アメリカとの交渉団で戦略顧問を務めるメフディ・モハマディが概説した「暫定合意」をイランの通信社は伝えた。
それによると、第1にイランとレバノンへの攻撃は全面的に停止され、戦闘の再開を防ぐためのメカニズムが設けられる。第2にイランの凍結資産の一部が解除され、アメリカは特定の制裁を緩和する。第3にイランの船舶に対する制裁を緩和し、海上貿易と国際輸送ルートを正常化する。第4に核問題は初期段階の協議には含まれず、合意の第一段階が完了した後に取り上げる。最終段階でアメリカは制裁を解除し、戦争および経済的損害に対する賠償と復興支援について協議する。
それに対し、イランは戦争を終結させる条件として次のことを挙げている。レバノンを含む全戦線における戦争の即時かつ恒久的な停止、アメリカがイランの内政に干渉しないことの約束とイランの主権尊重、アメリカによる海上封鎖の解除、ホルムズ海峡の再開通、イラン周辺からのアメリカ軍撤退、イラン産原油に対するアメリカの制裁を止める、アメリカとその同盟国による「少なくとも3000億ドル相当」のイラン復興計画の策定、核問題と制裁の完全解除を基盤とした最終合意を目指し、60日間の交渉を実施、イランは核兵器を製造しないことを改めて表明、交渉期間中、アメリカは地域における軍事力を増強したり、新たな制裁を課したりしない、凍結されているイランの資金240億ドルを解放、。合意履行のための監視メカニズムを設置、最終合意は国連安全保障理事会決議によって承認される。最終交渉はイランの凍結資金の半分が解放され、石油制裁が停止され、海上封鎖が解除されるまで開始されない。
イランにとって、レバノンへの爆撃を止め、凍結資産を返還、アメリカ軍によるホルムズ海峡の封鎖解除、エネルギ資源の輸出制限の解除は絶対条件だと見られていた。モハマディの概説はこれらを満たしているように思えるが、交渉相手のドナルド・トランプ米大統領はアメリカがイランを屈服させたというイメージを振り撒き続けてきた。
仲介役を務めているパキスタンのシャバズ・シャリフ首相は24時間以内に電子署名を行う準備を進めており、来週には技術レベルの協議が行われる見込みだと述べたというが、この合意をトランプが本当に呑んだのだろうか?トランプ大統領はイスラム世界を挑発している。
トランプは協定が6月14日に締結され、ホルムズ海峡再開への道が開かれと断言、イランの濃縮ウランを管理下に置き、破壊するとも述べている。協定に両国が調印したとして、アメリカにそれを守る意思はあるのだろうか?
アメリカとイスラエルがイランを騙し討ちして始まった戦争だが、イランの反撃で西アジアのアメリカ軍基地は大きな損害を受け、イスラエルの重要施設も破壊された。トランプ大統領は数日でイランを制圧できると信じていたのだろうが、アメリカとイスラエルは戦場だけでなく国内経済も苦境に陥った。
アメリカは世界有数の産油国であり、エネルギーの備蓄もあるが、その備蓄の減少が深刻だ。中間選挙が近づいているということやペルシャ湾岸諸国の苦境も無視できない。
アメリカの重要なエネルギー拠点であるオクラホマ州クッシングの施設は7500万バレル以上の原油を貯蔵する能力があり、アメリカにおける総貯蔵量の15%以上を占めているという。戦争開始から100日以上を経た現在、その残量は2160万バレルだ。これはアメリカ全体で言えることだろう。しかも、残量が2000バレルを下回ると大半はスラッジをかき集めているようなものだと言う人もいる。アメリカは石油の輸出を制限するかもしれない状況だ。
イラン国内ではアメリカとの交渉を進めているセイエド・アッバス・アラグチ外相に対する批判が高まっている。またIRGC(イラン革命防衛隊)で政治担当副司令官を務めるヤドッラー・ジャヴァニ少将は「いつでも引き金に指をかける準備ができている」と述べ、「外国人や略奪者がこの地域に存在していた時代は終わったことを知るべきだ」としている。
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【 櫻井ジャーナル(note) 】