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なまけいぬ
自作の小説を載せています。ツッコミどころ満載ですが…
2008年10月02日
テーマ： 連載小説を書いてみようｖ(10111)
カテゴリ： 楽園に吼える豹
「時局は一つのターニング・ポイントを迎えそうだ。
銀髪の初老の男―――リーゼマンは、傍に控えているリズにそう言った。
リズ・ターナー。
グリンロッドで起きた爆発事故で死んだことになっている、アドバンスト・チルドレン。
そしてルビア共和国で、フェレクの脱獄の手助けをした女。
彼女もゲオルグ・シュバイツァー、そしてイルファン・アンドロポフ―――看守に化けていた男―――と同様、『存在しないキメラ』である。
リズは“主人（マスター）”と仰ぐその銀髪の男を、熱っぽく見つめている。
二十四という年の割りにあどけなさの残る顔に、リーゼマンは手を当てた。
「リズ……」
「はい、“主人（マスター）”」
「転換期を迎えたとき、お前の力が真に必要となる。
ゲオルグでもイルファンでもなく、お前の力がだ。これからも私のために働いてくれるな？」
「はい」
リズはうっとりと微笑んで男の手に自身の手を重ねる。
馬鹿馬鹿しい―――その光景を密かに覗き見ていたゲオルグの内心はこんなものだった。
自らの命を投げ打ちかねないほど、リズ―――彼女ほどではないにしろ、イルファンもそうだ―――はあの男に心酔しきっている。
彼らにとってリーゼマンは、父親であり、師であり、神ですらある。
二人とも地獄のような境遇から救い出されたのだから、彼に恩義を感じるのは無理のないことだと言えるかもしれない。
彼は万難を排して彼らにコンタクトをとり、翼を与えた。
ゲオルグも似たような経緯でアドバンスト・チルドレンとなったのだから、そういう意味ではあの二人と同様、彼に敬意を払ってもおかしくはないはずなのだが、ゲオルグは決して彼と相容れない。
もともとアドバンスト・チルドレンになったところで、それまでの人生と比べてマシだとはいえないとゲオルグは思っている。
多少環境が良好になっただけで、誰かの飼い犬であることに変わりはないじゃないか―――と。
自分は自由になることを望んでいる。
けれど今の状況は、自由とは程遠い。
あの男は、この自分と同じだ。
自身の欲望のためだけに生きている。
リズは、自分は愛されていると誤解しているのだろう―――でなければあんなふうに心を委ねられるわけがない。だが、それは違う。
あの男が愛しているのは今も昔もたった一人だ。
それ以外の人間は愛さないし、愛せない。
そうでなければ、自分たち三人に“あんなこと”はしないだろう。
結局今も手枷足枷をはめられていることに変わりはないのだ。
（その枷を外すことができる人間がいるとしたら、きっとそれは―――…）
金色の瞳が脳裏をよぎり、ゲオルグ・シュバイツァーは人知れず笑みを漏らす。
（鍵は、彼女。うまくすれば、近いうちに私の枷は外れるかもしれないな）
第八章 岐路に立つ二人へつづく
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リズとかイルファンとか、久しぶりすぎですね(^^ゞ
「誰！？」と思われた方は第七章の 第五回 十五年前の事故 や、第六章をご覧ください。
さて、これで第七章は終わりです。
第八章は「岐路に立つ二人」と題しまして、アスカと藤堂を取り巻く環境が激変していくことになりますので、お楽しみに♪
銀髪の初老の男―――リーゼマンは、傍に控えているリズにそう言った。
リズ・ターナー。
グリンロッドで起きた爆発事故で死んだことになっている、アドバンスト・チルドレン。
そしてルビア共和国で、フェレクの脱獄の手助けをした女。
彼女もゲオルグ・シュバイツァー、そしてイルファン・アンドロポフ―――看守に化けていた男―――と同様、『存在しないキメラ』である。
リズは“主人（マスター）”と仰ぐその銀髪の男を、熱っぽく見つめている。
二十四という年の割りにあどけなさの残る顔に、リーゼマンは手を当てた。
「リズ……」
「はい、“主人（マスター）”」
「転換期を迎えたとき、お前の力が真に必要となる。
ゲオルグでもイルファンでもなく、お前の力がだ。これからも私のために働いてくれるな？」
「はい」
リズはうっとりと微笑んで男の手に自身の手を重ねる。
馬鹿馬鹿しい―――その光景を密かに覗き見ていたゲオルグの内心はこんなものだった。
自らの命を投げ打ちかねないほど、リズ―――彼女ほどではないにしろ、イルファンもそうだ―――はあの男に心酔しきっている。
彼らにとってリーゼマンは、父親であり、師であり、神ですらある。
二人とも地獄のような境遇から救い出されたのだから、彼に恩義を感じるのは無理のないことだと言えるかもしれない。
彼は万難を排して彼らにコンタクトをとり、翼を与えた。
ゲオルグも似たような経緯でアドバンスト・チルドレンとなったのだから、そういう意味ではあの二人と同様、彼に敬意を払ってもおかしくはないはずなのだが、ゲオルグは決して彼と相容れない。
もともとアドバンスト・チルドレンになったところで、それまでの人生と比べてマシだとはいえないとゲオルグは思っている。
多少環境が良好になっただけで、誰かの飼い犬であることに変わりはないじゃないか―――と。
自分は自由になることを望んでいる。
けれど今の状況は、自由とは程遠い。
あの男は、この自分と同じだ。
自身の欲望のためだけに生きている。
リズは、自分は愛されていると誤解しているのだろう―――でなければあんなふうに心を委ねられるわけがない。だが、それは違う。
あの男が愛しているのは今も昔もたった一人だ。
それ以外の人間は愛さないし、愛せない。
そうでなければ、自分たち三人に“あんなこと”はしないだろう。
結局今も手枷足枷をはめられていることに変わりはないのだ。
（その枷を外すことができる人間がいるとしたら、きっとそれは―――…）
金色の瞳が脳裏をよぎり、ゲオルグ・シュバイツァーは人知れず笑みを漏らす。
（鍵は、彼女。うまくすれば、近いうちに私の枷は外れるかもしれないな）
第八章 岐路に立つ二人へつづく
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リズとかイルファンとか、久しぶりすぎですね(^^ゞ
「誰！？」と思われた方は第七章の 第五回 十五年前の事故 や、第六章をご覧ください。
さて、これで第七章は終わりです。
第八章は「岐路に立つ二人」と題しまして、アスカと藤堂を取り巻く環境が激変していくことになりますので、お楽しみに♪
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