を出し、アメリカのソ連大使館では重要文書の焼却が始まったと言われている。 NATOが軍事演習を計画していた1983年11月、レーガン政権は戦術弾道ミサイルのパーシングIIを西ドイツへ配備、作業は85年の終わりまで続く。その一方、アメリカの情報機関人脈はソ連の情報機関KGB(国家保安委員会)の幹部を買収する工作を進めていた。
2023.09.01
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