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ロシアの天然ガス会社、ガスプロムのアレクセイ・ミレルCEOは6月28日、サハリン島沖の天然ガスを極東ルートを利用して2027年から中国へ供給しはじめる予定だと述べた。同社が2022年2月に調印した極東ルートに関する契約によると、25年間にわたり、少なくとも年間100億立方メートル(10bcm)の天然ガスを中国へ供給することを想定している。 すでにロシアは「シベリアの力」パイプラインを2019年12月に完成させ、天然ガスの供給を始めた。このパイプラインは来年にフル稼働する予定で、そうなると年間38bcmに達する。ロシアと中国は「シベリアの力2」と知られているパイプラインの建設でも話し合いが進められていて、合意が近いとされている。 シベリアの力2はロシア北部のヤマル地方からモンゴルを経由して中国へ年間最大50bcmの天然ガスを輸送する。こうしたパイプラインが全て完全に稼働すれば、ロシアから中国へのガス供給量は年間100bcm近くに達する可能性がある。 中国は天然ガスや石油を中東から運ぶ場合、軍事的な緊張が高い中東を出港してからアラビア海、アメリカ軍が支配するインド洋を経由して難所のマラッカ海峡を通過、アメリカや日本が締め付けを厳しくしている南シナ海へ入らなければならない。それに比べ、ロシアから運ぶ場合は輸送距離が短いだけでなく、危険性が低い。 中東やアメリカで生産されるエネルギー資源のコストが高いことは日本に対しても言える。そこでサハリンにLNG(液化天然ガス)や石油を生産するプラントの「サハリン1」と「サハリン2」を建設した。ソ連が消滅、アメリカに従属していたボリス・エリツィン大統領の時代に西側は何も心配する必要がなかった。ウラジミル・プーチン政権がそうした状況を変えたのである。 エリツィン時代、ロシアには西側資本の手先になっていた複数のオリガルヒが存在していた。例えばミハイル・ホドルコフスキー、アレックス・コナニヒン、ロマン・アブラモビッチ、ボリス・ベレゾフスキーたちである。ソ連が消滅した1991年当時、ベレゾフスキーは45歳だが、その他は25歳から28歳と若い。彼らの背後に黒幕が存在していることは明白だった。 そのひとり、ホドルコフスキーはソ連時代の1989年、リチャード・ヒューズなる人物と「ロシア人モデル」をニューヨークへ送るビジネスを始めた。この年にホドルコフスキーはメナテプ銀行を設立するためのライセンスを取得するが、違法送金やマネーロンダリングが目的だった可能性が高い。このビジネスをソ連当局も怪しみ、モデルに対する出国ビザを出し渋るのだが、ホドルコフスキーはKGB人脈を持っていた。そのコネクションに助けられてビザを入手できたという。 ソ連が1991年12月に消滅し、ボリス・エリツィンが西側支配層の代理人としてロシアを支配するようになると、ホドルコフスキーはエリツィン政権を支える顧問のひとりに就任。彼は1995年にユーコスなる石油会社を買収、中小の石油会社を呑み込み、その一方でモスクワ・タイムズやサンクトペテルブルグ・タイムズを出している会社の大株主になっている。 ホドルコフスキーはユーコスの発行済み株式のうち25から40%をアメリカの巨大石油会社、エクソン・モービルとシェブロンへ売り渡そうとしたが、プーチンに阻止された。プーチンの動きが遅れれば、ロシアは米英支配層の植民地になっていたことだろう。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,“ Next Revelation Press, 2015) プーチンが実権を握った後、少なからぬオリガルヒはロシアからロンドンやイスラエルへ逃亡するが、ホドルコフスキーはロシアに残った。そして2003年10月、彼はノボシビルスクの空港で横領と税金詐欺の容疑で逮捕されている。ホドルコフスキーのユーコス株の支配権は先に結ばれた「取り引き」によってジェイコブ・ロスチャイルドへ渡ったとサンデー・タイムズ紙は報じていた。 ホドルコフスキーが彼とジェイコブ・ロスチャイルドとの関係を語った映像が5月22日にインターネットで公開された。その中でモスクワに本社があるルクオイルの真のオーナーはジェイコブだったと明らかにしている。ロスチャイルドはロシアのあらゆる富を奪うつもりだったのだろうが、その中には穀物、鉱物資源、そして石油や天然ガスが含まれている。 ロシアでは西側資本に盗まれた富を取り戻すように求める声もあるようだが、プーチンはそこまで踏み込んでいない。西側の支配層がソ連を憎んでいた理由はイデオロギーにあるとプーチンは信じていたからだと推測する人もいる。 しかし、それでも西側による略奪を止めたプーチンをロスチャイルド金融資本は許せなかった。西側資本がソ連を憎んだ理由もクレムリンが西側による略奪を許さなかったからであり、ロスチャイルドが拠点にしているイギリス、フランス、そしてアメリカの支配システムがロシアに対して敵意をむき出しにしている理由はここにあると考えられている。 プーチンは現在、中国と手を組み、金融資本による「一極支配」を終われせようとしている。その支配システムが19世紀に計画されたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。
2024.06.30
ボリビアのルイス・アルセ大統領は6月26日、軍事クーデターの試みを防いだと発表した。軍の一部が装甲車でラパスの中央広場を占拠し、大統領官邸に突入したのだが、約3時間で兵士は撤収、クーデターを企てたフアン・ホセ・ズニガ陸軍司令官は逮捕された。 2025年の次期大統領選挙にエボ・モラレス前大統領が立候補したなら、軍はモラレスを逮捕するとズニガは6月24日に宣言、25日に司令官の職を解かれ、ホセ・ウィルソン・サンチェスが新司令官に就任した。その前、モラレスはズニガを軍事組織パチャチョの司令官だと告発していた。 モラレスとアルセはクーデターに対抗するよう国民に呼びかけ、数百人が広場からズニガ軍を追放したが、軍事蜂起が失敗した主因は軍隊側にあるとも言われている。ボリビアでは2019年11月にクーデターでエボ・モラレス大統領が排除され、その後20年11月までヘアニネ・アニェスが「暫定大統領」を名乗っていた。 このアニェスは後に逮捕され、クーデターの主犯格のひとりだったルイス・フェルナンド・カマチョなども獄中にあり、今回のクーデター失敗につながったとも見られている。 ベネズエラの場合とは違い、ボリビアの与党である「社会主義運動(MAS)」はクーデター派将校を軍から粛清することができず、不安定な状態が続いている。軍は今でもアメリカの手先だということに他ならない。実際、ボリビア軍にはCIAのエージェントが深く浸透していると言われている。 元CIA分析官のラリー・ジョンソンはボリビアのクーデター未遂について、アルセ大統領が今月初めにロシアで開催されたサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)に出席したことが直接的な原因で、アメリカ政府が関与した可能性が高いとしている。 アメリカがボリビアでクーデターを目論んでいる理由のひとつはリチウム利権だとも言われている。この資源はボリビア、チリ、アルゼンチンにまたがる「リチウム・トライアングル」と呼ばれる地域に集中、ボリビアだけで埋蔵量は世界全体の5割から7割という。電池自動車の実用化が進んでいる中国がボリビアとの関係を強めていた一因はそこにある。モラレス政権は中国へリチウムを輸出するだけでなく、ロシアやドイツをパートナーにしたがっていたとも言われている。 モラレスを排除した2019年のクーデター直後、イギリス政府は新体制を支持していた。その前年、ボリビアのイギリス大使館は某企業のボリビア進出を後押ししているが、その企業はイギリスの情報機関(対外情報機関のMI6、治安機関のMI5、電子情報機関のGCHQ)がアメリカのCIAと協力して設立したものだった。https://www.dailymaverick.co.za/article/2021-03-08-revealed-the-uk-supported-the-coup-in-bolivia-to-gain-access-to-its-white-gold/ イギリス政府は2019年6月にリチウム電池の技術を産業戦略の優先事項だと宣言、クーデター政権は中国との契約を見直すと発言している。クーデターはイギリスの戦略に沿うものだった。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.06.29
イスラエル軍のヘルジ・ハレビ参謀総長が北部の標的を軍事攻撃する用意があると述べた後、6月5日にベンヤミン・ネタニヤフ首相はレバノン国境に近いキリヤト・シュモナを訪れ、イスラエルは北部での「非常に激しい行動」に備えていると述べたと伝えられた。ヒズボラを攻撃するということだろう。 イスラエルがサウジアラビア、エジプト、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンと締結した協定に基づき、ハレビ参謀総長は各国の参謀たちと会談、イスラエル軍が6月22日の夜にレバノンを攻撃すると伝え、イスラエルとサウジアラビアは合意したという。秘密会談の情報はインターネット上で広まった。 また、UAEとバーレーンのイスラエル向け輸出品をヨルダン経由で運んでいたことも明らかにされた。イエメンのアンサール・アッラー(通称、フーシ派)がイスラエルへの輸送を阻止しているアラビア海から公開のルートを避けるためだ。この事実を伝えたジャーナリストのヒバ・アブ・タハはヨルダンで懲役1年を言い渡された。中東では大半の人びとがパレスチナ人を支持しているのに対し、多くの支配層はイスラエルと手を組んでいる。 ガザにおける大量殺戮は2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺したところから始まる。4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃した。さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。明らかにイスラエルによるイスラム世界への挑発であり、それをアメリカなど西側諸国は黙認した。 そして10月7日、ハマス(イスラム抵抗運動)はイスラエルを陸海空から奇襲攻撃した。数百人の戦闘員がイスラエル領へ侵入したほか、ガザからイスラエルに向かって5000発以上のロケット弾でテルアビブの北まで攻撃した。 攻撃の際、約1400名のイスラエル人が死亡したとされ、その後、犠牲者数は1200名に訂正される。ハマスは交渉に使うためイスラエル人を人質にすると考えられていたので、これだけの犠牲者が出たのは奇妙だったが、すぐにその理由が判明する。 イスラエルの新聞ハーレツによると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊したという。イスラエル軍は自国民を殺害したということだ。ハーレツの記事を補充した報道もある。子どもの首が切り落とされたという話も宣伝されたが、すぐに嘘だということが発覚している。 レバノンのヒズボラが戦闘に加わったのは10月8日のことだ。イスラエル北部の軍事施設にミサイルを発射、北部に住むイスラエル人入植者8万人が自宅から逃げ出した。イスラエル政府は南レバノンに軍事侵攻し、リタニ川まで占領する計画を立てているが、これは妄想だと考える人が少なくない。 ヒズボラには2500人の特殊部隊員、訓練を受けた2万人の兵士、3万人の予備役、さらに5万人がいると言われている。つまり兵力は10万人を超え、イラク、アフガニスタン、パキスタンの反帝国主義勢力、そしてイエメンのアンサール・アッラーの戦闘員がレバノンへ派遣される可能性もあり、戦闘陣地とトンネルが縦横に張り巡らされ、15万発以上のミサイル(その多くは長距離)が準備されている。 イスラエル軍の地上部隊は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻したが、その際にイスラエルが誇る「メルカバ4」戦車が破壊され、ヒズボラに敗北している。ヒズボラはその時より格段に強くなっている。 イスラエルが2国間防衛協力協定を結んでいるキプロスはイスラエル軍の兵站基地になっていて、ガザでの虐殺が始まってからイギリスはキプロスのアクロティリ空軍基地から80機以上の軍用輸送機をベイルートヘ飛ばしている。また、ここから飛び立ったアメリカの偵察機がレバノンの上空を飛行しているだろう。 イスラエルがレバノンに対して本格的な攻撃を始め、キプロスがイスラエルの兵站基地として使われたならキプロスも標的になる可能性があるとヒズボラのサイード・ハッサン・ナスララは警告した。ヒズボラはイスラエルの港湾都市ハイファ周辺の軍事・経済目標を映したドローン映像を公開、この地域は安全でないことを示した。 そうした状況の中でもアメリカ政府はイスラエル支持を続けているのだが、イスラエルとヒズボラの全面戦争が始まった場合、アメリカはこれまでとは比較にならないほど厳しい状況に陥る。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.06.28
厚生労働省は6月25日、今年4月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は12万7427人。まだ水準は高いが、接種数が低水準である可能性が高く、一時期よりは安定してきたようだ。 これまでの副作用は短期(おそらく週単位)が中心だった。中期(おそらく年単位)や長期(おそらく十年単位)の被害者が今後、増えるはずで、予断は許さない。政府がデータの公表を中止しているところを見ると、状況の悪化が予測されているのかもしれない。 サーシャ・ラティポワの分析やロシア議会の報告書はパンデミック騒動の黒幕はアメリカ国防総省で、「COVID-19ワクチン」の接種推進は軍事作戦だった可能性が高い。報告書の180ページから181ページにかけて次のような記述がある。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 この「万能生物兵器」の特性は日本で治験が始まった「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」に似ている。これはアメリカ軍による生体実験である可能性がある。この「ワクチン」の接種が本格化すると、事態はさらに深刻化するかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】https://sakuraiharuhiko.substack.com/
2024.06.27
WikiLeaksのジュリアン・アッサンジはアメリカ当局と司法取引で合意し、ロンドンのスタンステッド空港で飛行機に乗り込み、オーストラリアへ向かったと伝えられている。 彼は2019年4月11日にロンドンのエクアドル大使館内でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所に収監されていた。「国防情報を流布するための共謀」をアッサンジ側は認め、懲役5年の刑期を言い渡されたものの、ベルマーシュ刑務所に収監されていた5年間が算入されるので、自由の身になる。最終決定はアメリカ領である北マリアナ諸島の裁判所で言い渡される予定だという。 WikiLeaksは内部告発を支援する活動を続けてきた。そのWikiLeaksの象徴的な存在であるアッサンジはオーストラリア人で、ヨーロッパで活動していた。その彼をアメリカ政府は配下の政府を利用して逮捕、拘束してきたのである。アメリカ政府が行ったことは言論弾圧のための不法監禁であり、拷問とも言える。権力犯罪を暴いた人物は人生を破壊されることをアメリカ政府は示した。犯罪組織のやり口だ。 世界を支配するために反民主主義的なことを行ってきたWikiLeaksはアメリカの支配層にとっても目障りな存在だった。そのアッサンジを拘束することによってWikiLeaksの活動を抑え込み、さらに内部告発を抑え込み、記者や編集者を尻込みさせようとしたのだろう。 アッサンジ逮捕をアメリカの当局に決断させた要因のひとつは2010年の4月5日にWikiLeaksが公表した映像だろう。2007年7月にバグダッドでロイターの特派員2名を含む非武装の十数名をアメリカ軍の軍用ヘリコプターAH-64アパッチが銃撃、射殺する様子を撮影した映像だ。 攻撃された人びとが武装しているようには見えず、ヘリコプターの乗組員が武装集団と誤認したとは考えられない。勿論、戦闘はなかった。この事実を報道しなかったメディアはアメリカ軍が行った市民殺害の隠蔽に加担したことになる。 アッサンジを保護していたエクアドル大使館の内部でどのような動きがあるかを調べるため、大使館の警備を請け負ったUCグローバルSLのデイヴィッド・モラレスは建物内に盗聴器を設置し、アサンジらに関する機密事項をCIAへ報告していたことが判明している。 モラレスがCIAと連絡を取り合っていたと見られているサムスンの携帯電話は2019年9月、モラレスの自宅を警察が捜索した際に押収され、データに関する報告書がスペイン高等裁判所へ提出されたが、通信記録を含むデータの一部を提供しなかったと伝えられている。警察は重要な証拠を隠し、裁判を妨害したと言えるだろう。担当判事は警察当局に対し、同判事立ち会いのもと、携帯電話から直ちに全データを復元し、この事態を引き起こしたのが誰であるかを明らかにするよう命じた。この件でもアメリカ政府は追い詰められていたはずだ。 勿論、欧米の支配者たちに弾圧されたジャーナリストはアッサンジのほかにも少なくない。例えば、ウクライナ東部のドンバスではドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者らが取材していたが、彼らに対する西側政府の弾圧は厳しく、ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収された。 ウクライナに住みながら同国のクーデター体制を取材していたチリ系アメリカ人ジャーナリストのゴンサロ・リラの場合、2023年5月にウクライナの治安機関(SBU)に逮捕され、収監されていたウクライナの刑務所で死亡した。10月中旬に左右の肺が肺炎を起こし、気胸、そして重度の浮腫を患ったのだが、刑務所は適切な治療を施さなかった。拷問の結果だともされている。 イギリスのロンドン警視庁は2019年4月11日、アッサンジをロンドンのエクアドル大使館の中で逮捕、ベルマーシュ刑務所で監禁、2022年4月20日にはウェストミンスター治安判事裁判所がアッサンジをアメリカへ引き渡すように命じている。 こうした傲慢なアメリカ支配層の行為はあらゆる分野で人びとの反感を呼び起こし、ウクライナではロシアに挑みかかって返り討ちにあい、ガザではイスラエルのパレスチナ人虐殺を支援して厳しく批判されている。ジョー・バイデン政権は苦境に陥ったのだ。11月の大統領選挙を前にして、同政権は問題を外部から持ち込みたくないと見られている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.06.26
ロシア外務省は6月24日、リン・トレーシー米大使を召喚し、23日にセバストポリの近郊がATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)で攻撃された出来事に関し、アメリカにも責任があると非難したという。 攻撃に使われたミサイルは5機で、そのうち4機は途中で無力化されたものの、残りの1機が浜辺の上空でクラスター弾頭を爆発させ、2名の子どもを含む4名が死亡、150名以上が負傷した。こうしたミサイルの攻撃には偵察衛星からの情報が必要で、オペレータは供給国の人間、つまりアメリカ人である可能性が高い。 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官はこの攻撃に関し、誰が背後にいるのか、誰が複雑な技術を要するミサイルを標的に誘導しているのか、ロシア政府は完全に理解していると語った。ロシアの民間人を殺害する行為にアメリカが直接関与したとみなされているが、それに対する「結果」が生じるともしている。必ず「対応」するというわけだ。 ウクライナ軍によるロシア領への攻撃にはアメリカ軍の偵察衛星だけでなく、国境近くを飛行している偵察機も参加していると言われている。報復は避けられないが、それによってアメリカを含むNATO諸国で国民が反ロシアで結束するとは思えない。
2024.06.25
ウクライナにおける戦闘でアメリカ/NATOの敗北は決定的だ。ウクライナを完全に征服し、耕作地や資源を奪い、クリミアを制圧してロシア海軍の重要な基地があるセバストポリを手に入れるという西側の計画は潰れた。 しかし、それでもアメリカやイギリスをはじめとするNATO諸国はウクライナ人を戦場へ送り込み、死体の山を築かせている。西側諸国は兵器のオペレーターだけでなく、戦闘員(兵士)を送り込んでいるが、それでも勝つことは困難だ。「ロシアに勝たせない」ためには核兵器を使うしかないだろう。生物兵器の使用を考えていたようだが、完成したようには思えない。 自分たちの敗北が決定的になった際、焦土作戦が選択されることがある。例えば1941年11月、イギリスのウィンストン・チャーチル首相は日本軍がインドへ攻め込むことを恐れ、ベンガルで「拒否政策」と呼ばれる焦土作戦を打ち出した。イギリスの取り分を確保した上でサイロや倉庫から種籾を含む全ての米を押収、また輸送手段を奪うために漁民の船や自転車を取り上げたのだ。これは現地の人びとから食糧を奪うことを意味した。 しかも、その政策を推進中の1942年10月にベンガル地方はサイクロンなど自然災害に襲われ、死傷者が出た。農作物も大きな打撃を受けて食糧不足は避けられない状態になるのだが、飢餓が見通されても米の運び出しはチャーチル首相は命じた。 小麦はオーストラリアから調達できたのだが、インドの船は戦争のために使われていて運べない。チャーチル首相は1943年1月、イギリスの食糧と資源の備蓄を強化するため、インド洋で活動していた商船は全て大西洋へ移動させていた。(Madhusree Mukerjee, “Churchill’s Secret War,” Basic Books, 2010) 1943年10月には現地の提督からチャーチル首相に対し、政策の継続は大惨事を招くという警告の電報を打ち、イギリス下院では満場一致で食糧をインドへ送ると議決しているのだが、それを首相は無視した。食糧を送るというルーズベルト大統領の提案も拒否している。 その結果、ベンガルでは1943年から44年にかけて大規模な飢饉が引き起こされ、餓死者の人数はベンガル周辺だけで100万人から300万人に達したと推計されている。 アメリカやイギリスの支配層はウクライナでも焦土作戦を始めたように見える。彼らはウクライナを荒廃させ、ウクライナ人に「総玉砕」を求めているのだ。平和がロシアに利益をもたらすことを欧米は嫌っている。 パレスチナでもアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国が支援するイスラエルは苦境に陥り、戦線を拡大させようとしているが、レバノンに攻め込んでヒズボラに勝つことは困難だと見られている。しかも、欧米の支配に抵抗している中東の武装勢力はヒズボラと共に戦うとしている。中東を火の海にするつもりかもしれない。ロシアや中国が中東を抑えることをアメリカやイギリスの支配層は許せないだろう。 東アジアでも軍事的な緊張が高まっているが、朝鮮戦争の当時とは違い、日本は平坦の拠点として脆弱。アメリカ軍の補給はままならないと予想されている。東アジアでの戦争でアメリカ軍が勝つことは難しいのだが、それでもアメリカ軍は攻撃の準備を進めてきた。台湾や日本(沖縄)から大陸を攻撃した場合、報復攻撃で台湾も日本も壊滅する可能性が高い。これも焦土作戦だと言えるだろう。
2024.06.25
カナダでは毎年6月21日、「全国先住民の日」を祝う。先住民、先住民とヨーロッパ人の子孫、イヌイットの文化と貢献を認識し、祝うということになっているが、これは一種の目眩しだ。 アメリカと同じように、カナダでも先住民は文化的にも肉体的にも虐殺され、生き残った人は「居留地」という収容所へ押し込められた。子どもは寄宿学校に隔離され、支配者となったヨーロッパ人にとって都合の良い思考をするよう洗脳された。「体罰」、要するに拷問で殺された子どもも少なくないようだ。 アメリカでは保健福祉省のIHS(インディアン・ヘルス・サービス)は医師と手を組み、1960年代から70年代にかけて先住民の女性に不妊手術を施したことが知られている。多くの場合、医師から適切な情報を得た上で合意したわけではなかった。こうした不妊手術は強制的に行われることも少なくなかったが、先住民だけでなく黒人や貧困層の女性も対象になっていた。 黒人は奴隷と結びつけて考えられるが、黒人だけが奴隷だったわけではない。イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国からアメリカへ渡った富裕層は先住民を「民族浄化」することで土地と資源を手にしたが、劣悪な環境で働く人間を必要としていた。そうした働き手の重要な供給源になったのはイギリスのエンクロージャーで土地を奪われた農民である。エンクロージャーで生じた「過剰人口」対策として強制的にアメリカへ送られた人もいた。 支配者は自分たちの都合で「過剰人口」を生み出す。最近ではAIロボットが原因になると言われている。WEF(世界経済フォーラム)を創設したクラウス・シュワブの顧問を務めるユバル・ノア・ハラリによると、AI(人工知能)によって不必要な人間が生み出されるという。 人間がAIに勝てない分野では不必要な人間が増えるわけだが、ハラリが引用したオックスフォード大学の研究によると、2033年までにさまざまな職業がAIに乗っ取られる可能性が高いという。 その研究によると、スポーツの審判は98%の確率で、レジ係は97%、シェフは96%、ウェイターは94%、法律事務員は94%、ツアーガイドは91%、パン職人は89%、バスの運転手は89%、建設労働者は88%、獣医助手は86%、警備員は84%、船員は83%、バーテンダーは77%、記録係は76%、大工は72%、監視員は67%で不必要になるという。 テクノロジーが進歩すれば不必要な人間が増え、処分の対象になるというわけだ。「ベーシック・インカム」という餌を与えるだけで人びとの不満を抑えることはできないだろう。社会の不安定化を防ぐためには人口を削減する必要があると世界の富豪たちは考えている。大多数の人間はアメリカやパレスチナの先住民と同じことになる可能性がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.06.24
イスラエル軍はガザに住む人びとを一掃しようとしている。つまり、民族浄化作戦を展開中なのだが、思惑通りには進んでいないようだ。非武装の女性や子ども、あるいは医療関係者やジャーナリストを虐殺しているが、ハマスを壊滅させることができていない。この苦境から脱するため、イスラエルは戦線を拡大しようとしている。 ICC(国際刑事裁判所)の主任検察官を務めるカリム・カーンは5月20日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ギャラント国防相、ハマスのヤヒヤ・シンワル、モハメド・ディアブ・イブラヒム・アル・マスリ(デイフ)、イスマイル・ハニヤに対する逮捕状を国際刑事裁判所第一予審部に申請したが、カーンのスタンスはイスラエルも悪いがハマスも悪い。 ガザの人びとはイスラエル軍の兵器で殺されているだけでなく、兵糧攻めによる餓死に追い込まれているが、彼はイスラエルによるパレスチナ人の大量虐殺を問題にしていない。そこでICCが行なっていることは「アリバイ工作」にすぎないという見方もある。 今回の大量殺戮劇は2023年4月1日から始まった。イスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺したのである。 4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクに突入し、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/今年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃した。 そしてユダヤ教の「仮庵の祭り」(今年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。 そして10月7日、ハマス(イスラム抵抗運動)はイスラエルを陸海空から奇襲攻撃した。数百人の戦闘員がイスラエル領へ侵入したほか、ガザからイスラエルに向かって5000発以上のロケット弾でテルアビブの北まで攻撃した。 攻撃の際、約1400名のイスラエル人が死亡したとされ、その後、犠牲者数は1200名に訂正される。ハマスは交渉に使うためイスラエル人を人質にすると考えられていたので、これだけの犠牲者が出たのは奇妙だったが、すぐにその理由が判明する。 イスラエルの新聞ハーレツによると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊したという。イスラエル軍は自国民を殺害したということだ。ハーレツの記事を補充した報道もある。 イスラエル軍は自国の兵士が敵に囚われるのを嫌い、かつて、自軍を攻撃し傷つける代償を払ってでも、あらゆる手段で誘拐を阻止しなければならないという指令を出した。「ハンニバル指令」だ。1986年にレバノンでイスラエル軍の兵士が拘束され、捕虜交換に使われたことが理由だという。発想としては「生きて虜囚の辱を受けず」と似ている。昨年10月の攻撃ではイスラエル人が人質に取られることを阻止したかったと言われている。 もうひとつ興味深い話が伝えられていた。ハマスが使った武器はウクライナから手に入れたというのだ。アメリカ/NATOがウクライナへ大量に供給した兵器の約7割が闇市場へ流れていると言われているが、そうした武器だというのである。 奇妙な情報はまだある。ガザはイスラエルが建設した一種の強制収容所であり、その収容所を取り囲む壁には電子的な監視システムが張り巡らされ、人が近づけば警報がなる。地上部隊だけでなく戦闘ヘリも駆けつけることになっているのだが、10月7日にハマスはイスラエルへ突入できた。しかも突入の数時間後、2隻の空母、ジェラルド・R・フォードとドワイト・D・アイゼンハワーを含む空母打撃群を地中海東部へ移動させている。 そうしたことから、ベンヤミン・ネタニヤフ政権とジョー・バイデン政権はハマスに攻撃させたのではないかと疑う人が少なくない。その攻撃を口実にしてガザのパレスチナ人を追い出すか皆殺しにする計画だったのではないかというのだ。 今回に限らず、イスラエルによるパレスチナ人虐殺にはイギリスやアメリカをはじめとする西側諸国が協力してきた。そもそも「イスラエル建国」はイギリスのプロジェクトである。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収した。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。これがイスラエルの建国に同意した「バルフォア宣言」だ。 イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強める。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。 この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃した。 そしてシオニストはパレスチナからアラブ人を追い出すため、1948年4月4日に「ダーレット作戦」を始めるが、これは1936年から39年にかけて行われたパレスチナ人殲滅作戦の詰めだったという見方もある。1948年当時、イスラエルの「建国」を宣言したシオニストの武装組織に対して無防備な状態となっていた。 4月6日にはハガナ(後にイスラエル軍の母体になった)の副官、イェシュルン・シフがエルサレムでイルグン(シオニストのテロ組織)のモルデチャイ・ラーナンとスターン・ギャング(同)のヨシュア・ゼイトラーに会い、ハガナのカステル攻撃に協力できるかと打診。イルグンとスターン・ギャングは協力することになる。 まず、イルグンとスターン・ギャングはデイル・ヤシンという村を襲うが、この村が選ばれた理由はエルサレムに近く、攻撃しやすかったからだという。村の住民は石切で生活し、男が仕事で村にいない時を狙って攻撃するプラン。早朝ということで、残された女性や子どもは眠っていた。 襲撃の直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、254名が殺されていた。そのうち145名が女性で、35名は妊婦だ。イギリスの高等弁務官、アラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されている。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005) この虐殺を見て多くのアラブ系住民は恐怖のために逃げ出し、約140万人いたパレスチナ人のうち5月だけで42万3000人がガザやトランスヨルダン(現在のヨルダン)へ避難、その後1年間で難民は71万から73万人に膨れ上がったと見られている。イスラエルとされた地域にとどまったパレスチナ人は11万2000人にすぎない。いわゆる「ナクバ」だ。 国連総会で1948年12月に採択された決議194号はシオニストに追い出されたパレスチナ人が故郷に帰還することを認めているが、実現していない。イスラエル「建国」の議論はこの決議を認めるところから始めなければならない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.06.23
イギリスのロンドン警視庁がWikiLeaksのジュリアン・アッサンジをエクアドル大使館の中で逮捕したのは2019年4月11日のことだった。エクアドルのラファエル・コレア大統領が2012年に政治亡命を認め、大使館が保護していたのだが、次のレニン・モレノ大統領が亡命を取り消して逮捕させたのである。アッサンジの弁護団によると、アメリカからの引き渡し要請に基づくものだという。 アッサンジを保護していたエクアドル大使館の内部でどのような動きがあるかを調べるため、大使館の警備を請け負ったUCグローバルSLのデイヴィッド・モラレスは建物内に盗聴器を設置し、アサンジらに関する機密事項をCIAへ報告していたことが判明している。 モラレスがCIAと連絡を取り合っていたと見られているサムスンの携帯電話は2019年9月、モラレスの自宅を警察が捜索した際に押収され、データに関する報告書がスペイン高等裁判所へ提出されたが、通信記録を含むデータの一部を提供しなかったと伝えられている。警察は重要な証拠を隠し、裁判を妨害したと言えるだろう。担当判事は警察当局に対し、同判事立ち会いのもと、携帯電話から直ちに全データを復元し、この事態を引き起こしたのが誰であるかを明らかにするよう命じた。 アメリカの司法当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴している。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ハッキング容疑はでっち上げだ。アッサンジがアメリカへ引き渡された場合、懲役175年が言い渡される可能性がある。 アッサンジ逮捕をアメリカの当局に決断させた要因のひとつは2010年の4月5日にWikiLeaksが公表した映像だろう。2007年7月にバグダッドでロイターの特派員2名を含む非武装の十数名をアメリカ軍の軍用ヘリコプターAH-64アパッチが銃撃、射殺する様子を撮影した映像だ。 その映像を見れば、攻撃された人びとが武装しているようには見えず、ヘリコプターの乗組員が武装集団と誤認したとは考えられない。勿論、戦闘はなかった。この事実を報道しなかったメディアはアメリカ軍が行った市民殺害の隠蔽に加担したことになる。 ウクライナで実行されたクーデターにしろ、ガザでパレスチナ人を虐殺しているイスラエルへの支援にしろ、アメリカが「国際法」を無視していることは明確。オーストラリア国籍でヨーロッパを活動を舞台にして活動していたアッサンジを「1917年スパイ活動法」で起訴するという超法規的なことをアメリカ政府が行なっている。これが欧米が主張する「ルールに基づく国際秩序」だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.06.22
ウラジミル・プーチン露大統領は朝鮮に続いてベトナムを訪問、「包括的戦略的パートナーシップ」を深化させると宣言した。ベトナムでも経済だけでなく軍事的な関係を強化する意向で、言うまでもなくアメリカの支配戦略に対抗することが目的だ。朝鮮にしろベトナムにしろ、ミハイル・ゴルバチョフやボリス・エリツィンの時代に破壊された関係を修復していると言えるだろう。 ロシアが朝鮮にアプローチしたのは2011年のこと。当時の大統領、ドミトリ・メドベージェフがシベリアで朝鮮の最高指導者だった金正日と会談、ソ連時代に朝鮮は110億ドル近くの負債を抱えていたが、その90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案した。朝鮮は資源の宝庫で、ロシアにとって魅力的な国である。 この提案を金正恩の父、金正日は受け入れたのだが、2011年12月に急死してしまう。朝鮮の国営メディアによると、12月17日に列車で移動中に車内で急性心筋梗塞を起こして死亡したというが、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年~13年)は暗殺説を唱えていた。 ベトナムと朝鮮はアメリカにとって中国を侵略するための橋頭堡になりうる国でもあり、ロシアや中国にとっては防衛上、重要な意味を持つ国である。今回の歴訪でプーチン大統領がアメリカの覇権主義と戦っていると述べたのは本音だろう。 シティとウォール街、つまり米英金融資本が帝国主義の総本山であることは今も変わらない。ロシアや中国はその金融資本を打ち破らなければならないのだが、その金融資本はウクライナでロシアに敗北した。ガザでパレスチナ人を虐殺しているイスラエルも米英金融資本と緊密な関係にあるが、イスラエルは泥沼にはまりこんだ。 金融資本の手先でもあるネオコンがソ連消滅後の1992年に始めた世界制覇計画はロシアを属国にしたという前提で始まったのだが、21世紀に入ってロシアは再独立に成功している。つまり世界制覇計画の前提が崩れているわけで、この計画を進められる状況ではなくなっている。 追い詰められた米英金融資本はウクライナで核兵器を使う準備を進めているが、朝鮮ではロシアがICBM(大陸間弾道ミサイル)を含む高性能ミサイルを渡したという見方がある。 それに対し、日本も核攻撃の準備を進めているようだ。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ軍は東アジアにおける軍事戦略の一環としてGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしている。その計画はアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書に書かれていた。 その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島に作り、23年には石垣島でも完成させたが、こうした軍事施設の建設はアメリカの戦略に基づいているのだ。 日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。 極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。 政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めていると昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。 日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。 アメリカの置かれた状況が急速に悪化、こうした当初の計画では間に合わないと判断され、トマホークを日本に購入させることにし、10月4日に木原稔防衛相はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。つまり、そのようにアメリカで命令されたわけだ。 当初の計画では2026年度から最新型を400機だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。 つまり、日本も中国、ロシア、朝鮮の攻撃目標になっているはずだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】https://sakuraiharuhiko.substack.com/
2024.06.21
ロシアのウラジミル・プーチン大統領は6月19日に金正恩総書記と会談し、戦略的パートナーシップ条約に署名した。これによってロシア、中国、朝鮮が経済的な側面だけでなく軍事的にも強く結びついたと言えるだろう。 アメリカは東アジアにおける軍事同盟を強化するため、2017年11月にオーストラリア、インド、アメリカ、日本で組織される「クワド」の復活を協議したのもテコ入れのつもりだろう。2018年5月にアメリカ太平洋軍はインド太平洋軍へ名称を変更、太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うとされた。 2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言、21年9月にアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国は太平洋で軍事同盟AUKUSを築く。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。アメリカ軍は6月26日から8月2日まで配下の軍隊をハワイ周辺に集めて軍事演習「RIMPAC(環太平洋合同演習)」を実施する予定だ。 日本は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成、ミサイルが配備される。いずれも中国を目標にしている。 アメリカ国防総省のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書はこの計画について説明していた。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲したいのだが、配備できそうな国は日本だけ。しかも日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたのだ。
2024.06.20
ウラジミル・プーチン露大統領は6月18日から朝鮮とベトナムを訪問するが、まず朝鮮に到着した。ロシアの代表団は19日に金正恩総書記と会談、安全保障、経済、国際問題などについて協議し、戦略的パートナーシップ条約に調印すると言われている。 この訪問に合わせ、ロシア太平洋艦隊は6月18日から28日にかけて日本海とオホーツク海で艦隊演習を行う。演習には約40隻が参加するという。アメリカ軍は6月26日から8月2日まで配下の軍隊をハワイ周辺に集めて軍事演習「RIMPAC(環太平洋合同演習)」を実施する予定で、この演習も意識しているだろう。 ソ連が消滅した直後の1992年2月からアメリカ政府は世界制覇計画を始動された。国防総省で主導権を握っていたネオコンはソ連消滅でアメリカが唯一の超大国になったと思い込み、DPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成したのだ。 当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。そのウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから別名ウォルフォウィッツ・ドクトリン。そのドクトリンではドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、新たなライバルの出現を防ぐことが謳われている。 それに対し、細川護煕政権は国連中心主義を打ち出したものの、ネオコンの怒りを買い、1994年4月に倒された。同年6月に自民、社民、さきがけの連立政権が誕生、村山富市が首相に就任して抵抗する。 そうした動きをネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベル国防次官補(当時)に訴え、95年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。そこには、10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。沖縄ではこの報告に対する怒りのエネルギーが高まり、3人のアメリカ兵による少女レイプ事件で爆発する。 こうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布された(地下鉄サリン事件)。松本サリン事件の翌月に警察庁長官は城内康光から國松孝次に交代、その國松は地下鉄サリン事件の直後に狙撃された。1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われているスターズ・アンド・ストライプ紙に85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。この1995年に日本はウォルフォウィッツ・ドクトリンに書かれている通り、アメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。 その後、アメリカはオーストラリア、インド、日本と「クワド」なる連合体を組織、またオーストラリアやイギリスと「AUKUS(A:オーストラリア、UK:イギリス、US:アメリカ)」という軍事同盟を作り上げた。 NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。NATOは西ヨーロッパをアメリカが支配する道具として作られたのだ。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。 こうした戦略に基づき、日本は2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、2019年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成、ミサイルが配備される。 アメリカ国防総省のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書はこの計画について説明していた。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲したいのだが、配備できそうな国は日本だけ。しかも日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたのだ。 ところが、2022年10月に「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視された。 そして昨年2月、浜田靖一防衛大臣は2023年度に亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。 その間、2017年には韓国でTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器を強引に運び込んだ。こうしたミサイルと一体化させる形でアメリカは海兵隊を追加配備するのだともいう。中国福建省の厦門から約10キロメートルの場所にある台湾の金門にはアメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」が「軍事顧問」として常駐している。 こうしたアメリカ中心の軍事同盟にロシアや中国が対抗してくることは間違いない。そのロシアと中国は戦略的同盟関係にある。
2024.06.19
6月15日から16日にかけてスイスで「ウクライナ平和サミット」が開かれた。アメリカに従う92カ国、そしてEU、欧州評議会、国連など8機関が参加したが、アメリカ大統領、中国国家主席、ブラジル大統領をはじめ、多くの国の首脳は出席せず、最終コミュニケに署名した国は78カ国にすぎない。成功したとは言い難い結果だ。 そのためか、ロシアとの戦争に積極的な発言を繰り返してきたNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は6月16日、NATOは核兵器を使用可能な状態にするための協議を始めていると発言した。 今年11月に大統領選挙が予定されているアメリカでは大統領の認知症的な状態が悪化、すでに職務を遂行することが難しくなっている。本来なら新しい人物へ交代させなけらばならないのだが、それができないようだ。選挙でバイデンが再選される可能性は大きくない。 アメリカではアントニー・ブリンケン国務長官、マイク・ジョンソン下院議長、下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長などがアメリカ製兵器によるロシア領深奥部への攻撃に積極的な発言をしている。そうなれば、その攻撃に見合ったロシアの反撃が予想され、大統領選挙どころではなくなるかもしれない。 前にも書いたことだが、ルビアのアレクサンデル・ブチッチ大統領はヨーロッパがロシアと戦争状態になるのは「3、4カ月以内」だと考えている。西側では「誰も戦争を止めようとしていない。誰も平和について語ろうとしない。平和はほとんど禁句」という状態だと彼は懸念している。ハンガリーのビクトル・オルバン首相やスロバキアのロベルト・フィツォ大統領も同じように考えているようだ。 アメリカなど一部の国は2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したが、その直後に傭兵や自国の特殊部隊などをウクライナへ派遣していた。その後、射程距離の長いミサイルなどの兵器を提供する際、操作のための人員を送り込んでいると言われていた。 ロシア軍は今年1月16日にウクライナのハリコフを攻撃、ウクライナの軍事施設のほか、情報機関や軍関係者が滞在していた旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、その旧ホテルには200人の外国人傭兵が滞在、戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は特にロシアとの戦争に積極的で、NATOの地上軍をウクライナへ派遣したいとしているが、すでにNATO軍の将校が民間人を装ってウクライナへ入って戦闘に参加していると言われている。 NATOの戦闘部隊を送り込まなければならないのは、NATOの傀儡軍であるウクライナ軍がロシア軍との戦闘で壊滅的な状態になっているからだ。兵士も兵器も足りない。すでにウクライナ軍は戦闘組織としての体を成していないのだ。街頭で成人男性が拉致される様子を撮影したいくつもの映像が世界に伝えられている。 ベン・ウォレス前英国防相は昨年10月1日、戦場で戦うウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えているとテレグラフ紙に寄稿しているが、言うまでもなく、その時より状況は悪い。 ウクライナでNATOの傀儡軍が敗れ、ガザでイスラエル軍が泥沼にはまりこんだ。こうした軍事作戦の背後にいるアメリカの好戦派は苦境に陥り、東アジアで新たな戦争を始めようとする可能性がある。日本も戦争の準備を進めてきた。 そうした中、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は6月18日から19日にかけて朝鮮を訪問する。金正恩の招待によるとされているが、その金正恩は昨年9月にロシアを訪問している。10月にはセルゲイ・ラブロフ外相が朝鮮を訪問、今年1月には朝鮮の崔善姫外相がロシアを訪問すしている。アメリカ、韓国、日本は軍事演習を繰り返しているが、そうした挑発に対するロシアの反応だと言えるだろう。 日本は1995年にアメリカの戦争マシーンへ組み込まれた。韓国の尹錫悦大統領は検事としてアメリカにとって目障りな政治家を排除、自らが大統領に就任した。彼はアメリカの傀儡にほかならない。アメリカの意向に従い、中国やロシアとの経済関係を破壊して韓国経済は沈没、そして軍事的な緊張を高めている。
2024.06.18
有力メディアだけでなく、インターネットでも「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)」の感染が拡大した原因は中国にあるとする宣伝、あるいは中国のワクチンは危険だとする話が広がっていたが、ロイターによると、そうした宣伝を展開したのはアメリカ軍だという。アメリカ軍のプロパガンダだということになるが、それが始められたのは2020年春からだと伝えられている。 複数のプラットフォームで偽のソーシャル・メディア・アカウントを組み合わせて使用したのだが、イスラム世界と中国との関係を悪化させるため、中国のワクチンには豚のゼラチンが含まれていることがあり、イスラム法に接触する可能性があるという疑念を膨らませようとしたようだ。 フィリピン人が中国に疑念を抱くように仕向ける工作もあったようである。フィリピン人になりすました偽のインターネット・アカウントを通じて反中国のプロパガンダを展開したとされている。ロイターによるとX(旧ツイッター)上に少なくとも300の偽アカウントが存在していたという。その大半は2020年の夏に作成された。 アメリカ国防総省のプロパガンダは中国の主張に対抗することが目的だという。2020年3月に中国政府は、前年に武漢で開催された国際軍事スポーツ大会に参加したアメリカ軍兵士が病原体を中国へ持ち込んだ可能性があると主張、また2019年夏に数カ月間閉鎖されたメリーランド州フォート・デトリックにある米陸軍の研究施設から漏れ出た可能性も示唆していた。閉鎖の原因は軍事秘密だとして公表されていないが、廃液に絡む安全上の問題が発覚したことが原因だとされている。中国政府の主張にはそれなりの根拠はあった。 中国の湖北省武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたという報告があったのは2019年12月のことだ。中国疾病預防控制中心の高福主任は武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする見方を示し、ウイルスは武漢の海鮮市場から世界に広がったというストーリーが語られるようになった。 高福は1991年にオックスフォード大学へ留学、94年に博士号を取得した人物で、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。NIAIDの所長を務めてきたアンソニー・ファウチの弟子とも言われている。 コロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーション「イベント201」が2019年10月18日にニューヨークで行われているが、それにも高福は参加していた。その主催者はジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そしてWEF(世界経済フォーラム)だ。 病原体を確認できないまま「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」が原因だということにされ、病気の名前は「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)」ということになった。 当初、その病気は「nCoV-2019」と呼ばれていたが、COVID-19へ変更されたのだが、この名称をヘブライ語へ変換させた人がいる。ヘブライ語はアラビア語と同じように右から左へ書くので、COVIDをまず反転させる。それをヘブライ語の文字に変換すると「死者の霊」という意味になるのだ。そのヘブライ語を語源とする英単語は「悪霊」を意味するdybbuk(あるいはdibbuk)である。COVID-19は悪霊騒動だとも言えるだろう。 悪霊騒動が始まった当初から「パンデミック」ではないと考えるひとは少なくなかった。WHO(世界保健機関)は2020年3月11日にパンデミックを宣言するが、4月にWHOやCDC(疾病予防管理センター)は死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら死因をCOVID-19として処理して良いとする通達を出している。つまり患者を水増しするように指示しているのだ。 アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は2020年4月8日、その通達についてFOXニュースの番組で話している。病院は死人が出ると検査をしないまま死亡診断書にCOVID-19と書き込んでいると話しているのだ。アメリカの場合、COVID-19に感染している患者を治療すると病院が受け取れる金額が多くなり、人工呼吸器をつけるとその額は3倍に膨らんだともいう。医療関係者を買収したと言われても仕方がない。 パンデミック宣言を正当化するため、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査も利用された。これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術だが、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、ウイルス自体を見つけることはできない。 増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性も増える。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。ちなみに、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 Ct値をこうした数値に設定したならPCR検査は無意味だが、結果だけは出るので人びとを騙す材料には使える。PCRを開発、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRをウイルスの検査に使ってはならないと語っていた。 その一方、「ワープ・スピード作戦」で開発した「COVID-19ワクチン」が危険だということは確認されている。この薬物は古典的な定義でからするとワクチンでなく、遺伝子操作薬にほかならない。 この「COVID-19ワクチン」は人間の細胞へLNP(脂質ナノ粒子)に包まれたmRNAを送り込み、ウイルスのスパイク・タンパクを作らせるのだが、人間の免疫システムはスパイク・タンパクを病原体だと判断、攻撃するため、自己免疫疾患を引き起こす。そこで「COVID-19ワクチン」には免疫を下げる仕組みがあるのだが、それだけでなく免疫抑制能力があるIgG4抗体が誘導される。つまりAIDS状態になり、通常なら問題のない微生物でも病気になり、癌も増える。またLNPは人体に有害であり、DNAやグラフェン誘導体の混入も報告されている。こうした危険な「COVID-19ワクチン」を世界規模で接種したが、日本以外の国は2022年に接種を事実上やめている。 「狂気の国」と言える日本はともかく、すでに「COVID-19ワクチン」の接種は止まったのだが、大規模な接種キャンペーンが展開され、少なからぬ犠牲者が出ているのは間違いない。その理由を医薬品メーカーの強欲さに求め、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めていたアンソニー・ファウチに責任を押し付ける意見もあるが、その背後にはアメリカの国防総省が存在している。つまりCOVID-19騒動はアメリカ国防総省の軍事作戦であり、医薬品メーカーは「国家安全保障」という壁に守られている。 サーシャ・ラティポワが早い段階から指摘していたように、COVID-19騒動は国防総省のプロジェクトだ。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至った。 国防総省のDARPAは2001年9月11日の後にワクチン開発の促進、新ウイルスの発見、医薬品製造の迅速化などの技術を開発するために投資するようになった。そうした中、空軍のダン・ワッテンドルフ医師が迅速なパンデミック対応をDARPAの優先事項のトップに押し上げたという。 ワッテンドルフはDARPAでプログラム・マネージャーを務め、診断学、哺乳類細胞合成生物学、RNAワクチン、モノクローナル抗体の迅速な発見、遺伝子導入による免疫予防、人工赤血球などのプログラムを立ち上げたという。DARPAは2013年にモデルナへ最高2500万ドルを助成金として提供することに決め、16年にワッテンドルフはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団へ移籍した。 2005年8月に国防総省はウクライナ政府と契約を結び、同国にある生物研究施設をアメリカ政府が管理することになる。そしてアメリカはウクライナで生物化学兵器の研究開発を開始する。 ロシア軍は2022年2月にウクライナを攻撃、その際に生物兵器に関する秘密文書も回収、その文書を分析した結果は最終報告書という形でロシア議会が2023年4月に発表した。その報告書の180ページから181ページにかけて次のように記述されている。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」
2024.06.17
ウクライナにおける戦闘のため、NATOはポーランド、スロバキア、ルーマニアに大きな軍事基地を建設しようとしているとハンガリーのビクトル・オルバン首相は語っている。兵站拠点、訓練基地、あるいはミサイルの発射基地が欲しいのかもしれない。 すでにNATO諸国は兵器が枯渇している。これまでウクライナへ供給してこなかった兵器を渡すことになるだろうが、そうした兵器を扱える兵士が十分に存在しているとは思えない。新しい軍事基地を建設するためには新基地に見合ったインフラが必要であり、時間が必要だとも指摘されている。 ロシア領の深奥部を攻撃できるミサイル、あるいは核ミサイルを発射できる戦闘機を引き渡すならば、そうした兵器を扱える兵士、兵器を誘導する衛星からの情報、ターゲットの選定やその情報なども提供する必要がある。つまり、これまで以上にNATO軍対ロシア軍という構図が明確になるわけで、ウクライナの外にある基地をロシア軍が攻撃する可能性が高まるだろう。 すでに書いたことだが、アングロ・サクソンの支配者は19世紀からロシア征服を計画している。第1次世界大戦や第2次世界大戦にもそうした背景がある。ソ連消滅後にアメリカを中心とする西側勢力はユーゴスラビアをまず攻撃、2004年にはウクライナを属国化するため、「オレンジ革命」を仕掛けた。アメリカへの従属度が低いビクトル・ヤヌコビッチがを排除し、金融資本と結びついた新自由主義者のビクトル・ユシチェンコを大統領に据え他のである。 そして2008年8月、北京で夏季オリンピックが開かれるタイミングでイスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が南オセチアを奇襲攻撃し、ロシア軍の反撃で完膚なきまで叩きのめされた。この南オセチア攻撃はロシア侵略の序章だった可能性が高い。 そのユシチェンコの政策が国民の大半を貧困化させるものだったことからウクライナの有権者は2010年の大統領選挙で再びヤヌコビッチを選ぶ。そこで、アメリカのバラク・オバマ政権はヤヌコビッチ政権を倒すため、ナチズムを信奉するグループを使ったクーデターを2013年11月から14年2月に実行してヤヌコビッチ排除に成功した。 それに対し、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデターを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が始まったのである。これはクーデター体制と反クーデター派の戦いである。 この戦いでアメリカやイギリスはクーデター体制を支援、EU諸国は米英政府に従った。ヨーロッパでは市民からの信頼を失うことよりアメリカ政府からの支持を失うことを恐れる政治家や官僚が主導権を握っているようだ。この構図は日本も同じだ。そうした政治家や官僚を操るため、買収、脅迫、暗殺、クーデターといった手段が使われてきた。 イスラエルの情報機関AMAN(イスラエル参謀本部諜報局)のために働いていたジェフリー・エプスタインは世界の有力者に未成年の女性を提供、行為の様子を隠し撮りしておどしの材料に使っていた。勿論、彼だけがこうしたことを行なっているわけではないだろう。
2024.06.16
ロシアとの戦争を決意し、ジョー・バイデン政権はルビコンをわたった。引き返すことができない。アメリカに従属するNATO諸国はバイデン政権に従い、夢遊病者のように核戦争へ近づいている。 セルビアのアレクサンデル・ブチッチ大統領はヨーロッパがロシアと戦争状態になるのは「3、4カ月以内」だと考えている。西側では「誰も戦争を止めようとしていない。誰も平和について語ろうとしない。平和はほとんど禁句」という状態で、核戦争が目前に迫っていると彼は懸念している。ハンガリーのビクトル・オルバン首相やスロバキアのロベルト・フィツォ大統領も同じように考えているようだ。 アメリカでは今年11月に大統領選挙が予定されているが、認知症的な状態がひどくなっているジョー・バイデンはその前に退くか、大統領選挙が中止になる可能性もある。 以前にも書いたことだが、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官、マイク・ジョンソン下院議長、下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長などが主張するようにアメリカ製兵器でロシア領の深奥部を攻撃したならば、ロシアは通常兵器で欧米の軍事基地や主要インフラを攻撃して報復するはず。そうなれば、アメリカで選挙は行われない。 銃撃されたフィツォはロシアとの戦争がスロバキア社会に悪い影響を及ぼしている主張、選挙の際にウクライナへの武器供与を阻止すると宣言し、ウクライナのNATO加盟に反対していた。3月2日に公開された動画では、EUとNATOからウクライナに兵士を派遣することは、世界的な終末を招く恐れがあると述べている。 また、フィツォは「COVID-19ワクチン」にも批判的で、その接種によってさまざまな心血管疾患による死亡を増加させていると議会で発言した。この「ワクチン」は「実験的」で「不必要」なものだとしているが、その通りだ。 イギリスの支配者グループがロシア征服を計画したのは19世紀のことだ。冷戦時代には膠着状態だったが、ソ連が消滅してから動き出した。その中心はシオニストの一派で金融資本と繋がっているネオコンは自分たちが支配するアメリカが唯一の超大国になったと認識、ロシアを征服する時が来たと考えたのである。彼らは1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成している。 この計画はユーゴスラビアへの先制攻撃という形でスタート、2001年9月11日の世界貿易センターや国防総省本部庁舎への攻撃を利用してアメリカ政府は中東を戦争で破壊し始めた。 1941年6月、ナチスに支配されたドイツはソ連への軍事侵攻「バルバロッサ作戦」を始めた。西部戦線には約90万人だけを残し、310万人をソ連への軍事侵攻に投入するという非常識なものだが、これはアドルフ・ヒトラーの命令で実行されたという。バルバロッサはベラルーシとウクライナへの侵攻からスタートする。 ウクライナはロシアを攻撃する重要なルートなのだが、そのウクライナで2004年、アメリカへの従属度が低いビクトル・ヤヌコビッチが大統領選挙で勝利した。この人物はロシア語系住民が住む東部や南部を支持基盤にしていたのだ。そこで2004年11月から05年1月にかけて西側は反ヤヌコビッチ運動を仕掛けた。これが「オレンジ革命」である。 そして2008年8月、北京で夏季オリンピックが開かれるタイミングでイスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が南オセチアを奇襲攻撃し、ロシア軍の反撃で完膚なきまで叩きのめされた。この南オセチア攻撃はロシア侵略の序章だった可能性が高い。その当時、アメリカの大統領はジョージ・W・ブッシュだ。 ヤヌコビッチの大統領就任を阻止したアメリカは自分たちの手先で金融界の人間であるビクトル・ユシチェンコを大統領に就任させたが、彼が推進した新自由主義的な政策は貧富の差を拡大させ、国民は怒る。そこで2010年の大統領選挙で有権者は再びヤヌコビッチを選んだ。そこでバラク・オバマ政権はヤヌコビッチ政権を倒すため、ナチズムを信奉するグループを使ったクーデターを成功させている。オバマ政権はロシアとの関係を悪化させ、外交的な挑発を繰り広げた。 オバマ政権で副大統領を務めたのがジョー・バイデン。この人物がルビコンを渡ったのだが、2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンが勝てば、その時点でルビコンを渡っていただろう。 ヒラリーは上院議員の時代からロッキード・マーチンの代理人と言われ、その側近中の側近と言われたヒューマ・アベディンはムスリム同胞団と密接な関係にあり、富豪のジョージ・ソロスから指示を受けていた人物だ。 現在、NATO諸国はロシアを攻撃できる長距離精密兵器を供給、その兵器を扱える専門家を派遣、攻撃に必要な偵察衛星の情報を提供、ターゲットを選定、そのターゲットに関する情報も提供すると宣言、つまりNATOはロシアを攻撃すると言っている。ロシア政府は攻撃されれば反撃するはずだ。 しかし、ネオコンは1990年代から「脅せば屈する」という信仰に取り憑かれている。ハリウッド映画ではポーカーの場面がしばしば出てくるが、アメリカ人には主人公がブラフで勝利するというパターンが受けるようだ。チェスが好みのロシア人にブラフは通用しない。
2024.06.15
6月15日から16日にかけて「ウクライナ平和サミット」がスイスで開催される。スイス大統領が6月10日に発表したところによると、90近い国や団体が参加を表明しているというが、当事者であるロシアは招待されず、ヨーロッパ諸国の半数は参加しない。要するに、アメリカとその従属国による宣伝イベントにすぎない。 アメリカの国防総省は1992年2月、DPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。このウォルフォウィッツが中心になってDPG草案は書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 そのドクトリンではドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、新たなライバルの出現を防ぐことが謳われている。実際、このドクトリンに従い、日本は1995年からアメリカの戦争マシンーンに組み込まれているが、アメリカは旧ソ連圏だけでなく西ヨーロッパ、東アジア、東南アジアにアメリカを敵視する勢力が現れることを許さないという意思を示している。 このドクトリンをベースにしてネオコン系シンクタンクPNACは2000年に「アメリカ国防の再構築」というタイトルの報告書を発表、それに基づいてジョージ・W・ブッシュ政権は世界戦略を作成していく。その戦略を起動させたのは報告書が発表された翌年の9月11日に引き起こされた出来事。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのである。2001年10月にアフガニスタン、03年3月にはイラクを先制攻撃しているが、いずれも9月11日の攻撃とは無関係だった。 ウクライナでは2004年に大統領選挙があったが、投票で勝利したビクトル・ヤヌコビッチはアメリカ政府にとって従属度が足りない人物。そこで2004年11月から05年1月にかけて西側は反ヤヌコビッチ運動を仕掛けた。これが「オレンジ革命」である。 ヤヌコビッチの大統領就任を阻止したアメリカは自分たちの手先で金融界の人間であるビクトル・ユシチェンコを大統領に就任させたが、彼が推進した新自由主義的な政策は貧富の差を拡大させ、国民は怒る。そこで2010の大統領選挙で有権者は再びヤヌコビッチを選んだ。そこでバラク・オバマ政権はヤヌコビッチ政権を倒すため、ナチズムを信奉するグループを使ったクーデターを成功させた。 しかし、ヤヌコビッチの支持基盤で住民がロシア語を話す東部や南部ではクーデター体制を拒否、南部のクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)の人びとは軍事抵抗を始めて内戦になった。 クーデターを拒否するウクライナ人は他の地域でも少なくなかったようで、クーデター後、軍や治安機関メンバーの約7割が離脱、一部は反クーデター軍に合流したと言われている。そのため、ドンバスで始まった内戦は反クーデター軍が優勢だった。 クーデター体制の戦力を増強する必要があると判断した西側は「停戦交渉」を始め、「ミンスク合意」なるものができたが、これは時間稼ぎにすぎず、キエフ政権は合意を守らなかった。その間、西側に支援されたクーデター政権は内務省にネオ・ナチを中心とする親衛隊を組織、傭兵を集め、年少者に対する軍事訓練を開始、並行して要塞線も作り始めた。 停戦交渉が行われている段階から西側では「時間稼ぎに過ぎない」と指摘する人がいたが、ドイツ首相としてこの合意で仲介役を務めたアンゲラ・メルケルは2022年12月、ツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認め、その直後にフランソワ・オランド(当時の仏大統領)はメルケルの発言を事実だと語っている。1998年10月から2005年11月までドイツ首相を務めたゲアハルト・シュレーダーも同じことを言っている。 8年にわたる準備期間を経てクーデター政権は2022年初頭からドンバス周辺に部隊を集結させ、ドンバスへの砲撃を本格化させ始めた。ウクライナの元議員、オレグ・ツァロフは2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出している。 そのアピールによると、この地域を制圧してからキエフ体制に従わない住民を「浄化」してドンバスを制圧、軍、SBU(ウクライナ保安庁)、ナチス信奉者はキエフ体制に従わない住民(ロシア語系住民)を皆殺しにする計画で、それを西側は承認しているとしていた。 それに対し、ロシア軍は2月24日からウクライナに対する攻撃を始めた。ミサイルなどでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始める。これでロシア軍の勝利は確定的だった。 そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉を開始、双方とも妥協して停戦の見通しが立ち、ベネットは3月5日にモスクワへ飛ぶ。彼はウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功した。 その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会うのだが、その3月5日にSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。クーデター後、SBUはCIAの下部機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 停戦交渉を完全に壊したのはブチャでの虐殺だとされている。西側はロシア軍が行ったと宣伝してきたが、すぐ、その主張に対する疑問が噴出し始めた。西側の主張に反する証拠や証言が出てきたのだ。状況証拠はキエフ政権の親衛隊がロシアに敵対的態度を取らなかったと判断された住民を虐殺したことを示している。 この問題が浮上する前、ロシア軍は停戦交渉の中でウクライナ政府と約束した通り、キエフ周辺から撤退を始めていた。3月30日にはブチャから撤退を完了、31日にはブチャのアナトリー・フェドルク市長がフェイスブックで喜びを伝えているが、虐殺の話は出ていない。ロシア軍が撤退した後、現地へ入ったウクライナの親衛隊が住民を虐殺したと考えられている。 つまり、「ウクライナ平和サミット」は猿芝居にすぎない。
2024.06.14
ジョー・バイデン大統領の認知症的な状態が深刻化しているように見える。大統領は飾りにすぎないとは言うものの、ひどい。恐ろしい状況だと言うべきかもしれない。アメリカでは今年11月に大統領選挙が予定されている。その前に退くかもしれないが、大統領選挙を中止する可能性もある。 選挙を中止するためには、それなりの理由が必要。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官、マイク・ジョンソン下院議長、下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長などはアメリカ製兵器でロシア領の深奥部を攻撃するべきだと主張しているが、同じことを主張するNATO加盟国も存在する。 そうした攻撃があればロシアは通常兵器で欧米の軍事基地や主要インフラを攻撃して報復するはず。NATO諸国は引き下がるか核兵器を使用するかエスカレートするかの選択を迫られると指摘する人もいる。どちらの場合でも、アメリカでは選挙は行われない。 すでにウクライナ軍は壊滅状態で、ネオ・ナチは前線から逃げ出している。すでに大統領の任期が切れているウォロディミル・ゼレンスキーに国を率いる力はなく、ウクライナ国内、あるいはNATO諸国によって追放される可能性が指摘されている。そうなれば、バイデンは舞台から去るしかないだろう。 バイデン政権はイスラエル軍によるパレスチナ人虐殺を支援しているが、女性や子どもを虐殺している状況は世界に発信され、ベンヤミン・ネタニヤフ政権だけでなくバイデン政権を批判する声は世界で高まっている。しかもハマスを過滅されられていない。 ガザ北部でヒズボラとの戦闘が本格化した場合、イスラエル軍が勝てる見込みはなく、大きな痛手を被る可能性が高く、バイデン政権に対してレバノンやシリアを攻撃するように求める声が出てくると見られているのだが、そうしたことをロシアは許さない。 アメリカ政府は攻撃を正当化するため、彼らが得意とする偽旗作戦を実行するのではないかと推測する人もいる。選挙が直前に迫った10月では遅すぎるので、7月中旬から9月中旬までの間が危険だと言う人もいる。 アメリカはウクライナやイスラエルに武器弾薬を供給、戦闘員を派遣してターゲット国を攻撃されているが、ロシア政府も同じように友好国へ高性能兵器を提供する可能性を口にしている。イラン、シリア、イエメン、アフガニスタン、ミャンマー、朝鮮、キューバ、ベネズエラ、ニカラグア、コンゴ、エチオピア、ソマリア、南スーダンなどロシア製の兵器ほ欲しがっている国は少なくない。イラン、シリア、イエメンは切実であり、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアはアメリカを震撼させるはずだ。 フリゲート艦アドミラル・ゴルシュコフと原子力潜水艦カザンを含むロシア海軍の艦隊がキューバを公式訪問、カリブ海で軍事演習するようだが、この艦隊は夏の間もこの海域に留まるという。つまり、アメリカ政府の行動によっては、アメリカ本土を攻撃するという姿勢を見せているのだろう。
2024.06.13
有力メディアを利用して偽情報を流布してユーゴスラビアを先制攻撃して破壊、存在しない「大量破壊兵器」を口実にしてイラクを先制攻撃し、西側の私的権力に従わないウクライナの政権をカラー革命、そしてネオ・ナチを使ったクーデターで2度倒してロシア語系住民を殺戮、言論や信教の自由を否定、アル・カイダ系武装集団を利用してリビアやシリアの体制を軍事的に倒し、イスラエルによるパレスチナ人虐殺を支援してきたのがアメリカをはじめとする西側の国々だ。 その西側を支配する私的権力は世界を支配するため、買収、脅迫、暗殺、クーデター、軍事侵攻といった手法を駆使する。暗殺やクーデターは情報機関、軍事侵攻は軍隊が実行するのだろうが、脅迫のための仕組みも存在している。 有力者の弱みを握り、操り、自分たちの利益を図る人たちは昔からいた。そのひとりが禁酒法時代に密造酒で大儲けしたルイス・ローゼンスティールだと言われている。 このローゼンスティールと「親子のように」親しく、犯罪組織ガンビーノ・ファミリーのメンバー、例えばジョン・ゴッチの法律顧問にもなっていたのがロイ・コーンなる弁護士。 コーンはコロンビア法科大学院を卒業後、親のコネを使ってマンハッタンの地方検事だったアービン・セイポールの下で働き始めたが、この検事はコミュニストの摘発で有名。1950年にソ連のスパイとして逮捕されたジュリアス・ローゼンバーグとエセル・ローゼンバーグの夫妻の裁判でコーンが重要や役割を果たしたことも知られている。 夫妻に原爆に関する機密情報を夫妻に渡したとするエセルの弟、デイビッド・グリーングラスの証言以外に容疑を裏づける証拠はなかったのだが、夫妻は1953年に処刑された。後にグリーングラスは検察側から偽証を強要されたと語っている。 コーンは1950年代にジョセフ・マッカーシー上院議員の側近として活動、反ファシスト派の粛清でも重要な役割を果たした。この粛清劇は「マッカーシー旋風」や「レッド・バージ」とも呼ばれている。マッカーシーの黒幕はFBI長官だったJ・エドガー・フーバーで、コーンはマッカーシーとフーバーの間に入っていた。 化粧品で有名なエステイ・ローダーもコーンが親しくしていたひとりで、エスティの息子であるロバート・ローダーはドナルド・とペンシルベニア大学時代からの友人。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しく、「世界ユダヤ人会議」の議長だ。1973年にコーンはトランプの法律顧問になり、AIDSで死亡する85年までその職にあった。 このコーンの後継者ではないかと疑われているのが2019年7月に性犯罪の容疑で逮捕され、同年8月に房の中で死亡たジェフリー・エプスタイン。自殺とされているが、その刑務所の事情に詳しい人はありえないとしている。 エプスタインの死に疑問を抱く人は少なくない。死亡する前日に同房者はほかへ移動、エプスタインが死んだときに看守は過労で居眠りしていただけでなく、監視カメラの映像は問題の部分が利用できない状態になっているのだとう。しかも房のシーツは紙のように弱く、首をつることは困難だという人もいる。首の骨が何カ所か折れているとも伝えられている。 エプスタインは大学をドロップアウトした後、1973年から75年にかけてマンハッタンのドルトンスクールで数学と物理を教えていたが、76年には教え子の父親の紹介で投資銀行のベア・スターンズへ転職、その時の顧客の中にエドガー・ブロンフマンがいたという。 大学をドロップアウトしたエプスタインを教師として雇い入れたのはドルトンスクールの校長をしていたドナルド・バー。司法長官を務めたウィリアム・バーの父親だ。ウィリアムはCIA出身で、その時代にはジョージ・H・W・ブッシュの部下だった。またドナルドはCIAの前身であるOSSに所属していた。 ところで、ロバート・ローダーの前に「世界ユダヤ人会議」の議長を務めたエドガー・ブロンフマンも密造酒の家系で、父親のサミュエル・ブロンフマンはローゼンスティールの仲間。エドガーの弟、チャールズが1991年に創設した「メガ・グループ」はイスラエル・ロビーとされているが、イスラエルの情報機関と緊密な関係にあると言われている。エドガー・ブロンフマンの関係でイスラエルの情報機関へ引き込まれたひとりがエプスタインだ。 エプスタインは未成年の女性と有力者を引き合わせ、ふたりの行為を盗撮し、それを利用して後に恫喝の材料に使っていたと言われている。そのエプスタインは2011年にビル・ゲイツと親しくしていたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えたのは2019年10月12日のことだった。 エプスタイン、彼と親密な関係にあったギスレイン・マクスウェル、そして彼女の父親はイギリスのミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルはいずれもイスラエルの情報機関のために働いていたと言われている。マクスウェルはエプスタインをイランとの武器取引に加えようとしていたようだ。 イスラエル軍の情報機関ERDに所属、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経験のあるアリ・ベンメナシェによると、3名ともイスラエル軍の情報機関(AMAM)に所属していた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) ロバート・マクスウェルがAMANのエージェントになったのは1960年代だとも言われ、ソ連消滅でも重要な役割を果たしたと言われいるが、ソ連消滅の前の月、つまり1991年11月にカナリア諸島沖で死体となって発見されている。 ギスレインとエプスタインは1990年代に知り合ったとされているが、ベンメナシェによると、ふたりは1980年代に親しくなっている。ニューヨーク・ポスト紙の元発行人、スティーブン・ホッフェンバーグによると、ふたりはあるパーティで知り合ったという。 世界の要人を操るだけでなく、苦境に陥った戦争から抜け出すためにもアメリカは脅迫という手法を使ってきた。例えばドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任した1953年、中国に対し、朝鮮戦争の休戦に応じなければ核兵器を使うと伝えたとされている。そして同年7月に休戦は実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) アイゼンハワー政権で副大統領を務めたリチャード・ニクソンは泥沼化していたベトナム戦争から抜け出すため、国家安全保障補佐官だったヘンリー・キッシンジャーに対し、北ベトナムを核攻撃してはどうかと1972年4月に語ったとする記録が残っている。ニクソンは「狂人理論」の信者で、核攻撃しかねないと思わせればアメリカ主導の和平に同意すると考えていたようだ。(前掲書) ウクライナにおけるロシアとの戦争で敗北することが決定的になったジョー・バイデン政権とその配下のNATO諸国も核戦争でロシアを脅して譲歩させ、あわよくば勝利を演出しようとしている。欧米諸国が戦争をエスカレートさせる主張をしている理由はそこにあると言われているが、それに応じるほどウラジミル・プーチン大統領は愚かでないだろうとも言われている。
2024.06.12
ガザ南部のラファでイスラエル軍は非武装の住民を虐殺している。軍事施設や発電施設など戦略的に重要なターゲットを選んで攻撃しているロシアを声高に批判してきた西側の有力メディアはラファをはじめとするパレスチナの惨状を伝えていないが、無惨な殺され方をした子どもの姿がテレグラムなどで世界へ発信され、イスラエルやイスラエルを支援している西側諸国に対する批判は高まってきた。 イスラエルにしろ、アメリカ/NATOにしろ、非武装の人びとを虐殺できても高性能兵器を保有し、訓練された兵士で構成された軍隊には刃が立たない。さほど大きな戦力を保有していないハマスとの戦闘にも苦しんでいる。ウクライナではロシア軍に刃が立たなかった。 そうした中、イスラエルはガザの北部へ戦闘の舞台を移動させようとしているとも言われているが、そこにはハマスとは比較にならないほど強力なヒズボラが存在している。 ガザでの虐殺が始まって以来、何ヵ月にもわたってヒズボラはイスラエルに対する地味な攻撃を続けてきた。そのターゲットは通信施設、傍受施設、レーダー施設などイスラエルの「目」や「耳」であり、アイアン・ドームなど防空システムの弱体化につながる。ガザ北部で本格的な戦闘が始まった場合、このダメージはイスラエルにとって痛い。 ヒズボラがターゲットにした施設のひとつであるメロン基地は占領下にあるパレスチナ最高峰のジャルマク山(メロン山)の頂上に位置し、占領空域の防空が主な任務だ。この基地と南部にあるミツペ・ラモン基地はイスラエルの監視システムで重要な役割を果たしている。 4月1日にイスラエル軍がシリアのイラン領事館を攻撃、IRGC(イスラム革命防衛隊)の上級司令官や副官を含む将校7名を殺害したことへの報復として、4月13日にイランはイスラエルに対し、ドローンやミサイルで報復攻撃した。 この報復は戦乱を拡大させないよう念入りに計画されたもので激しいものではなかったが、イラン軍の攻撃能力はアピールしている。例えばドローンやミサイルでイスラエルのネバティム空軍基地、ラモン空軍基地、そしてハルケレン山頂にある「サイト512」基地のAN/TPY-2 Xバンドレーダー施設を攻撃、大半のミサイルは目標にヒットしたと伝えられている。 イスラエルや西側諸国では99%を戦闘機や防空システムで撃墜したと宣伝しているが、ネバティム基地のケースは衛星写真で確認された。その写真を見ると、ふたつの滑走路に命中、その精度は高いことが示されている。日本の車力分屯基地にも配備されているAN/TPY-2 Xバンドレーダーはイランの攻撃に対して有効でなかった。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)への攻撃から10日ほど後、国防長官のオフィスで軍事攻撃の対象国リストを見たという。まずイラク、ついでシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランだ。(3月、10月) イラクは2003年、レバノンとソマリアは2006年、シリアとリビアは2011年、スーダンに対しても執拗に介入している。イスラエル軍の地上部隊は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻したが、その際にイスラエルが誇る「メルカバ4」戦車が破壊され、ヒズボラに敗北している。
2024.06.11
NATO諸国はロシアを攻撃できる長距離精密兵器を供給、その兵器を扱える専門家を派遣、攻撃に必要な偵察衛星の情報を提供、ターゲットを選定、そのターゲットに関する情報も提供すると宣言している。つまり、NATOはロシアを攻撃すると言っているのだ。これを「宣戦布告」と表現する人もいる。それに対し、ロシア政府は攻撃されれば反撃すると宣言した。 ジョー・バイデンは大統領に就任して間もない段階で「ルビコン」をわたり、回帰不能点を超えた。2021年3月16日にABCニュースに出演、アンカーを務めるジョージ・ステファノプロスからウラジミル・「プーチンは人殺しだと思うか?」と問われ、「その通り」と答えているが、それだけでなく、ロシアに対する軍事的な圧力を強めている。すでに兵器だけでなく戦闘員をウクライナへ送り込んでいることは公然の秘密であり、ロシア領への攻撃も事実上、NATOが行なっているのだ。それでもロシア側が厳しい対応をしなかったことから、NATOは図に乗ったと言えるだろう。 アメリカの好戦派は1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。そのウォルフォウィッツが中心になって作成されたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 そのドクトリンの柱は「新たなライバルの出現を許さない」ということであり、ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込むともされている。日本が1995年にアメリカの戦争マシーンに組み込まれたことは本ブログで繰り返し書いてきた。そこから現在までは一本道だ。 ジョー・バイデン政権はすでにルビコンをわたり、EU諸国の大半はバイデン政権にしたがっている。後戻りはできないのだが、前へ進めば核戦争に近づく。もし核戦争を望まないなら、ロシア政府はアメリカ政府に「ルビコン」を渡らせてはならなかったのだ。 バイデン政権がルビコンを渡ったのは、ロシアと戦っても楽勝できると信じていたからだろう。例えば、外交問題評議会(CFR)の定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載された論考には、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てると書かれている。アメリカの支配層にはそう信じている勢力が存在しているわけだ。 アメリカが軍事力を行使してもロシアは動かないともネオコンは信じていた。1991年1月の湾岸戦争でアメリカ主導軍がイラクへ軍事侵攻してもソ連は動かなかったことから、ロシアも動かないと思い込んだのだという。 その年の5月に国防総省を訪れたウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官はウォルフォウィッツからシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると聞かされたという。その後、2001年9月11日から10日ほど後に統合参謀本部で攻撃予定国のリストが存在していたとも語っている。そのリストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていた。(3月、10月) ソ連が消滅、唯一の超大国になったアメリカは誰にも気兼ねすることなく行動できるという思い込みからウォルフォウィッツ・ドクトリン、そしてこうした計画は生まれた。ところが21世紀に入る頃にロシアは復活しはじめ、すでに生産力も戦力もロシアはアメリカを上回っているのだが、そうした現実を西側の支配層は受け入れられない。彼らは「神風」を信じているのだろう。
2024.06.10
イスラエルによるパレスチナ人虐殺は続いている。誰も止められないどころか、アメリカやイギリスをはじめとする西側諸国は武器を供与するなど支援し続けているのだ。 西側諸国は自由、民主、人権といった衣をまとっているが、その下から帝国主義という鎧が現れた。イスラエルを作り上げたのは帝国主義国のひとつであるイギリス。その際に利用されたのがシオニストだ。 今から57年前の6月5日、シオニストの国であるイスラエルはエジプトに対する空爆を開始した。第3次中東戦争の勃発である。この戦争でイスラエル軍は圧勝、ガザ、ヨルダン川西岸、シナイ半島、ゴラン高原を占領した。「イスラエル建国」の際に制圧しそこねた地域の一部を占領することに成功したのである。 この戦争ではアメリカがイスラエルを支援している。例えば、ドイツに駐留していたアメリカ空軍第26戦術偵察航空団第38戦術偵察大隊に所属する4機の偵察機RF-4Cが6月4日にイスラエルへ向かい、ネゲブの基地で塗装をイスラエル軍の航空機のように塗り替えた上で偵察飛行し、上空から撮影した写真をイスラエル側へ提供している。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005) その戦争の最中、1967年6月8日にアメリカ政府は情報収集船のリバティを地中海の東部、イスラエルの沖へ派遣した。そのリバティをイスラエル軍は攻撃する。 午前6時(現地時間、以下同じ)、10時、10時半、11時26分、12時20分にイスラエル軍の航空機がリバティ近くを飛行、アメリカの艦船であることを確認した上で、14時5分に3きのミラージュ戦闘機が攻撃を開始した。 イスラエル軍機はまず船の通信設備を破壊したが、14時10分には船の通信兵が寄せ集めの装置とアンテナで第6艦隊へ遭難信号を発信することに成功、それに気づいたイスラエル軍はジャミングで通信を妨害してきた。その後もイスラエル軍は繰り返し船を攻撃、乗組員9名が死亡、25名が行方不明、171名が負傷した。 遭難信号を受信したとき、第6艦隊の空母サラトガは訓練の最中。甲板にはすぐ離陸できる4機のA1スカイホークがあった。艦長は船首を風上に向けさせて戦闘機を離陸させている。イスラエルが攻撃を開始してから15分も経っていない。そこからリバティ号まで約30分あれば現場へ到達できる。 艦長は艦隊の司令官に連絡、司令官は戦闘機の派遣を承認し、もう1隻の空母アメリカにもリバティを守るために戦闘機を向かわせるように命じるのだが、空母アメリカの艦長がすぐに動くことはなかった。リバティが攻撃されたことはリンドン・ジョンソン大統領へすぐに報告されたが、ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対して戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいる。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005) ちなみに、ジョンソンのスポンサーだったアブラハム・フェインバーグはシオニストの富豪で、ハリー・トルーマンのスポンサーとしても知られている。イスラエルを「建国」しようというシオニストへ多額の資金を提供していたことも有名だ。(Will Banyan, “The ‘Rothschild connection’”, Lobster 63, Summer 2012) 第6艦隊の第60任務部隊は15時16分、空母サラトガと空母アメリカに対して8機をリバティ救援のために派遣し、攻撃者を破壊するか追い払うように命令、16時前後に現場へ到着するとホワイトハウスに連絡している。 その直後にイスラエル軍の魚雷艇は最後の攻撃を実行し、16時14分にイスラエル軍はアメリカ側に対し、アメリカの艦船を誤爆したと伝えて謝罪、アメリカ政府はその謝罪を受け入れた。 リバティが攻撃されている間、イスラエル軍による交信をアメリカの情報機関は傍受、記録していた。その中でイスラエル軍のパイロットは目標がアメリカ軍の艦船だと報告、それに対して地上の司令部は命令通りに攻撃するように命令している。イスラエル軍はアメリカの艦船だと知った上で攻撃していることをアメリカの情報機関は知っていた。 交信を記録したテープは重要な証拠だが、アメリカでは電子情報機関のNSAがそうしたテープを大量に廃棄したという。複数の大統領へのブリーフィングを担当した経験を持つCIAの元分析官、レイ・マクガバンもこうした隠蔽工作があったと確認している。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005) ジョンソン政権はイスラエル軍による攻撃を隠蔽しようとしただけではなく、ジョンソン政権こそが計画の主体だとする見方がある。この政権で秘密工作を統括していたグループは「303委員会」と呼ばれていたが、そこで1967年4月にフロントレット615という計画が説明されたという。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣された。 この計画の中にサイアナイド作戦なるサブ作戦が存在しているとも言われている。リバティを沈没させ、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたのではないかというのだ。トンキン湾事件という偽旗作戦を利用してベトナムで本格的な戦争を始めたジョンソン政権が中東でも似たことを目論んだ可能性は否定できない。もしサイアナイド作戦が事実なら、イスラエルはアメリカの重大な弱みを握ったことになる。 イスラエル軍がアメリカの情報収集船を攻撃する様子を、近くにいたアメリカの潜水艦アンバージャックが潜望鏡を使って見ていたとする証言もある。リバティの乗組員も潜望鏡を見たとしている。ただ、記録したはずのデータは見つからない。 リバティに対する攻撃の後、アメリカ政府は関係者に箝口令を敷き、重要な情報を公開していない。イスラエルでは機密文書が公開されるのは50年後と決められているため、イスラエルが開戦に踏み切った目的、戦争の実態、リバティを攻撃した本当の理由などを知ることのできる資料が2017年に公表されるはずだったのだが、2010年7月にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は情報公開の時期を20年間遅らせることを決めている。勿論、2037年に公開される保証はない。
2024.06.09
ノルマンディー上陸作戦は1944年6月6日に実行された。その80周年を記念するイベントがノルマンディーで開催され、多くの人が参加したという。この作戦を題材にした作品「史上最大の作戦(The Longest Day)」をハリウッドの映画界は1962年に公開、多くの人はその映画で作戦のイメージを作り上げているようだが、この作戦はドイツ軍の主力がスターリングラードで壊滅、ドイツの敗北が決定的になってから1年半ほど後に実行されたのだ。 ノルマンディー上陸作戦と並行する形でソ連軍は1944年6月22日、ベラルーシに向かって進撃を開始、ワルシャワに到達、ベルリンが視界に入った。ドイツ軍はこの攻撃によって28個師団を失ったという。 ドイツ軍は1941年6月22日、ソ連に対する奇襲攻撃を開始した。バロバロッサ作戦だ。全戦力のうち約90万人を西部戦線に残し、約300万人を東方へ振り向けたのだ。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したが、アドルフ・ヒトラーがそれを退けたとされている。ヒトラーは西から攻められないことを知っていたのではないかと疑う人もいる。 その前年、つまり1940年の5月下旬から6月上旬にかけて、イギリス軍とフランス軍34万人がフランスの港町ダンケルクから撤退しているのだが、その際、アドルフ・ヒトラーは追撃していたドイツ機甲部隊に進撃を停止するように命じている。そのまま進めばドイツ軍が英仏軍より早くダンケルクへ到達することは明らかだった。この停止命令はヘルマン・ゲーリングのアドバイスによるとも言われている。 第2次世界大戦の終盤、ドイツの幹部はウォール街の弁護士でOSSの幹部だったアレン・ダレスらと接触しているが、その一人がゲーリングだ。1930年代から親ファシズムで、ナチスに資金を援助していたウォール街の人脈はゲーリングを戦犯リストから外そうとしたが、ニュルンベルク裁判で検察官を務めたロバート・ジャクソンに拒否された。ゲーリングはニュルンベルクの国際軍事裁判で絞首刑が言い渡されたものの、処刑の前夜、何者かに渡された青酸カリウムを飲んで自殺している。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) 1940年9月から41年5月までドイツ軍はロンドンを空襲しているが、空襲が終わった5月にアドルフ・ヒトラーの忠実な部下として知られているルドルフ・ヘスが単身、飛行機でスコットランドへ飛んでいる。パラシュートで降りたとされているが、イギリスで何があったのかは秘密にされている。無線通信を避けなければならない重要な情報をイギリス政府へ伝えるため、ヘスはドーバー海峡を渡ったのではないかと推測する人もいる。 1941年7月にドイツ軍はレニングラードを包囲、兵糧攻めにする。多くの死者が出たが、ソ連軍の抵抗でこうした予想通りにはことが進まない。この段階でドイツ軍は苦境に陥ったと見る人もいる。 同年9月にはモスクワまで80キロメートルの地点にドイツ軍は到達した。ヒトラーはソ連軍が敗北したと確信、再び立ち上がることはないと10月3日にベルリンで語っている。またウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官だったヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しながら傍観していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) しかし、レニングラードもモスクワも攻撃に耐え、1942年1月にドイツ軍はモスクワでソ連軍に降伏。残ったドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入するのだが、11月からソ連軍が反撃、ドイツ軍25万人は完全包囲され、43年1月にドイツ軍は降伏。主力が壊滅したドイツ軍の敗北は決定的だった。 これを見て慌てたイギリスやアメリカの支配層は動き始め、1943年1月にウィンストン・チャーチル英首相とフランクリン・ルーズベルト米大統領はモロッコのカサブランカで会談、シチリア島とイタリア本土への上陸を決定。米英両国軍はその年の7月にシチリア島へ上陸、9月にはイタリア本土を占領、イタリアは無条件降伏する。ドイツ軍の主力は東部戦線で壊滅していたわけで、難しい作戦ではなかった。そして1944年6月6日のノルマンディー上陸だ。 大戦後、イスメイはNATOの初代事務総長に就任、NATO創設の目的はソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることのあるとしている。
2024.06.08
アメリカ軍は6月26日から8月2日まで配下の軍隊をハワイ周辺に集めて軍事演習「RIMPAC(環太平洋合同演習)」を実施する。海軍力による太平洋支配を維持しることが目的だろう。参加国はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドのアングロ・サクソン系5カ国のほか、日本、ブルネイ、インド、インドネシア、マレーシア、韓国、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ラテン・アメリカのチリ、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ペルー、ヨーロッパからデンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、そしてトンガ、イスラエルだ。名前だけだろうという国も少なくないが、ヨーロッパからこれだけ参加するのは興味深い。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカの支配力は弱まっている。軍事同盟を強化するため2017年11月にオーストラリア、インド、アメリカ、日本で組織されるクワドの復活を協議したのもテコ入れのつもりだろう。アメリカ太平洋軍は2018年5月にインド太平洋軍へ名称を変更している。太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うとされた。 2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言、21年9月にアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国は太平洋で軍事同盟AUKUSを築く。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。こうした動きに対し、ニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘している。その当時、パトロシェフはロシア国家安全保障会議の議長を務めていた。 NATOは集団防衛機構だとされているが、その事務総長だったヘイスティング・ライオネル・イスメイはNATO創設の目的はソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることのあるとしている。このイスメイはウィンストン・チャーチルの側近だ。 NATOは1949年に創設されたが、その母体になったのは48年に作られたACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)。この組織はアメリカやイギリスがヨーロッパを支配する目的で設立され、イギリスのチャーチルやアメリカのアレン・ダレスたちが参加していた。ちなみにビルダーバーグ・グループはその下部機関のひとつ。 NATO加盟国には破壊活動を目的とする秘密部隊が存在していることもわかっている。その中でも特に有名な部隊がイタリアのグラディオ。1960年代から80年頃までクーデター計画や極左グループを装った爆破事件を繰り返していた。 フランスのOASもそうした秘密部隊ネットワークにつながる組織で、メンバーの一部が1962年にシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を試みている。 その背景を知っていたド・ゴールは1966年にフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、SHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出している。ジョン・F・ケネディ米大統領が暗殺されたのは1963年のことだが、ド・ゴールはケネディ暗殺と自分の暗殺未遂の背景は同じだと考えていたと言われている。 東アジアにNATO的な軍事同盟を築く目的は中国やロシアとの戦争を想定しているだけでなく、その地域全域の支配体制を強化することにあるはずだ。つまり東/東南アジアの植民地化である。ロシアに敗北した西ヨーロッパ諸国は東/東南アジアに注目しているのか、あるいは世界大戦を始めて戦況を一変させようとしているのかもしれない。
2024.06.07
天本英世という俳優がいた。1926年に生まれ、2003年に死亡している。日本軍が中国で全面戦争に突入した盧溝橋事件の時に11歳、日本が降伏した時には19歳ということになる。1944年に旧制七高へ入学、48年には東大法学部へ進んだ。「少年時代・青春時代を送ったのは、天皇を頂点に戴く日本国家が超国家主義的な狂気の思想に依ってアジア征服・世界征服へと突き進む破壊の道のちょうど真っ只中」(天本英世著『日本人への遺書』徳間書店、2000年)だ。 天本の友人で高名なギタリストでもあるマノロ・サンルーカルのアメリカ観が『日本人への遺書』の中で紹介されている。「アメリカなんて国は、自分が滅びることになったら、その前に世界中の国を滅ぼしてからしか滅びないであろう・・・」と言っていたというのだが、アメリカを中心とする欧米の支配層は今まさにそうした道を進んでいる。欧米の支配層が好んでいるらしいAIは恐怖を感じない。 アメリカではアントニー・ブリンケン国務長官、マイク・ジョンソン米下院議長、下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長、ノルウェー人でNATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグなどはアメリカ製兵器でロシア領の深奥部を攻撃するべきだと主張、フランスのエマニュエル・マクロン大統領もロシアとの戦争に進もうという発言をしている。フィンランドのアレクサンダー・シュトゥッブ大統領は「国際法の範囲内」であれば、西側諸国から提供された武器でウクライナ軍がロシア領土を攻撃することに問題はないと語っていた。 2004年11月から05年1月にかけての「オレンジ革命」以来、アメリカのネオコンを中心とする西側諸国はウクライナを舞台にしてロシアと戦っている。その流れの中に2013年11月から14年2月にかけてのクーデターがあり、22年2月からのロシアによるウクライナに対する軍事攻撃がある。アメリカの国防総省はロシアとの戦争を睨み、2005年からウクライナで生物兵器の研究開発を進めてきた。 こうしたアメリカの動きは1992年2月に作成された国防総省のDPG(国防計画指針)草案から始まる。その当時の国防長官はネオコンのディック・チェイニー、次官はやはりネオコンのポール・ウォルフォウィッツで、DPG草案はウォルフォウィッツを中心に作成された。そこでこの指針案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれる。 ソ連が消滅したことでアメリカが「唯一の超大国」になったと考えたネオコンはドクトリンの中で「潜在的ライバル」を抑え込み、新たなライバルの出現を許さないという意思を明確にした。その計画を実現するため、ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込むともしているが、実際、日本は1995年にアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。 ネオコンは1970年代、ジェラルド・フォード政権で台頭したが、金融資本と関係が深い。その思想的な支柱とされているレオ・ストラウスは1899年にドイツの熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にウラジミル・ヤボチンスキーの「修正主義シオニズム」運動に加わっている。 ストラウスは1932年にロックフェラー財団の奨学金でフランスへ留学し、中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学ぶ。その後、プラトンやアリストテレスの研究を始めた。(The Boston Globe, May 11, 2003) こうして作られたストラウスの思想は、カルガリ大学のジャディア・ドゥルーリー教授に言わせると一種のエリート独裁主義であり、「ユダヤ系ナチ」だ。(Shadia B. Drury, “Leo Strauss and the American Right”, St. Martin’s Press, 1997) アメリカのライバルだったというソ連だが、第2次世界大戦におけるドイツとの戦争で疲弊していた。 ドイツ軍がソ連への軍事侵攻を始めたのは1941年6月。「バルバロッサ作戦」だ。西側には約90万人だけを残し、310万人を投入するという非常識なものだが、これはアドルフ・ヒトラーの命令で実行されたという。 それだけの軍事作戦を遂行するためには半年から1年くらいの準備期間が必要だろう。ドイツ軍は1940年9月から41年5月までの間、イギリスを空爆している。 1941年7月にドイツ軍はレニングラードを包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達。ヒトラーはソ連軍が敗北したと確信、再び立ち上がることはないと10月3日にベルリンで語っている。ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官だったヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しながら傍観していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) しかし、ソ連軍の抵抗でこうした予想通りにことは進まず、ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入。ここでドイツ軍はソ連軍に敗北、1943年1月に降伏した。この段階でドイツの敗北は決定的。ここからアメリカやイギリスは慌てて動き始めた。 スターリングラードでドイツ軍が降伏した1943年1月、フランクリン・ルーズベルト米大統領、ウィンストン・チャーチル英首相、そしてフランスのシャルル・ド・ゴールはカサブランカで会談、善後策を協議した。そして同年7月に英米軍は犯罪組織の協力を得てシチリア島へ上陸、翌年の6月にはハリウッド映画で有名になったノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)を実行する。シチリア島上陸やノルマンディー上陸はドイツとの戦争において大きな意味はない。 その一方でナチスの幹部はアレン・ダレスたちと接触し始める。「サンライズ作戦」だ。その後アメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させ、保護、そして雇用する。「ラットライン」、「ブラッドストーン作戦」、「ペーパークリップ作戦」などである。大戦の終盤からウォール街人脈がファシストの大物を救出、保護、逃走を助け、のちに雇い入れたのだ。 その時に助けられた東ヨーロッパのファシストもウォール街人脈は助け、後継者を育成した。その中には2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行したネオ・ナチも含まれている。 1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づいてMAUD委員会なるものが設立され、この委員会のマーク・オリファントがアメリカへ派遣される。オリファントがアーネスト・ローレンスと会ったのは1941年8月だ。その結果、アメリカの学者も原子爆弾の可能性に興味を持つようになり、同10月にフランクリン・ルーズベルト大統領は原子爆弾の開発を許可、イギリスとの共同開発が始まった。 この「マンハッタン計画」を統括していたアメリカ陸軍のレスニー・グルーブス少将(当時)は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。米英の核兵器は最初からソ連/ロシアがターゲットだった。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)
2024.06.06
1989年1月、アメリカ大統領はロナルド・レーガンからジョージ・H・W・ブッシュへ交代、その直後に新大統領はイギリスのマーガレット・サッチャー首相と会談、ソ連を崩壊させることで合意している。その当時、すでにソ連のミハイル・ゴルバチョフはCIAのネットワークに取り囲まれていた。ブッシュはその年の5月、ジェームズ・リリーを中国駐在アメリカ大使に据えた。 ブッシュはジェラルド・フォード政権時代の1976年1月から77年1月にかけてCIA長官を務めているが、彼はエール大学時代、CIAからリクルートされたと言われている。同大学でCIAのリクルート担当はボート部のコーチを務めていたアレン・ウォルツだと言われているが、そのウォルツとブッシュは親しかったのだ。 しかも、ブッシュの父親であるプレスコットは銀行家から上院議員へ転身した人物で、ウォール街の弁護士だったアレン・ダレスと親しかった。言うまでもなく、ダレスはOSSからCIAまで秘密工作を指揮していた人物だ。ブッシュは大学を卒業した後にカリブ海で活動、1974年から75年まで中国駐在特命全権公使(連絡事務所長)を務めている。 ジェームズ・リリーはジョージ・H・W・ブッシュとエール大学時代から親しく、ふたりとも大学でCIAにリクルートされた。リリーは中国山東省の青島生まれで中国語は堪能で、1951年にCIA入りしたと言われている。 このエール大学コンビは中国を揺さぶりにかかる。中国のアカデミーはビジネス界と同じように米英支配層の影響下にあり、揺さぶる実働部隊は主要大学の学生。現場で学生を指揮していたのはジーン・シャープで、彼の背後にはジョージ・ソロスもいたとされている。学生たちと結びついていた趙紫陽の後ろ盾は鄧小平だ。 中国とアメリカは当時、緊密な関係にあると見られていた。1972年2月にリチャード・ニクソン大統領(当時)が中国を訪問、北京政府を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明して米中は国交を回復させているのだ。1980年には新自由主義の教祖的な存在だったミルトン・フリードマンが北京を訪問、新自由主義の推進役だった趙紫陽は1984年1月にアメリカを訪問、ホワイトハウスでロナルド・レーガン大統領と会談して両国の関係は緊密化していく。 新自由主義は社会的な強者に富を集中させる仕組みであり、中国でも貧富の差が拡大、1980年代の半ばになると労働者の不満が高まる。社会は不安定化して胡耀邦や趙紫陽は窮地に陥り、胡耀邦は1987年1月に総書記を辞任せざるをえなくなった。学生は新自由主義を支持していたが、新自由主義に反対する労働者も抗議活動を始めたいた。 そうした中、1988年にミルトン・フリードマンは8年ぶりに中国を訪問、趙紫陽や江沢民と会談したが、中国政府はその年に「経済改革」を実施している。労働者などからの不満に答えるかたちで軌道修正したと言えるだろう。 胡耀邦は1989年4月15日に死亡。新自由主義を支持する学生はその日から6月4日までの期間、天安門広場で中国政府に抗議する集会を開いたのだが、新自由主義に反対する労働者も抗議活動を始めたいた。 西側の政府や有力メディアは6月4日に軍隊が学生らに発砲して数百名を殺したと主張していた。広場から引き上げる戦車をクローズアップした写真を使い、「広場へ入ろうとする戦車を止める英雄」を作り上げているが、この写真が撮影されたのは6月5日のことだ。 例えば、当日に天安門広場での抗議活動を取材していたワシントン・ポスト紙のジェイ・マシューズは問題になった日に広場で誰も死んでいないとしている。広場に派遣された治安部隊は学生が平和的に引き上げることを許していたという。(Jay Mathews, “The Myth of Tiananmen And the Price of a Passive Press,” Columbia Journalism Reviews, June 4, 2010) 学生の指導グループに属していた吾爾開希は学生200名が殺されたと主張しているが、マシューズによると、虐殺があったとされる数時間前に吾爾開希らは広場を離れていたことが確認されている。北京ホテルから広場の真ん中で兵士が学生を撃つのを見たと主張するBBCの記者もいたが、記者がいた場所から広場の中心部は見えないことも判明している。(Jay Mathews, “The Myth of Tiananmen And the Price of a Passive Press,” Columbia Journalism Reviews, June 4, 2010) 西側の有力メディアは2017年12月、天安門広場で装甲兵員輸送車の銃撃によって1万人以上の市民が殺されたという話を伝えた。北京駐在のイギリス大使だったアラン・ドナルドが1989年6月5日にロンドンへ送った電信を見たというAFPの話を流したのだ。 しかし、これはドナルド大使自身が目撃したのではなく、「信頼できる情報源」の話の引用。その情報源が誰かは明らかにされていないが、そのほかの虐殺話は学生のリーダーから出ていた。当時、イギリスやアメリカは学生指導者と緊密な関係にあった。ドナルド大使の話も学生指導者から出たことが推測できる。 また、内部告発を支援しているウィキリークスが公表した北京のアメリカ大使館が出した1989年7月12日付けの通信文によると、広場へ入った兵士が手にしていたのは棍棒だけで群集への一斉射撃はなかったとチリの2等書記官だったカルロス・ギャロは話している。銃撃があったのは広場から少し離れた場所だったという。(WikiLeaks, “LATIN AMERICAN DIPLOMAT EYEWITNESS ACCOUNT O JUNE 3-4 EVENTS ON TIANANMEN SQUARE”) イギリスのデイリー・テレグラム紙が2011年6月4日に伝えた記事によると、BBCの北京特派員だったジェームズ・マイルズは2009年に天安門広場で虐殺はなかったと認めている。軍隊が広場へ入ったときに抗議活動の参加者はまだいたが、治安部隊と学生側が話し合った後、広場から立ち去ることが許されたという。マイルズも天安門広場で虐殺はなかったと話している。(The Daily Telegraph, 4 June 2011) 治安部隊とデモ隊が激しく衝突したのは広場から8キロメートル近く離れている木樨地站で、黒焦げになった複数の兵士の死体が撮影されている。このデモ隊は反自由主義を主張していた労働者だったと言われている。路上での衝突と広場の状況を重ねて語る人もいるが、全く違うのだ。 吾爾開希をはじめとする反政府活動の学生指導者たちはイエローバード作戦(黄雀行動)と呼ばれる逃走ルートを使い、香港とフランスを経由してアメリカへ逃れた。このルートを運営していたのは米英の情報機関、つまりCIAとMI6だ。吾爾開希はハーバード大学で学んだ後、台湾へ渡って独立運動に参加、つまり台湾で軍事的な緊張を高める仕事を始めた。
2024.06.05
6月21日の「櫻井ジャーナルトーク」は満席になったそうです。ありがとうございました。テーマは「苦境に陥った米国と生物兵器」を予定していますが、状況によっては変更する場合があります。櫻井 春彦
2024.06.05
WHO(世界保健機関)の最高意思決定機関である世界保健総会が5月27日から6月1日までスイスのジュネーブで開催された。今回は感染症対策という名目で世界を支配する仕組みを作り上げようという「パンデミック条約」やIHR(国際保健規則)の改定が予定されていたが、反発が強く条約を合意に至らなかった。IHR改定は多くの加盟国が欠席する中、採決されたとされている。 強大な私的権力に支配されているWHOだが、世界を押さえ込む力はなくなっている。パンデミック条約やIHRの改定にロシア、イラン、スロバキア、コスタリカ、アルゼンチンは公然と反対しているが、「パンデミック条約」にもIHR改定にも署名するつもりはないと公言していたスロバキアのロベルト・フィツォ首相は5月15日に銃撃された。 親欧米派の政党「進歩スロバキア」の活動家だという71歳の男性ユライ・チントゥラがその場で逮捕され、その妻も拘束されたと伝えられているが、銃撃から4時間後、容疑者のフェイスブックの通信内容と履歴が削除されたという。 現場にいて逮捕されたチントゥラ自身に削除のチャンスがあるようには思えず、彼の妻は技術に疎い。夫妻以外の何者かが削除した可能性が高いということであり、暗殺未遂事件の背後に組織が存在していることを窺わせる。 スロバキアの内相は5月21日、スロバキアのテレビで銃撃事件について「単独犯でなく、その背後で何かが進行している」と語っている。すでにスロバキアではメディアの一部はチントゥラの背後にウクライナが存在している可能性があると囁き始めた。確かに状況証拠はそうした方向を示しているのだが、ウクライナの大統領はイギリスの情報機関であるMI6、ウクライナの情報機関はアメリカのCIAに従属している。 ウクライナは2005年8月、「病原体」を保管し研究しているウクライナのバイオラボの管理をアメリカ政府に引き渡すという協定をアメリカと結んだ。その協定はウクライナの施設において生物兵器の開発に利用できる技術、病原体、知識の拡散を防ぐことに重点を置いているとされているが、この時からアメリカの国防総省はウクライナで生物兵器の研究開発を開始したのだ。生体実験も行われている。 ウクライナでの研究開発はDARPA(国防高等研究計画局)やDTRA(国防脅威削減局)が中心になって行われたが、「パンデミック」計画もDARPAとDTRAが中心になっている。アメリカではすでに国防総省が保健当局を取り込み、「COVID-19対策」を軍事作戦として行っているようだ。 国防総省は2019年11月、つまり中国湖北省の武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見される前に「COVID-19研究」のため、ラビリンス・グローバル・ヘルスへ「SME原稿文書化およびCOVID-19調査」を発注している。この契約は「ウクライナにおける生物学的脅威削減プログラム」のためのプロジェクトの一部だという。武漢で患者が発見される前、そしてウイルスの名前が決まる前からアメリカの国防総省は「COVID-19」を知っていたことになる。 また、モデルナはアンソニー・ファウチが所長を務めるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)と共同開発した「mRNAワクチン」候補について、2019年12月初旬に守秘義務契約を結び、その候補をノースカロライナ大学チャペルヒル校に譲渡することで合意している。 その直前、武漢では2019年10月18日から27日にかけて国際的な軍人の競技会が開かれ、アメリカも選手団を派遣。その前、10月18日にはコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーション「イベント201」がニューヨークで開かれている。主催者はジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そしてWEF(世界経済フォーラム)だ。 アメリカの国防総省は2019年当時、ウクライナ軍にドンバスへの大規模な軍事侵攻が2022年春に行われることを知っていた、あるいは計画していたのではないだろうか。これはロシア征服作戦の一環だったはずだ。アメリカとイスラエルの後押しでジョージアは2008年8月に南オセチアを奇襲攻撃したが、これはロシア征服戦争の始まりだったように見える。勿論、アメリカはロシアに楽勝するつもりだったはずで、世界を制圧した状態で「COVID-19プロジェクト」を仕上げる予定だったのだろう。
2024.06.04
アメリカを中心とする支配体制はウクライナでロシアに敗北、ガザでは「一心同体の国」であるイスラエルが苦しんでいる。苦境に陥った彼らは、これまで掲げてきた民主主義、自由、ルールに基づく秩序といった看板をかなぐり捨て、帝国主義国としての本性を現した。次の時代にもヘゲモニーを握ろうと必死で、なりふり構っていられないのだろう。 西側が苦境に陥った一因はロシアと中国を接近させたことにあると言えるだろう。現在、中露は戦略的な同盟関係にある。その原因を作ったのはネオコンの傲慢な戦略。特に、2013年11月から14年2月にかけてウクライナで行ったクーデターが大きい。 ロシアと中国にはさまれたカザフスタンで2022年1月にクーデターが試みられた。アメリカが仕掛けたと見られているが、CSTO(集団安全保障条約機構)が平和維持部隊を派遣して反乱を制圧、その存在感を高めた。 CSTOの中心的な存在であるロシアは2008年8月、南オセチアを奇襲攻撃したジョージア軍を殲滅し、力を見せつけている。このジョージアはイスラエルとアメリカから兵器の提供を受け、将兵の訓練も受けていた。おそらく奇襲作戦はイスラエルが立てたと言われている。つまり、イスラエル軍とアメリカ軍はロシア軍に負けたのだ。その後、シリアやウクライナでも戦闘でもアメリカ/NATO軍はロシア軍に敗れている。 カザフスタンを含む中央アジアは戦略的に重要な位置にあるだけでなく、資源の宝庫。アメリカはウクライナで反クーデター派が拠点にしていたドンバスへの大規模な攻撃を2022年春に始める計画だったことを示す文書が見つかっているが、その直前にカザフスタンでクーデターを成功させ、反ロシア体制を樹立させたかったのだろう。 そして現在、ベラルーシ-ロシア-カザフスタン-ウズベキスタン-アフガニスタン-パキスタンと繋がる複合輸送回廊が計画され、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタンではすでにインフラが整備されている。ベラルーシろロシアの関係は緊密、パキスタンもロシアとの関係を強めている。 アフガニスタンはタリバーンとロシアとの関係が問題だったが、ここにきてロシア外務省と司法省はウラジミル・プーチン大統領に対し、タリバンをロシアのテロ組織リストから除外できると伝えた。 元々タリバーンはアメリカがアフガニスタンを支配する手先として組織したのだが、途中で自立、アメリカと敵対するようになった。アメリカは手先としてアル・カイダ系武装集団(ダーイッシュを含む)とタリバーンは戦っている。そのタリバーンがテロ組織リストから外されればロシアはカブールの新政権を承認できる。近い将来、テロ組織リストから外されることは間違いない。ロシア政府はサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)にタリバーンを招待した。 それに対し、アメリカは東アジアで軍事的な緊張を高めようとしている。そのため、オーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を、またオーストラリアやイギリスと「AUKUS(A:オーストラリア、UK:イギリス、US:アメリカ)」という軍事同盟を組織、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言している。NATOは西ヨーロッパをアメリカが支配する道具として作られたのだ。東アジアを支配する強固な軍事組織をアメリカは作ろうとしている。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。 こうした軍事同盟に先行する形でアメリカは中国との戦争準備を進めていた。本ブログでは繰り返し書いてきたように、日本は1995年にアメリカの戦争マシーンに組み込まれたが、2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、2019年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成、ミサイルが配備される。 アメリカ国防総省のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書はこの計画について説明していた。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲したいのだが、配備できそうな国は日本だけ。しかも日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたのだ。 ところが2022年10月、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視された。 そして昨年2月、浜田靖一防衛大臣は2023年度に亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。 その間、2017年には韓国でTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器を強引に運び込んだ。こうしたミサイルと一体化させる形でアメリカは海兵隊を追加配備するのだともいう。中国福建省の厦門から約10キロメートルの場所にある台湾の金門にはアメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」が「軍事顧問」として常駐している。
2024.06.03
アメリカではアントニー・ブリンケン国務長官に限らず、マイク・ジョンソン米下院議長やマイケル・マッコール委員長もアメリカ製兵器でロシア領の深奥部を攻撃するべきだと主張している。 ヨーロッパではフランスのエマニュエル・マクロン大統領の攻撃的た発言が目立ったが、ノルウェー人でNATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグはウクライナがロシア領内の標的を攻撃するための武器の使用を許可するようNATO加盟国に求め、やはりノルウェーのエスペン・バルト・エイデ外相は西側諸国からウクライナに提供された武器の使用に制限を設けるべきではないと述べた。またフィンランドのアレクサンダー・シュトゥッブ大統領は「国際法の範囲内」であれば、西側諸国から提供された武器でウクライナ軍がロシア領土を攻撃することに問題はないと語っている。 それに対し、ウラジミル・プーチン露大統領は5月29日、長距離精密兵器は偵察衛星の情報がなければ使用できず、その情報を処理する専門家が必要だと指摘した。 偵察衛星の情報はアメリカなどウクライナ以外の国から提供され、その情報を処理する専門家はウクライナ人である必要はない。すでに、西側から提供された兵器を動かすためにアメリカ/NATOから軍人が入っていると言われている。こうした点からもロシア領の深奥部に対する攻撃はNATOによる攻撃と見なしうるということであり、ウクライナの外も攻撃目標になりうるというわけだ。 アメリカ/NATOが一気に追い詰められたのは2022年2月にロシア軍がウクライナを攻撃し始めてから。攻撃の理由はアメリカ/NATOを後ろ盾とするウクライナ軍がドンバス(ドネツクやルガンスク)の周辺に集まって砲撃を激化させ、軍事侵攻する動きを見せていたことにある。 アメリカのバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのは2014年2月だが、その時点ではクーデターに反対する国民は少なくなかった。軍や治安機関メンバーの約7割が離脱、一部は反クーデター軍に合流したと言われている。そこでクーデター体制の戦力を増強させる必要があった。 アンゲラ・メルケル元独首相は2022年12月7日、ツァイトに対して「ミンスク合意」は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認めた。その直後にフランソワ・オランド元仏大統領はメルケルの発言を事実だと語っている。アメリカ/NATOは8年かけてウクライナの戦力を増強した。 こうしたことからウクライナでの戦闘は2014年に始まると言われているのだが、アメリカがウクライナを属国化したのはその10年前。つまり2004年11月から05年1月にかけて西側は「オレンジ革命」を仕掛け、ヤヌコビッチの大統領就任を阻止しているのだ。そしてアメリカの手先で新自由主義者のビクトル・ユシチェンコが大統領に就任したのだが、貧富の差を拡大させる新自由主義的な政策に国民は怒り、2010の大統領選挙でヤヌコビッチを選んだ。アメリカの国防総省がウクライナで生物兵器の研究開発を始めたのはウクライナがアメリカの属国になった2005年のことである。 ウクライナでアメリカ国防総省が生物兵器の研究開発を始めていることは前から問題になっていた。ディリヤナ・ゲイタンジエワによると、ドニプロ、ミコライフ、リビフ、ウジホロド、テルノポリ、ビンニツヤ、キエフにも施設があり、各研究所は2010年から13年の間に建設されたという。2013年にはハリコフ周辺にレベル3のバイオ研究施設を作ろうとしていると訴えるリーフレットがまかれている。 しかし、詳しい情報が出てきたのはロシア軍がウクライナを攻撃した後のこと。その攻撃のターゲットにはドンバス周辺に集まっていたウクライナ軍、軍事基地、そして生物兵器の研究開発施設が含まれていた。ウクライナにはアメリカ国防総省のDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が約30カ所あったのだ。ロシア軍はウクライナ軍の司令部や生物兵器の施設から機密文書を回収し、分析し始めた。 その文書を分析した結果は最終報告書という形でロシア議会が2023年4月に発表、その報告書の180ページから181ページにかけて次のように記述されている。 「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」 「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 この「万能生物兵器」の特性が日本で治験が始まった「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」に似ていることは本ブログで繰り返し書いてきた。アメリカの国防総省は日本で生物兵器を生産し始めたのかもしれない。
2024.06.02
犯罪組織と同じように、シティやウォール街を拠点とする西側の支配システムは「暴力」が基本になっている。暴力で威圧し、従属させようとしてきた。そのため、映画で「アメリカは強い」というイメージを世界の人びとに植えつけるだけでなく、見せしめのために弱小国を破壊することもある。この構図が崩れ始めている。 1991年12月にソ連が消滅した時、ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと認識、92年2月には国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。その中でドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、新たなライバルの出現を防ぐことが謳われている。 それに対し、細川護煕政権は国連中心主義を打ち出したものの、ネオコンの怒りを買い、1994年4月に倒された。同年6月に自民、社民、さきがけの連立政権が誕生、村山富市が首相に就任して抵抗する。 そうした動きをネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベル国防次官補(当時)に訴え、95年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。そこには、10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。沖縄ではこの報告に対する怒りのエネルギーが高まり、3人のアメリカ兵による少女レイプ事件で爆発する。 こうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布された(地下鉄サリン事件)。松本サリン事件の翌月に警察庁長官は城内康光から國松孝次に交代、その國松は地下鉄サリン事件の直後に狙撃された。1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われているスターズ・アンド・ストライプ紙に85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。この1995年に日本はウォルフォウィッツ・ドクトリンに書かれている通り、アメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。 中国ではアカデミーやビジネスの世界をアメリカは支配、ソ連消滅後にロシアの軍事力は弱体化したと考えたネオコンは全面核戦争に勝てると思い始めたようだ。そうした主張が米英支配層と深い関係にある外交問題評議会(CFR)の定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載された。アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てるというのだ。 この分析が間違っていることは2008年8月に判明している。イスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が北京で夏季オリンピックが開かれていた期間を狙い、南オセチアを奇襲攻撃したのだが、完膚なきまで叩きのめされたのである。 イスラエルは2001年からジョージアに武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練しはじめている。イスラエルから供給された装備には無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムなども含まれていた。 当時のジョージア政府にはヘブライ語を流暢に話す閣僚がふたりいたことも知られている。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当しているテムル・ヤコバシビリだ。 そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、同年7月にはコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問している。南オセチアへの奇襲攻撃はその翌月だ。アメリカ政府の承認を受けての奇襲攻撃だったのだろう。 アメリカはアル・カイダ系武装集団を使って2011年春にリビアやシリアへ軍事侵攻、同年10月にはリビアの破壊に成功、その際にムアンマル・アル・カダフィを惨殺している。 カダフィ体制が崩壊した後、アメリカはシリアでの戦争に集中するのだが、バシャール・アル・アサド政権は倒れない。そこでリビアと同じようにアメリカ/NATOはシリアを直接攻撃すると言われ始めたが、そうした中、2013年9月に地中海からシリアへ向かって2機のミサイルが発射された。 ところが、このミサイルは途中で海中へ落ちてしまう。イスラエルはミサイルの発射実験を行ったと発表するが、事前の警告はなく、ロシア軍がECM(電子対抗手段)を使ったと言われている。ドナルド・トランプ大統領が2度試みたシリアへのミサイル攻撃もECMを含むロシア製防空システムに阻まれた。 2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒す。アメリカ/NATOはロシアに対する威嚇を開始、2014年4月にはアメリカ海軍の駆逐艦ドナルド・クックを黒海へ入れ、ロシア領に接近させた。 ところが、その艦船の近くをロシア軍のSu24が飛行すると状況が一変した。ドナルド・クックはすぐルーマニアの港へ入り、その後、ロシアの国境には近づかなくなったのだ。ロシアでの報道によると、ロシア軍機は「キビニECMシステム」を搭載、ドナルド・クックのイージス・システムを麻痺させたという。 こうしたことからロシア軍は電子戦でアメリカ/NATO軍を上回っていると言われるようになったが、その推測が正しいことは2022年にロシア軍がウクライナ軍を攻撃し始めてから明確になった。 アメリカ/NATOはウクライナにロシア軍を攻撃させるため、武器弾薬を供給するだけでなく戦闘員も送り込んでいるが、HIMARS(高機動砲兵ロケットシステム)を含む西側のGPS(全地球測位システム)を使った兵器はロシア軍の妨害技術で無力化されている。これはウクライナだけの問題でなく、中国やイランを含む世界の国々が注目しているはずだ。 攻撃能力の面でもロシアがアメリカを上回っていることは明白。「無敵のアメリカ」というハリウッドが作り上げたイメージは崩れ始めている。そのイメージを維持するため、アメリカ/NATOはロシアを核戦争で威嚇しているのだが、「受けて立つ」と返されている。楽勝するつもりで始めた戦争でアメリカ/NATOは窮地に陥った。「神風」が吹くとは思えない。 アメリカ/NATOではウクライナにロシア領内奥深くを攻撃させろと叫ぶ議員が現れ、ジョー・バイデン政権はウクライナにロシア領攻撃を許可したと伝えられているが、それに対し、ロシア軍はリビウ近郊にあるヤボリブ訓練場を極超音速ミサイルのKh-47M2キンジャールで攻撃した。ここにはNATO諸国の教官やウクライナ軍の軍人300人以上がいたと言われている。今後、状況によってはウクライナの周辺にある軍事施設も目標になる可能性があるだろう。 勿論、アメリカがロシアと並ぶ核兵器の保有国であることは確かで、自暴自棄になり、原爆を手にした当時に描いた計画通りに核兵器を使った場合、世界は破滅する。アメリカは自分たちが滅びることになれば、その前に世界を滅ぼそうとすると言う人もいるようだが、間違いではない。ジョー・バイデンは現在のアメリカを象徴する人物だ。
2024.06.01
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