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学校の先生モノの漫画は結構ありますが、意外と「小学校の先生」というのは少ない部類でして。そんな中、じんわりとやさしい気分になれる漫画をご紹介。 「一年一組甲斐せんせい」 作:一丸 小学館■甲斐修平は小学校教師。母校の潮小学校勤務になり、息子の太一と二人で東京・下町の故郷へ帰ってきた。1年生の担任になるが、立地が都会なのと少子化で15人しか生徒がいない。今まで5・6年生の担任しかしたことのなかった甲斐が子供たちと奮闘する。 漫画での学校の先生と生徒というと、どうしても「対立」や「訳あり」タイプの関係になりがちですが、この漫画の甲斐せんせいは本当に「ふつうの学校の先生」として、小さい子供と接し、ふれあい、叱り、褒め、そして生活する。ありがちなドロドロしたドラマがないけど、毎日のほんのささいな出来事を丁寧に描いていて、しかし、決して冗長にならないところは作者の腕、といったところでしょうか。 モンスターペアレントなる言葉が最近はマスコミを騒がせ、まるで子供も親も皆、おかしくなってしまったような報道ばかりされる昨今ですが、教職をしていたうちの母が言うに「30年以上先生をやっているけど99%の親はまとも」だそうです。 こんな先生がいればいいな、ではなく、ごく普通の先生像を見せてくれるこのマンガ。じっくり読んでください。そして、もう少し学校というものを、先生という存在を信じてあげられればと。
2008.06.13
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漫画の神様、手塚治虫先生といえば、ヒューマニズムや生命の尊さを訴える名作が多い中、その中で唯一(?)すさまじい暴力とセックスと、狂った破滅へ突っ走るノンストップサスペンス。それが今回紹介する作品です 「MW(ムウ)」作:手塚治虫 小学館■梨園に生まれたエリート銀行マン・結城美知夫の素顔は狂気の連続凶悪犯罪者だった……。犯行を次々に重ねてはその後に教会を訪れ、旧知の賀来(がらい)神父のもとで懺悔をする結城。しかし2人は同性愛者として、肉体関係を結んでいたのである。かつて美知夫は少年時代に南国の沖ノ真船島(おきのまふねじま)を訪れ、この地にたまたま来ていた不良少年グループにかどわかされた経験をもつ。その際、同島に駐留する某外国軍の秘密化学兵器「MW(ムウ)」が漏れた。島民が相次いで変死する地獄絵を目の当たりにしたトラウマと自らも毒ガスを吸ったショックとから、美知夫は心身を蝕まれる。そして、不良グループの一員だった賀来の手で凄惨な場面から逃げおおせたのもつかの間、避難先で賀来に強引に犯される美知夫少年。主従関係は変わっても、2人の奇妙な関係はその後も続いていたのだった。 私が一番好きな手塚作品といえば幕末の動乱を駆け抜けた二人の青年の姿を描いた「陽だまりの樹」なのですが、同時期に読んで「まさかこんな漫画を描くのか!」と冷や汗を流すほどの問題作。 あらゆるモラルやタブーをあざ笑う攻撃的で破滅的内容、しかし最後までストーリーから目が離せない、見事な構成力で描ききった好きな手塚作品の裏一位作品です。 手塚治虫の真っ黒な面が見えるこの漫画。意外と知られていないのが不思議だったのですが。今度映画化されると聞きましたのでこの機会にぜひ。
2008.06.04
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マンガを題材にしたマンガ、といえば、作家の半生を描いた「まんが道」や、架空の漫画家をドラマチックに描いた「コミックマスターJ」などがありますが、今回はまんが専門の古本屋さんを舞台にした、一風変わった作品をご紹介します。 「金魚屋古書店」 作:芳崎せいむ 小学館■国内外を問わず膨大な数の漫画古本を取り扱う『金魚屋古書店』を舞台とする。迷いや憂いを抱えた人、思い出を求める人、本を愛する人などがぶらりと立ち寄った金魚屋の古本に救われたり、代理店主の鏑木菜月とその周囲の人間が漫画を中心に織り成すショート・ストーリー。 地下に膨大な蔵書を抱えるこの金魚屋古書店は、毎回一冊の漫画をテーマに、さまざまなお客さんとのストーリーをリンクさせて楽しませてもらえます。 しかし、コレを読んで驚くのは、自分も一応、マンガ好きを自称していますが、それでも読んだ事のない作品がいっぱい(別に無理にマニアックという意味ではなく)。改めて日本の漫画の海の広さを感じます。 この作品で知って興味を持った作品も多く、まさに「マンガレビュー好きにはたまらない」マンガ(ヘンな語感)ですねえ。 読むとしみじみとマンガが好きになる、そんな読後感をぜひお楽しみください。 ちなみにこの作品の前作にあたる「金魚屋古書店出納帳」もオススメです。
2008.05.28
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カイジやアカギなどで大人気の福本伸行先生。今回紹介するのは、その先生がまだ臥龍であった時代の隠れた名作です。 「銀と金」 福本伸行 双葉社■「人生を変える億って金欲しくないか?」森田の前に突如現れた謎の男・銀二。"銀王"と呼ばれるその男に見込まれ、次々と試されていく森田。「人をひとり殺してもらいたい・・・」森田の出す答えは?そして銀二の思惑とは!?破格の金銭が飛び交う、想像を超えたスリリングな裏世界への扉が、今、森田の目の前で開かれる! このマンガの魅力は何と言っても「銀さんカッコイイ!」に尽きます!闇のフィクサーであり、計略、謀略、知略の天才であり、しかし、決して外道には落ちない芯のびしっと通ったものを感じる大悪党。もう男惚れするしかない! 主人公、森田はその銀さんを通してさまざまな金、闇の世界で奮戦するのですが、後の福本先生18番の濃いキャラとのギャンブル、そして鮮やかに展開する構成は脱帽するしかありません。 最近の福本作品があまりにも長すぎる(鷲頭麻雀が10年経過してもまだ終わっていないなど)事と比べると、とにかくテンポがよく、ストーリーも二転三転するのがたまらないですね。 残念ながら連載半ばで中断(講談社に引き抜かれ、その後カイジが連載開始)しているのですが、ぜひ続きを書いて欲しい作品です。 倫理とか正義といったものでは量れない「悪党の魅力」をぜひご堪能ください。
2008.05.13
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同じマンガでも、読む時期や年齢によって感想が変わるなんて事はあるようで。今回ご紹介するマンガはすでに20年以上の長期連載であり、私も最初に読んだ学生の頃、そして新社会人になってから、また、ある程度サラリーマン生活を重ねて読んだときの感想が変わったマンガです。 「総務部総務課 山口六平太」原作:林 律雄 作画:高井研一郎■大日自動車総務部総務課の山口六平太は一見、うだつの上がらないサラリーマン。が、本当はどんな難問も解決するスーパーマンだ。とぼけた顔とたばこクルッの秘技を持つ六平太。今日も何でも引き受けます! 主人公の六平太は会社の総務、という、いわゆる文具管理から各種社内イベントの調整、社内の切れた蛍光灯の取替え、はてな人間関係のトラブルまで様々な仕事(雑用)が持ち込まれる部署。そんな中、問題解決のよき「調停役」として機転をきかせるのがこのキャラの魅力ですね。 例えばAという意見とBという意見が対立した場合、中間点を妥協ラインとするのではなく、AとBを内包するようなCという解決案を出すのが上手い、というか。揉め事って結局どちらか片方が敗北するか、あるいは双方妥協するかが決着ラインと思いがちですが、別の視点からの解決方を提示し、双方を満足させるところがいいです。 決して「島耕作」のようなバリバリ仕事をして出世するタイプではないけれども、何かトラブルがあったら「ど、どうしよう!山口くん!」と皆から頼られる存在。そんな地味なスーパーマン像が私は好きです。
2008.05.01
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「作家買い」って言葉がありますが、私もその作者さんの作品は無条件で読んでいる、という好きなマンガ家先生は何人もいます。今回紹介する新谷かおる先生も、自分の中ではそんな一人です。「砂の薔薇」 作:新谷かおる 白泉社■ヒロイン、真理子・ローズバンクは CAT (Counter Attack Terrorism、米国に所属する半軍半民の反テロリズム専門部隊)の凄腕女性指揮官。胸元の薔薇の形に見える傷跡から「薔薇のマリー」と呼ばれる。夫と子をテロ活動により失った過去を持ち、テロ壊滅に命をかける。 新谷かおる先生の代表作といえば「エリア88」という古典的名作がありますが、戦争を題材にした作品が多い中、このマンガのヒロインは対テロリスト専門の特殊部隊という、一風変わった組織の隊長、しかも女性ばかりの部隊ということで、ある意味トンデモ設定ではあります。が、単にドンパチするだけでなく、政治、経済、民族といったものを丁寧に物語に織り込むことによって非常に重厚、かつ個性豊かな隊員とのやりとりでエンターテイメント性に富んだ作品です。 中でも私が特に好きなエピソードは世界同時5箇所に仕掛けられた爆弾解体ミッションのエピソードですね。精密な起爆装置を作った人間の思考を読み取り、トラップを解除し、裏をかく。息の詰まるような緊張感にはハラハラさせられます。 先生はもう相当高齢のはずですが、未だに現役バリバリ、コミケにも参加するようなアクティブな方。(漫画家、島本和彦先生と同人誌を作るなど) 村上もとか先生もそうですが常に新しいジャンルを模索し、高いレベルのマンガを描き続けている先生は本当に尊敬します。 あと、マンガにはない、オリジナルエピソードのOVAもあるのですが、そちらも非常に高い完成度なので、機会がありましたらぜひご覧ください。
2008.04.21
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書道とか習字っていうのは誰でも小学生時代に習った経験があると思いますが、今回はその書道部を舞台にした、珍しいマンガです 「とめはねっ! 鈴里高校書道部」作:河合克敏 小学館 ■主人公の大江縁はカナダ帰りの帰国子女。中学卒業後に帰国し、鎌倉市のはずれにある私立鈴里高校に入学するが、部員数が足りなく廃部の危機にあった書道部の先輩たちに弱みを握られ、入部させられてしまう。入部後は書道に興味を少しずつ持ち始めた縁であったが、その矢先にクラスメイトの望月結希が投げ飛ばした男子生徒が直撃し、利き手の右腕を骨折してしまう。縁を骨折させてしまったという結希の弱みを握った先輩たちは「字が書けなくなっている縁の代わりに」という理由で、柔道部のホープであった結希も臨時部員として入部させようとするが……。 作者は「帯をギュっとね!」「モンキーターン」など、地味な題材を面白く描くことに関しては天才的な(W)河合克敏先生。この作品もご多分に漏れず、とにかく笑えて、そして「書道ってこんなに奥が深いものなのか」と感心させられる描写はさすがです。もっとも、太古の昔から脈々と続く書道が奥深くない筈がないですけど。 この作者さんって、描写がどこか独特でちょっと引いたカメラで映すような雰囲気が好きです。個性豊かな女子生徒に流されっぱなしの主人公、大江クンがかわいい。 最近はキーボードで文章を書くことが普通な時代になりましたけど、ちょっと筆を握ってみたいな、なんて思わせる魅力がありますね。 とにかく、この面白さは文章で上手く説明できないので、ぜひご一読を。
2008.04.11
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漫画界では長期連載作品といえば大概有名、あるいは一度は見たことがある漫画であることが多いかと思いますが、四半世紀以上に渡って連載しているにもかかわらず、掲載誌が漫画雑誌ではなくゴルフ雑誌であるがゆえに意外と知られていない隠れた名作を今回ご紹介します。 「新・上ってなンぼ! 太一よ泣くな」 作:小池一夫 作画:叶 精作■身長が低く、非力で飛距離が出ないゴルフ研修生、川端太一。しかしそのゴルフに賭けるひたむきさと誠実さは、やがて周りの人に愛され、協力してもらうことによって成長していく。「ゴルフは飛距離じゃない、上がってなンボだ」と・・・ この漫画の良いところは「努力が報われる」ことにつきるかと。スポーツ、特にプロの世界では「才能」というのは上位に行くほど絶望的な差として結果に現れます。体格的に恵まれない太一はそれでも歯を食いしばり、ひたすら努力と研鑽を重ね、やがてその姿に心打たれた人々から様々な技術、秘伝、そして愛を受け成長します。 最近は少年誌のスポーツ漫画で主人公はもって生まれた才能・天才型が多く、練習シーンを書かなくなったとか。理由は地味な練習シーンはアンケート人気が落ちるそうで・・・個人的にはその地味な部分を描いてこそ主人公に感情移入できる要素だと思うのですが、たかが漫画内の努力シーンですら「かったるい」と思う層がいるのかと、時折不安に思います。 この漫画、ご都合主義なところは多々ありますけど「努力は必ず報われる。誰かが見ていてくれる」という、古風ですが生涯信じたい、そういう世の中であって欲しい、という願いも込めて。ゴルフに興味のない方もせひ読んでみて下さい。
2008.04.02
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5年前、初めて海外旅行に行った際、ホテルロビーでいろいろ面白いスポットや美味しい店の紹介などをしてくださったホテルマンさんがいました。今、思い返すと、あの方の呼び名はこういう名前なんですね。 「コンシェルジュ」原作:いしぜきひでゆき、画:藤栄道彦(新潮社) あらすじ…就職氷河期を乗り越えてクインシーホテル・トーキョーに就職した川口涼子が配属された部署は、コンシェルジュという今まで名前を聞いたこともない部署だった。道案内からチケットの手配、悩み事の相談まで何でもこなすその部署の責任者である最上拝は、お客様の悩みや要望を、まるで魔法を使ったかのように解決していく。 漫画の中心人物である最上拝(通称:グレート ハイ)は、お客様のどんな要望にも応えるスーパーコンシェルジュ。ありとあらゆる人脈、情報、経験を駆使して「常にお客様のために」東奔西走するストーリーは大変心地よく、また、業種に関係なく「仕事」というものを考えさせられます。 とはいっても、堅苦しい訳でも説教臭いわけでもない上、合間のギャグや絵がすごくいいんです!特に鬼塚さんメイド服萌え。 4月から新社会人になる方にぜひ読んでいただきたい漫画です。
2008.03.26
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最近のマンガやアニメで必ず出てくる「ツンデレ」って設定、もういい加減飽きませんかね?っていうか、あまりにもわかりやすいテンプレ描写ばかりで(例:登場一回目から「か、勘違いしないで!別にあんたのためにやった訳じゃないんだから!」とか)ある意味、「またかよ」と冷めるような・・・ こういう飼いならされたツンデレではなく、今回紹介する「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」作者:ゆうきまさみ 小学館 は、本当の意味での「ツンデレ」がいる名作であります!■あらすじ:東京都内の有名進学校に通う久世駿平は、春休みに北海道旅行へとバイクで出かけ、ひょんなことから競馬馬生産の渡会(わたらい)牧場と関わることになる。そこで馬とふれあう中でその魅力に惹かれ、日本一の競走馬の育成を目標とするようになる。親との葛藤、恋愛、結婚といった人生の様々な出来事を体験し、思春期の少年は一人の大人へと育っていく。 ゆうきまさみ先生といえば、マンガ好きには元祖文系サークルマンガ「究極超人あーる」、アニメ好きにはメディアミックスで大成功した「機動警察パトレイバー」は有名ですけど、個人的にゆうきまさみ作品の中で、もっとも完成度が高い作品だと思います。 で、ヒロイン役の渡会ひびき ですが、とにかく最初は主人公駿平を嫌ってさえいます。が、じっくりと付き合うようになるうちにお互い惹かれあい、でも、それまで馬以外に興味がなかった彼女は、その気持ちをどうしていいのかわからず、ずっとつっけんどんな態度を取ってしまう・・・ここです!ココが大事なんです! ツンデレキャラの魅力は、その態度の落差だと思うのですが、その「ツン」部分があまりにも長い&不器用がゆえの「デレ」の破壊力。これが非常にドラマを盛り上げます。 おっと、ツンデレキャラだけじゃなくて内容も競馬馬の生産現場や調教、セリ、パドックの舞台裏など知らない世界を垣間見せてくれたり、思春期少年が成長する過程を北海道の大自然を舞台にじっくり魅せてくれます。 週刊サンデーに連載していたのでメジャーなはずですが、なぜか話題に上りにくいこの作品。ぜひ至高のツンデレを味わってください。
2008.03.19
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「BJによろしく」以降、医療マンガというのがブームになった時期がありましたが、そんな中、変わった視点の医療マンガをご紹介します。 「JIN―仁」 作:村上もとか 集英社■現代の脳外科医・南方仁は頭部裂傷の緊急手術の執刀中、頭蓋骨内封入奇形胎児を発見、摘出する。手術後、謎の声が“元ヘ戻シテ”と仁に囁き、更に仁は逃走したオペ患と揉み合ううち、何と幕末へワープしてしまう。近代器具なき現代医・仁の医術は幕末に通じるか? 現代の医師がタイムスリップし、限られた道具と知識を駆使して幕末で活躍する。これだけ聞くと荒唐無稽なお話に感じますが、このマンガのすさまじいところは「医療考証」と「時代考証」を同時に行い、かつ、史実の登場人物や歴史的事件とも絡めて高い次元でドラマ化することに成功している点です。 作者の村上もとかセンセイは、古典的スポ根の名作「六三四の剣」から考えると相当高齢のハズですが、漫画家:西原恵理子センセイに「普通、年を取るほど枯れるはずなのに、どんどん面白くなっていく、だからキライ」と言われるほどの方(W. 確かに数年前、15年もかけて連載を終了した「RON-龍」と同時進行しつつ、恐ろしく丹念な取材と緻密な描写は、本当に「漫画職人」という言葉がぴったりです。(この人の作品ってどれも面白くて、本当にハズレがないんですよね) 重厚、かつ爽快な読み口は、まさにベテランの切れ味。ぜひ読んでください。
2008.03.12
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世間ではハチクロの作者である羽海野チカさんの「三月のライオン」単行本1巻が話題となっておりますが。こちらに関しては多くの方が感想を書かれていますので(特にたまごまごごはんさんの考察が面白い)この機会にぜひ一緒に紹介したい一冊です。 「三月のライオン」内の登場人物 二階堂のモデルとなったという、実在の棋士のマンガです。「聖―天才・羽生が恐れた男」山本おさむ 小学館■病魔を抱えながら、決してあきらめることなく将棋にすべてを賭けた、夭逝の天才棋士、村山聖。彼の29年の生涯を描いたヒューマンドラマ。 このマンガはとにかく「血が出るようにヒリヒリとした熱さ」とでも評したらいいのでしょうか…通常、「○○に命を賭ける!」とか「○○は俺の全て!」というのは、どんなにがんばっても「生活を賭ける」「プライドを賭ける」というのが関の山ですが(それでも大変なことですけど)この村山聖という棋士は、物心ついたときからの闘病生活の末の「ぼくには将棋しかないんです」という呟きの重さ。もちろんマンガである以上、脚色はされてはいますが、その迫力と熱気が胸に突き刺さります。 「三月のライオン」内で二階堂が起死回生で打った「6八銀」の一手の重さがこのマンガを読んでいたおかげでリンクし、より深いものへと感じられますので、ぜひどちらもオススメします。
2008.03.03
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グルメマンガというものは美味しんぼ以降マンガのジャンルとして確立し、さまざまなマンガがある。 そんな中で今回紹介したいのが、「魚」に特化したという「築地魚河岸三代目」作画:はしもとみつお 原作:大石けんいち(1巻)鍋島雅治(2巻以降)あらすじ・・・銀行の人事部員だった赤木旬太郎は上司に命じられて行ったリストラ執行の自分なりの責任を取り退職、妻の父の跡を継いで築地魚河岸の仲卸「魚辰」の三代目を勤めることに。右も左も解らない築地で持ち前の明るさ、食いしん坊、好奇心で築地・魚を通じて起こる様々な問題を解決していく。 魚をテーマにしたグルメマンガというと、寿司職人が題材である場合が多いですが、こちらは「売り手側(中卸)」をテーマにしたという、一風変わった内容。主人公は元銀行マンで、最初はハマチとブリの区別もつかない素人。しかし、とにかく食いしん坊で好奇心旺盛な性格が、魚の知識を我々素人と同じ視点で説明されて、とても楽しいです。 また、このマンガの好きなところに「養殖産業を安易に否定しない」ことがあります。どうしてもグルメマンガだと「天然」とか「国産」素材が善という説を取り上げがちですが、「そういう時代もあったけど今は変わっている」「実は養殖は自然を守るためにやっている」「天然より安全な養殖もある」という見方も教えてくれます。 何より「見ているととにかく魚が食べたくなる」マンガ。私も以前は魚をそれほど好きではありませんでしたが、このマンガを読んでから近所の魚屋さんによく立ち寄って、店のおばさんに「今日はこれ、美味しいから」など声をかけられるほど仲良くなったり。 しかし、このマンガを読むと本当に魚っていろんな種類、食べ方があるんだなと感動すら覚えます。こんなに気軽に魚を買える環境がある日本人でよかった。 ps、2008年に映画化も決定しているそうで。楽しみですわ
2008.02.26
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理屈バカの戯言だけ毎日書いても面白くないかと思って、言い訳のようにオススメマンガを。ここで紹介しますマンガは、なるべく「あまり話題になっていないけど面白い」ってものを紹介して、一人でも興味を持っていただければ。 一回目は「神々の山領」(作:夢枕 獏 作画:谷口ジロー)集英社 あらすじ…マロリーのエヴェレスト登頂の謎を解く可能性を秘めた古いカメラ。その行方を追うカメラマン・深町誠は、“毒蛇(ビカール・サン)”と呼ばれる日本人に会う。孤高の単独登攀者・羽生丈二。なぜ、彼はネパールに!? 日本に戻った深町は羽生の過去を探るうちにその生き方に魅せられてゆく…。 山岳マンガというのは私、初めてだったのですが、とにかく「圧倒的」という言葉がいちばんぴったり来ます。それは絵でもあり、構成力でもあり、何より「情念」みたいな。 元々原作は柴田練三郎賞を取った有名作品ですが、これに私の大好きな谷口ジロー先生(孤独のグルメでおなじみ?)の大胆、かつ緻密な描写が付き、見るものを山の世界にぐいぐいと引き寄せられます。 特に物語中盤のグランドジョラスでの事故と、その後の羽生の脱出劇は、夏場に部屋で読みながらも背筋が震えるほど。 実際、このマンガ自体も賞を取ったようですが、イマイチ話題になっていなかったこともあり、ぜひオススメしたいです。迫力というのは効果線や派手な絵柄のみで作られる訳じゃない、ってことで。 あ、それとできれば文庫版ではなく、大判の方を買うことをオススメします。なにしろ絵の大きさが迫力に直結しますので、文庫ではもったいないかと。
2008.02.20
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