11月26日(火)
山桝忠恕 先生のイギリス滞在記
「東も東西も西」師弟友情通信 ―― (下)(176)
「大学アラベスク」(36)
「そして その後は ―― 」(16)
「先生への手紙書き方、虎の巻」 (注:学生の書いたものが先生の手元にまで渡ったもの)
巻ノ四
周五郎ニ関スル情報ガナイ場合ニハ、文意ヲ判読デキカネルヨナ手紙ヲ書クベシ
周五郎の情報をしらせようとする場合を除き、先生への手紙は、できるだけ支離滅裂に書くほうがよい。主語と述語とがマッチしないように、たとえば、「カラスがチュンチュン鳴きました。トンビがケキョと鳴いてます。ハトがピィーチク鳴きました。スズメがチンチロ鳴いてます。お日さま西からコンバンワ。お月さん海からオハヨウさん。ボクはセンセにコンニチワ」とでも書くとか、それとも白紙の便箋を五、六枚封入して、「なにが書いてあるか、わかったら偉い」とでも書き添えておくとか、とにかく意味のわからないように努めるべきであり、そのために先生に、「精神分裂症だ」の「知能指数がひくすぎる。」だのと思われようと、可とすべきである。
なぜかと言えば、先生に手紙を出す目的の一つは、わけのわからない手紙を読ませることによって先生のアタマを混乱させ、判読に時間を費やさせ、時の経つのを短く感じさせることにあるからである。しかし、いくら文意を判断できかねるものほどベターだとは言え、外国語で書こうとしてはいけない。殊に英語で書くなどは、もってのほかの振る舞いと言うべきである。それは、英国に居るあいだは英国人になりきろうと努めておられる先生の意図を、却って助ける結果になってしまうからである。
(つづく)
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