イラン革命防衛隊(IRGC)を構成する5部隊のひとつで、非正規戦と軍事情報活動を専門とするクッズ部隊の司令官を2020年1月から務めていたイスマイル・カーニが「自決」させられたと伝えられている。最高指導者だったアリー・ハメネイ師を含むイランの要人に関する情報をイスラエルの情報機関モサドに提供、暗殺に協力したのだという。カーニがモサドのスパイだということは、中国軍の情報機関によるCIA高官とイスラエル参謀本部幹部との通信傍受で判明したと伝えられている。

カーニの前任者である ガーセム・ソレイマーニー は 2020年1月、イラクで活動している人民動員軍(PMU)のアブ・マフディ・アル・ムハンディス副議長と共にバグダッド国際空港で暗殺された。その当時、イランとサウジアラビアは関係修復に向かって交渉を開始、ソレイマーニーはイラン側のメッセンジャーを務めていたという。イラクの首相だったアディル・アブドゥル-マフディによると、その日にソレイマーニーはサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えていた。
2024年4月1日にイスラエル空軍はゴラン高原方向からダマスカスを攻撃、イラン大使館領事部を破壊してクッズ部隊の幹部だったモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害。
それに対し、イランは報復として同年4月13日にドローンやミサイルでイスラエルのネバティム空軍基地、ラモン空軍基地、そしてハルケレン山頂にある「サイト512」基地のAN/TPY-2 Xバンドレーダー施設を攻撃。イランが発射したミサイルの大半は目標にヒットしたと伝えられているが、これは形式的な攻撃で、イスラエルに打撃を与える意思はなかったと見られている。
この攻撃を命じた エブラヒム・ライシー大統領は2024年5月19日、アゼルバイジャンからアメリカ製のベル212ヘリコプターで帰国する際、そのヘリコプターが墜落、同乗していたホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らと一緒に死亡した。
ライシーの後任として選ばれたのはマスード・ ペゼシュキアン。7月28日に行われた就任式にはハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤも出席したが、7月31日にイランの首都テヘランにあるゲスト・ハウスでイスラエルの攻撃を受けて護衛と共に暗殺された。この事件に絡み、情報機関や軍の高官、ゲストハウスの職員など20名以上が逮捕されたとされている。
2024年 7月30日にはベイルートでヒズボラのフアド・シュクルが殺され、9月 17日と18日 にはレバノンやシリアで トランシーバーや ポケベル(ページャー) が遠隔操作で爆破されるテロ攻撃があった。9月27日には ベイルートでヒズボラ幹部による秘密会議が地下施設で開かれたのだが、その場所がイスラエル軍によって空爆され、 ハッサン・ナスララ書記長も殺害された。
ヒズボラの秘密会議にはカーニも出席していたのだが、予定より早く席を立ち、助かった。2025年6月にはIRGCの本部がイスラエル軍に攻撃され、数名のイラン人将校が死亡しているが、カーニは直前にその場から立ち去っていた。今年2月28日にイランの最高指導者アリー・ハメネイ師の邸宅が攻撃された際に、カーニは攻撃の5分ほど前に退席していたという。
2024年の段階でカーニは疑惑を持たれていたようだが、ハメネイが殺されるまで要職についていた。イランの経済エリートには米英金融資本と結びついている人も少なくないようで、ペゼシュキアンも親欧米派と言われ、イスラエルに対する報復にも消極的だった。
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