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2007年11月30日
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カテゴリ: 日本文学

内容(「BOOK」データベースより)

江戸を高波が襲った夜、人気絵師・喜多川歌麿の女房が惨殺された。歌麿の絵に込められた風刺を憎む幕閣から妨害されながらも、アクセント 豆まきのマス.gif事件の真相を追う同心・仙波の前にやがて明らかとなる黒幕の正体と、あまりに意外な歌麿のもう一つの顔とは!?浮世絵研究の泰斗でもある著者が、満を持して放つ傑作時代小説。



寛政の改革下の江戸が舞台の時代物。
作者お得意の浮世絵の世界を絡ませたエンタテイメント。


アクセント でんでん太鼓.gif 歌麿  後の葛飾北斎である 春朗 蔦屋 など、浮世絵界の大物たち、  松平定信 長谷川平蔵(「鬼平」) 初鹿野信興(北町奉行)  といった実在した有名人が絡み活躍。主人公 仙波一之進(南町奉行同心)は剣の達人。姉妹編の『おこう紅絵暦』主人公、おこうと彼のなれそめも。


まず、なんといっても、火付盗賊改方長谷川平蔵”鬼の平蔵”が、物語にどう関係しているのかが、興味津々。

時代小説 ファンなら誰でも知ってる 池波正太郎の『鬼平犯科帳』。 鬼平の人物の魅力と、盗賊を取り締まるのに当の盗賊を取り込んでの探索方法、人情味と冷徹さあふれるストーリーは、それまでの時代小説とは違った斬新さで心酔した人も多いでしょう。


”鬼の平蔵”は、悪なのか善なのか。

『だましゑ歌麿』 では、存在感がありつつも、全幅の信頼を寄せられる”お頭”とは、ちと違いました。主人公の敵か味方か??
あまりに有名な、  池波鬼平 への一種の挑戦、  池波ワールド へのオマージュなのかも。 池波鬼平の雰囲気も確かに感じられますから。 ただ立場を変えて、 ”御改革”を押し付けられる庶民側からは、生真面目すぎる老中と鬼平コンビは、大きすぎる負担でもあったのかもしれません。主人公の批判的視点に立つと。 
ラスト事件解明後、主人公と顔を合わせる 「鬼平」 が、サラリと語るネタ明かし。 主人公を優秀な人物と確かに認めていつつ、厄介でもあり、。峻烈な盗賊との戦いの日々やお役目の重責を担う中、浮世絵師の女房の殺害事件など、小さなことで握りつぶそうとした、、冷徹さも感じられました。
鬼平も、主人公も、歌麿も、松平定信も、、皆の信念がぶつかり合ってます。誰が悪役ってことではない人物像たちでしたね。


 さて、 主人公 です。

千に一つも目こぼしをしないことから「千一」とあだ名される、南町奉行所の腕利き同心、の仙波一之進。 
ゆきすぎた <寛政の改革> を推し進める老中松平定信と、その信奉者長谷川平蔵に徐々に首を傾げていくことに。
そして、その御政道に反抗するかのような連続押込強盗事件の黒幕が、火付盗賊の手の者なのか、女房を殺された恨みによる歌麿(浮世絵師)なのか、版元の蔦谷なのか、、。
事件は二転三転、仙波は疑惑をつのらせます。次から次へと展開していく構成はさすがです。


再三、狙われる仙波。下手人捜しにかかる圧力。

その立ち回りの緊迫シーンは、すごかった。かなり、微細に描かれいるので、そのシーンは、読んでて自然と肩に力が入りました。


浮世絵 に造形の深い高橋さんならお手のものの、事件と浮世絵の関わり。

作者の高橋克彦は 『写楽殺人事件』 で華々しいデビューを飾った後、しばらく“浮世絵”関係を封印したのだそうですが、『写楽殺人事件』で触れていた <寛政の改革>時代 を、掘り下げ、こうして時代劇ミステリに仕立て上げたのですね。


<寛政の改革>

白河藩主:老中松平定信が断行した、 質素倹約 を旨とする改革。
前任者の田沼意次の失脚後、一時は喜ばれるが、隠密の後ろにさらに隠密をつけるような、あまりに細かく厳しかったため人望を失う。 贈収賄 も横行し、ついには松平定信は老中職を失脚する。 贅沢品を取り締まる倹約の徹底、公衆浴場での混浴禁止など風紀の粛清、出版統制により洒落本作者の 山東京伝 、黄表紙作者の 恋川春町 、版元の 蔦屋重三郎 などが処罰された

庶民の楽しみが奪われていく暗い世相が背景の大事件、力作でした。




風車イラスト






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最終更新日  2007年12月01日 12時01分47秒
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